タイトル:キアラ―儚く強い少女マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/05/03 02:14

●オープニング本文


誰かを守る為とか、そんな胡散臭い正義を振りかざすのはやめてよね。

誰だって『自分の命』だけが一番大切なんだからさ。

※※※

『キアラ』

その少女は過去に二度ほど能力者達に姿を見せていた。

キメラに守られ、この世に生きる全てを異常なほどに憎む。

「いったい、何があったのかしらね‥‥」

女性能力者は過去の報告書を見ながら小さく呟いた。

「世界が平和になるためには皆が、人間が死ねばいいとか言ってるらしいな。ある意味、宗教団体の教祖様になれそうだ」

くっ、と笑いを零しながら男性能力者が呟くと「でもこの子、まだ小さいじゃないの」と言葉を返した。

「まだ、こんなに小さいのに‥‥何でそこまで憎むのかしらね」

女性能力者がポツリと呟くと「お前、知らないのか?」と言葉を返す。

「え?」

「最初『吸血鬼』に襲われた街、あそこにキアラは住んでたらしいんだけどさ、住人全てから生贄のようにキメラに差し出されたらしいぜ」

生贄、差し出された――という穏やかではない言葉に女性能力者は眉を顰めた。

「吸血鬼の前に現れたキメラがいたらしいんだけど、それに差し出された――って噂を聞いた事がある」

「そのときは‥‥キアラは無事だったの?」

「あぁ、何か通りがかりの能力者が倒したって話を聞いたな」

「お二人さん、仲いいね♪ キアラの話してたケド‥‥今回もどうやらその子絡みみたいだよ」

依頼の内容を書いた紙を見せながら別の能力者が現れたのだった。


●参加者一覧

熊谷真帆(ga3826
16歳・♀・FT
MAKOTO(ga4693
20歳・♀・AA
レールズ(ga5293
22歳・♂・AA
レヴィア ストレイカー(ga5340
18歳・♀・JG
ソウ・ジヒョウ(ga5970
27歳・♂・SN
神無 戒路(ga6003
21歳・♂・SN
サイオンジ・タケル(ga8193
26歳・♂・DF
榊 紫苑(ga8258
28歳・♂・DF

●リプレイ本文

「彼女の言う平和‥‥よく分かります、分かりますがね‥‥」
 俯きながら呟くのはレールズ(ga5293)だった。
「‥‥今回は廃墟、不気味な場所ね‥‥」
 レヴィア ストレイカー(ga5340)が周りを見渡しながらため息混じりに呟く。今回は蜂型のキメラという事で解毒薬かワクチンを申請したのだが、確実に毒を持っているという確証がない為に却下されてしまった。
「それにしても、ほぉんと頭の悪い子なのね。同じような事ばかり」
 熊谷真帆(ga3826)が盛大なため息と共に呟いた。
「でも、一般人じゃなくて能力者を狙っているようで何よりだね。被害が確実に少なくなるし」
 MAKOTO(ga4693)が言葉を返すと「確かにな」とソウ・ジヒョウ(ga5970)が言葉を返した。
「ああいう奴には無理に説得して言葉で伝えるより、見る事の方が大事だと思う」
 ソウは『超機械一号』を抱えながら「普段はこんなものを持ち歩かないんだがな」と小さく呟いた。
「止めてみせる‥‥どんな結果になろうとも‥‥」
 神無 戒路(ga6003)がポツリと話した。いくらバグア派に属しているとは言え、キアラは『ただの普通の女の子』なのだ。
「バグア派とはいえ、人間と戦う事になるかもしれないのか‥‥」
 サイオンジ・タケル(ga8193)は『ワイズマンクロック』を持ちながらため息を吐く。
「友人から大まかな事は聞いてますが‥‥色々な意味で厄介みたいですね」
 どっちにしろ苦手な属性なんですけど、榊 紫苑(ga8258)がため息混じりに呟く。彼は女性アレルギーという事で、キメラとの闘いよりキアラとの接し方に頭を悩ませていた。
「どちらにせよ、キアラ自身も平和を乱している一人だと理解してもらいたいものだな」
 神無は呟き、能力者たちは蜂型キメラ退治とキアラ捕獲のために動き出したのだった。


〜キメラ退治〜

 今回、能力者達がたてた作戦は一つの廃屋に囮役が蜂型キメラを誘導して、待ち伏せ班が総攻撃をかける――簡単に説明してしまえば簡単なモノだが、実際に行うのは難しいことだ。
 囮役はレールズと神無の二人で行う事になり、二人は誘導する廃屋を地図で確認するとキメラ捜索のために走り出したのだった。

〜捜索〜
「すぐに誘導出来るように、きちんと道を把握しておかないと‥‥あぁ、あと不意打ちを受けないように周囲に気も配らなくては‥‥」
 呟きながらレールズは自分達が行うことを確認していた。
「あとは‥‥キアラの捕獲も出来れば、キアラの狙いも分かるかもしれないんだが‥‥」
 神無がポツリと呟く――と同時に『ぶぅん』という虫特有の音が耳に入ってきて、二人は勢いよく後ろを振り向く。
「‥‥これはまた‥‥」
 最初に呟いたのはレールズだった。
「結構な数、だな」
 続いて神無も呟き、レールズが通信機を使って待ち伏せ班に連絡をいれて二人は誘導地点へと向かい始めた。
「‥‥‥‥足掻くね、大人しく死んじゃえばいいのにさ」
 走り去っていく二人を見ながら、可笑しそうに笑う少女――キアラの姿があった。

〜戦闘〜

「まずはキアラを探す前に――こいつらをフルボッコだね!」
 MAKOTOは笑いながら『フロスティア』を振り回し、蜂型キメラに向かって攻撃をしていく。大きさは普通の蜂程度で、攻撃を当てることが多少難しいがキアラと話をするためにもキメラを倒すしかない。
「相手が相手だけに少々不安だが‥‥」
 ソウは呟きながら『超機械一号』の範囲攻撃で蜂型キメラを攻撃していく。質より量――という事もあるのか蜂型キメラ自体の強さはたいしたものではなく、ほとんどの蜂型キメラはソウの攻撃で倒されたのだが、運よくそれを逃れた蜂型キメラが能力者達に襲い掛かる。
「巣、のようなものは持たないようだな。やはり普通の蜂とは違うのか‥‥」
 神無が『ショットガン』で攻撃を行いながら小さく呟く。
「賢者の時計に、狂いは生じない‥‥」
 再び群れとなりつつある蜂型キメラに『ワイズマンクロック』で攻撃を仕掛けた。逃げ惑う蜂型キメラだったが、追尾機能がある為にサイオンジの攻撃からは逃げられない。
「‥‥毒は、ないだろうな?」
 榊が呟きながら、散り散りになっている蜂型キメラを正確に狙い撃つ。
「後ろ! 伏せてください!」
 レヴィアが突然、廃屋の入り口付近に立っていたMAKOTOに向けて叫び。MAKOTOは言われると同時に伏せ、背後から近寄っていた蜂型キメラをレヴィアが『アサルトライフル』で撃ち倒した。
 その後、能力者達は地道な戦闘を行い蜂型キメラを打ち倒したのだった。
 任務を成功させるための『蜂型キメラ退治』は終わった。
 しかし、残る問題は――。


〜キアラ〜

「近寄らないで」
 蜂型キメラを倒した後、能力者達はキアラ捜索を行うために廃墟の中を歩き回った。
 そして、枯れた木が立つ小高い丘にキアラが立っているのを見つけ、能力者達が駆け寄るとしたのだが「近寄らないで」といわれ、能力者達はぴたりと足を止める。
「やっぱり‥‥しぶといなぁ。世界平和を謳う能力者なんでしょ? さっさと死んじゃえ」
 キアラは笑顔を向けながら能力者に言葉を投げかけた。しかし、表情は確かに笑っているのだが、目は笑っていなく、まるで沈んだ月のように暗く重いものだった。
「互いに潰しあい、貴女も潰れるといいわ。滅ぼしたいのなら皆滅ぼせば? 平和になるよ‥‥一時はね!」
 熊谷がきつい口調で言葉を投げかけると「お姉さん、頭悪いなぁ」と小馬鹿にしたようにキアラが言葉を返した。
「争う相手がいないのに、一時も何もないでしょ」
「争いはなくならないわ、最新の学説ではこの世は無から生じたといわれているしね」
 熊谷の言葉に「ふ」とキアラは鼻で笑う。
「一体何がキアラをそんなにしてしまったの?」
 MAKOTOが問いかけると「知ってるでしょ? 有名って聞いたもの」とキアラは過去の事件の事を呟いた。
「街の人に生贄のように差し出された、それだけじゃ不満?」
 キアラの言葉に能力者達は違和感を感じる。それだけじゃ不満? と言っている以上、他に何か理由があるような言い方だからだ。
「あの時のキメラ、何度も街に来てたんだ。そのたびにあいつらは生贄みたいに人を差し出したよ。最初はお母さん、次は妹、そして弟、最後に私――これでも私は人を信じろって言うの?」
 自嘲気味に呟きながらキアラは笑って答える。
「今、世界中の人々が家族や友、恋人、或いは名前も知らない誰かのために戦っているんです! 貴女を助けた能力者のように!」
 レールズが叫ぶように言うと「じゃああたしの家族も助けてよ!」とキアラが反論を返してきた。
「その名前も知らない人の中に、あたしの家族は入ってなかった? 綺麗事ばかり言わないで!」
「キアラ‥‥心の闇は深いという事ね」
 レヴィアが小さく呟く。
「いくら人間を否定してもオマエもその人間であることには変わりない」
 神無が低い声で呟くと「分かってるよ」とキアラは言葉を返してくる。
「少なくとも『誰かのため』なんて胡散臭い正義を振り回したりしない」
 キアラの言葉にサイオンジが「俺は」と話しかける。
「俺は誰かの為に、と言って戦うつもりはない。俺は俺の記憶のために戦う。キミは何故戦う? 憎しみだけで戦うというなら、何一つ答えなど見つからないぞ」
 サイオンジの言葉に「あたしも同じだよ」と言葉を返してくる。
「あたしはあたしの為に戦う。答えなんていらない。あたしの答えは一つだけ。みんな死んじゃえ」
「裏切られた、壊れた心は、修復に時間ですか‥‥? 後味の悪い方向に行かないといいんですが‥‥」
 榊がポツリと呟く。
「大切なのは自分の世界、その世界を自分の望む形にするためなら、命なんて二の次に出来る――そういう事言う人は嫌い?」
 MAKOTOがポツリと問いかけると「別に」とキアラは答えた。
「‥‥能力者を狙うのは結構! 次からはお姉さん達を狙ってきなさい」
 MAKOTOは『こねこのぬいぐるみ』に自分のアドレスを書いた紙を括り付けてキアラに向けて投げた。
「‥‥何これ」
 こねこのぬいぐるみを拾い上げた時、キアラは怪訝そうに呟く。
「いいから貰ってなさい」
「一緒に来る気は――ないの?」
 レヴィアが問いかけると「‥‥目的が違うのに、一緒に行動できないでしょ」と言って小高い丘の後ろから現れたキメラに乗って何処かへと行ってしまった。
「‥‥また、逃げられた、か」
 ソウが空を見上げながらポツリと呟く。
「でも、今までより何かが違う感じになってきているんじゃないかな――そう信じたいよ」
 MAKOTOが呟き、能力者達は今回の事件の報告をするために本部へと帰還していったのだった‥‥。

END