タイトル:後悔、懺悔の夜マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/11/27 23:37

●オープニング本文


この戦いがいつまで続くのか――‥‥。

終わらせる為に、どれだけの血が流れなければいけないのか‥‥。

考え始めたらキリがない。

※※※

「どのくらいだろうね」

本部にて依頼を探している時に、男性能力者がため息混じりに呟く。

「何が?」

一緒に任務を行おうとしていた女性能力者が訝しげな視線を向けながら男性能力者に言葉を返す。

「いんや、あとどれくらいで戦いが当たり前の時代が終わるのかなぁーって思ってさ」

男性能力者の言葉に「愚問ね、終わるまで続くのよ」と当たり前の言葉を返した。

「‥‥あと、どのくらい人が死ななきゃならないんだろうな」

はぁ、と先ほどより大きなため息を吐きながら男性能力者が呟く。

そんな男性能力者の様子を見て『いつもと違う』と感じたのか、女性能力者は視線を男性能力者へと移して「何があったわけ?」と話しかけた。

「‥‥‥‥子供」

ポツリと小さな声で男性能力者が言葉を返し「子供?」と女性能力者は首を傾げながら呟く。

「子供‥‥正確には子供型のキメラだった。この手で殺――退治した。だが、正直言って参ったよ。死ぬ間際に本物の子供みたいに涙を流したんだから」

本当にヒトゴロシをした気分だ、と男性能力者は震える手を強く握り締めながら呟く。

「人型が多かったりするものね‥‥気持ちは分かるわ。どこか感覚がおかしくなるような気分に陥るから」

女性能力者も経験があるのだろう、少し表情を暗くしながら呟く。

「でも残念ね。次の仕事も『子供』よ」

女性能力者の言葉に「‥‥わり、俺はたぶん無理」と男性能力者は言葉を返した。

「足手まといになりたくないから、他の能力者に任せるよ」

だらしないわね、女性能力者はため息混じりに呟きながら依頼内容に目を落としたのだった。

●参加者一覧

高村・綺羅(ga2052
18歳・♀・GP
西島 百白(ga2123
18歳・♂・PN
結城加依理(ga9556
22歳・♂・SN
飯塚・聖菜(gb0289
25歳・♀・DF
十六夜 紫月(gb2187
18歳・♀・GP
リヒト・ロメリア(gb3852
13歳・♀・CA

●リプレイ本文

〜少女型キメラを退治する能力者達〜

「段々キメラが街に徘徊するようになってきた気がする」
 何だか嫌な感じ、と言葉を付け足しながら高村・綺羅(ga2052)が資料を見て呟いた。
 今回の能力者達に課せられた任務は、とある街に現れた少女型キメラの退治というものだった。
「人型の‥‥キメラ、か‥‥」
 結城加依理(ga9556)が資料に目を落としながら小さく呟く。彼は『人型キメラ』との戦闘は初めてな為に多少の戸惑いが心の中にあった。
 その戸惑いは『キメラ』との戦いだからではなく『少女型』という事に対してだった。他の能力者達に心配をかけないように表面には出さないけれど、彼の心は極度の緊張と恐怖感が渦巻いていた。
「子供の姿だろうとキメラはキメラ。むしろ身体の構造が人間に近い分、私にとっては殺り易い」
 十六夜 紫月(gb2187)が短く呟く。彼女自身は古流体術を伝える家系に生まれた為、相手の何処を如何すれば息絶えるという方法を知っている。
「そういえば、これは人型のキメラを倒せない能力者が請け負う筈だった仕事なのよね」
 十六夜が呟くと「えぇ、確か‥‥」と結城が言葉を返す。
「人型のキメラが倒せない能力者がいるのなら倒せる人が倒せばいい。子供型キメラを屠る事に罪悪感を覚える人がいるのならば、覚えない人が屠ればいい」
 元々、私の技はその為にあったのだから――言葉を付け足しながら呟く十六夜の言葉に迷いは微塵も感じられない。
「そうですね‥‥迷えば隙が出来る、それは死に繋がる――誰かがやらなくちゃ、誰かが傷つくから」
 リヒト・ロメリア(gb3852)が自身の武器である『ハンドガン』を握り締めながら、まるで自分に言い聞かせるように呟く。
 彼女の言った言葉、頭では理解している事であっても、いざ武器を手に取ると、敵を前にすると躊躇してしまう。戦いに慣れていないのならば尚更だ。
「誰かがやらなくちゃ‥‥」
 リヒトは目を伏せて再び呟く。彼女は今までの生半可な気持ちを捨て、決意を固める為に今回の任務に参加したのだとか。
「さて‥‥面倒だが‥‥始めるか」
 西島 百白(ga2123)が呟き、能力者達は『少女型キメラ』の出現によって苦しんでいる街へと出発し始めたのだった。


〜惨劇の街、赤き模様の傘を持つ少女〜

 今回の能力者達は、班を分ける事をせずにそれぞれが各自で行動する事になっていた。住人避難も出来ていない状況だから、手分けをして避難を促す必要があるからだ。
「‥‥それじゃ‥‥連絡は『トランシーバー』で‥‥」
 西島が呟き、最初に離れていく。そして続くように残りの能力者達もキメラ捜索、そして住人の避難を促しに向かい始めた。

※高村・綺羅※
「街を歩いていれば見つかるのかな?」
 高村は資料のコピーを見ながら小さく呟く。確かに街の中に『キメラがいる』とは書かれているものの、明確な場所が記されていない。
 つまり常に動き回っているという事になるのだろう。
「あれ、姉ちゃん。誰? この街の人じゃないだろ」
 捜索をしている途中で少年二人に出会って話しかけられる。
「うん、綺羅はキメラ退治をお願いされた能力者だよ」
 そこまで呟き、高村は少年達が何かキメラについて知らないかと考えて「キメラが何処にいるとか知らない?」と少年達に言葉を返した。
「キメラ、あの女の子のことか‥‥お前ン所の父ちゃんがケガさせられたよな」
 一人の少年がもう一人の少年に話しかけると「‥‥うん」と俯きながら少年は呟く。
「キメラが何処にいるかはわかんないけど、父ちゃんの仇を取って‥‥父ちゃんの腕、動かなくなっちゃったんだよ」
 少年が泣きながら高村に縋るように呟くと「うん、綺羅達に任せて。キミ達は避難してて。危ないから」と高村は言葉を返し、キメラ捜索を続行した。

※西島 百白※
「子供‥‥か‥‥」
 捜索対象のキメラが少女型である事を考え、西島は小さくため息混じりに呟いた。やはり彼も退治対象が『子供』という事にやりにくさを覚えるのだろうか?
「‥‥‥‥ん?」
 ぴたりと西島は足を止めて周りを見渡す。考えながら歩いていたせいだろうか、いつの間にか町外れまで来ていたらしく、来た道を戻ろうと踵を返すが‥‥。
「‥‥‥‥んん?」
 道が二つに分かれており、どちらの道から来たのか分からなくなってしまっていた。どちらに行くべきかと悩んでいる時に「どうしたんだい、さっきからうろうろと」と中年女性が訝しげな目で西島に問いかけてきた。
「‥‥怪しいものじゃ‥‥キメラ退治にきた‥‥能力者だ‥‥」
 西島がポツリと言葉を返すと「あぁ、あんたもかい。さっきもあっちで見かけたからね」と中年女性は言葉を返してきた。
「‥‥キメラとの戦闘があるから‥‥避難していた方が‥‥いい」
 西島の言葉に「今から避難する所だったんだよ」と中年女性は笑いながら『街の皆が集まる避難所』へと歩いていった。
 西島は中年女性が歩いていくのを見て「‥‥あっちか‥‥」と先ほどの中年女性が指差した方向へと歩いていったのだった。

※結城加依理※
「現在キメラを捜索中で、見つけ次第戦闘に入ります。だから避難をお願いしますね」
 結城はキメラ捜索を行いながら、住人達と出会うたびに同じ事を言って避難を促していた。
「ほとんどの住人が避難を始めたらしいし‥‥大丈夫かな」
 結城が独り言のように呟き、ふと『キメラとの戦闘』という言葉が頭の中に浮かぶ。
 それと同時に気にしないようにしていた『戸惑い』が沸々と沸きあがってくる。
「大丈夫――――え」
 自分に言い聞かせようと呟いた時だった、資料にある情報と酷似した少女が結城を見て、ニタリと気味の悪い笑みを浮かべている。
「あれが人型キメラ‥‥」
 結城はポツリと呟くと『トランシーバー』で他の能力者達に連絡を行い、自分一人ではどうにもならないと思ったのか、その場を離れる事にしたのだった。

※十六夜 紫月※
「中々都合よく現れてはくれないものね」
 十六夜はため息混じりに呟き、出会う住人達に「危ないから避難してちょうだいね」と言葉を投げかける。
 その時に結城から「キメラを発見しました」という連絡を受け、十六夜は場所を聞くと、幸いにも自分から近い位置だった為にすぐに走って向かう。
 結城からの連絡を受けた場所に、結城自身はいなく、少女キメラも誰かを探すようにゆっくりと歩いている姿が十六夜の視界に入ってきた。
「まったく‥‥銃はあまり好きじゃないんだけど‥‥」
 十六夜は小銃『S−01』を構えながらため息混じりに呟き、少女キメラに向けて発砲する。
 十六夜の放った弾丸は少女キメラの足を掠めて、血がどろりと流れる。少女キメラはそれを見て『ニィ』と不気味に笑い、持っていた傘を振りながら十六夜の方へゆっくり、ゆっくりと進んでいった。
「これから誘導に入るわ、空き地に誘導するから――皆はそっちに集まっていてね」
 十六夜は手短に呟くと『トランシーバー』を切り、少女キメラと向き合ったのだった。

※リヒト・ロメリア※
「流石に‥‥人の多い所にはまだいないのかな‥‥」
 リヒトは人気の多い場所を歩きながら小さく呟く。
「キメラが潜んでいるから気をつけてください。特徴は女の子の姿で赤い傘を持っているようですから‥‥なるべく避難をお願いします」
 リヒトの言葉に住人達は慌てて避難を始めるもの、冷静に避難を始めるもの、様々だった。
「お姉ちゃんは避難しないの?」
 小さな男の子がリヒトに問いかけると「ボクはこれからキメラ退治だから」と言葉を返す。傍から見るとリヒトの姿は一般人のそれと変わらないものだったが、コートの内側には武器や通信機などが忍ばせてある。
「大丈夫‥‥?」
「大丈夫、ボクらはその為に来たから」
 だから逃げててね、とリヒトは男の子に言葉を返す。それと同時に十六夜からの通信が入り、リヒトを含める全ての能力者達が少女キメラの誘導地点である空き地へと急いだのだった。


〜戦闘開始・子供特有の残忍さを持つ少女キメラ〜

「まずは‥‥その邪魔な武器を綺羅が破壊させてもらうよ」
 高村は呟きながら『機械剣α』を構える。そして少女キメラの傘攻撃を持ち前の俊敏さで回避して、カウンターをするかのように『機械剣α』で攻撃を行う。
 高村の考えとしては少女キメラが武器として扱う『傘』はキメラと一体化している可能性もあると考えていた、それを確かめる為にも『傘』への攻撃を試してみたかったのだ。
 少女キメラが持つ傘は決して普通の傘とは言えない強化されたものだったが、高村に壊せないものではなかった。高村の攻撃を受けて傘は真っ二つになり、からからと寂しげな音をさせながら転がっていく。
「赤い色‥‥」
 転がっていく傘を見ながら西島が歯軋りをしながら低く、そして冷たく呟く。西島が『赤』に異常なまでに反応をするのは、彼の幼い頃の経験が原因だった。恐らく『赤』を持つキメラを見る事で、普段は滅多に感情を出さない彼も表面に出てしまうのだろう。
「ガキだろうと‥‥容赦は‥‥しない‥‥」
 西島は呟きながら『グラファイトソード』を振り上げて少女キメラに攻撃を行う。
 しかし西島の攻撃を避ける事もせずに少女キメラは腕を斬り落とさせた後、少しだけ怯んだ西島に蹴りで攻撃を行った。
 そして続いて残った腕で攻撃を行おうとしたのだが小銃『フリージア』にて結城が少女キメラの腕を狙って攻撃を行い、少女キメラの攻撃が西島に当たる事はなかった。
「‥‥あんなモノが‥‥妹な筈がない‥‥」
 頭を振りながら結城が呟く。最初に結城が少女キメラを見た時、自分の妹とダブって見える部分があり、攻撃を躊躇った。
 しかし今は躊躇っていては仲間の危機になる。覚悟を決めたように結城は目を見開き『隠密潜行』を使用して、少女キメラの死角へ移動を行う。
「待たせたわね、そろそろ私も本気でやらせてもらうわ」
 十六夜は小銃『S−01』から『月詠』へと武器を変更して『瞬即撃』と『急所突き』を使用して攻撃を行う。十六夜自身は少女キメラの首を狙ったのだが、少女キメラは少し横にズレ、斬り落とさせた腕を拾って、それを盾代わりに使用した。あくまで『盾代わり』なので盾としての役目は半分も出なかったが、致命傷を避けるには十分なものだった。
「あんまり動くと‥‥苦しいだけだよ」
 リヒトは呟きながら『ハンドガン』で少女キメラの足を撃ちぬく。そして『アーミーナイフ』を投げて、少女キメラが怯んだ隙に『ハンドガン』のリロードを行い『強弾撃』と『急所突き』を使用して攻撃を行う。
「少しでも多くの人が傷つかなくてもいいように‥‥ボクは傷つけるよ、少しでも多くの敵を」
 リヒトは迷い無き言葉を呟くが、生憎少女キメラは彼女の言葉を聞くどころではない。
「こんな人を苦しめるキメラを作って‥‥どれだけの能力者が心を痛めていると‥‥」
 呟きながら結城は『貫通弾』を装填した『【OR】回転拳銃 エレファント』で攻撃を仕掛けた。それと同時に少女キメラが逃げる可能性を少しでも減らすために西島が『ソニックブーム』を使用して攻撃を行っていた。
「痛いのか‥‥? ‥‥怖いのか‥‥?」
 生理的な涙だろう、少女キメラの頬を濡らすのは人間が『嬉しい時』や『悲しい時』に流すものと酷似したものだった。
「‥‥化け物風情が‥‥感情を持つな‥‥!」
 西島は呟くと同時に『紅蓮衝撃』を使用して攻撃を行い、少女キメラはずるりと地面に倒れる。
「‥‥綺羅には通用しないよ、残念だったね」
 最後の力だろう、少女キメラは高村の足首を弱々しく握るが、それを高村は払い『機械剣α』で突き刺すように攻撃を行った。
 能力者達の攻撃を受けて、少女キメラはぱたりと手を地面に落とし、無事に任務を遂行する事が出来たのだった。
「感情など‥‥不要だ‥‥邪魔な‥‥だけだ‥‥」
 西島が呟いた後、雄たけびのような声を張り上げた。


〜少女キメラを倒し、バグアの思惑〜

「天使や子供‥‥敵も心理作戦に出始めてきたのかな?」
 戦闘が終わった後に高村が小さく呟く。
 そして結城は倒れた少女キメラに近寄り、完全に沈黙しているかを確認した後に見開かれたままの目をそっと閉じる。
「やっぱり最初に言ったとおりね、出来る人が任務をすればいい――その再確認が出来たわ」
 十六夜は『月詠』の血払いを行いながら呟く。
「ボクは迷わない、この力が役に立つなら、それで誰かが助かるなら‥‥血に塗れてもいいって決めたから」
 リヒトは目を伏せながら誰に言うでもなく、自分自身に決意を言い聞かせるように呟いた。
 その後、能力者達は住人達に任務完了の報告を行い、同じ報告を行う為に本部へと帰還していったのだった。


END