タイトル:真冬のふんどしーちょマスター:水貴透子

シナリオ形態: イベント
難易度: 易しい
参加人数: 12 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/12/16 04:56

●オープニング本文


冬こそ本番でしょ!

寒さなんて気合で吹き飛ばすのよっ!

‥‥というワケで『ふんどしーちょ祭 IN 真冬!』張り切ってやるわよぅ!

※※※

「‥‥また、ふんどしやるんだ‥‥」

企画書を見つけてため息混じりに呟いたのは、クイーンズ記者・土浦 真里の記者仲間である静流だった。

「なんていうか‥‥あれくらいの女が『ふんどしふんどし』言ってる事に違和感ある俺が可笑しいのかなぁ」

同じく記者仲間である翔太も肩を落としながらため息を漏らす。

「なぁ〜に? ごちゃごちゃ言ってると‥‥冬のボーナスを減額していくわよ」

ため息を連発している二人に『査定ノート』にペンを入れる素振を見せながら、悪魔の笑みで話しかける。

そう、クイーンズ記者は今回のふんどし祭の手伝いが終わるまでボーナスがもらえないという状況なんだ。

「いつも私達思うけど―――」

「よく今までキレる事なくマリさんについていってるよなぁ‥‥」

心の底からの呟きを二人は同時に呟き、何度目になるかわからないため息を漏らして準備に取り掛かったのだった‥‥。


――能力者の皆様へ――

どうも♪ 週刊個人雑誌『クイーンズ』の土浦 真里デッス♪

今回は夏にも企画した『ふんどしーちょ祭』を行うので、能力者の皆様にもお知らせした次第です♪

‥‥とは言っても12月真っ只中なので流石に今回は外での祭ではありません。

とある学校の体育館を借り切っていますので、風邪の心配などなく遠慮なく褌一丁になってくださいませ。

しかし体育館の中という限られた場所なので、今回は祭とは名前がありますが簡単に言えば『褌ファッションショー』のようなものを考えています。

どんなものでも持ち込みOK、被害さえ出なければ覚醒OKですので皆様で楽しいふんどしーちょ祭にしましょう。

それでは以下に注意を書いておきますので、お目通しを宜しくお願いします。

――土浦 真里――

●参加者一覧

/ 篠原 悠(ga1826) / 鳥飼夕貴(ga4123) / オーガン・ヴァーチュス(ga7495) / 夜坂桜(ga7674) / 番 朝(ga7743) / 佐竹 つばき(ga7830) / 六堂源治(ga8154) / 風閂(ga8357) / 天道・大河(ga9197) / 紅月・焔(gb1386) / 千祭・刃(gb1900) / リリー・W・オオトリ(gb2834

●リプレイ本文

〜やってきました、第二回ふんどしーちょ祭〜

「遂に来たッス! 真冬のふんどしーちょ祭! 俺はこの為に生きてきた!」
 六堂源治(ga8154)が会場である体育館の扉を開けながら、感動気味に叫んでいる。彼を含む数人の能力者達は、数日前からビラ配りやポスターで近隣住民に祭の事を告知しており、体育館の中にはクイーンズ記者・土浦 真里(gz0004)から誘われた能力者以外にも一般人の姿がちらほらと見えている。
「やぁやぁ、お早い到着で。そうるぶらざー」
 六堂の背中をポンと叩きながら彼に話しかけたのは『ふんどし元祖』と名高い篠原 悠(ga1826)だった。
「おはよッス、そういえばさっきあっちに本家が‥‥」
 六堂が指差した方向には篠原と並んで『本家』として傭兵の間に知られている鳳 つばき(ga7830)が体育館の壇上で「さぁ、はしゃぎますよー♪」と叫んでいる。
「ふんどしーちょ祭ですか、日本男児の祭なのですね!」
 盛大な勘違いをしながら千祭・刃(gb1900)が体育館の中を見渡している。
「わぁ‥‥皆さん、褌姿なんですね! 褌仲間がこんなにいて嬉しいです! これでふんど師匠がいればもっと最高なんですけど‥‥」
 千祭が呟いた瞬間「ははははははっ! 弟子よー!」と叫びながら褌男・大石が姿を現した。
「おお、やはりお前も聞きつけてやってきたか!」
 大石と千祭を見かけて、天道・大河(ga9197)が此方へとやってくる。
「もちろんだとも! 褌の名を冠する以上、俺は何処までもついてくるぜ!」
 ははははは、と大石が高笑いをしていると背後から金タライで殴る人物を発見する。
「ちょっと! 手伝いをサボってこんな所で高笑いとはいいご身分ね、早く来ないとその褌を取るわよ」
 横暴な発言が特徴のマリが大石に話しかけると「それは困る! 手伝いでも何でもしよう!」と大石は慌てて言葉を返す。
「あ、俺は前回の『しーちょくん』で会場を飾りつけするッスよ」
 六堂がマリに話しかけると「助かる♪ 人形は体育教官室にあるからお願いね」と大石を引きずりながら会場設置へと行ってしまう。
「元祖」
「何だい、本家」
「大石さんの褌を取るとヤバい事になるってマリさんは気づいているんでしょうか」
「‥‥多分、気づいてないんじゃない? マリ隊長やし」
「そッスね」
 褌トリオの三人は、それぞれの設置を行う為にいそいそと動き出したのだった。
「えっと、会場は此処だよね」
 鳥飼夕貴(ga4123)は案内のハガキを手に持ちながら体育館の中へと入ってくる。すると中からは『ふんどしーちょ』という叫び声が至る所から聞こえて、祭の会場が此処なのだと理解できた。
「ふふ、何か異質な雰囲気だけど嫌な感じじゃないね」
 鳥飼は呟き、着替える為に更衣室へと向かったのだった。
「やっぱり第二回があったかぁ! おいらンとこのガキも参加すりゃいいのになぁ!
 スパーンと勢いよく扉を開けて体育館の中に入ってくるのはオーガン・ヴァーチュス(ga7495)だった。
 彼と同時に風閂(ga8357)も体育館に入ってきた。
「真冬でも『ふんどしーちょ祭』はやるのだな、オーガン殿も参加か、今回も宜しくな」
 風閂が挨拶をすると「此方こそ宜しくなぁ!」とオーガンは豪快に言葉を返した。
「‥‥‥‥コード・エロス・セクハラのホムーラ‥‥此処に参上‥‥」
 ガスマスクを被り、褌一丁という奇怪な姿の紅月・焔(gb1386)が扉を開けて体育館の中へと足を進める。その姿はさながら何処か映画で出てきそうな侵略者の姿にも見えた(褌だけど)。
「あー! がすっちょ発見っ!」
 どこーんとラリアットと共に紅月に話しかけるマリだったが、祭が始まる前から既に退場者が出そうな勢いのラリアットだった。
「ふにゃあー、何かもう倒れている人がいるよ、つばきちゃん」
 リリー・W・オオトリ(gb2834)が紅月を指差しながら鳳に話しかけている。ちなみに紅月が倒れているのは祭のせいではなく、マリのせいだと言う事に気づいている人物は多くはない。
「そろそろ準備も終わりそうですね」
 夜坂桜(ga7674)が番 朝(ga7743)に問いかけると「そうだなっ」と彼女も言葉を返した。
 今回、夜坂と番は見学という形で祭に参加するとマリに連絡があり、早くから来て手伝いをしてくれているのだ。
「あー、夜っちも朝ちゃんももう休んでていいよー? もうそろそろ始まるし♪ 手伝ってくれてありがとね」
 マリが二人を見学参加者達が座る場所に案内して「お待たせしましたっ」とマイクで大きな声で叫ぶ。
「第二回ふんどしーちょ祭! これより開催しますッ! 思う存分ふんどしれー!」
 マリが叫び、祭は開催の合図となった。ここで『ふんどしれってなぁに?』と聞いてはいけない。恐らく言った本人も分かっていないだろうから。


〜まずは最初に褌ショー、思う存分アピールしてね♪〜

「まずは最初に褌ショーを開催しま〜す♪ この後に痴気痴気マシン猛レースとか予定してるんだけど、暴れたら褌が着崩れちゃうかもしれないからね。最初にさせてもらいました」
 それだけを言い残して壇上から降りたのだが、そこを風閂に呼び止められる。
「真里殿、ふんどしーちょ‥‥褌を借りたいのだが‥‥」
 挨拶がまだ恥ずかしいのか風閂は小さな声で「ふんどしーちょ」と呟いている。
「褌レンタル? OK、はい」
 マリは持っていたバッグから『チホの彼氏褌』を渡すが「ち、違う!」と風閂に断られる。
「あれ? てっきりコレかなって思ったんだけど」
「前回はそれで恥ずかしい思いをしたからな、燃える褌で頼む」
 OK、と言葉を返しながらマリは風閂に『萌える褌』を渡す。
「違う! 燃える褌と言っただろう!」
「ごめんごめん、言い方は一緒だから『萌える褌』かと思ってさ〜」
 ちっ、とマリは舌打ちをしながら『燃える褌』を手渡す。隙あれば『萌える褌』を渡そうと考えていたのだろう。

「最初のアピーラーは篠原 悠! この人こそ褌元祖と神々しい能力者っ!」
 マリの紹介が終わると壇上にスポットライトが集中され、その中心には白い褌を誇らしげに着用した篠原の姿が照らされた。
 この褌ショー以外では彼女は褌の上に『褌』と書かれた法被を着用していたが、褌ショーは『褌一丁』が原則の為にさらしと褌で行う事にした。
 彼女はミスコンで優勝した経験もあり、本職っぽく歩いている。これで普通の格好だったらもっとサマになっていた事だろう。
 しかし、褌は褌――何処までいってもネタに限りなく近い状態で、感嘆のため息よりも格好と真面目な表情のギャップで一般参加者などにウケている部分があった。
 篠原が下がり、次は鳥飼だと思っていたマリだったが見学席に座っている鳥飼を見て「ゆうきちゃんは出ないの?」とマリが問いかける。
「だって、褌一丁って‥‥さらしは必要だもん」
 苦笑しながら答える鳥飼に「さらしはOKよ、だってさらしなくちゃ女性の場合は大変でしょ?」と言葉を返した。
「う〜ん、さらしをつけていいなら‥‥出ようかな」
 さらしをつけていいのなら、と考えた鳥飼は壇上へあがる階段を上っていく。
「二人目は紫暗の褌を着用した魅惑的な人物! 鳥飼夕貴です、どぞー!」
 拍手と共に壇上のスポットライトに照らされた鳥飼は紫色の褌に同色のさらし、髪型も日本髪で褌やさらしと合わせるように紫色に染められている。顔は芸者のように白く塗られており、紫の口紅にアイシャドーと全てが紫で統一されていた。
 鳥飼は暫く壇上の上を行ったり来たりしてアピールする、まだ鳥飼がアピールをしている間に、裏側では三番手のオーガンが準備をしていた。
「そういやぁ、おいらの息子に会っているらしいなぁ」
 オーガンがマリに問いかけるとふわもこな彼の息子が頭に過ぎって「うん、オーちゃんは会ってないの?」と言葉を返した。
「あんまり会ってねぇなぁ、アイツはどんな感じか教えてくれねぇか?」
 オーガンの言葉にマリは暫く考えて「ふわもこ!」とだけ答えた。
「はっ? や、ふわも――「あ、オーちゃんの出番だよ!」――人の話は聞こうぜぃ」
 ぐいぐいと壇上に背中を押しながら進ませるマリに、自分の息子が『ふわもこ』とだけ答えられ、まともな生活をしているのか不安になる父・40歳であった。
「三人目はオーガン・ヴァーチュス! ふわもこ本家!」
「どんな紹介の仕方だよ‥‥」
 自分の紹介を聞いてがっくりと肩の力が抜けたオーガンだったが、覚醒を行い獣人の姿で壇上へとあがっていく。オーガンの覚醒状態は獅子の頭と尻尾を持つ獣人というものだった。
しかし百獣の王である獅子が褌を着用して走ったりしていては、威厳も何も感じられないのが凄い。まさに褌が与えるパワーと言っても過言ではないだろう。
そして舞台裏では「ふわもこー! もこもこー!」と主催者のマリが興奮気味に叫んでいる。そんな興奮状態のマリの元に戻って、オーガンが揉みくちゃにされるのはこれから三分後の事。
「さぁ! 四人目は鳳 つばき! ふんどしーちょ祭に元祖と本家、この二人がいないと話しになりません!」
 ぺかっとスポットライトに照らされながら現れた鳳は『【OR】Fundosi of Goddess』を着用し神々しく仁王立ちで立っていた。
 何故か立っているだけだと言うのに、何処か目を離せぬ何かを感じて会場にいる人物全てが釘付けとなっていた。
「何か色々で面白いなっ」
 見学席の前列に座っている番が褌ショーを見ながら、隣に座っている夜坂に話しかける。ちなみに彼女は『褌』と言うものについて知らなかったりする。
「いまいち褌が何か分かんないけどさ、見てる分には楽しいな」
 番の言葉に「それじゃいかん!」と後ろからニョキっと大石の首が伸びてくる(ちなみに大石はろくろ首ではありません)。
「うわっ!」
 突然現れた大石に番と夜坂も驚くが、大石はお構いなしに『褌講義』を始めてしまう。
「褌とは日本の心であり、大自然が司る神秘のアイテムである。すなわちこれは!」
 しかし大石の大きな声で周りの客からの苦情が出て「そこ! 静かにして!」とマリからも注意をされてしまう。
 しょぼんとした大石は「また今度ゆっくり講義をしてあげよう」と言って何処かへと去っていく。
「いまいち分からなかったけど、つまり褌って凄いんだな?」
 番が確認するように夜坂に問いかけるが「あはは‥‥」と彼は苦笑を浮かべるしか出来なかった。
 その間に鳳の神々しい褌アピールタイムが終わり「続きましては!」とマリが次のアピーラーを紹介する。
「五人目は前回のふんどしーちょ祭での優勝者! 六堂源治!」
 マリの紹介と共に壇上に上がった六堂は、彼がLHに来た時から愛用している『ふつうの褌』での参加だった。他の競技などでは前回優勝時の捻り鉢巻にスカジャンを模した法被を着用しているが今回の褌ショーでは『褌一丁』が規則なので、彼はそれらを脱いで壇上に上がっている。
「俺の褌は別段豪華なワケじゃないッスけど、褌の持つ、素材自体の味わいを現した逸品ッス!」
 六堂の言葉に見学席からは「おお‥‥」と感心するような声があちらこちらから聞こえていた。
「さぁ皆さんご一緒に‥‥ふんどしーちょー!!」
 六堂の声に合わせて見学席からも『ふんどしーちょ』という声が聞こえ、満足したように六堂は壇上から降りたのだった。
「六人目は沖縄からやって来た褌侍! 風閂!」
 マリからの紹介を受け、風閂は壇上へあがり、男らしく足を広げて仁王立ちをしている。ちなみに彼が使用しているのは先ほどマリから借りた『燃える褌』ではなく自前で用意してきたもので『美ら海』と青い文字で書かれていた。
 そして他に何かをするわけではなく、彼はただジッと立ったままアピールを終え、そのまま壇上から降りていく。
「他にアピールしなくて良かったの?」
 壇上から降りてきた後、マリが風閂に問いかけると「あれで男らしさを表現したからいいんだ」と言葉を返してきた。
「七人目は天道・大河! 猛虎のような彼が締める褌は!」
 ジャン、と効果音と共に現れた天道が身に着けていた褌は‥‥猛虎と虎縞のプリントがされた褌だった。これで金棒を持っていたら何処ぞの鬼さんである。
「強さと美しさを兼ね備える『虎』をイメージし、褌の基本である、日本古来の男らしさと衣装としての美しさを追求してみた!」
 大きな声で叫び、天道は自らが追求した理由などを述べ、そのまま男らしく壇上から降りていく――というより落ちていく。
「続いて八人目! 怪しさではナンバーワンかもしれないがすっちょ――もとい紅月・焔の登場!」
 マリが叫ぶと同時に現れたのはガスマスクを被り、褌一丁の紅月だった。
「くくく‥‥炎の煩悩力者、褌を締めて此処に参上!」
 ガスマスクをしているせいで表情こそ見えないけれど、きっと嬉々とした表情で話しているに違いない。
「何かいまいち表情わかんないけど、楽しそうなオーラが出てるっぽいし、いっか」
 マリは苦笑しながら呟き、壇上から誇らしげ(態度で判断しています)に降りていく紅月を見ていたのだった。
「九人目は庇護欲を掻き立てる23歳! 千祭・刃!」
 マリから紹介されて、壇上にあがり見学席に向けて丁寧に頭を下げた。彼が持参してきた褌は『日本を表す日の丸褌』で白い布地に赤い丸がペイントされているものだった。
「日本男児なら日の丸ですっ!」
 千祭は大きな声で主張をして手を腰に当て、堂々と日の丸を見せると「弟子よーっ! 俺がついてるぞーっ!」と大石が号泣しながら応援をしていた。
「ふんど師匠っ! 僕は褌魂を貫きましたよ!」
 壇上から叫びあう師弟たちにマリも何処で止めたらいいのか分からずに少しだけ困っている姿があった。
 しかし他のクイーンズ記者達に大石を捕えさせ、褌ショーも次へ進む事が出来た。
「続いては褌ショーのラスト! 祭参加は今回が初めて! リリー・W・オオトリ!」
 マリが紹介挨拶をしている間にリリーは鳳に褌を締めてもらっていた。
「えへへ、なんか恥ずかしいね」
 照れたように笑うリリーに「褌の締め方覚えてれば生きていけるのですよ」と嘘を教える。
 しかしリリーは疑う事もなく「ふにゃあ、そうなんだ」と驚いたように言葉を返した。
 そして壇上に上がっていき、照れたままアピールを始め、会場内にいる何人かの男性から「萌え」と叫ばれていた。
「それでは、見学席の皆さんのお手元に白い紙がありますので、ベストオブふんどしに相応しいと思った能力者の名前を書いてクイーンズ記者達に渡してくださいね」
 褌ショーが終わり、マリが見学席にいる一般人達に告げていく。
「それでは、少しの休憩を挟んだ後に『ふんどし痴気痴気マシン猛レース』を開始しますので見学をする方は移動をお願いしまーす」


〜ふんどし痴気痴気マシン猛レース! あひる VS 白鳥〜

 褌ショーが終わり、一時間ほどの休憩が終わった後『ふんどし痴気痴気マシン猛レース』の開始を告げるアナウンスが体育館内に響き渡った。
「それではメンバーを発表しまーす」
 白鳥チーム(本家・鳳)‥‥鳳、六堂、風閂、紅月、リリー
 あひるチーム(元祖・篠原)‥‥篠原、鳥飼、天道、千祭、大石

「尚、それぞれのチームの大将は鳳、篠原なので二人はアンカーをしてもらいます」
 オーガンはレースは見る方が楽しそうだと考え、レースは辞退した。そしてオーガンが抜けた穴埋めという役割で昼ご飯を食べている大石を強制連行して、あひるチームに参加させた。
 それぞれのチームの順番は以下のようになった。
 白鳥チーム・風閂、紅月、六堂、リリー、鳳。
 あひるチーム・天道、鳥飼、大石、千祭、篠原。
 乗り物は三輪車であり、二台の三輪車にそれぞれチームのシンボルである白鳥とあひるのハリボテを装着し、バトンは幼児が使う白鳥やあひるの首が生えた浮き輪を代用として使う事になっている。
 コースは三つの関門が存在しており、第一関門がスラロームでパイロンを抜けていくだけのもの、第二関門が一本橋(下は粉の海)、第三関門は体育館外に続くジャンプ台になっており、飛距離が足りない場合はカキ氷の海に落下するという仕組みになっている。
「それじゃ‥‥ふんどし痴気痴気マシン猛レース――よおいっ、スタート!」
 スタートの合図で風閂と天道は三輪車を死に物狂いで漕ぎ、先に進んだのはスピード重視で漕ぐ風閂で、天道はパイロンを蹴散らし暴走してタイムロスを受けてしまう。
 そして第二関門では先に到着している風閂が落ちないように猛ダッシュで一本道を行くが何とか追いついてきた天道の他参加者蹴り飛ばし攻撃により粉の海に風閂は落下して「ははははっ、お先に行くぜえええ!」と天道は一本道を三輪車で走り出すが、一本道のスタートから猛スピードで追いかけてくる風閂によって体当たりされ、結局二人とも粉の海に落ちて、第三関門まで到着するのに時間が掛かる事となった。
 そして最後の関門、第三関門では風閂は思いっきりジャンプして次の走者が待つ場所へと行こうとするが、逆に勢いが付きすぎてコースアウトしてしまう。
「俺が先に行くぜ! どりゃあああっ!」
 天道は叫びながらジャンプをするが、風閂と同じで勢いをつけすぎてコースアウトをしてしまう。第二走者が待つストレートで挽回と二人とも狙っていたのだが、風閂は蝋で滑りやすくなっていたせいか、くるくると廻って天道が先に第二走者へとバトンという名の浮き輪を繋いだ。
 天道からバトンを受け取った鳥飼は第一関門を華麗にクリアして、鳥飼が第一関門を突破する間際に風閂は第二走者である紅月にバトンを繋いだ。
 紅月は第二関門に進む鳥飼を追いかけて猛スピードで追いかけ、鳥飼が第二関門の半分を進んだ所で紅月も第二関門へと到着していた。
「早いなぁ、やっぱり一か八か‥‥」
 鳥飼は呟き、一か八かのスピード勝負に出て、第二関門クリアを目指すが僅かに車輪がズレたせいで粉の海へと落下してしまう。
 その間に紅月は地道に第二関門を進んでいき、落ちた鳥飼を追い越して、先に大三関門へと進み、鳥飼も粉の海から這い上がって第二関門を突破して、第三関門のジャンプ台で勢いをつけすぎない程度にジャンプを行う。
 第三関門は二人とも突破して、先に紅月が六堂へとバトンを繋ぎ、僅かに遅れて鳥飼も大石にバトンを繋いだのだった。
 六堂と大石は僅かに差があるものの第一関門をスピード重視で駆け抜け、第二関門はお互いに細かい作業は苦手なのか5回も6回も一本道から落ちて、全身が真っ白である。
 三十分程度をかけて第二関門を抜けた二人は第三関門へと移動して、それぞれジャンプを行う。
 六堂は猛ダッシュで駆け抜け大ジャンプを行い、落ちるか落ちないか微妙な位置での着地を成功させて見ている人間達を沸きあがらせた。
 そして大石は「おおおおおっ」と何度もカキ氷の海へと落ちて2回目でジャンプを成功させ、六堂はリリーに、大石は千祭にバトンを繋いだのだった。
「ふんど弟子! 逆転してくれえええっ」
「任せてください、ふんど師匠!」
 大石は千祭にバトンを外され、リリーは「わー、何かドキドキするねぇ」と呟きながら六堂からバトンを外し、三輪車を漕ぎ始めたのだった。
 第一関門の最初はリリーの方が先に進んでいたのだが、やはり男女の差が出てしまったのだろうか、徐々に千祭が追いつき、第一関門を抜ける頃には千祭の方が追い抜いてしまう。
「ふにゃあ‥‥げふげふ」
 第二関門の所まで来た所で橋の高さにリリーは驚いて三輪車を一旦止める。そして千祭はゆっくりと慎重に橋を渡り、第三関門手前まで橋を渡りきった。
「よ、よし‥‥」
 リリーも意を決したように橋を渡り始めるが、やはり高さに驚いているのか何度も転落して、4回目で漸く第三関門までやってくる事が出来た。
 その頃にはもう千祭は第三関門を抜けて次の走者である篠原にバトンを繋いでいた。
「ふにゃああっ‥‥」
 篠原にバトンを繋いだ所でリリーの大きな声が響き渡り、何事かと能力者達が視線を向けるとストレートで千祭が散布したオイルを塗ったゴミ袋で滑り、くるくると回転して目を回していた。
 それでも何とかアンカーである鳳にバトンを繋ぎ、褌本家VS褌元祖の長年に渡る因縁の対決が始まったのだった。

※注意※ 特に長い年月をかけているわけでも、因縁があるわけでもありません。

「ははははっ、褌対決はうちの勝ちやね!」
 三輪車を足がつってしまうのではないかという程に漕ぎ、第一関門で並べられたパイロンに突撃しながら真っ直ぐに進んでいく。その姿はさながらバーゲンに向かうおばちゃんのようだ。
 しかし此処で負けていないのが本家である鳳だった。パイロンを並べようとしている人間ごと押しのけながら第一関門を突破する。
 その姿はさながら「その肉はあたしのよ!」と叫ぶおばちゃんのようだ。
 篠原の勢いは第二関門になっても止まらず、物凄い勢いで一本道を走りぬけようとするが「あ!」と後ろから鳳が叫び、何事? と後ろを篠原が向いた瞬間「粉ビーム」と粉の海の一部であった粉を篠原に向けて発射する。ご丁寧に水鉄砲に入れて水に溶かしてある為にべちゃべちゃとして精神的ダメージを篠原は負った。
「はっはっは、お先に行くぜよー」
 既に何語か分からない鳳の言葉に転落した篠原はガシっと一本道を掴み、鳳の足首を掴んで同じように転落させる。
 真っ白な姿になって無表情でそれらの行動を行う篠原は、さながら何処ぞの怪獣のようだ。
 結局、第三関門まで同着となり「ワシの褌魂見せたるわーい!」と鳳は先にジャンプ台からジャンプを行い、それを追うように篠原もジャンプを行う。
 しかし互いに転落してカキ氷の海へと落下していく。
 その後、最後の勝負はてストレートにかけられ「ぬおおおー、フンドブースト!」と鳳が叫びながら三輪車を漕ぐ、そして篠原も追うように三輪車を漕ぎ、最後の踏ん張りで篠原が鳳を追い越した所で事件は起きた。
「篠原――っ、俺の胸に飛び込んでおいでえええっ!」
 なんとゴール地点で篠原と同じチームの大石が両手を広げて待ち構えていた。
「ひいいっ」
 咄嗟にブレーキをかけてしまった篠原は後ろから走ってくる鳳に追い越されて、白鳥チームの勝利で終わったのだった‥‥。

 二人の因縁の対決は突如現れた褌男によってジャマをされ、終いとなったのだった。
「うおいっ! 何であんな所で邪魔するんだよ」
 天道が呆れたように大石に話しかけると「やる気を出させようかと思ってさぁ」と言葉を返してきた。
 ゴール地点で大石が待ち構えていたら、誰でもやる気をなくすだろう。
「残念でしたね、でも凄く面白かったですよ」
 夜坂があひるチームの面々に話しかけ、外へと出て行く。レースが終わると同時に外へと行ってしまった番を追いかけて、夜坂も外に出たのだ。
「風邪、引かれますよ」
 番を見つけた夜坂はコートを番に羽織らせ、番は驚いた表情をしつつも夜坂を見てコートをギュッと握り締める。
「そうだ、折角ですから‥‥」
 夜坂が番の顔に雪玉を投げ、投げられた番は冷たさと驚きで目を丸くしていた。
「雪合戦ですよ」
 夜坂が雪合戦の説明を行っていると、レースで白熱した面々が外へと出てきて、二人が雪合戦をしているのを見て、能力者達も雪合戦を始めた。
「うりゃっ」
 篠原が目立つ頭をしている鳥飼に雪玉を投げつけて、鳥飼も負けじと雪玉を投げて攻撃をする。
「雪合戦か‥‥去年やったばっかだぜぃ」
 オーガンは呟き、雪玉を何個も作って連続で投げつける。
 そして夜坂と番は能力者達の雪合戦を眺めて巻き込まれないようにして、笑っている。
「ぶはははははっ」
 攻撃の標的になった鳳は連続で雪玉が直撃して、後ろに倒れてしまう。
「うりゃあっ、行くッスよ!」
 どどどど、と四連続で雪玉を投げるが風閂も同じく四連続で雪玉を投げて攻撃をし返す。
 しかし、別方向から『どす』と音のする雪玉が投げ込まれ六堂と風閂は目を瞬かせながらその雪玉を見る。
「ちょ、これ誰ッスか! 危ないッスよ! 石! 石が入ってるッス!」
 六堂が叫ぶと「‥‥ちっ」と木の影から見ているマリの姿があった。どうやら主催者なのに誰も構ってくれないのが不服らしい。
 そして少し離れた場所では「この、この、このこの!」と天道が大石(限定)に雪玉を投げつけている。
「俺もまけないぞおおおっ!」
 大石の雪玉が天道の頬にヒットして「ぐはぁっ」と天道は大げさに倒れていく。
「へへ‥‥お前の雪玉‥‥効いたぜ‥‥ぐふっ」
 倒れる素振を見せるが、実際に彼にダメージを与えているのは雪玉ではなくこの寒さの中で『褌一丁』でいるという事なのかもしれない。
 だが雪合戦に参加せずに雪像を作っている紅月がいた。その出来栄えは見事なもので「くくく‥‥題して銀白のヴィーナスだ」と紅月は勝ち誇ったように他の能力者達に自慢をするが「うりゃ、マリパンチ」と石の詰められた雪玉が『銀白のヴィーナス』を襲い、首がもげてある意味ホラーな雪像が出来上がってしまった。
「僕はふんど師匠を作りました!」
 千祭は誇らしげにリアルに作られた大石雪像を見せるが「うりゃ、大河タックル」と天道が体当たりを食らわして大石雪像は無残な姿へと変化した。
 そしてリリーと篠原は雪像の中に鳳を埋め込み、生き神IN雪像ばあじょんにしてみたらしい。
「ふーはーはー、ふんどしーちょ神像であるぞー」
 身体を張った芸ではあるが、鳳は三秒後に現実を思い知らされる。
「うそっ、むっちゃ寒いし! タスケテー!」
「あ〜ん? 聞こえんなぁ」
 篠原も笑いながら鳳を見るが、見る見る顔が青くなっていく鳳を見て慌てて雪像から取り出したのだった。
 雪合戦が終わった後、能力者達は体育館に入った。既に一般客たちは帰っており、能力者たちはクイーンズ記者達が用意した食べ物や飲み物で冷えた身体を暖めたのだった。
 そして、最後には『ふんどし音頭』を皆で歌いつつ『第二回 ふんどしーちょ祭』を閉会したのだった。


 つらい時の合言葉(ふんどしーちょ)
 つらくても笑いが出てくるから、さぁご一緒に(ふんどしーちょ)
 楽しい時の合言葉(ふんどしーちょ)
 楽しさ倍増させる為、さぁご一緒に(ふんどしーちょ)
 わっしょいわっしょい、神輿を担いで
 わっしょいわっしょい、褌なびかせて
 ふんどしふんどし ふんどしーちょ(ふんどしーちょ)
 現れる生き神に祈りを捧げて(ふんどし捧げて)
 皆で楽しく、ふんどしーちょ(ふんどしーちょ)
 第三回で会おうぜ☆(ふんどしーちょ、ふんどしーちょ)


 歌が終わり、リリーは鳳を引きずり、他の能力者達は引きずられる鳳を見て笑いながら、それぞれ帰路についたのだった‥‥。


END