●リプレイ本文
〜暴走記者・再び〜
「久しぶりに‥‥真里さんと‥‥会う事になりますか‥‥無茶をするのは‥‥いつもの事ですが‥‥今回は‥‥一言も無しですか?」
やれやれ、と神無月 紫翠(
ga0243)がため息を漏らしながら呟く。
今回はクイーンズの暴走記者・土浦 真里(gz0004)がキメラが現れたという場所に出かけた事から始まりを告げている。
「記者さんが何を考えているか知らないが、自分の身を危険に晒してもやりたい事がある、という事か」
黒川丈一朗(
ga0776)が「まぁそれを言えば、クイーンズ自体もそうなんだろう」と言葉を付け足しながら呟く。
「マリさんも困ったものね‥‥何か困った事があったら、親友であるあたしに必ず相談して‥‥って前にきちんと頼んでいたのに‥‥きちんと片がついたら、お説教してあげないといけないわね」
口では呆れたように呟く小鳥遊神楽(
ga3319)だったが、親友のマリが危機に陥っているかもしれないという状況を見逃せなかった。
「見え見えの嘘を吐いてまで隠そうとする病院絡みの事‥‥‥‥念の為に言っておきますが私は無関係ですよ?」
玖堂 鷹秀(
ga5346)が自分に向けられた視線に気づき、満面の笑みを浮かべつつも背中に黒いオーラとプレッシャーを漂わせながら呟く。
「‥‥全く、真里姐さんも無茶しますね‥‥」
はぁ、とため息を吐きながら櫻杜・眞耶(
ga8467)が大げさに肩を竦めて呟いた。
「マリさんがどんな人か楽しみ‥‥なんて言ってられない状況‥‥」
椎野 のぞみ(
ga8736)が今回の任務を行う能力者達に「宜しくお願いします〜」と挨拶を行いながら苦笑する。
「うちも真里はんがどないな人か分からへんけど、向かっている病院にキメラが出た、っちゅう事なんで、守りにきたで」
樹村・蘭(
gb1798)は「あ、初めまして。これが初陣なんで宜しゅうに」と言葉を付け足しながら能力者達に挨拶を行う。
「はぁ‥‥無茶をする人だとは聞いていましたが、キメラがいる場所に一人で行くなんて‥‥」
芝樋ノ爪 水夏(
gb2060)がため息混じりに言葉を漏らす。能力者達はマリの携帯電話でどこいにいるのかなどを問いかけたりしたのだが、誤魔化したりして本当の事を言わないので早急にマリを探すことにしたのだ。
「キメラが出現しているのであれば、悠長な事も言ってられませんし、詳しく聞けなくとも黙って信じてあげるのも、恋人の務めだと思いますから」
玖堂が呟き、能力者達はマリが向かった『山城病院』へと向かい始めたのだった‥‥。
〜二班に分かれて行動する能力者達〜
病院へのルートは二通りで、そのルート毎に能力者達は班を分けて行動する事になった。
A班・神無月、櫻杜、椎野、樹村の四人。
B班・黒川、小鳥遊、芝樋ノ爪、玖堂の四人。
「さて‥‥急いでマリさん、そしてキメラを見つけなくちゃね」
小鳥遊が呟き、能力者達は二手に分かれて行動を開始し始めたのだった。
※A班※
「それにしても一人で向かうなんて、凄いイノシシ記者さんだよね」
椎野が思い出したように呟くと「最近はまだマシになった方だったんですけどね」と櫻杜が苦笑を交えて呟く。
(「‥‥これでマシになった方なんや‥‥」)
樹村が心の中で呟く。確かに最近はマシになった方なのだが、今まで少しだけ大人しかった分が今回爆発してしまったような感じである。
「‥‥それにしても‥‥真里さんは‥‥何処にいるんでしょうね?」
神無月が呟くと「うち、ビーストマンやけど鼻は利かへんで」と樹村が冗談混じりに呟いた――のだが他の三人からは寒いギャグだと思われて「え」と呟かれてしまう。
「とりあえず『探査の眼』を使用して、周りに気をつけておきますね」
椎野が呟きながら『探査の眼』を使用する。
「‥‥あれ――‥‥」
椎野が呟き、他の三人の能力者が「どうしたの?」と問いかけると少し先を指差しながら椎野が言葉を紡ぐ。
「‥‥マリさんより先にキメラを見つけた――みたいです」
椎野が苦笑しながら三人に告げる。そして櫻杜はB班にキメラを発見した事を伝えて、マリ捜索を続けるようにと連絡をいれ、まだマリと接触を行っていないキメラの牽制攻撃を開始する事にしたのだった。
※B班※
「A班がキメラと接触したみたいですね、此方も早くマリさんを見つけなければ‥‥」
玖堂が連絡を受けた後に呟くと「こっち側のルートから行っていれば良いのですが‥‥」と芝樋ノ爪が心配そうに呟く。
「それにしても‥‥本当に何のために病院なんかに‥‥」
小鳥遊がため息を吐きながら呟く。
「それは本人にしか分からないだろうな‥‥しかし、早く記者さんを見つけて、向こうの応援に行かないとな」
黒川が呟くと他の能力者達も首を縦に振って、能力者達は歩く足を少しだけ速めた。
それから十数分ほど歩いた頃だろうか、見覚えのある後姿を見つけて「おや、マリさんじゃないですか」と玖堂が後姿――つまりマリに話しかけた。
「え――――げっ、な、な、何でここに‥‥」
マリは振り向き、誰が話しかけてきたかを確認すると明らかに動揺を見せた。
「久しぶりだな、記者さん。こんな所で何をしているんだ?」
黒川が話しかけると「さ、散歩?」と疑問系で言葉を返した。
「奇遇ですねぇ、これから私たちはキメラ退治に行くのですが‥‥まさか独自ルートで情報を得て取材に行くつもりではないでしょうね!?」
玖堂が笑顔、しかも明らかに黒いオーラを纏った笑顔でマリに話しかけると「そ、それはないよ?」とバッグを見せながら「道具持ってきてないもん」と引きつった笑顔で言葉を返す。
「キメラがいる場所をうろうろするなんて、何を考えているんですか‥‥」
芝樋ノ爪が呆れ気味に呟くと「え。キメラがいるなんてシラナカッタヨー」とわざとらしい口調でマリは言葉を返した。
「とりあえず言い訳は後から聞くとして、まずはキメラ退治ね。A班と合流しましょう」
小鳥遊が呟き、B班は現在進行形でキメラと交戦中のA班の元へと急いだのだった。
〜戦闘開始! VS ミノタウロス〜
「これは‥‥また馬鹿力だな‥‥?」
神無月はミノタウロス型キメラの攻撃を避けながら小さく呟き、ミノタウロスの斧が道路にめり込んだ隙を突いて、長弓『黒蝶』で援護攻撃を仕掛ける。
「斧を振り回すだけしか能がないのかい!?」
櫻杜が『蛍火』と『菖蒲』を振り回してミノタウロス型キメラに攻撃を仕掛け、彼女と入れ替わりで椎野が『バスタードソード』でミノタウロス型キメラに立ち上がる暇を与えずに攻撃を仕掛けた。
「まずは――足を狙おか」
樹村が『ディガイア』を構え『瞬速縮地』で一気にキメラまで詰め寄り、足を狙って攻撃を行う。
その時に別行動をしていたB班が合流して、本格的にキメラ殲滅の戦闘が開始した。
「援護してやるが、あまりダメージは、期待するな」
神無月が呟き、後ろに下がりながら長弓『黒蝶』で攻撃を仕掛ける。
そしてサイエンティストの玖堂が戦闘に参加した事により、彼は『練成弱体』を使用してミノタウロス型キメラの防御力を低下させる。
そこへ小鳥遊が『スナイパーライフル』を構えて『急所突き』を使用して攻撃を仕掛ける。流石にミノタウロスを模倣しているだけあって、スピードは普通以下であり、ミノタウロス型キメラは能力者達の攻撃を避けられずにまともに攻撃を受けている。
「ええ加減死んどき!」
樹村が『瞬速縮地』でミノタウロス型キメラへの距離を縮めて『ディガイア』で攻撃を行って、後退した時に『真音獣斬』で遠距離攻撃を行う。
「これが『ヒット&アウェイ』ちゅうやつや! 大阪根性、なめたらあかんで! 覚えとき!」
樹村は叫び、芝樋ノ爪が『刀』でミノタウロス型キメラに攻撃を行う。その際にマリの位置を確認して、ミノタウロス型キメラがマリに対して攻撃を行わないかを十分に気をつける。
そして黒川はミノタウロス型キメラの背後に回りこんで、腎臓の位置を狙って攻撃を行う。いくらミノタウロスを模倣しているからと言って、上半身は人間と同じ身体の形をしているのだから激痛を与えられる筈だ――という考えで黒川は攻撃を行っていた。彼の思惑通り、ミノタウロス型キメラは苦しさのためかうめき声のようなものをあげて、手にしていた斧を地面に落とす。
それをチャンスだと思った小鳥遊は『強弾撃』と『影撃ち』を使用してミノタウロス型キメラに攻撃を行い、神無月も小鳥遊に合わせるように長弓『黒蝶』で援護攻撃を行った。
椎野は『バスタードソード』を振り回しながら攻撃を仕掛け、黒川はミノタウロス型キメラの攻撃を避けながら一撃、また一撃と地道に攻撃を行っていく。
ミノタウロス型キメラも反撃として拳を強く握り、能力者目掛けて攻撃を行うのだが、元々の素早さの低さ、そして傷を負って体力などが低下しているので、能力者達はそれをいとも容易く避ける。
「そろそろ終いにしよか!」
樹村が呟き、攻撃を仕掛けると、他の能力者達も彼女の攻撃に合わせるようにして、それぞれが攻撃を行い、無事にミノタウロス型キメラを退治する事に成功したのだった。
〜お仕置きタイム? 何で病院に? 〜
「そ、それじゃあ‥‥そういう事で〜‥‥」
手をしゅぱっと挙げて、逃げようとするマリの服を玖堂が掴み「話は終わっていませんよ」とマリを逃がさないように追いつめる。
「お久しぶりですね‥‥まったくこれほど‥‥皆に心配かけて‥‥何をしているんですか?」
神無月が呆れたような視線をマリに向けて話しかけると「そ、それは‥‥」と口ごもる。
「俺は『何で此処に来た?』という事で怒るつもりはない――が『援護を呼ばなかった』という事については少し説教をしたい気分だな」
黒川がため息を吐きながら呟く。
「自分の命は何の為のものか、なんて答えはお前のものだ。だがな、一人で立ち向かおうとするんじゃない。お前の命はお前一人のものじゃないんだから」
黒川の言葉に「‥‥ゴメンナサイ、ジョーさん」とマリが珍しく反論もしないで素直に謝る。
「さて、マリさん。同じ職場の仲間や親友であるあたしに黙って何をしていたのか、正直に話してくれるわね?」
小鳥遊が笑顔でマリに問いかけるが、目は笑っていなく、黒いオーラさえ後ろに見える暗黒笑顔にマリは「ひぃっ」と少したじろいだ。
「‥‥言いましたよね? 次に無理をしたら姐はんの世話に日参すると!」
櫻杜が少し大きな声で叫ぶと「で、でも今回のはね?」とマリが言い訳を始める。しかし「問答無用!」と櫻杜はマリの言葉を遮る。
「何があったかはわからへんけど、無茶したらあかんで? あんたを心配してくれる人がおるんやからな?」
樹村の言葉に「そうなんだけど‥‥今回はちょっと」とマリが俯きながら言葉を返す。
「一体何があったんですか? 私はもう少し皆さんを信頼しても良いと思います」
芝樋ノ爪がマリに向けて呟く。
「事と次第によっては怒るかもしれないけれど、正直に話してくれたら、情状酌量の余地はあるわよ?」
小鳥遊の言葉に、マリはため息を吐いて「実は‥‥」と話し始めた。
「この先の病院‥‥山城病院に十五歳の男の子がいるんだ――能力者だった子供が」
「‥‥能力者、だった?」
マリの言葉に違和感を覚えて神無月が問いかけると「日常生活には問題ないけど‥‥能力者としてはもう‥‥」とマリが言葉を返した。
「その子はカメラマンになるのが夢だって言ってたんだけど、家族をキメラに殺されて‥‥自暴自棄になっている時に私と出会ったんだ」
だから、これ――とマリはバッグの中身を能力者達に見せる。バッグの中にはマリが今までに取材した場所の風景写真や人物写真が詰め込まれている。
「私が撮った海の写真を見て、あの子が綺麗だねって笑ったの。だから色んな写真を見せて、能力者じゃなくて、目指していたカメラマンとして生きていけるようにしたかったの」
どうしても助けたかった、とマリは言葉を付けたし、病院へと向かう。能力者達も病院までついていき、何故マリがそこまでするのかという理由を病室の前で知る事が出来た。
『402号室 土浦 草太』
偶然の一致だろう、だけどマリは兄と同じ名前の少年を放っておく事など出来なかったのだ。
「‥‥えぇと、怒ってる?」
マリが問いかけると「二度と同じ事を繰り返さないってお兄さんに誓えたら許してあげるわ」と小鳥遊が言葉を返す。
うぅ、とマリは悩みながらも「‥‥誓う?」と疑問系で言葉を返し、またこれからもこういう事があるのかもと思うと小鳥遊は頭が痛くなった。
「今回に関しては怒るとか呆れるというより‥‥寂しかったです」
玖堂がマリの手を自分の手で包みながら真っ直ぐ見つめ「余程の事がなければいつでも真里さんの味方でありたいと思っています」と言葉を付け足す。
「ですから無理と思うような事があっても、まずは話してみませんか? ね?」
諭すように問いかけ「うん」とマリが言葉を返す。
「よく出来ました」
二人は指きりをして、玖堂が不意打ちで額にキスをする。
「おおおおおっ! 人前でなんと言うことをなさるか! お前様は!」
動揺してマリがドーンと突き飛ばし、他の能力者も「‥‥うわぁ」とした哀れみの目で玖堂を見たのだった。
そして本部に帰還する高速艇の中で、椎野が予め用意していた手作りの抹茶蒸しケーキと玉露を能力者とマリに振舞う。
「ぐ――っ」
うめき声を上げたのは樹村だった、彼女が食べているケーキも『抹茶蒸しケーキ』のはずなのだが‥‥?
「あ、それワサビで作ったケーキ♪」
こっちが本物ね、と椎野は楽しそうな表情で樹村に本物の抹茶蒸しケーキを渡したのだった。
そして、本部に帰還して、能力者達は報告を、マリはクイーンズ編集室に帰宅したのだが‥‥編集室の玄関で仁王立ちで待っていたチホによってマリは数時間の説教をくらったのだとか‥‥。
END