●リプレイ本文
〜 HEY! 愉快で爽快なキメラ参上!? 〜
「今回、小学校に乱入したのは不良二人だ。きちんと躾けないとな」
緑川 安則(
ga0157)が学校の見取り図とキメラ情報を見ながら小さく呟く。
今回現れたキメラは二体で、昔風の不良を摸倣した男性型と女性型だった。
「バグアも何を考えているんだか‥‥まぁ、そんなキメラはさっさと片付けるのが一番だよね」
香倶夜(
ga5126)が苦笑しながら呟く。彼女が呆れるのも無理はない。何のために生み出されたのか全くと言っていいほど分からないキメラなのだから。
「でも懐かしい、実に懐かしい。俺が若い頃はそういう連中が幅を利かせてたよな〜、漫画の中でだけど。現実には一部の人しかやってなかったし」
九条・縁(
ga8248)が呟く。彼は『若い頃』と言っているが、まだ十分『若い』部類に入ると他の能力者達は口にこそ出さなかったが、心の中で呟いた。
「‥‥今回のキメラは非行型ですか‥‥理解しかねますね」
紅 アリカ(
ga8708)が苦笑しながら呟くと「飛行型キメラですか? 空飛ぶキメラはそんなに珍しくないような‥‥」と加賀 弓(
ga8749)が首を傾げながら不思議そうに呟く。
「‥‥言い方は同じだけど、字が違うみたい。飛行型ではなく『非行型』よ」
紅の言葉に加賀は目を瞬かせながら考え込むようにして「あぁ! そういうキメラですか」と手を叩いて納得したように呟く。
「不良風キメラ‥‥ねぇ‥‥デンジャーな喧嘩になりそうだわ‥‥」
楓姫(
gb0349)が昔、自分が『不良学生』として過ごしていた時期を思い出して苦笑気味に呟く。
「ふふふ、非行型キメラなど風紀委員に掛かれば‥‥っ!」
白ランに眼鏡、腰に刀といかにも風紀委員な姿をして拳を強く握り締めながら呟くのは風見トウマ(
gb0908)だった。
「不良の手から子供達の未来を守るのも、俺の使命だ!」
夏目 リョウ(
gb2267)も風見と同様に拳を強く握り締めながら使命感に燃えて叫ぶ。
「そういえば、小学校に生徒はいるんだろうか?」
九条が呟くと「クラブ活動生がいるみたいだね」と緑川が言葉を返してきた。
「そうか‥‥なら学校側に頼んで生徒達の避難、学校の閉鎖勧告だな」
九条が呟き「‥‥キメラをなるべく広い、戦いやすい場所に誘き出す事も必要ね」と紅が言葉を返した。
「それにしても‥‥本当にバグアは何を考えているのでしょうね。珍妙なキメラの数が多すぎると思いますよ」
加賀がため息混じりに呟く。確かに最近は妙なキメラが出現する確率が高くなっていて、加賀がそう思うのも無理はないのかもしれない。
「よりにもよって小学校なんかに、子供の教育に色々と悪影響を及ぼすかも‥‥そうなる前に駆除しましょう」
加賀が言葉を付け足して、他の能力者達に話しかけると、能力者達は首を縦に振って答え、問題の小学校へと向かい始めたのだった。
〜小学校突入! 不良キメラを裁く風紀委員――もとい能力者達〜
「ふむ、事前に連絡していて良かったね。戦闘に支障はなさそうだ」
緑川が小学校を見渡しながら呟く、出発する前に小学校に連絡を入れており『生徒、そして教員も避難するように』と伝えていた。
おかげで現在、小学校に人気はなく非行型キメラと戦う事に問題はなく感じられた。
「だけど銃は使えないな‥‥校舎、そして中にある物を壊すわけにはいかないから‥‥」
楓姫が呟くと「確かにそうだね‥‥キメラは倒したけど学校半壊、とかじゃ洒落にならないもんね」と香倶夜が苦笑して言葉を返した。
「しかし、今回ほどお笑い的な展開もないね、キメラが此方を指差しているよ」
緑川が三階の奥側の窓を指差す、するとそこには‥‥明らかに場違い、むしろ時代違いと言いたい二人組みが此方を見て指差している姿が能力者達の視界に入ってきた。
ここでどうでもいい事を一つ、男性型キメラが歩くたびにリーゼントが上下に揺れるのが気になる能力者もきっと存在したことだろう。
「あぁぁぁ‥‥鎖鎌を振り回しながらコッチに来るから窓ガラスが酷いことに‥‥」
香倶夜は此方に向かってくる非行型キメラも気になるが、次々に割れていく窓ガラスの方が気になるようだ。
「‥‥あれって、やっぱり私達のせいになるのかしら‥‥?」
紅が割れた窓ガラスを見ながら、納得のいかない表情で呟く。
「この学園の風紀を乱す者‥‥野放しにはして置けません!」
眼鏡を掛けなおしながら風見が呟くと「その通り!」と夏目が同意するように叫ぶ。
「今回の目的は小学校で暴れる、不良キメラを更正させる――第二条補足、場合によっては抹殺することも許される」
夏目がメモを見ながら呟くが、本来の能力者達の目的は『キメラ退治』なので補足事項の方が本命なのだったりする。
さて、どうやって行動をしようか――校舎内に能力者達が入り、緑川が呟くと同時に剃刀が三枚ほど飛んでくる。標的となったのは風見で、剃刀を避けると男性型キメラの持つ鎖鎌が風見の避ける方向に向けて投げられてくる。
「しま――っ」
風見に鎖鎌が直撃する寸前で楓姫が『血桜』を鎖鎌に掠めており、風見の横三センチを鎖鎌が通る形になった。
「ふむ、君! いい身体をしているな。どうかな? その身体を生かし、日本を! 世界を守らないか! UPC軍は君のような元気な若者を求めている! 今なら人気者になれるぞお!」
緑川が非行型キメラに対してUPC軍に入るように勧誘を行うが、非行型キメラは言葉を理解出来ないのか、男性型キメラの方が鎖鎌を緑川に向けて投げつける。
「答えはNO‥‥か。残念だよ」
緑川は残念そうに首を振りながら呟いた。
「そんな奴らをUPC軍に迎えるのは反対だね、その髪型、服装、存在全てが校則違反だ‥‥俺は、特殊風紀委員の夏目リョウ、またの名を学園特風カンパリオン‥‥武装変!」
夏目は叫ぶと同時に自分が使用しているAU−KVを変形させて、真紅の鎧を身に纏う。
「お前達のその曲がった根性、俺が叩き斬ってやる!」
夏目は『インサージェント』を非行型キメラに突きつけながら叫ぶ。
そして非行型キメラが僅かに怯んだ瞬間を加賀が見逃す事もなく『ソニックブーム』を使用して男性型と女性型を引き離す。離れた所を予めどちらの戦闘に入るか決めていた班で行動を開始したのだった。
※男性型、番長ど根性※
「そんな攻撃が当たるかよ!」
九条が叫び、男性型キメラが仕掛けてくる攻撃を避けていく。
「おいで‥‥オールド野郎‥‥」
楓姫が男性型キメラを挑発するように呟き『血桜』の切っ先を男性型キメラに向ける。
「私とやる気ですか‥‥面白い!」
風見は睨みつけてくる男性型キメラに向けて不敵に笑み、彼自身も男性型キメラを睨みつける。メンチビーム対決である。
しかし『メンチ対決』など男性型キメラは知るわけもなく、動かない風見に向けて鎖鎌を投げつけてくる。
「‥‥! 卑怯な! もう最初じゃないけれど言っておきますよ、私はかーなーりー強‥‥」
ふたたび鎖鎌を投げられて風見の台詞は中断される。それに怒ったのか『風見斗真‥‥ライジン』と呟き、覚醒を行って『蛍火』で男性型キメラに攻撃を仕掛けた。
「しかしあのリーゼント‥‥実はリーゼントのようなハンマーか何かなんじゃ‥‥?」
夏目が男性型キメラの不自然なリーゼントを見ながら呟き、警戒を強める。
「悪いが、そんな攻撃じゃやられてやるワケには行かないな」
九条は呟き、男性型キメラの鎖鎌攻撃の勢いを利用して、流れるように動き、鎖鎌の攻撃を螺旋状に避けて男性型キメラの内側に飛び込み『クロムブレイド』で攻撃を仕掛ける。
そして九条が攻撃し終わった後、楓姫が地面に『血桜』を突き刺し、男性型キメラを蹴り飛ばして攻撃を仕掛ける。
「立て、教えてあげるよ‥‥喧嘩とは、馬鹿な思いの伝え方‥‥と‥‥」
楓姫は男性型キメラを殴りながら呟き、彼女の攻撃と入れ替わりで風見が『蛍火』で攻撃を仕掛ける。
傍から見たら不良高校生をフルボッコにして苛めているような図に見えるのはきっと気のせいだろう。
流石に4人の能力者に殴られ蹴られ、そして斬られて分が悪いと感じたのだろう。男性型キメラは鎖鎌を投げて攻撃を仕掛けてくる――が夏目が『インサージェント』にわざと鎖鎌を絡ませて、強く握っていた武器を離して男性型キメラのバランスを崩させる。
それと同時に走り『竜の爪』と『竜の瞳』を使用して背中に背負っていた『刀』で太刀筋を交差させるように攻撃を仕掛ける。
「双竜斬‥‥クロス・エンド!」
そして夏目の攻撃にあわせるように風見も「コレが私の遊び心です、必殺! ジャッジメント・ファング!」と叫んで『紅蓮衝撃』と『流し斬り』を使用して攻撃を仕掛ける。
能力者達の総攻撃を受けて、男性型キメラはリーゼントを悲しく揺らめかせながら地面に突っ伏したのだった。
※女性型、ナメんじゃないよ、スケバンキメラ※
「ふむ‥‥なるほど。なかなか切れる剃刀だ。惜しい、実に惜しい。これがキメラではなくツンデレ系の女の子なら萌えるのだが、敵となれば戦意が燃えるものだな」
緑川は女性型キメラの攻撃を避けながら感心したように呟く。
「剃刀は速度こそ厄介だけど、打撃力に欠ける。むき出しの部分への攻撃さえ気をつければ、脅威じゃないよ」
香倶夜が『イアリス』で女性型キメラに攻撃を仕掛けながら呟く。
「‥‥格の違いってものを思い知らせてあげるわ‥‥」
紅は「この連続攻撃‥‥貴女に見切れるかしら」と言葉を付け足して『イアリス』で素早く何度も攻撃を仕掛ける。
「こんな場所に現れて迷惑をかけて‥‥これから私のするお願いに『はい』か『イエス』でお答えくださいね」
加賀はにっこりと笑顔で呟き「死んで地獄で懺悔してください」とお願いを付け足す。
だが、女性型キメラは言葉を返してくることもなく「沈黙はイエスと受け取りますよ」と加賀は『鬼蛍』で攻撃を繰り出す。
女性型キメラは威嚇するように鋭い視線で能力者達を睨みつける、そんな様子を見て「仕方ないな」と緑川がため息混じりに呟いた。
「君を真人間にしたかったが無理なら諦めよう。だがこれ以上暴れるのは許さんぞ」
緑川は小銃『S−01』を女性型キメラに向けて構え『強弾撃』と『影撃ち』を使用して攻撃を仕掛け、射撃後、香倶夜が『イアリス』を振り上げて攻撃を仕掛ける。
女性型キメラも剃刀で攻撃を仕掛けようとしてくるが、香倶夜はそれを避けて女性型キメラの肩に『イアリス』の刃をめり込ませた。
「そんな攻撃、当たらなければどうと言うことはない! それに‥‥あたしを倒したいなら、そんなちゃちなおもちゃじゃなくて、兵器を持ってきなさいよね」
香倶夜が呟き、紅も任務を遂行する為に『イアリス』そして『ベルセルク』の二刀で女性型キメラを攻撃する。
「‥‥あら、もう終わり? その程度で番長を名乗ろうなんて‥‥百年早いのよ、出直してきなさい!」
女性型キメラに向けて紅が言葉を投げつけると「ふふ、ここで倒されるのが貴女の運命ですから出直して来る事は出来ませんけどね」と加賀が言葉を挟んで『鬼蛍』で攻撃を仕掛ける。
そして、その後も女性型キメラは能力者達から攻撃を受けて、男性型キメラと同じように地面うつ伏せになって倒れ、そのまま動かなくなったのだった‥‥。
〜不良は去り、学校に平和が戻った〜
「ありがとうございました、おかげでまた学校を再開する事が出来ます‥‥」
学校の教員らしき人間が能力者達に頭を下げてお礼を言ってくるのだが、何処か顔色が悪い。
それもそうだろう、校舎を見れば非行型キメラが(勝手に)割った窓ガラスが散乱している。10枚くらいは割られているだろう。
10枚程度で済んでよかったと思うべきなのか、何で10枚も割られているんだ! とかきっと教員の頭の中では現在進行形で葛藤が繰り広げられていることだろう。
「そういえば、キメラ撃破時にボタンを貰ってきたんだけど‥‥さっきか確認したら第二ボタンだったよ‥‥」
風見は掌の上でボタンを転がしながら複雑そうな表情を見せて呟いた。
そして、その後『非行型キメラ』という珍妙なキメラを倒したと報告するために能力者達は本部へと帰還していったのだった‥‥。
END