●リプレイ本文
〜もふっとタヌキメラ出現〜
今回は、二足歩行型キメラをクイーンズ記者のマリが見つけ、室生 舞(gz0140)に取材を任せた事から事件は始まった。
「‥‥ボク、タヌキメラを退治するのは反対です‥‥こんなに可愛いんだから、きっと心優しいキメラだと思うんです」
舞は拳を強く握り締めながら、タヌキメラを退治する為に集まった能力者達に向けて話しかけるが、能力者達は互いに苦笑を漏らす。
「えぇと、まずは自己紹介ね。初めまして、的場・彩音(
ga1084)よ――それにしてもキメラ退治に反対、しかも取材‥‥先が思いやられるわ」
的場は苦笑しながら呟くと「確かに可愛いから、討伐には抵抗あるけど‥‥」と鳥飼夕貴(
ga4123)が言葉を返す。
「生け捕って改心してくれるなら良いけど‥‥無理だよね」
鳥飼の言葉に「そ、そんな事はないです。きっと分かってくれます」と舞は必死に言葉を返した。
「タヌキメラ‥‥キメラの行く末は一体何処なんでしょうか‥‥」
八界・一騎(
ga4970)が何処か遠くを見ながら小さく呟く。今回のキメラに最も告示しているのは八界だ、どこかで彼のデータでも流出したのだろうか?
「そうそう、キメラ退治も楽じゃないんですよ〜、だから今回は大人しくしていてくださいね〜?」
八界が舞に話しかけると「嫌です」と素敵なくらい即答で言葉が返ってくる。その受け答えを見ながら香倶夜(
ga5126)が苦笑をしている。
「確かに可愛いのは認める。あたしだって女の子だから可愛いものには目がないし‥‥でもあれはキメラなんだよ? どんなに可愛くてもキメラには間違いないんだよ?」
香倶夜が諭すように舞に話しかけると「でも、いいキメラです」と舞は言葉を返す。
「キメラはあたし達人類とは異なるモノ、その事はきちんと理解しておかないといつか痛い目に遭うよ。だから辛くても直視しなくちゃ、クイーンズの記者は続けられないよ」
香倶夜の言葉に舞はしょんぼりしながら俯いた。今にも泣きそうな舞に「まぁまぁ」とInnocence(
ga8305)が苦笑しながら舞の肩に手を置いた。
「たぬきさん、可愛らしいですわね‥‥もふっと柔らかいお腹なのですかしら? そう思いません?」
Innocenceの言葉に「は、はい。ボクもそう思います」と少し笑顔で言葉を返す。
「つぶらな瞳でじーっと見られましたら‥‥くらっとしてしまいますわ。ご一緒にたぬきさんと仲良しさんになりたいですわね♪」
Innocenceと舞は話が合うらしく「はい、頑張りましょう」とのほほんとした表情で言葉を返していた。
「‥‥戦闘が大変そうね‥‥見分けるのが特に‥‥」
シュブニグラス(
ga9903)が八界を見ながら小さく呟く。
(「狸型のキメラかぁ‥‥凄く可愛いらしいよ」)
白雪(
gb2228)が小さく心の中で呟く。しかし彼女の覚醒した状態、つまり真白の心情としては『キメラである以上は興味がない』だった。
「タヌキのキメラかぁ〜‥‥狐だって可愛いのにな」
矢神小雪(
gb3650)がポツリと小さく呟く。
「舞おねえちゃんには悪いけど子狐の良さを分かってもらおう」
ぶつぶつと呟きながら矢神は予め用意してきた稲荷寿司を任務で一緒になる能力者、そして舞に配っていく。
「皆さん、宜しくお願いします〜」
矢神が稲荷寿司を渡しながら挨拶をしていき、自分の役割が『舞の護衛』と確認をすると、能力者達はタヌキメラが待ち構えている森の中へと出発したのだった‥‥。
〜もふっとタヌキメラ参上〜
今回の能力者達は話し合った結果、タヌキメラ退治班と舞の監視&護衛班の二つに分けて行動をする事に決まっていた。
タヌキメラ退治班・鳥飼、シュブニグラス、Innocence、白雪、八界の五人。
舞の監視&護衛班・的場、香倶夜、矢神の三人。
※タヌキメラ戦闘班※
「タヌキは鮭じゃないでしょうか‥‥‥‥鮭!」
八界は自分用に持参した大きな鮭を抱えながら、やや興奮気味に呟く。
「う〜ん‥‥普通は鮭じゃないんじゃない?」
鳥飼が苦笑気味に言葉を返すと「捕獲用と皆様のおやつ用に林檎を持ってきました」とInnocenceがバスケット一杯に入った林檎を見せる。
「あら、美味しそうね」
シュブニグラスもバスケットの中を覗き込みながら呟く。
「捕獲内容は中に林檎を入れた罠を仕掛けて、キメラが引っかかったら紐を引っ張って、罠の蓋をする‥‥という事で大丈夫でしたわよね?」
白雪が確認をするように能力者達に問いかけると「うん、それで大丈夫だね」と鳥飼が言葉を返した。
その後、マリが調べてきた情報を元にタヌキメラが現れる場所へと赴き、タヌキメラがいるかを確認する。
果たしてそのような簡単な罠でタヌキメラを捕獲出来るのかは謎だが、まだ被害状況も報告されていないキメラなので、知能が高いのか、それとも低いのかも分かっていない。
もし罠を仕掛けて、それが失敗したならば強行手段に出るしかないのだけれど‥‥。
「‥‥あれですかね、本当に二足歩行で歩いてる‥‥」
八界がタヌキメラを見つけて、木の陰に隠れながら呟く。そして視線の向こうにはのしのしと歩くタヌキメラの存在があった。
その時、彼を知る能力者ならばきっと心の中で呟いたことだろう。
八界も二足歩行タヌキじゃないか―――と。
その後、能力者達はタヌキメラに見つからないように、決めていた罠を仕掛けてタヌキメラが引っかかるのを待つ。
その中、鳥飼は他にもタヌキメラがいないか警戒を強めている。一匹に気を取られすぎて、他のタヌキメラに攻撃されました――ではしゃれにならないのだから。
「きゃぁ〜☆ 可愛い〜」
Innocenceがタヌキメラの愛らしさに身悶えながらカメラでタヌキメラの写真を撮っていく。
「ふぅ、たぬきさんの可愛い姿も沢山撮れましたし‥‥みっしょん☆こんぷりーとですわ♪」
Innocenceが満足気に呟くと「主旨が変わってるよ‥‥」と鳥飼が小さくツッコミを入れた。
「あれが例のキメラね‥‥」
Innocenceの隣では覚醒を行い、真白へと変わった白雪が小さく呟くと「ちょっと見せて」と白雪が半ば強引に覚醒を解除して「可愛い〜♪ びっくりするくらい可愛い‥‥」と呟く。
「‥‥白雪、任務中なんだからわきまえなさい」
真白は呟きながらタヌキメラが罠の中に入ったのを確認すると紐を引っ張り「キメラが罠に掛かったわ、お打ち合わせ通りお願いします」と他の能力者に伝えたのだった。
※舞の監視&護衛班※
時は少し遡りて、まだタヌキメラは捕獲されていない。
「本当に退治するんですね‥‥」
しょんぼりとしながら舞が護衛班の矢神に話しかける。
「あー‥‥い、意外と子狐も悪いものじゃないですよ? それにほら、この剣だって変わってて可愛いし」
矢神は犬剣『ビッグボーン』を見せながら舞に言葉を返す。
「でも‥‥まさかあそこまで可愛いとは思わなかったな‥‥バグアめ、何て卑劣な手を‥‥」
香倶夜がタヌキメラを見ながら小さく呟く。香倶夜自身も可愛いタヌキが相手で動揺をしている。正直に言って倒す事に戸惑いを感じて、出来れば倒したくないとさえ思っているのだ。
「‥‥でも」
香倶夜は小さく呟いて、自分以上に動揺を隠せていない舞を見て『自分は能力者であり、舞のような一般人をキメラの恐怖から護るべき立場』にあると再認識をする。
「‥‥何であんなに可愛いキメラを倒すんですか? あんなに可愛いんだからきっと調教すれば‥‥何ならボクがペットにしても‥‥」
子供特有のわがままを見せる舞に「可愛らしい外見でもキメラなんだよ! あいつは!」と的場が少しきつい口調で話しかける。
「辛いだろうが現実から目を背けるな、それが記者ってモンだろうが!」
的場の言葉に舞は俯きながら「ごめんなさい‥‥」と呟くが、その手には石が握られている。
つまり、舞は『ごめんなさい』と言いながらも頭の中では全然納得していなく、隙があれば邪魔をしてやろうという魂胆なのだろう。
「‥‥全く分かっていないみたいだね‥‥残念だけど、少し手荒い事をさせてもらうね」
香倶夜が『キャンプ用テント』を取り出し、布とロープを使って、舞の顔だけを出すような形で縛り上げる。
「ゴメンね、舞ちゃん。戦場では何が起きるか分からないから、万策を尽くしたいんだ。だから、今は大人しく見ていてね」
香倶夜が申し訳なさそうに呟きながら縛り上げた舞を安全、だけど確り取材が出来るように戦闘が見える場所に連れて行く。
それと同時にタヌキメラを捕獲したという連絡が入り、タヌキメラとの戦闘は開始したのだった‥‥。
〜もふっとタヌキメラと戦闘〜
罠に引っかかったタヌキメラは「もきゅ?」と此方を見ていて、思わず胸きゅん☆状態に陥りそうである。
「オラァ! かかって来い、妖怪きゃらかぶりぃ!」
八界は覚醒を行い、前に出て『蛇剋』を構えてタヌキメラを戦いやすい場所へと誘導していく。その際に木などにぶつからないように気をつけながら誘導を行っていく。
そんな様子を見ながら「困りましたわ‥‥こんな可愛い子を苛めたり出来ませんもの」とInnocenceが困ったような表情で呟く。
そして持っていた林檎で「えいっ」と右に左に隠して、タヌキメラを困惑させる。
「良かったわ‥‥罠の中に八界さんが入らなくて‥‥入ったらやっつけなくちゃいけない所だったわ」
シュブニグラスが小さく呟く。もし林檎の代わりに鮭を入れておいたら、きっと八界は捕獲されたのだろうか。
「‥‥なんていう‥‥もふり具合!」
シュブニグラスは『超機械α』で攻撃を仕掛けながらタヌキメラのもふり具合から目を逸らす。
そして舞が相手は『狸』ではなく『キメラ』なのだと分からせる為に、わざと攻撃を受けてみせる。
「新人育成‥‥ね」
そして『練成治療』で自身の傷を治療して、再び戦闘へと戻る。
「‥‥出来る限り苦しませずに終わらせてあげるから」
白雪が小さく呟く。相手はキメラに違いないのだが、実害が報告されていない為に多少なりとも罪悪感を覚えるのだろう。
そして矢神は『グレートソード』で攻撃を仕掛け、仲間の連携攻撃に繋げるために行動を行う。可愛らしい姿をしていてもやはりキメラなのだ。タヌキメラは牙をむき出しにして能力者達を威嚇するようににらみつけてくる。
それと的場が『鋭覚狙撃』を使用しながら『ライフル』で攻撃を仕掛けた。そして動きが止まった所を鳥飼が小太刀『涼風』でタヌキメラの致命傷を狙う。
いくら相手がキメラだろうと、舞の目の前で真っ二つとかは避けたいというのが鳥飼の本音だった。
「御免なさい‥‥罪のない貴方の命を奪おうとする事がどれだけ傲慢かは分かってる‥‥でも――それでも人はキメラを恐れるのよ」
白雪は『二段撃』を連続で使用してタヌキメラにトドメを刺したのだった。
「さよなら‥‥次に会う時は別の形で会いたいわね」
白雪が小さく呟き、戦闘は無事に終了したのだった。
〜もふっと戦闘後〜
戦闘が終わり、タヌキメラを鳥飼がもふもふをした後に丁寧に埋葬したのだった。
そして――戦闘が終わった後から泣き止まない舞に能力者達は戦闘以上に苦労していた。
「えーと、ここはタヌキビーストマンな一騎くんで、もふもふしちゃえ」
鳥飼の言葉に能力者全員の視線が八界に注がれ「う!」と八界は一歩後ろに下がる。
「ここはするしかないね」
香倶夜が八界の肩をポンと軽く叩きながら「諦めなさい」と言ったように話しかける。
「キメラでなければ‥‥太郎(タヌキメラ)も生きていけたのでしょうか‥‥」
舞と同じくInnocenceもしょんぼりとした表情で呟く。
「‥‥生きる事って我侭な事なのかもね」
白雪は覚醒を解除する前に小さく呟く。
その後、諦めたように八界は覚醒を行い狸へと変化する。
「かーっ、これでいいのかよ」
八界は面倒そうに呟き、舞の前に立つ。すると舞は涙を拭うように乱暴に目を擦りながら「‥‥もきゅ」と小さく呟いた。
「‥‥あ?」
「狸は『もきゅ』って言うんです。言わない狸なんて‥‥狸じゃないです‥‥」
我侭を言う舞に「そんな事が言えるか!」と八界が言葉を返すが、引いていた舞の涙がぶわっと再び溢れ出してくる。
「言わないと、また大泣きしてしまいそうですわね」
白雪の言葉に「ぐ‥‥」と八界は追い詰められる。
そして――‥‥。
「‥‥‥‥‥‥‥‥もきゅ」
言った後で八界は顔を真っ赤にする。
そして誰もが八界を『もふKING』と認めた瞬間だった。
〜もふっとクイーンズ新刊〜
こんにちは、今回はタヌキメラをボク・室生 舞が取材してきました。
あんなに可愛いのにキメラという理由で退治される事に、ボクは少しだけ理不尽を感じましたが、被害が出る前に退治するのは仕方のない事なのかなと思いました。
今回のボクは能力者の皆様に我侭ばかりを言って困らせてしまいました‥‥。
キメラと言えば、怖いのや気持ち悪いのが当たり前だと思っていたボクにとって、可愛いキメラというのは衝撃的だったんです。
でもどんなキメラが現れても、きちんと取材できるように頑張りたいと思います。
そしてクイーンズ新刊を読みながらシュブニグラスはクイーンズ記者・チホに話しかけた。
「彼女は私達で育てていきましょうね! ‥‥道を間違えないように‥‥」
間違えた者として『マリ』を思い浮かべながらシュブニグラスは呟いたのだった‥‥。
END