タイトル:Saga―Lokiマスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/09/16 03:23

●オープニング本文


ずる賢い者、トリックスター、狡知の神――他にも『彼』を現す言葉は幾つも存在する。

そんな異名を持つ神、その名は‥‥ロキ――。

※※※

ロキは悪戯好きの神で、神々の敵であるヨトゥンの血を引き継ぎながらもオーディンに力を認められてアースガルズに住んでいた――これは北欧神話を読めばすぐに分かる事なのだが‥‥。

「ロキぃ? まぁた有名な神様が現れたモンだな」

男性能力者が今回現れたキメラ『ロキ』の資料を見ながら呆れたように呟く。

「外見は子供の姿をしているみたいね、狡知神という名に相応しい残虐ぶりを見せて近隣住民を苦しめているみたいね」

女性能力者がため息混じりに呟くと「残虐ぶり?」と男性能力者が聞き返す。

「‥‥母親の前で幼い子供を八つ裂きにしたそうよ、可哀想に‥‥母親も自殺したって聞いたわ」

女性能力者の言葉に「ぐ‥‥」と男性能力者は口元に手を当てて言葉を詰まらせる。資料の中にはその時に撮られたであろう写真も入っていたからだ。

「‥‥能力者に頼むために住人が写真を撮ったそうよ、泣きながら『お願いします』ってこれを渡しに来たわ」

女性能力者が資料を纏めながら呟く。

「ロキ討伐に向かう能力者が決まったらしいから、この資料を渡してくるわ」

女性能力者は呟き、資料を渡すためにロキ退治に向かう能力者達の所へと歩き始めたのだった。

●参加者一覧

ベル(ga0924
18歳・♂・JG
ネイス・フレアレト(ga3203
26歳・♂・GP
NAMELESS(ga3204
18歳・♂・FT
旭(ga6764
26歳・♂・AA
九条・縁(ga8248
22歳・♂・AA
ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751
19歳・♂・ER
御巫 雫(ga8942
19歳・♀・SN
城田二三男(gb0620
21歳・♂・DF

●リプレイ本文

〜悪神・ロキを模したキメラ〜

「あれから二ヶ月‥‥ついにイロモノ亭主のお出ましか」
 九条・縁(ga8248)がポツリと呟く。彼が言っているのは二ヵ月ほど前に退治した神話上ではロキの妻であったシギュン型のキメラのこと。
 その時から『ロキ』というキメラが現れるであろうとは能力者達も考えていたらしい。
「しかし『ロキ』ですか‥‥変身だけはしないで欲しいところです。写真を撮ってくれた人達の為にも‥‥」
 旭(ga6764)が『ロキ』の資料に目を通しながら小さく呟く。いくら子供の姿をしていても残虐非道な行いを許す事は出来ない――旭は心の中で呟く。
「資料を見る限り、外見的特徴に乏しいキメラを『ロキ』と呼ぶくらいだ。それに関連する特徴があるのかもしれぬ。特にロキは『変身者』という異名で呼ばれるほど、変身能力にも長けている‥‥化かされぬようにせねばな」
 御巫 雫(ga8942)が呟く。
「ロキの姿を見失わないように、変身能力を持っていても見分けがつくようにマーキングとしてペイント弾を使おうと思っています」
 ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751)が『ペイント弾』を見せながら呟く。
「私も同じ事を考えていた」
 御巫も『ペイント弾』を取り出してユーリに見せる。
「‥‥ロキ対策は大丈夫として‥‥問題は戦闘する場所ですね‥‥」
 ベル(ga0924)が地図を見ながら呟く。
 今回の戦闘場所は今も人が住んでいる場所なので、思い切り戦闘を行うわけにも行かない。キメラを倒す事は出来たけれど、町も破壊してしまいました――では洒落にならないのだから。
「地図上で見ても詳しい事は決められませんし、現地に到着してから決めましょう――うわっ‥‥」
 ネイス・フレアレト(ga3203)は呟きながら机に足を引っ掛けて転びそうになる。
「‥‥大丈夫ですか?」
 ベルが問いかけると「大丈夫です、決してドジっ子ではありません」とネイスはドジっ子を否定しながら言葉を返した。
「それにしても今回のキメラは酷い事しやがるな」
 NAMELESS(ga3204)が資料にある写真を見てため息混じりに呟く。しかも八つ裂きにされて殺されたのは子供。子供が好きな彼としては許せないところもあるのだろう。
「‥‥親の目の前で子供を引き裂いた、か‥‥フフフフ‥‥そうだよな‥‥悪役はそうでないとな‥‥」
 実に殺しがいのありそうな化物だ、城田二三男(gb0620)が俯きながら小さく呟く。
「‥‥しかし‥‥ガキの姿をしてるなんてな‥‥連中も恐怖というものの認識を改めてきたという事か? ‥‥まぁどんな姿をしてようが‥‥キメラはキメラ‥‥関係ないがな‥‥」
 城田は写真を資料が纏められている茶封筒に入れながらクッと笑みを浮かべて呟く。
「それじゃあ、ロキの奴を奥さんの所に送ってやるか!」
 九条が呟き、能力者達はロキの潜む町へと向かい始めたのだった‥‥。


〜静謐な町、潜む悪神〜

「‥‥静か、ですね‥‥」
 問題の町に到着した後、ベルが町を見渡しながら小さく呟く。キメラが現れた町、という事である程度の静けさは予想していたが、想像を超えるほどの静けさだった。
「子供が八つ裂きにされる事件が起きていますから、無理はないのでしょうけど‥‥ここまで静かだと逆に不気味ですね」
 ベルの言葉にネイスが言葉を返すと「‥‥能力者の人ですか‥‥」と若い男性が能力者達に話しかけてきた。
「はい、今回のキメラを退治する為にやってきました。失礼ですが貴方は‥‥?」
 旭がちらりと男性を見ながら問いかけると「‥‥住人です」と男性は短く言葉を返した。
「‥‥最近、妻と子供を亡くしました‥‥」
 男性のその言葉を聞いて能力者達は互いに顔を見合わせる。ロキの被害にあった住人は子供だけで、その母親は悲しみに耐えかねて自らの命を絶ったと資料には書いてあった。
 つまり――ロキに惨殺された子供の父親が目の前に立っている彼なのだろう。
「母が能力者に頼みに行って、来るのが今日だと聞いていましたので待っていたんです」
 男性は呟き、地面の上に座って土下座をするような格好で「どうかアレを倒してください」と懇願してきた。
 いきなりの土下座に能力者達も驚き、目を大きく見開く。そしてユーリが「立ってください」と手を差し伸べながら話しかけた。
「そんな事をしなくても俺達はキメラを退治する為に来たんですから」
「そうだ、それよりも住人である貴様に聞きたい事がある」
 御巫が呟くと「聞きたいこと?」と男性は言葉を返してくる。
「この町に広い場所はあるか? 空き地でも公園でも何でもいいのだが‥‥」
 戦う場所として広い場所が必要とされるため、御巫は住人である男性に聞くのは早いと考えたのだろう。
「えぇ、空き地ならいくつか‥‥」
 男性が言葉を返すと「戦闘は問題なさそうだな、問題は誘導か‥‥」と御巫は独り言のように小さく呟く。
「‥‥それじゃ、二人一組で住人から聞き込みをしようか、ロキの特徴とか、どの辺で見かけたとか聞ければいいと思うし‥‥」
 城田が呟き、能力者達は予め決めていた人と町の方へと歩いていく。その中でベルが「‥‥あ‥‥」と思い出したように呟き、男性の方を向く。
「‥‥お子さんと‥‥奥さんの仇は取りますから‥‥貴方も避難していてください」
 ベルが呟くと男性は驚いた表情を一瞬見せた後「どうかお願いします」と深く頭を下げて町へと向かっていく能力者達を見送ったのだった‥‥。

※ベル&ネイス※
「僕が見たのは茶色い髪の毛の子供だったよ」
 聞き込みを始めて、最初に訪れた家の子供が二人に向けて言葉を投げかけてくる。二人はロキの外見的特徴などを聞いていたのだ。
「でも真弓ちゃんは赤い髪だったって言うんだ。僕が見たのは茶色だったのに‥‥」
 真弓ちゃんというのは目の前の少年の友人なのだろう。しかし二人が気になったのは意見の相違についてだった。茶色と赤を見間違えるはずもない。もしかしたら2体のキメラがいるのか、とも思ったが子供を八つ裂きにしたようなキメラが2体いるのならば、この町の状況はもっと悲惨だっただろうと考えた。
「‥‥ということは、考えたくはないですけど‥‥」
 ベルが嫌な予想が頭によぎり、ネイスに言葉を投げかける。
「やっぱり‥‥変身能力を持っているのかもしれませんね」
 ネイスも同じことを考えたのか、口元に手を置きながらベルに言葉を返す。
「他の班にも伝えて気をつけてもらうようにしましょうか‥‥」
 ネイスは呟き『トランシーバー』で他の能力者達にも注意を呼びかけたのだった。

※ユーリ&NAMELESS※
「何処で見知らぬ子供を見たのか、俺に教えてくれないかな?」
 子供が怖がらぬようにユーリは少し笑みを見せながら、母親の後ろに隠れている少女に話しかけた。
 ちなみにNAMELESSは子供が泣かないように家の外に出ている。外で暇を持て余しているところにネイスからの通信が入り、ロキが変身能力を持っているかもしれないという事が知らされた。
「‥‥マジかよ、面倒な能力持ってんなぁ。楽しいから俺は構わないけどな、けけけけけー!」
 外で何やら楽しげな笑い声が聞こえ、ユーリが「どうしたんですか?」と問いかける。どうやら彼の方も聞き込みは終わったようだ。
「変身能力持っているかもしれねぇって通信が来たんだよ」
 NAMELESSの言葉に「そうですか‥‥」と複雑そうな表情をして呟く。
「それじゃ、ロキが出現する場所も皆に知らせないとですね」
 ユーリは呟き、ロキがいつも潜んでいる場所を知らせるためにトランシーバーを手に取ったのだった。

※旭&九条※
「残念ながら変身能力を持っているみたいですね‥‥」
 旭が資料の入った茶封筒を見て、ため息混じりに呟く。ロキの変身能力、そして潜伏場所が分かったのはよかったのだが変身できるとなればどんな姿で攻撃を仕掛けてくるか分からない。
「ま、なるようにしかならねぇさ」
 適当に答える九条だったが、実際問題として『なるようにしかならない』という事しか出来ない現状であり「‥‥そうですね」と旭も言葉を返した。
 その時だった――背後から鋭い殺気を感じて、二人は勢いよく振り向く。すると、そこには不気味な笑みを浮かべた子供が一人立っていた。
「‥‥なぁ、念のため聞くが‥‥ロキが現れる場所って‥‥」
 九条が『クロムブレイド』を構えながら旭に問いかける。旭は地図を開いて、仲間が知らせてきた場所を確認して「‥‥ここ、ですね」と苦笑気味に言葉を返した。
 旭は苦笑しながらも小銃『S−01』を構えて『ペイント弾』を使用する。ロキが変身能力を持っている可能性が高い以上、何もせずに見逃してしまい、別な姿で近寄られても困ると考えたからだ。ペイント弾はロキの頭に命中し、ロキが気持ち悪そうに頭に手を伸ばしている隙に九条が攻撃を仕掛ける。
 ロキは反撃として爪で九条を切りつける。咄嗟に九条が後ろへ避けたのが良かったのか大きなダメージを受ける事はなかった。
「あ!」
 旭が少し大きめの声で叫び、九条がロキを見ると二人に背中を見せて素早い足で逃げていった。
「‥‥逃げ足は速いな、とりあえず空き地で待っていて誘導されてくるのを待つしかないか」
 九条も振り上げていた『クロムブレイド』を下ろし、ため息混じりに呟いたのだった。

※御巫&城田※
「ロキが現れたそうだな、方向的に此方の方らしい。変身能力を持っているようだからどんな姿で近づいてくるか分からないな」
 御巫が『ペイント弾』を装填してロキにマーキングが出来るように準備を行う。
「‥‥他の能力者は誘導地点に向かっているみたいだ‥‥俺達で何とか誘導をしないとな‥‥」
 城田が呟き、ロキが近づいて来ないか警戒を強める。そして――公園の水場で頭を洗っている子供を見つける。城田が不審気に子供を見ると、頭にべっとりとペイント弾の塗料が付着していた。間違いなくあの子供がロキだと判断した二人はすぐさま攻撃に移れる準備を行う。
 最初に行動を開始したのは御巫で、ペイント弾をロキ目掛けて放つ。塗料を落とす事に専念していたロキは気がつかなかったのか背中にべっとりと塗料が広がる。
 そして城田が「‥‥最近のガキは随分雰囲気が変わったんだな」と呟きながら『100tハンマー』で攻撃を仕掛ける。
 もちろん牽制攻撃で、城田と御巫は攻撃を行い、ロキの攻撃を避けながら目的の空き地へと誘導していく。
 そして目的の場所に到着すると城田が『100tハンマー』を持ち替えて「‥‥とりあえず痛みというものを教えるとするか」と呟いたのだった。

〜ロキを倒す為に〜

 城田と御巫が誘導してきたロキを倒す為に、能力者達はロキが逃げられないように囲むようにして戦う事にしていた。
 最初に攻撃を仕掛けたのは後衛のベルで『フォルトゥナ・マヨールー』でロキを目掛けて発砲する。ベルの攻撃がロキに当たる寸前にネイスが動き出し、攻撃が当たると同時に逃げる隙を与えないように『オンラッシュ』で攻撃を仕掛ける。
 だが、流石にロキを模してあるだけあって戦闘能力はそれなりに強いらしく、ネイスの攻撃を受けて踏ん張った後、反撃として爪で引き裂く攻撃を行う。
「危ない!」
 ユーリが『クルメタルP−38』でロキの手を狙い、銃弾が当たったロキの手はネイスの肩と頬を掠める程度に治まった。
「けけけけけー! 来い、贋作」
 NAMELESSが『ロングスピア』を構えて叫ぶとなぎ払うように攻撃を仕掛ける。だけどロキはジャンプをして攻撃を避けた――がそれを読んでいた旭がロキの着地と同時に攻撃を仕掛ける。
「外見が子供でも中身はとびきり残虐なキメラ‥‥バグアも酷いものを作りましたね」
 攻撃を受けて目をギラつかせているロキに向けて旭が小さく呟く。
「子供の姿でコソコソ隠れ、逃げ回る姑息で哀れなキメラよ、その間抜け面を余計に見られなくしてやろう」
 御巫が呟き小銃『バロック』で射撃を行う。だがその攻撃は避けられ、ロキは御巫を標的として行動を開始する。
 それを見たユーリはマーキング用に用意していたペイント弾をロキの顔目掛けて放つ。塗料がロキの目に入ったのか、攻撃を止めてロキは顔を抑える。
 視力がマトモに働かない状況をチャンスだと察知した能力者達は、ロキにトドメを刺すためにそれぞれ武器を構える。
「必殺技『暁』――行きます」
 旭は呟くと『急所突き』『紅蓮衝撃』『豪破斬撃』を使用してロキに攻撃を仕掛ける。
「‥‥く・た・ば・れ」
 旭の攻撃が終了すると城田も『100tハンマー』を強く握り『流し斬り』と『両断剣』を使用してロキを攻撃する。
「火は既に消えた‥‥今更『火花』如きがでしゃばるな‥‥」
 NAMELESSは低く呟き『ロングスピア』で攻撃を行う。
 そしてベルが『フォルトゥナ・マヨールー』で攻撃を行い、九条が援護を受けてロキの胴体目掛けて斬りつける。
「俺は生涯男相手には清い体でいたいんだよ!」
 神話上のロキの性質を調べていたのか、九条が叫びながら斬りつけ、悪神・ロキのキメラを無事に倒したのだった‥‥。


〜安らかに眠れるように〜

 ロキを倒した後、町の住人達が避難している場所へ能力者達は赴き、全てが終わった事を告げた。
 心から喜ぶ者がほとんどだったが、子供を惨殺された父親だけは複雑そうな表情を見せていた。
「‥‥あの、元気を出して――とは言えませんが‥‥その‥‥」
 かける言葉が見つからなかったのか、ベルが少ししどろもどろで話しかけると「気にさせてしまってすまないね」と男性は言葉を返してきた。
「別に君達がもっと早く来てくれていたら、とか思っているわけじゃないんだ。町の不安は取り除かれたけれど‥‥俺にとっては代償が少し大きすぎたから複雑でね‥‥」
 子供のものであろうおもちゃを持って男性は困ったような笑みを浮かべて答えた。
「これから墓参りに行くんだよ、もう全部終わった、仇は取ってもらったぞ――って報告するために」
 男性は呟き、立ち上がると「本当にありがとう」という言葉を残して避難所から出て行った。
 そして男性の後姿を見送った後、能力者達も本部に報告するために帰還していったのだった‥‥。


END