●リプレイ本文
〜旅行&キメラ退治にやってきた能力者達〜
「珍しく、旅行の誘いと思ったら、戦闘のオチ付きかよ? 面倒臭いな‥‥」
ため息混じりに呟くのは神無月 翡翠(
ga0238)だった。
「愚痴らないのー! こんな条件のイイ場所を見つけるのには苦労したんだよ!?」
週刊雑誌『クイーンズ』の記者・土浦 真里(gz0004)は神無月の背中をバシバシと叩きながら言葉を返す。
今回、旅行の場所となったのはそれなりに有名なホテルで、キメラさえ現れていなければ今もきっと大勢の人で賑わっていた事だろう。
「前回の旅行もそうだったけれど、皆と楽しむ為だったら、マリさんは本当に苦労を惜しまないわね」
苦笑しながら呟くのは小鳥遊神楽(
ga3319)で「折角のマリさんからの好意だから、さっさと片付けて楽しむ事にしましょう」と言葉を付け足した。
「本当ね、キメラ退治のついでに、旅行を楽しもうというのはマリさんらしいですね。ふふ、お仕事を早く終わらせて旅行もめいっぱい楽しんじゃいましょうね」
乾 幸香(
ga8460)がボストンバッグを持ち変えながら呟く。
「ねぇ、もしかして泊まるホテルって‥‥あれの事?」
鳥飼夕貴(
ga4123)が荷物を抱えている逆の手で指差すのは建物自体が白く、円形の大きなホテルだった。
「うん、そうだよー。ホテルの向こう側にある海水浴場にキメラが出たみたいで、お客さんは全く来なくて、今回は私たちの貸切なの」
マリが後ろを振り向きながら言葉を返すと「やだ、凄い綺麗じゃなーい!」と梶原 悠(
gb0958)が感動したのか拍手をしながら少し大きめの声で叫ぶ。
「ふむ、これは中々のロケーション‥‥確かにバカンスに持って来いですね。ちゃんと人が戻ってくるようにしてあげましょう――ハネムーンにも良い場所ですね」
ふふ、と怪しげな笑みを浮かべて玖堂 鷹秀(
ga5346)が呟く。
「わ〜い、修学旅行のリベンジだ〜い♪」
楽しそうにセーラー服を翻し、泣きそうな顔で喜ぶのは藤田あやこ(
ga0204)だった。
「早くキメラ退治を終わらせましょ、出来なかった修学旅行の定番を堪能するんだから〜」
藤田は小さなガッツポーズと共に呟く。
「まずは荷物を置きましょうか、流石に遊び道具を持ってキメラ退治には行けませんし‥‥」
櫻杜・眞耶(
ga8467)が呟き、能力者たちはホテルのフロントへと向かう。
「土浦様と愉快なお仲間の皆様ですね、お待ちしていました。今回はキメラ退治を宜しくお願いしますね」
ホテルのフロントに行くと、黒いスーツに身を包んだオーナーが丁寧に頭を下げて挨拶をしてくる。
「真里さん‥‥愉快なお仲間って‥‥」
鳥飼が問いかけると「だ、だって‥‥予約した時にはまだ誰が来るか分かんなかったからさ〜、えへ☆」とわざとらしい仕草で言葉を返してくるマリに鳥飼は苦笑するだけだった。
「愉快なお仲間は置いといて、人魚キメラの出没場所とか詳しく分かる? あと釣りの穴場も」
藤田が問いかけると「キメラは裏手の海水浴場に行けば見つかると思います」とオーナーは言葉を返してくる。
「これからキメラ退治に行くけど、出来たら一般人の出入りを禁止してもらえるかしら?」
小鳥遊の言葉に「確かにそうですね」と乾が考え込むように呟く。
「人魚姫とかのお話が好きな子供達には戦っている姿は見せたくないですし、出来ればお願いしたいです」
乾もオーナーに話しかけ、オーナーは暫く考え込むと「‥‥分かりました。従業員たちに知らせに走らせますのでご安心を」と笑顔で言葉を返してきた。
「夏の最後の思い出作り‥‥キメラなんてすぐにやっつけちゃうわよ!」
拳を握り締め、梶原が呟くと能力者達は予め割り当てられた部屋に荷物を置き、それぞれ戦闘準備を完了するとキメラが現れる海水浴場前に集まったのだった‥‥。
〜旅行を楽しむ為に邪魔な奴を退治しよう〜
「わー、綺麗な人ねー‥‥上半身だけは」
遠くから双眼鏡で人魚キメラを確認したマリは苦笑しながら呟いた。人魚キメラは情報通りで手には槍を持ち、下半身がぴちぴちした魚だった。
「よいしょっと‥‥」
藤田は『スナイパーライフルD−713』を釣竿に見せかけて持ち歩いて、唐草模様の風呂敷で包んだアイスボックス。あからさまに武器を持ち歩いていると人魚キメラが逃げ出してしまうかもしれないという考えからだった。
「やれやれ、面倒だな‥‥まぁ、支援は任せろ、接近戦は任せるけどな」
神無月は水着にパーカーを着用しており、夏姿で戦闘に参加する事になる。
「俺はダイビングスーツを着て、海中にキメラが逃げないように海辺から攻撃するね。ダイビングスーツ着てるから海中にキメラが逃げた場合も対処出来るし」
鳥飼が呟く。彼は『ダイバースーツZ』を着用して『氷雨』と小太刀『凉風』の二刀流で戦闘に参加する事にしていた。彼が小太刀を選んだ理由は通常の刀より隠しやすいという事からだった。
「‥‥そういえば何で鷹秀は此処に来てまで白衣なのさ」
マリが隣に立つ玖堂を見て呟く。彼の姿はハーフパンツ型の水着の上から白衣を着用という格好だった。
「いけませんか? エネルギーガンも隠せるので一石二鳥なんですよ」
白衣の内側に隠してある『エネルギーガン』を見せながら玖堂が言葉を返すと「ふぅん」とマリは呟いた。
「さて、それでは楽しい旅行の為の尊い犠牲となっていただきましょうか」
乾が呟くと「そうね」と梶原が言葉を返す。
「ふふ‥‥そっちが海の魔物なら、こっちは水の狂戦士だよ。人魚ごときを怖がってちゃ、商売上がったりさ!」
櫻杜が不敵に笑み、能力者達は人魚キメラ退治を開始し始めたのだった。
「庶民の行楽を打ち砕く人魚! 水泡に帰せ!」
藤田は叫びながら『スナイパーライフルD−713』で人魚キメラに攻撃を仕掛ける。
「ある意味、ピチピチギャルだな?」
神無月が人魚キメラを見ながら『練成弱体』を使用する。
「マリさん達との楽しい旅行の為に、お前には此処で踏み台になってもらうわ」
覚醒しながら小鳥遊が呟き『スナイパーライフル』で人魚キメラを攻撃する。援護射撃を受けて乾が『バスタードソード』で、櫻杜が『蛍火』と『菖蒲』で攻撃を仕掛けた。
人魚キメラは二人の攻撃を避ける事もせず、攻撃を受け、不気味な笑みを浮かべて槍から手を離して、二人の腕を掴み、物凄い力で海へと放り投げる。幸いにもダメージを負う事はなかったが、水に足を取られて次への行動が少し遅れてしまう。
人魚キメラが槍を拾い上げ、立ち上がろうとしている二人に攻撃を仕掛けようとする――が、鳥飼が人魚キメラの背後から現れて背中を『氷雨』と小太刀『凉風』で斬りつけた。
「相手の隙を突くやり方? 自分がするんだから人からやられても文句は言えないよね?」
鳥飼が呟き『氷雨』を人魚キメラの腕に突き刺す。それと同時に梶原が『ルベウス』で攻撃を仕掛ける。
その後、接近戦を行う能力者達は一度後ろへ下がり、再び射撃班が攻撃を仕掛ける。
「とっとと片付けてバカンスとイカせて貰うぜ!? 理解出来たなら迷わず逝きな!」
玖堂は叫びながら『エネルギーガン』で攻撃を仕掛ける。そして、小鳥遊と藤田、神無月、玖堂が一斉に射撃を行い、接近戦を行う鳥飼、乾、櫻杜、梶原が総攻撃を行い、人魚キメラを無事に倒したのだった。
〜キメラ退治終了後はお楽しみタイム〜
キメラを倒した後、能力者達はホテルまで一度戻ってキメラを退治したという事を知らせた。
「キメラを倒してくださり、ありがとうございます。これでお客様が戻ってくれば良いのですが‥‥何はともあれ、一泊という短い期間ですが楽しんでいってくださいね」
オーナーは丁寧に頭を下げながら呟くと「とりあえず海に行こうよ」とマリが能力者達の手を引っ張っていく。
「あ、バーベキューとかしちゃっても‥‥大丈夫?」
梶原がオーナーに問いかけると「普段は駄目なのですが、今回は許可しますよ、ホテルの恩人の皆様ですから」と言葉を返してきた。
「ありがとう、楽しませてもらうわね」
梶原は言葉を返し、海へと向かう能力者達の後を追いかけたのだった。
「暑いな‥‥」
額に手を置き、暑そうに呟くのは神無月で、彼は立てたパラソルの下で冷たいジュースを飲んでいた。
「任務にこういう余禄がたまにはあってもいいわね」
神無月と同じくジュースを飲みながら言葉を返すのは小鳥遊、彼女は黒のワンピースのハイレグという水着を着用していた。
「さて、あたしも泳ぎに行ってこようかな」
小鳥遊は着ていたパーカーを脱ぎ、他の能力者たちがいる場所へ向かって歩いていく。
「真里さん、真里さん、オイル塗るなら手伝いましょうか?」
玖堂が怪しげな笑みを浮かべて問いかける―――のだが「ごめん、私あのべたべた感が嫌いなんだ」とアッサリと断られてしまう。
「‥‥‥‥くっ‥‥」
玖堂は何処か悔しそうに呟くとビニールのイルカに乗って泳ぎだした。
「まやちゃんも泳げばいいのに‥‥水着持ってこないなんて何か計画的だぞ」
マリがジト目で櫻杜を見ながら呟く。彼女は水着を着用するという事に抵抗を感じるのかホテルにも水着があるとマリが持ってきたのだが、それも断っていた。
「水着だけはご勘弁して欲しいですね、いざとなれば着物だろうが何だろうが泳げますから」
櫻杜は苦笑しながら言葉を返した。
「幸香ちゃんの水着可愛いね〜。私ももうちょっと可愛い水着持ってくれば良かったなぁ」
マリは乾の着ているオレンジのビキニを見ながらため息混じりに呟く。マリの水着は赤いギンガムチェックのビキニで「少し子供っぽいかなぁ」と言葉を付け足した。
「そんな事はないですよ、似合っていると思います」
乾がマリに言葉を返すと「へへ、ありがと」と笑って答えた。
「こんな場所なら夜景が綺麗でしょうね、あたし寝る前に絶対夜景見るわ」
梶原が空を見上げながら呟く。
「そうだ、夜景もだけど皆で楽しく遊んでいる光景を記事にして、観光客に『ここはもう安全だよ』ってアピールできないかな?」
鳥飼が思いついたようにマリに話しかけると「それいいかも! 早速写真撮らなくちゃ!」と取材バッグの中からカメラを取り出して能力者達の姿を写真に納め始めた。
「まずはあやこちゃん‥‥あれ? ビーチにはいない‥‥」
カメラを片手に藤田を探すが、ビーチにはいなく仕方ないのでホテルまで戻ると‥‥ブルマ姿でホテルのショップを徘徊する姿が見受けられた。
「‥‥あれ? あやこちゃんって学生なの? ブルマって確か中学生とか高校生とかが履くモンだよね‥‥」
首を傾げながら答えの見つからない問いがマリの頭で渦巻くが、答えの出ないものをいつまでも考えていても仕方ないと考え、マリはブルマ姿で徘徊する藤田の姿を写真に納めてから「何してるの」と話しかけた。
「お土産探してるの〜。努力と書かれたペナント、根性の楯とか木刀を捜してるんだけどないのよね」
藤田は心の底から残念に思っているのか肩を竦めながら言葉を返してきた。
「あー‥‥うん、こういうホテルにはないんじゃないかな、うん‥‥」
マリが苦笑しながら言葉を返すと「お土産の定番なのに」と藤田は呟き、別のお土産を探し始めた。
「そっか、イイお土産が見つかるといいね。もう少し暗くなったらバーベキュー始めるみたいだから、ある程度の時間にはビーチに来ててね〜」
マリはお土産を探す藤田に言葉を残して、別の能力者の所へと向かう。
「お、あそこにいるのは鷹秀。お〜い、何してんの〜〜」
マリはビーチに戻る途中で釣りをしている玖堂を見つけて駆け寄る。
「見ての通り釣りですよ。ほとんど経験ないので、ちゃんと釣れればいいんですけど」
苦笑交じりに玖堂は言葉を返してくる、隣に置かれたボックスの中にはまだ一匹も魚は釣れておらず、釣果は不調なのだという事が窺える。
「真里さんは何をしてるんですか?」
「私? 雑誌で『ここはもう安全』アピールの為に皆が楽しく騒いでる所を写真に撮ってる最中♪ 旅行が終わったら編集作業できっと軽く死ねるね、私」
あはは、と笑いながらマリが呟くと「頑張ってください」と玖堂が言葉を返してくる。
「ん。鷹秀も釣り頑張ってよ? じゃないと肉とかはホテル側が出してくれるみたいだけど、魚はないみたいだし。晩御飯少ないの嫌だからね、私は」
マリが呟くと「了解ですよ」と玖堂は答えて釣りを再開し始めたのだった。
「おぉぅ、ゴッドが泳いでる」
続いて発見したのは神無月で気持ち良さそうに泳いでる姿が見受けられた。
「なんだよ? 俺が泳いでるのが、そんなに珍しいか?」
神無月が泳ぐのを一時やめてマリに言葉を返すと「だって」とマリがおかしそうに言葉を続ける。
「『俺は海なんてあまり好きじゃねぇんだ、一匹狼で遊ばせてくれ』みたいなイメージ持ってたから、爽やかに泳ぐゴッドが可笑しくて‥‥」
「‥‥そこで可笑しいのは俺じゃなくて、お前のイメージだと気づけ‥‥何だよ? その一匹狼で遊ばせてくれって‥‥」
ため息を吐きながら呟くと「何かカッコイイじゃん、一匹狼!」とマリは言葉を返してきた。
「カッコイイとかそういうのは構わないけどさ、そんな理由で俺を孤独にするなよ」
確かに勝手にイメージを作られて、勝手に一匹狼にさせられて、勝手に孤独にされては迷惑極まりないことである。
「みんなの取材終わったらビーチバレーやろうと思ってるんだ、ゴッドも参加するでしょ?」
マリが問いかけると「ん、それじゃあ、始まるまで休んどくか」と海から上がってパラソルの下に引いてあるレジャーシートの上に横になった。
「ビーチバレーの時に起きてこなかったら額に落書きしといてあげるからね」
マリの言葉を聞いて神無月は「‥‥寝るのはやめよう」と小さく呟いた。
「ちょうど良かった。スイカ持ってきてるからスイカ割りしようよ」
次の取材者は誰にしようかな、と悩んでいる時に鳥飼から声をかけられてマリは足を止めた。
「バーベキューの時にもスイカ割りしようかなと思ってね、余分にスイカを持ってきていたんだよ」
「わー、美味しそう! ゆうきちゃんがスイカ割りしている所を写真に撮らせてもらうね」
マリがカメラを構えて話すと「俺がするの? 真里さんがしてもいいんだよ?」と鳥飼はスイカ割り用の棒を持ちながら言葉を返してくる。
「だ〜め、今は雑誌掲載の為の取材中だもん。バーベキューの時のスイカ割りを私はさせてもらうから♪」
マリの言葉に「分かったよ」と鳥飼は言葉を返し、目隠しをしてスイカ割りを始めた。
「ゆうきちゃん、もうちょい右、あ! 行きすぎ!」
鳥飼の手に持たれている棒が勢いよく振り下ろされて真ん中こそは外したもののスイカは見事に割れていた。
「お見事! ひとかけら食べてから取材の続きに行って来ようかな」
割れたスイカの欠片を口に運び、簡単に片付けると次の取材者を探しに走っていった。
「‥‥元気だなぁ」
走っていくマリの後姿を見ながら鳥飼は呟き、スイカを一口食べたのだった。
「真里ちゃ〜ん、何してるの〜? 暇なら一緒に貝でも探しに行かない?」
岩場の所から大きく手を振って離しかけてくるのは梶原だった。
「ハルカちゃん♪ 何してるの?」
マリが岩場の上に乗りながら梶原の所まで行くと「貝でも探そうかなって思ってね♪」と梶原は言葉を返してきた。
「そしたらちょうど真里ちゃんを見かけたから、一緒にどうかなって」
「う〜ん、どうしようかな。カメラは一応水中でも撮れるやつだし‥‥貝取りした事ないからして見たいかも」
そうこなくちゃ、梶原は呟いてマリと共に海へと潜っていった。リゾート地というだけあって海の中も凄く綺麗で、マリは水中の様子も撮影していく。
「‥‥ぶはぁっ! もう無理! 息が続かない!」
少し潜っていただけなのだが、マリは息が続かないと叫んで水の中から顔を出す。
「大体、貝とか採るのは海女さん! か弱い一般人記者の私が出来るはずないって事に気がつくべきだったわ」
げほげほ、と咽ながらマリは呟くが「素潜りするからよ」と梶原が苦笑交じりに呟く。
「ふふ、貝はあたしが頑張ってみるから真里ちゃんは取材の続きをしてらっしゃいな」
呟くと同時に梶原は再び海の中へと潜って行ったのだった。
「まやちゃん、見かけないなー‥‥」
きょろきょろと周りを見渡しながら呟いていると前方からクーラーボックスを抱えている櫻杜の姿を見かける。
「あ、見つけた! 何処に行ってたの〜?」
マリが櫻杜に問いかけると「バーベキューの時の食料を調達に行ってました」と櫻杜は言葉を返してきた。
「調達って買出し? 中身はー‥‥うわ、ホタテとかサザエとか沢山ある! もしかしてこれ‥‥採ってきたの?」
クーラーボックスと櫻杜とを交互に見比べながらマリが問いかけると「あー‥‥まぁ」と誤魔化すように櫻杜は笑う。
「それよりもさっき神無月はんがビーチバレーが‥‥とか言ってましたけど」
「あ、うん。皆でビーチバレーしようと思ってるんだ。もう少ししたら始めるからまやちゃんもするでしょ?」
「もちろん参加させてもらいます。それじゃコレはパラソルの所でにも置いときますね」
櫻杜はクーラーボックスを抱えてパラソルの所へと向かい、浜辺の所にいる小鳥遊と乾の所へと向かい始めたのだった。
「やほー、一枚記念にどーですかー?」
マリは二人で話している所の写真をカメラに収め、小鳥遊の隣に腰を下ろした。
「そういえば、マリさんに先を越されるとは思っていなかったわね」
ポツリと小鳥遊が呟き「何が?」とマリが聞き返す。
「恋人よ、それで彼とは上手くいっているの?」
恋愛話になった途端にマリの顔が赤くなり「ななななな、何を言って‥‥」とあからさまに挙動不審な態度を取る。
「やっぱり恋愛話が最高の楽しみですよね。今日は寝かせませんからね、マリさん。しっかりと彼の事を白状させちゃいますからね」
乾も少し意地悪な笑みを浮かべてマリに話しかけると「そ、そういう話は勘弁してよ〜‥‥恥ずかしいから」と両手で顔を覆って言葉を返した。
「あたしにも何処かにいい人がいないかしらね」
小鳥遊の言葉に「あら、神楽は恋人が欲しいの?」と聞き返すように乾が言葉を返した。
「そりゃあ、欲しくないって言ったら嘘になるわね」
「幸香ちゃんは?」
マリが乾の方を向きながら問いかけると「う〜ん‥‥」と乾は考えるような仕草を見せて唸り始めた。
「今は音楽が恋人ですから。まぁ、神楽にいい人が出来たらあたしも考えちゃいますけどね」
「私もずっと仕事が恋人って感じだったから分かるかも」
「でも好きなんでしょ?」
小鳥遊の言葉に「えへへ」と顔を真っ赤にしながら呟くマリの姿を見て「‥‥何かノロケを聞かされたような気分だわ」と小鳥遊は苦笑気味に呟いた。
「あ! そろそろビーチバレーをする時間だ! 行こうよ」
マリは乾と小鳥遊の腕を引っ張ってビーチバレーをする為に準備を始めたのだった。
〜ビーチバレー、そしてバーベキュー〜
「何か動きにくい〜!」
あれから能力者達を集めて、ビーチバレーを始めた。A班に藤田、神無月、小鳥遊、鳥飼、B班に玖堂、乾、櫻杜、梶原、そして審判はマリという班分けになった。
最初はお遊び程度でしていたビーチバレーだったが、何故か妙に白熱してしまい、浜辺にはビーチボールがつけたであろう不自然な穴が点々としていた。
「‥‥なんかもう皆『遊び』って感じの顔じゃないよねー‥‥白熱してるせいで点も入らないし、マリちゃん暇でーす」
浜辺に座りながらマリが呟く。結局勝敗は決まらず、両班とも『自分達が勝った』と主張している辺り『引き分け』という事でOKなのだろう。
「はいはーい、バーベキューするよー」
マリがホテルから持ってきた材料などを焼き始めながら叫ぶ。他にも梶原、櫻杜が取ってきた貝や玖堂が釣ってきた魚なども焼き、ビーチには美味しそうな匂いが充満していた。
「真里〜! 写真撮って」
呼ばれてマリが振り向くと、魚を丸齧りしている藤田の姿があり、とりあえず言われた通りに写真を撮る事にした。
「ねぇねぇ、ホテルとタイアップして人魚キメラ戦闘写真展とか魚丸齧りを名物にしてお客を呼ぶってのはどう?」
藤田が手を挙げて提案するが「あやこちゃん‥‥一応此処リゾート地だから名物料理とかあるんだ」とマリが言葉を返す。
「名物かどうかは分からないが、結構この魚、美味いな」
神無月も魚を一口食べて呟く。
「ふふふふふ、自力で頑張って釣ってきましたからね。美味しいはずですよ」
玖堂が怪しく眼鏡を光らせながら呟くと「ホタテも美味しいわ」と小鳥遊が食べながら呟いた。
「皆で食べるご飯って美味しいですよね、サザエはもうそろそろ食べても大丈夫かな」
能力者の皆がバーベキューを堪能している間、マリも食べたり、様子を撮影したりなどして忙しそうに動き回っていた。
「飲み物はお茶とジュースとありますけど、どちらにします?」
櫻杜は食べながらも、タレや飲み物などの給仕も行っていた。
「ビールないの、ビールー!」
マリが少し離れた所で叫ぶと「ありませーん!」と櫻杜も大きな声で言葉を返す。
「羽を伸ばすのはいいですが‥‥無茶は程々にしてください」
果たして櫻杜の言葉は酒の事を言っているのか、それとも戦闘中に必要以上近づこうとしたマリの姿を見て呟いたことなのか、それは本人にしか分からない。
「やっぱり、こういう場所では皆と楽しくバーベキューが定番よね♪ んー、美味しい」
梶原も串焼きを食べながら幸せそうに呟く。
その後もバーベキューは夜遅くまで続き、鳥飼の持ってきたスイカでスイカ割りをしたりなど、片付けまで終わったのは日付が変わる少し前という時間だった。
〜疲れた後は温泉に入って、ゆっくり寝るべし〜
「水着のまま温泉〜♪」
女性用の大浴場に小走りで駆けていくのは藤田で、他の女性陣もタオルを巻いたもの、藤田と同じように水着で温泉に入るものなどさまざまだった。
「うはー、極楽極楽♪」
ざぱん、と浴槽に勢いよく入って空を見上げる。空はガラス張りになっていて夜空が綺麗に見えるものだった。
「何だか帰るのが惜しくなるわね」
「本当だね、神楽」
小鳥遊と乾も空を見上げながら小さく呟く。二人とも分かっているのだろう、今日という楽しい時間が終われば、また明日から戦いの日々に戻るのだから。
「私も能力者だったら良かったのに、何で適合しなかったんだろ、体力も努力も根性も結構自信あるんだけどなぁ」
マリが自分の手を見つめながらため息混じりに呟く。マリが唯一コンプレックスに感じているという事があれば、それは『何で能力者じゃなかったんだろう』という事だ。
「ま、なれなかったものをいつまでも悔いても仕方ないしね! 今日は疲れたし、早く寝よう〜」
伸びをしながらマリは大浴場から出て部屋へと戻っていった。
「ハロー、一緒に夜景を見ようよ♪」
風呂から上がり、ベッドで横になっていると梶原が部屋に入ってきた。
「あ、そういえば夜景を見てなかった。そんなに綺麗なの?」
マリは窓のカーテンを開けながら呟くと「あたしの部屋からは綺麗だったわよ」と言葉が返ってきた。
「わ、本当だ‥‥きれー」
「でしょー、綺麗なものを見ていると何か嬉しくなっちゃうよね。悩み事とか全部吹き飛んじゃう」
梶原の言葉に「うん、そうだね」と呟いて部屋に置いてあった缶チューハイで乾杯をしながら夜景を楽しんだのだった。
「真里さん、起きてますか? 良かったら散歩にでも行きません?」
ドアをノックしながら話しかけてくるのは玖堂で「あら、彼氏の登場ね。それじゃお休み♪」と言って梶原は部屋へと戻っていった。
「おや、もしかして邪魔をしてしまいましたか?」
「ううん、そんな事はないよ、夜の海でも見に行こうよ」
マリは玖堂の手を軽く握ってビーチへと誘う。そしてマリは気づいていなかったが他の能力者がドアの隙間から覗いていたというのは言うまでもない。
「昼の海もいいけど、夜の海も綺麗だよねー。写真撮ろうっと」
マリがカメラを出して写真を撮っていると「こんな時でも取材優先ですか」と複雑そうな表情で玖堂が呟く。
「大体、任務絡みでしかこういう所には来れませんからね‥‥この戦争が終わったらまた来ましょうか」
玖堂の言葉に「そうだね、また皆を誘って」とマリが言葉を返そうとすると、玖堂がマリの耳に口を寄せて「もちろん二人だけで、ね?」と呟いた。
「うー‥‥一緒に来てあげても、いいけどさ」
素直じゃないマリはそう答えるのが精一杯で「明日早いんだからもう寝るよ!」と言って先に部屋へと帰ってしまった。
その様子を可笑しそうに玖堂は見て笑い、自分も部屋へと戻っていったのだった。
そして彼が部屋に戻ると同時に藤田がビールなどを買出しに行ったのは誰も知らない。
〜旅行は終了! また今日から頑張ろう〜
「それでは、今回は本当にありがとうございました」
オーナーは帰る能力者達に丁寧に頭を下げながらお礼を言う。
「本当なら、もうちょっと滞在して雑用とか客寄せとかしてあげたかったんだけど‥‥」
鳥飼が申し訳なく呟くと「いえいえ、そこまでしていただくわけには参りませんから」とオーナーは苦笑して言葉を返してきた。
「今度はちゃんとしたお客さんで来るからね」
マリがオーナーに言うと「従業員一同お待ちしております」と営業スマイルで笑いながら答えた。
そして能力者達は人魚キメラを退治したことを報告する為に本部へと帰還して、マリは雑誌作成の為、編集作業に取り掛からねばならないのでクイーンズ編集室へと戻っていったのだった。
後日、梶原から数枚の写真が届き、その写真にはマリが写っていた。
『真里ちゃんだけ写真に写っていないのも寂しいから、こっそり撮っちゃいました。題して『撮る人は撮られる人、かな』
もちろん梶原の撮った写真も次のクイーンズには掲載され、今回の任務&旅行は大成功に終わったのだった‥‥。
END