●リプレイ本文
〜行方不明の彼を探して〜
今回は『ふんどしファイター』の大石・圭吾(gz0158)が4人の仲間と共にキメラ討伐へと赴き、帰ってこないという事が事件の発端だった。
しかも今回は戦う相手が『褌キメラ』という事で、大石は勇み足スキップ一回転で赴いたのだとか‥‥。
「褌キメラ‥‥ですか、バグアが何を考えているか相変わらず理解に苦しみます。それと類は友を呼ぶと言いますが‥‥同行する方にも似たような方々がいますし」
私は請ける仕事を間違えたのでしょうか、鳴神 伊織(
ga0421)は天道・大河(
ga9197)や藤枝 真一(
ga0779)に視線を移しながら真剣な表情で呟く。
「おはよう〜‥‥今回同行しますやまし‥‥」
山科芳野(
ga0604)は挨拶をしながら船をこぎ、頭を振りながら「山科です、よろしく〜」と挨拶し直した。
彼女が今回の任務に参加した理由は、大石と面識があり、行方不明と聞き、放っておけないと感じたからだ。しかし、心の中では大した状況でもなく、どうせピンピンしていると直感で感じていた。
「大石君の事だから、褌談義で盛り上がっているんじゃないかなぁ‥‥」
山科の言葉に、大石がふんどし談義(一人)で盛り上がっている様を想像して『ありえない話じゃないかも』と彼を知る能力者達は心の中で呟いた。
「しかし、大石を含めて5人の能力者が戻ってこないとなると、何か特殊能力を持ったキメラの可能性が高いな」
藤枝が「案外、褌が本体だったりしてな」と言葉を付け足しながら呟く。
「いや、仮にも褌を締めているキメラだ。褌が弱点なんじゃないだろうか」
ぶつぶつと仮想を立てながら呟く藤枝に「まさか、そんな」と天道が言葉を返す。天道の言葉に『くわっ』と迫力ある表情を見せながら藤枝が反論を行う。
「考えても見ろ、俺達褌愛好家にとって、褌とは魂だ。それが破れ、ポロリしたらどれだけショックが大きい事か」
二人の話を聞きながらヒューイ・焔(
ga8434)が「夜中と来れば‥‥こう『色』があってもいいような気がするよな?」と呟く。
彼の言っている『色』が別のものを指しているような気がするのは気のせいだと思い込んでおこう。
「同じ物を愛する戦士をこんなところで失うわけにもいきません。いざ、探索に向かいましょう。そして小生意気なキメラを殲滅しなければ‥‥うふふ」
鳳 つばき(
ga7830)な怪しげな笑みを浮かべながら呟く。彼女は噂に聞いたふんどし戦士が行方不明という事で任務に参加をした。
そして、何より褌を愛する者として『キメラが褌を締めるのが気にいらない』という事も大きな理由の一つだったりする。
「そういえば、今回はホンモノの褌一丁なキメラなんですね! 大石さんと以前キメラ退治に行った時は全身黒革のピチピチ服に鞭という変態でしたが、今度こそ日本男児キメラと戦えるなんて‥‥嬉しいです!」
千祭・刃(
gb1900)が感激しながら少し大きな声で叫ぶ。
『どっちにしてもHENTAIなキメラじゃねぇかYO!』
‥‥なんて気にしてはいけない。気にした時点で負けになるのだから。
「褌キメラか、ブリーフ派の俺としては負けられない相手だな」
行方不明になった5人の能力者の顔を知るために顔写真を本部から借りて、それを見ながら立浪 光佑(
gb2422)が小さく呟く。
そこで立浪は気がついていない。褌を愛する能力者を敵に回してしまったという事に‥‥そして今から向かう場所で大石という名の大魔王が待ちうけている事を。
「それでは、行方不明者を救出‥‥そしてキメラを倒す為に出発しましょうか」
〜午前三時に山の頂上で待つ褌男が二人〜
今回は班分けを行う事はせずに、全員で団体行動するという作戦を能力者達は立てていた。
「‥‥で、天道。お前、流石にこの時期にその格好は寒くないか?」
褌一丁の上に『【雅】とんびコート』を羽織った格好の天道に藤枝が問いかける。まだ真冬じゃないものの寒さは冬に匹敵するものがあり、天道の格好は『寒い』を超えているはずだ。
「俺は今日まで、たとえ行き先が南極や宇宙空間でも褌一丁で行くべき! と思っていた‥‥が、その上にコートを羽織るというのもオシャレ度が増していい感じだな。和風のデザインが褌にも良く合うぜ」
ふっ、と渋く語る天道だったが『寒くない』と言わない所を見ると『寒い』のだろう。そして増しているのはオシャレ度ではなく『HENTAI度』であるという事を気にしてはいけない。秋の夜空がさせた事だと思っておこう。
まずは存在が確認されているキメラから退治する為に山頂を目指しながら、山の中を捜索して行く事になっていた。途中で行方不明者を見つけられれば良し、見つけられなくてもキメラから退治してしまえば、後から行方不明者を探す事に専念できるというものだ。
鳴神は『エマージェンシーキット』に入っている懐中電灯を使用しながら暗い山道を進んでく。
そして山科も腰にランタンを括りつけて、ヘッドライトで照らしながら捜索をしていく。
「皆無事だといいが‥‥」
藤枝は仲間の明かりで地図を照らしてもらい『方位磁石』で方角を確認しながら捜索を行っていく。そして通信機で行方不明者に通信を試みるが、ザーザーという音しかせず、通信を行うのは無理のようだった。
「おーい、大石さーん! ふんどしーちょー!」
鳳の大きな声が山の中に響き渡る。彼女はリスクを承知で大きな声で大石の名前を叫んでいた。もしかしたらキメラがおびき寄せられてくれるかもしれないという淡い期待もあったのだろう。
「しかし暗いな、持って来ていて正解だったか」
ヒューイが『ランタン』を見ながら呟く。太陽も昇っていない午前三時では、照らす物を持ってきていなければ真っ暗で捜索時の危険が増していた事だろう。
「おーい! 誰かいませんかー! 大石さーん!」
大石の弟子を称する千祭が大きな声で叫ぶが、応答はない。その後も山の中を捜索したが、行方不明者と思われる能力者に出会う事は出来なかった。
「もう山頂か‥‥ここにいなかったらまた探し直しだな」
立浪が呟き、能力者達は山頂に足を踏み入れる。
「はははははっ! よく来たな! 能力者諸君!」
能力者達に向けて叫ぶ声が聞こえ「キメラ、ですね」と鳴神が飛剣『ゲイル』を構える。
「二匹いたのか‥‥」
ヒューイも『クルシフィクス』を構えながら眼前に立つキメラ二匹に向かって低く呟いた。
「ここから先に進みたければ、我ら褌兄弟を倒してからにしてもらおうか!」
はははは、と高笑いをしながら左の褌男が叫んだ――が、右側に立っている褌男に攻撃されて「ぐふぁっ!」と能力者達の所まで倒れてくる。
「何をしているんだ、お前は‥‥」
藤枝がどこか冷めた目で倒れてきた褌男――もとい大石に向かって冷めた言葉を投げかける。
「や、やぁ‥‥俺達を探す声が聞こえたから、キメラ出現と共にちょっとお茶目をしてみたんだよ」
どんな命がけのお茶目なのだろうか。とりあえず、山科が大石を治療する為に後ろへと二人を下がらせて、他の能力者達は褌男キメラを退治する為にそれぞれ武器を構え始めたのだった‥‥。
〜決戦・褌男キメラ VS 能力者達〜
「まったくー、ムチャしたら駄目なんだぞー? 油断して永眠したらどうするんだヨ」
山科がため息混じりに呟きながら『練成治療』で大石の怪我を治療していく。
「面目ない‥‥褌キメラという事で興奮して、少しだけ我を見失っていたようだ」
しゅんとしながら大石は謝罪する。
そして‥‥褌男キメラと対峙している能力者達は、武器を構えながらどちらも動かないという均衡状態が続いていた。
「‥‥何だかなぁ、山中だからいいが、街中だったら単なる変態だな」
ヒューイが褌男キメラに向けて呟く。しかしここで彼は気づいていない。今回の任務で一緒になっている天道、そして大石も普段は褌一丁な事を‥‥。
「仕方ね、始めるか‥‥まずは様子見と行きますかっ‥‥ほらよ!」
ヒューイは『ソニックブーム』で攻撃を仕掛けながら呟く。褌男キメラはそれを避けるが、腕にかすり傷を負ってしまう。
そして傷を受けた事から少しだけ行動が遅れた褌男キメラに鳴神が『豪破斬撃』と『流し斬り』を使用しながら攻撃を仕掛ける。
「その褌が弱点かどうか、確かめさせてもらうぞ!」
藤枝が『電波増幅』を使用して『超機械α』で褌男の褌を目掛けて攻撃する。彼の攻撃が褌男キメラにヒットする前に「ひーっさーつ、ふんどしーちょはりけーん☆」と叫びながら鳳も『練成弱体』を使用して、自らも『超機械トルネード』で攻撃を行った。
二人の電圧攻撃が見事にヒットして、褌男キメラはガクリと膝をつく――しかし、褌そのものが弱点だったわけではないようで、再び立ち上がって能力者達に攻撃を仕掛けてくる。
しかし能力者達はそこで『別な意味で危険』なものを発見することになる。先ほどの攻撃によって、褌男キメラの褌が今にも破れてポロリしそうになっているのだ。
それを見て立浪がすかさず『ペイント弾』を撃ち込む。
「最悪の事態は回避できたな」
これでもしポロリしても撃ち込まれた『ペイント弾』によって防がれたという事なのだろう。
しかし――男性ならば分かるかもしれないが『ペイント弾』を撃ち込まれた場所が悪かった、キメラといえど男性なのだから急所も同じ場所なのだ。
蹲って震える褌男キメラに男性能力者達は多少なりとも同情を感じずにはいられないが、これは褌男キメラを退治する為のチャンスだ、とそれぞれ行動を開始する。
「叩き斬る‥‥、でぇぇぇぇい!」
ヒューイは『流し斬り』を使用しながら褌男キメラに攻撃を仕掛ける。
「貴様に見せてやろう‥‥褌使いの戦いというものをっ!」
くわ、と目を見開きながら天道が『刀』を構えて攻撃を行う。
「48のふんどし技の一つ! 天翔褌閃(あまかけるふんどしのひらめき)!!」
天道は『流し斬り』と『両断剣』を使用しながら褌男キメラに攻撃を行う。ちなみに『ふんどし技』と言いながら、褌が攻撃に全く関係がないのは気にしてはいけない。
「ふんど師匠の一番弟子(自称)! 千祭・刃がお相手します!」
長刀『乱れ桜』を構えながら『竜の鱗』を使用して、攻撃を行う。
「褌サムライをなめないでほしいね‥‥僕を楽しませてよ? ふんど師匠は、もっと僕達を楽しませてくれるんだよ?」
千祭は攻撃を行いながら嘲るように呟く。そして千祭の攻撃に合わせるように「褌巻閃」と天道が攻撃を行う。
ちなみに褌は巻いても閃いてもいない。
「はああっ!」
立浪は叫びながら『流し斬り』と『両断剣』を使用して攻撃を行う。
「紛らわしい格好をしていると、見間違えることもありえますので‥‥早々に退場してください」
鳴神は呟きながら『流し斬り』で攻撃を行い、褌男キメラを見事に撃破したのだった‥‥。
倒された褌男キメラの前に立ち「褌に魂が宿るんじゃねぇ」と藤枝が低い声で呟く。
「褌を締めた奴に、魂が宿るんだ。貴様はそれを理解していなかった‥‥それが貴様の敗因だ!」
藤枝はそれだけ言い残すと、大石の所へと足を向けたのだった。
〜ふんどしファイター・大石復活〜
結局、行方不明者は大石が安全な場所に逃げさせて、自分ではキメラを引き付ける為に山頂にいたのだと言う事が、褌男キメラを退治した後に分かった。
「大丈夫ですか? 水です、良ければ飲んでください」
鳴神が『ミネラルウォーター』を救出した4人の能力者のうち、一人に渡しながら呟く。そして山科は大石を治療したように『練成治療』で他の四人も治療していく。
「あなたが大石さんですか? 縁あって褌伝道女神の称号を与えられた鳳つばきと申します」
鳳は呟いた後に、徐に服を脱ぎ捨てオリジナルの褌一丁になる。
「褌伝道女神などと呼ばれていても、周りに迷惑をかけたくなくてお仕事の時にはきちんと防御を固めてしまう小心者の私です。あなたの生き様、憧れです」
これからも頑張ってくださいね、と鳳は大石を激励する。
「でも、周りに迷惑をかけないようにですよ?」
「分かってるって!」
大石はビシッと親指を立てながら言葉を返すが、ヒューイは『分かっていなさそうだ』と心の中でポツリと呟いた。
そしてその隣では、女性の褌姿に邪念たっぷりの笑顔を浮かべている天道の姿があった。
「ふんど師匠! ご無事で何よりです!」
千祭はAU−KVを装着したまま、大石に抱きつき「ぐはぁっ」と大石にダメージを与えた。グッジョブ。
「あ、ふんど師匠、ごめんなさい。でも無事でよかった」
感涙しながら千祭は大石に言葉を投げかける。山頂で抱き合う二人、怪しさ満点だ。
そして立浪は倒された褌男キメラを見ながら「もしこんな形で出会っていかなったら‥‥」と呟きながら一度言葉を止める。
「‥‥‥‥やっぱり倒してたな」
うん、と自己納得して能力者達の所へと向かう。哀れ褌男キメラ。
わいわいと能力者達が騒ぐ中で鳴神だけが複雑そうな表情を見せていた。別に何かがあるというわけではなく『大石に対してどんな反応をすればいいのかが分からない』だけである。
「言える事は‥‥捕まらないのが不思議です。猥褻物陳列罪でも適用されそうな感じがしますが‥‥」
首を傾げながら呟く彼女の言葉は誰にも聞こえる事はなく、能力者達は報告の為に本部へと帰還していったのだった。
「そういえば、俺たちに任務を頼んできた女性能力者‥‥凄く必死だったけど大石のコレか?」
小指を立てながら大石に問いかけるが「そんな女性はいないけど‥‥はっ! もしかして俺に惚れたのか!」と盛大な勘違いを起こしてしまう。
そして本部に帰還した後「キミと付き合ってあげてもいいよ」と月詠をあげた女性能力者に大石が話しかけたのだが、本部内に響き渡るような平手打ちを受けたのは言うまでもなかったのだとか‥‥。
END