タイトル:逆らう者には粛清をマスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/10/30 00:02

●オープニング本文


逆らわない者には安息なる死を‥‥。

逆らう者には苦痛の死を‥‥。

選ぶがいい、天使に挑もうとする愚かな人間たちよ――‥‥。

※※※

「大天使‥‥か」

女性能力者が、今回現れたキメラの資料に目を通しながらため息混じりに呟く。

今回、少し大きな町に現れたのは四大天使の一人で『ウリエル』を模倣したものだった。

旧約聖書や新約聖書などに登場する天使で『アウリエル』とも呼ばれる天使だった。

「うりえる?」

「そ。名前の意味は『神の光』だったかしら」

女性能力者の言葉に「大層な名前だな‥‥」と男性能力者は苦笑交じりに呟く。

「笑い事じゃないわ。光の矢――恐らくはモドキでしょうけど、住人に被害が多数出ているわ。怪我人より死者の方が多いんだから‥‥」

ジロリと睨むように女性能力者が呟くと「悪ぃ」と男性能力者もバツが悪そうに小さな声で謝ってきた。

「それにしてもウリエルだっけか、他にもバグアが模倣しそうな能力があったか?」

男性能力者が呟くと「私も分からない」とため息混じりに女性能力者は言葉を返した。

「私は別に天使信仰が強いわけじゃないし、ミカエルが火を司るくらいしか知らないのよ」

女性能力者の言葉に「確かにな」と男性能力者が言葉を返す。

天使信仰の強い地域に生まれていれば多少なりとも分かるかもしれないが、日本に生まれている以上、天使なんてものは漫画や小説の中でしか知らない者の方が多いだろう。

「とりあえず、私も調べてみなくちゃね」

女性能力者は呟きながら立ち上がり『ウリエル』について調べるために動き出したのだった。

●参加者一覧

ベル(ga0924
18歳・♂・JG
小鳥遊神楽(ga3319
22歳・♀・JG
金城 エンタ(ga4154
14歳・♂・FC
アセット・アナスタシア(gb0694
15歳・♀・AA
イスル・イェーガー(gb0925
21歳・♂・JG
六道 菜々美(gb1551
16歳・♀・HD
セレスタ・レネンティア(gb1731
23歳・♀・AA
蒼河 拓人(gb2873
16歳・♂・JG

●リプレイ本文

〜愚かなる虚偽の大天使〜

「‥‥天使型のキメラ? あたしにはどうだって良いわね。単なる羽根付きの化け物と一緒だから」
 倒すだけね、小鳥遊神楽(ga3319)がため息混じりに呟く。
 今回、能力者が相手をするキメラは『大天使ウリエル』を模倣したもので、既にウリエルが滞在している町には死者が何人も出ているのだという。
「‥‥一般人に被害が‥‥」
 小鳥遊の話を聞いてベル(ga0924)が俯きながら小さく呟く。彼は『人助け』の仕事をメインにしており、今回も一般人に被害が出ているという話を聞いて参加したのだとか。
「天使にしては‥‥悪ふざけが過ぎるようですね」
 金城 エンタ(ga4154)が資料を見ながら呟く。
 そして金城の『天使』という言葉を聞いて「天使か‥‥」とアセット・アナスタシア(gb0694)がぽつりと言葉を返した。
「天使‥‥その名前を聞くとなぜか胸の奥が熱くなるよ」
 アセットは胸の辺りに手を置きながら目を伏せて呟く。
「それにしても天使の姿で人を襲う、悪趣味だよね」
 迷惑な、イスル・イェーガー(gb0925)が言葉を付け足して呟く。
「一応、本部に問い合わせてみたけど追加の情報はないみたいだね」
 蒼河 拓人(gb2873)が資料に目を通しながら呟く。彼は現在能力者達に渡されている情報の他にも情報があれば渡して欲しいと本部に頼んでいた。
 しかし追加情報がないとなると、渡された少ない情報の中で戦わなければならない。
「‥‥大丈夫ですか?」
 セレスタ・レネンティア(gb1731)が、何も言葉を発しない六道 菜々美(gb1551)に問いかける。
「だ、大丈夫です‥‥」
 六道は震える声でセレスタに言葉を返す。その様子を見て「もしかして戦闘は初めて、かしら?」と小鳥遊が問いかけると六道は遠慮がちに首を横に振った。
「戦闘は、これで二度目、です。戦うのは、まだ怖いけど‥‥私が戦う事で、守れる人がいるのなら‥‥きっと平気です」
 知っている人でも知らない人でも誰かが死ぬのは嫌、六道は言葉を付け足して小鳥遊に言葉を返した。
 怖いと思いながらも『誰かのために』と言える六道は強いのだろう。人は『誰かのために』力を振るえる時こそ強くなれるのだから。
「それでは、そろそろ行きましょうか」
 セレスタが呟き、能力者達は『大天使ウリエル』を退治する為に、目的の『町』へと向かい始めたのだった‥‥。


〜大天使ウリエルに支配されし町〜

 まだ町の中には住人が沢山残っており、能力者達は『大天使ウリエル』を倒す前に『住人の避難』という仕事をやらねばならないようだ。
 その為に八人の能力者でツーマンセルを四組作り『敵の足止め班』と『避難誘導班』に分かれて行動する事になっていた。
 敵の足止め班は、セレスタ&ベル、蒼河&小鳥遊の二組。
 避難誘導班は、六道&アセット、金城&イスルの二組となっていた。
「敵キメラはこっちに任せて、貴方達は住人の避難を――お願い」
 小鳥遊が避難誘導班の二組に向けて呟き、蒼河と共に『大天使ウリエル』を探しに向かい始めたのだった。

※敵の足止め班※
「人を襲うのが天使だなんて‥‥俺は認めない‥‥」
 空を移動するウリエルを見ながらベルは小銃『シエラクライン』を構え、小さく呟く。
 そして一度目を伏せ、開きウリエルに銃を向ける。
「‥‥天使が人を襲うのなら、俺は悪魔になってでも人を守り続けます‥‥」
 呟き終わった後にベルはウリエルに向けて発砲する。それは当てる為ではなく、気を引くため。彼の思惑通りウリエルは視線をベル達、足止め班へと向け、勢いをつけて此方へ向かい始めてくる。
 戦闘場所となったのは、町はずれで足止め班は誘導班と連絡を取りながら、住人を避難する為に邪魔にならないように、そしてウリエルが間違っても誘導班たちの所へ行かないような場所を選んだのだ。
「ここでは誘導班に被害が出る事もないでしょう」
 セレスタは呟き『ライフル』でウリエルの翼の付け根、そして足などを狙い撃つ。最初は避けられていたが、ベルが牽制攻撃をしながらセレスタを援護して、セレスタは翼の付け根などに攻撃を行った。
「まさか、それだけで終わるとは思っていないわよね?」
 小鳥遊が呟き『ドローム製SMG』でウリエルの翼を狙って攻撃を行う。最初に翼を狙い撃ち、翼を使えなくしておけば誘導班と合流した時に戦いやすいと感じたからだろう。
「さて、お仕事の時間だ――‥‥」
 蒼河は呟きながら『スコーピオン』を構えて攻撃を行う。
「天使は人の為に在るわけではない。だが、人に仇なす為に在るわけでもない」
 蒼河の攻撃を受けて、ウリエルは蒼河に攻撃を仕掛けようとするが「痛いのは嫌いだよ。よって全力で逃げさせてもらう」と言葉を返し、防戦に入る。
 もちろん陽動班に向かわないようにきちんと気をつけながら。

※避難誘導班※
「ちょっと、どうなっているのよ。何処に逃げればいいの!」
 癇癪を起こしたように女性が金城の服を強く握りながら叫ぶ。キメラがすぐ近くにいて、住人が何人も殺されているのだからパニックになるのは仕方ないと思いながらも金城は困ったように「落ち着いてください」と女性を宥めるように言葉を返した。
「‥‥みなさんはこちらへ‥‥慌てないで、ゆっくりと避難してください。男の人は子供や女性、老人に手を‥‥」
 イスルは住人避難を行いながら皆に聞こえるように話す。しかし中には『自分さえ助かればいい』という住人も少なくないようで、我先にと避難する男性達も見受けられた。
「わ‥‥」
 そんな男性にぶつかられて子供が転びそうになるが、イスルがそれを抱きとめ、子供が転ぶことはなかった。
「‥‥大丈夫? 泣かなかったんだな、偉いよ‥‥」
 泣きそうな目をしながらも、涙を堪える子供を見てイスルは頭を撫でてやる。すると母親らしき女性が「早くこっちにおいで」とイスルに向かって頭を下げながら子供を呼んでいる。
「ここを真っ直ぐ行ってください、全員の誘導が終わったら私達も戦闘に向かいますから」
 アセットが前方を指差しながら住人達に向けて話す――が、避難に集中している為かアセットの話を聞いているのはごく一部の人間だけだった。
 六道もおどおどとしながらではあったが、住人の誘導を行い、なるべく住人に被害が出ないようにと心がけていた。

「これで‥‥全員?」
 アセットが避難誘導した住人達を見ながら呟く。
「‥‥恐らく、金城さん達が町に確認しに行ってるので‥‥すぐ分かるかと」
 六道が呟き、町の方に確認に向かった金城とイスルを待つ。それから数分後に二人が返ってきて「町には誰もいませんでした」と金城がアセットと六道に向けて呟く。
「避難完了‥‥思いっきりやってもいいよ。僕らもそっちに合流する」
 イスルが足止め班に無線連絡を行い、誘導班は避難誘導した住人達に「ここから出ないように」と言葉を残して、足止め班が戦闘している場所まで走り出したのだった‥‥。


〜戦闘開始! 大天使ウリエルVS能力者達〜

「あの世に行きなさい! キメラに待っているのは地獄でしょうけど、堕天使のあんたにはそれが相応よ」
 小鳥遊が『ドローム製SMG』で攻撃を行いながら叫ぶ。
「鉛弾をお見舞いします‥‥!」
 セレスタも小鳥遊の攻撃の後に『ライフル』で攻撃を行い、ウリエルに反撃の隙を与えないようにする。
 そして死角にいた蒼河が『隠密潜行』を使用して、ウリエルの死角から『スコーピオン』で攻撃を行う。
 しかしウリエルも反撃を行おうと持っていた弓を引き、能力者達に攻撃を行おうとするがベルの『フォルトゥナ・マヨールー』がそれを制止した。
「奪うだけの貴方に‥‥好き勝手はさせません‥‥」
 ベルが呟き、次の攻撃に移ろうとした時――避難誘導班が合流して、対ウリエル戦は本格的に始まったのだった‥‥。

 最初に攻撃を仕掛けたのは金城だった。彼は小銃『S−01』でウリエルの翼を攻撃する。敵であるウリエルが上空からの攻撃を得意としているのは資料を見ても分かった。
 しかし金城はそれの他に『遮蔽物が無効かもしれない』という心配も持っていた。
「続いていきます!」
 六道が叫び、洋弓『アルファル』で攻撃を行い、ウリエルの翼の片方を打ち崩す。
「ベルさん、奴の翼の付け根に攻撃集中‥‥タイミング合わせます」
 セレスタがベルに向けて話して、ベルも攻撃を合わせる為に構える。そしてセレスタとベルの二人によって残されたもう片方の翼が崩され、ウリエルは地に落ちた。
「天の遣いを騙る者よ、今こそ己が裁かれる時だ‥‥」
 蒼河が小さく呟き、地に落ちたウリエルを攻撃に向かう接近能力者を援護するために『スコーピオン』へと手をかけた。
「貴方は天使じゃない‥‥人々を混乱に陥れ、あまつさえ手に掛けた‥‥アセット・アナスタシアの名において貴方を斬る!」
 アセットが『コンユンクシオ』を構え、蒼河の援護を受けながらウリエルに斬りかかる。最初の攻撃は避けられたのだが、スナイパー達による援護でウリエルの動きを止め、その隙にアセットが『コンユンクシオ』で攻撃を行う。
 今回は銃器を武器として扱う能力者が多いため、接近攻撃をメインにするアセットは動きやすかった。
 しかしウリエルも負けてはおらず、資料にあった『光の矢』で能力者達を攻撃してくる。幸いにもウリエルが負傷しているせいで当たる事はなかったが、威力はそれなりのものでマトモに受けてしまったらかすり傷ではすまないだろう。
「強力な攻撃も当たらなければ意味がないのよ」
 小鳥遊は呟き『強弾撃』と『影撃ち』を使用してウリエルに攻撃を行う。
 そして、ウリエルが怯んだ瞬間を金城が見逃す事をせず『トランシーバー』で能力者全員に「これから閃光手榴弾を使用します」と伝えた。それを聞いた能力者達は自分達も巻き添えを受けないように素早くウリエルとの距離を取り身構える。全員の応答を確認して、金城が『閃光手榴弾』を使用する。
「私は‥‥神に逆らい、使徒を殺めてでも‥‥人を‥‥帰る場所を‥‥愛すべき笑顔を‥‥守り続けます!」
 金城は叫びながら、光に目が眩んだウリエルとの間合いを詰めて『氷雨』を取り出し、ウリエルの背後から急所と思える場所に突き込んだ。彼の攻撃が効いたのだろう、ウリエルはぐらりと態勢を崩し、今にも倒れそうになる。
「‥‥‥‥今ッ! 撃ち抜けぇっ!」
 六道が叫びながら洋弓『アルファル』を構え『影撃ち』を使用しながらウリエルに攻撃を行った。
「翼をもがれた天使は堕ちるしかない、貴方も堕ちて罪を償えぇぇっ!」
 アセットが叫び『両断剣』を使用しながら『コンユンクシオ』を振り上げて全力でウリエルを攻撃する。攻撃を受けた後、ウリエルは目を見開きながら倒れる素振を見せたが、諦め悪く、アセットに一撃を与えようと手を振り上げる――が蒼河、セレスタ、ベルの射撃によってそれは実行される事はなく、ウリエルは地面に突っ伏して絶命していった。
「‥‥悪いけど‥‥神様とか‥‥天使とか‥‥あんまり好きじゃないんだ」
 ウリエルを撃破した後、イスルが小さくウリエルに向けて呟く。しかし既に物言わぬ死骸となっているウリエルなので、返事は返ってこない。


〜大天使は堕ち、人々に平和を〜

 ウリエルを退治した後、能力者達は避難させていた住人を町まで戻した。住人達は町へ戻るとそれぞれが町の復興のために動き出し、セレスタもそれを手伝う事にした。
「紅い月から裁きの天使ですか‥‥」
 セレスタは空を見上げながら呟き、瓦礫を退かしたり、割れた硝子の破片を集めたりなどを行い始める。
「‥‥‥‥もし天使がいるなら、バグアをその御力で一掃してくれても良いのに、と思うのは涜神が過ぎるのかしら?」
 小鳥遊が苦笑交じりに呟くと「本当に神や天使がいるのならば、助けてくれるかもしれませんね」と金城が言葉を返した。
 今の時代、どれだけの人間が『神様』に祈りを捧げているのだろうか。もしかしたら祈っても祈っても変わらない状況に祈る事を止めた人もいるかもしれない。
「試練という名の苦しみを与えるのが神ならば‥‥私はそんなの認めない‥‥悪と言われても今、ここに生きる人を守りたいです」
 アセットが呟くと「僕もです」と金城は言葉を返した。
「所詮はキメラ、どんなに姿を模倣しようとホンモノにはなれないよ」
 蒼河が呟き、能力者達はある程度片づけを手伝った後、報告のために本部へと帰還していったのだった。


END