タイトル:初心者実戦演習マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2007/11/08 01:15

●オープニング本文


今回はキメラではなく、先輩能力者たちが相手! さぁ、どう戦う!?

※※※

※初心者実戦演習・参加者募集※

今回の演習は能力者になったばかりの人達に実戦経験を積んでもらうためのものです。

今回の舞台となる場所は森。

昼間でも薄気味悪い暗さの森ですが、今回の演習時間は夜にします。

しかし、実戦経験といってもキメラが相手ではありません。

先輩能力者の協力を得る事ができ、その先輩能力者たちと戦ってもらう事になります。

もちろん、相手が死ぬまで――とは言いません。

(というか、相手を死なせては絶対にいけません)

今回の協力者は『スナイパー2人』『グラップラー1人』『ファイター2人』の合計5名です。

勝敗は先輩能力者・そして参加される方に『赤いボール』を一つ配布します。

相手のを奪ったら勝ち、奪われたら負けとなります。

それでは、皆様ふるってご参加ください。


※※※

「初心者実戦演習‥‥ねえ?」

「どうする?」

張り紙を見て、様々な能力者たちが、参加するか、しないかで話していた。

●参加者一覧

エクセレント秋那(ga0027
23歳・♀・GP
水上・未早(ga0049
20歳・♀・JG
榊 兵衛(ga0388
31歳・♂・PN
櫻塚・弥生(ga2000
16歳・♀・GP
エリザベス・シモンズ(ga2979
16歳・♀・SN
春風霧亥(ga3077
24歳・♂・ER
蒼仙(ga3644
27歳・♂・FT
緋霧 絢(ga3668
19歳・♀・SN

●リプレイ本文

「確かにあたしらは傭兵としては新人だ。ここは一つ先輩方の胸を借りるかねえ」
 エクセレント秋那(ga0027)は不敵に笑みながら呟く。
「今日は宜しくお願いします」
 丁寧に頭を下げながら挨拶をするのは水上・未早(ga0049)だった。
「暗い森を利用しての演習なら、今後のキメラとの戦闘で役に立つかもしれないしな、経験を積むにはいい機会かもしれない」
 榊兵衛(ga0388)も納得したように呟き、その言葉に櫻塚・弥生(ga2000)も頷きながら笑う。
「相手はベテランでも同じ人間、勝てない道理はないわ。ひよっこにもひよっこの意地があるもの。やるからには勝つつもりで行くわよ」
「そうですね、実戦は初めてですが―――負けるつもりは毛頭ありません」
 春風霧亥(ga3077)も笑う。
 新人達の姿にベテラン能力者達は「面白くなりそうだね」と互いに顔を見合わせた。
「今回の演習内容を簡単に説明するわね」
 一人のスナイパーが紙をメンバーに渡しながら話し始める。
「大まかには聞いていると思うけど、私達のこのボールを奪うことが目的ね」
 そう言って参加者にも渡されている赤いボールを見せる。
「もちろん私達もただ奪われるだけじゃないわ、反撃もするし、此方から攻撃だってする。気を緩めないことね」
 それと、と言葉を続けて参加者達に通信機と森の地図を渡していく。
「迷うことはないと思うんだけど、一応渡しておくわ。丸印がついているところに私達がいるから、いつでもかかってらっしゃい」
 スナイパーの女性はよほどの自信があるのか、不敵に笑む。
「それじゃ――一三十分後に行動開始の照明弾を撃つわ」
 そう言ってベテラン能力者達はそれぞれの配置場所へと散っていった。


●演習開始!

「そろそろ行動を開始しましょうか」
 緋霧 絢(ga3668)がハンドガンの弾薬を確認しながら呟く。
「もう一回確認いいか?」
 蒼仙(ga3644)が作戦をメモした紙を見ながら問いかける。
 前衛組→櫻塚、エクセレント
 後衛組→水上、緋霧、春風、エリザベス・シモンズ(ga2979
 そして蒼仙は榊と共に護衛として周囲の警戒・奇襲に備える重要な役割となった。
「一応この場所にいるとは言ってたけど――油断させる為の言葉とも思えるしね」
 エクセレントが呟き、彼女の役目――囮としてファイターの能力者がいる場所へと飛び込んでいく。
 ベテラン側としても、まさか素直に飛び込んでくるとは思っていなかったのか、多少驚きつつもエクセレントに攻撃を仕掛け始めた。
 このファイターの男性の近くにはスナイパーの女性が潜んでいるはず。
 しかし、ただでやられる彼女ではない。防具も強化しているし、敵の射撃で簡単に倒れることはないはずだ。
「真っ向からとはね、流石に驚いたけど――此処でやられたら『先輩』として立つ瀬がないからね! 負けるワケにはいかないな」
 そう言ってファイターの男性はエクセレントに斬りかかってくる――が榊がロングスピアを投げてエクセレントへの攻撃を止める。
「おっと―――!?」
 ファイターの男性はロングスピアを避け、後ろに下がるが地面に開いた穴に足を取られてしまい、バランスを崩す。
 その隙を狙って二人で男性の腰に下げてあった赤いボールを取る。
「あいったー‥‥もしかして此処にくぼみがあるのを見越した上での攻撃?」
 男性はバツが悪そうに呟くと、榊は不敵に笑みながら答えた。
「事前に調べれるだけの情報を集めておく。それは傭兵としての基本だろう?」
 榊の言葉に男性はため息混じりに通信機で他のベテラン達に自分がボールを取られたことを報せたのだった。


●奇襲攻撃!

「とりあえず一人はボールを奪ったんだがな‥‥残りは四人――先は長い」
 蒼仙はため息を混じりに呟く。
「そうそう、敵が攻撃を待ってくれるなんて思わないことね」
 そう声が聞こえたと同時にスナイパーの射撃が前衛組の足元に来る。掠りもしていない所を見れば威嚇のつもりなのだろう。
「春風! 周囲警戒を頼む!」
 真っ暗な中、蒼仙が春風に向けて叫ぶ。こういう時『暗視装置』を借りられれば良かったのだが、残念ながら今回の演習では暗視装置の貸し出しは認められなかった。
 スナイパーの射撃を前衛組が引き受けている間、蒼仙は後衛組の射撃軸線上に立たないように横へと迂回気味に前進しつつ抜刀する。
 その間に緋霧は敵の死角に移動してハンドガンを発砲する。
「え!」
 全くの死角から攻撃が来た事に敵は驚き、一時攻撃を止める。その隙を蒼仙は見逃すはずもなく、峰打ちで敵の腹部に攻撃をする。
「蒼仙さん、お疲れ様です――ボールは確かに頂きました」
 緋霧はボールを持ち、無表情のまま呟く。
「とりあえず―‥‥此処までは何とかなりましたけど――‥‥次からが大変そうですね」
 水上が地図を見ながら呟く。五人のうち、二人のボールは奪取する事が出来たが、次からはこう簡単には行かないだろう。
 何故なら‥‥残りの三人の居場所が皆同じ場所だからだ。
「あたしが囮になって攻撃を受けるから、他の皆で何とかしてくれ」
 エクセレントの言葉に「そんな――」と水上が呟く。
「みんながボールを奪われるわけにもいかないだろ? あたしはチームプレイに徹するよ」
「分かりました」
「私は後衛のカバーに回るわ、それが必要ない状況だったら攻撃手に回るわね」
 櫻塚の言葉に水上の首を縦に振る。
「わたくしは木の影などに隠れての攻撃をしますわ。射撃毎に位置を変えますから居場所を知られる事はないと思いますわ――聖ジョージのご加護のあらんことを」
 エリザベスはにっこりと笑ってアーチェリーボウを手に持つ。
「練成強化などは居場所を知らせてしまいそうですので使用しません」
 春風が呟く。
「そうだな、しかし―――」
 蒼仙が周りを見渡しながら低い声で呟く。
「動きがないな――」
 そう、参加者達は作戦を話しながら残りの三人がいる場所へとやってきたのだが――何処からか様子を伺っているのか、此方を襲ってくる気配は感じられない。
「仕方ないですね」
 春風が呟くと同時に携帯品のナイフを木に刺し、少しその場所から離れて強化したものを投げデコイとして使用する。
 これは演習に動きがなかった場合のみ一回だけの使用と打ち合わせの段階で決めておいたものだ。
 それと同時にスナイパー、グラップラー、ファイターの三人が同時に襲い掛かってくる。此方も相手もスナイパーは実弾は使用せずにゴム弾に変えているため、撃つことに躊躇いはない。
「動きはいいんだけどな――やっぱり経験の差かね」
 そう呟きながらグラップラーの男性はいとも簡単に緋霧のボールを奪う。
「は、速さが――‥‥」
 緋霧はハンドガンを構えたまま、ほぼ動くこと出来ずにボールを奪われたことにショックを隠しきれなかった。
「ショックを受ける必要はないよ――、前の二人からボールを取れただけでも大したモンだから」
 背後から襲い掛かってきたエクセレントの攻撃を避け、グラップラーの男性は素早くエクセレントの背後まで移動する。
 後衛組がエクセレントを助けに入ろうとした時、木の上から矢が地面に向けて突き刺さる。
「あなた達の相手はこっちよ」
 スナイパーの女性は木の上から不敵に笑む。それと同時に背後からファイターの女性が襲いかかってくる。
 水上がアサルトライフル(ゴム弾)でファイターの女性に攻撃をするが、彼女は攻撃を受けながらも前進してくる。実弾ではなくゴム弾という事が彼女を安心させているのだろう。
「はい――残念でした」
 水上のボールも奪われ、ファイターの女性は「あっちで待機しててね」とにっこりと笑って『待機所』と書かれた簡易小屋を指差す。
 参加者達が次の攻撃に出ようとした時‥‥ピピーッ! と笛の音が響く。
「あ、時間だ」
 グラップラーの男性が呟くと「演習終了」と参加者達に告げた。


●反省会――何処が悪かった?

「時間制限の事知らなかったわ‥‥」
 櫻塚がため息混じりに呟く。
 演習終了後、UPC本部に帰って来て参加者達とベテラン能力者達で反省会を行っていた。
「全体的には悪くなかったよ、ただあえて言うなら‥‥」
 男性がポツリと呟く。
「まず彼女――エリザベスさんだっけ? 彼女が木の影に隠れていても援護射撃を待っている仲間の視線で居場所がバレバレだったね。それと――エクセレントさんは自分が囮になるって作戦がモロバレだった。こっち的にはキミより次に攻撃仕掛けて来る方を気をつければOKって事なんだよね」
 男性の言葉に参加者達は「なるほど」と納得したように呟く。恐らく参加者達に意識はなかったのだろう。無意識に視線が其方へ行ったりしていたのだと思う。
「それと水上さん、キミは仲間の為に射撃軸線上から外れようとして距離を置くのはいい、けど逆に自分が標的になりやすいという事も忘れずに」
 男性のダメ押しに参加者達がいい加減ヘコみそうになる。
「あー‥‥ダメ押しばっかりじゃ可哀想でしょ」
 女性が苦笑混じりに呟く。
「私は榊さん、貴方は良かったと思うわ。攻撃の時、手加減をしなかったでしょ? 女相手でも」
 確かに榊は手加減をしなかった。手加減などという傲慢な気持ちを持っていては当たる攻撃も当たらないと考えていたからだ。
「手加減をしないのは良い事よ。手加減をしようとすれば気持ちに緩みが出る、それが怪我――もしくは死に繋がるわ」
 女性の言葉に榊は少し照れたように顔を背ける。
「そして、櫻塚さん、貴方も臨機応変に動けるから良かったと思うわ――ただ距離を詰めて刀での近接攻撃のスタイルが読みやすかったという点もあったけれどね――‥‥それとエリザベスさん、貴方も射撃ごとに位置を変えるという発想はいいと思うわ」
 女性はにっこりと笑って「まだまだこれからよ」と参加者達に激励の言葉を送り、実戦演習は終了を迎えたのだった。



END