タイトル:週刊記者と彷徨う死人マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/08/15 05:01

●オープニング本文


夏なんて嫌いだーっ!

こんな怖いキメラばっかり現れなくてもいいんじゃない?

神様はマリちゃんを怖い目に合わせたいのね? そうなのね?

そうなら神様なんて嫌いだーっ!

※※※

「チホー、私ってさ最近思うわけよ、何で夏なんてあるんだろうと」

クイーンズ記者・土浦 真里は机に突っ伏しながら盛大なため息と共に呟く。

「は? なにいきなり四季を否定してるのよ」

チホが呆れたように呟くと「だって、だって‥‥」と次の取材地を記したメモを見せる。

「えぇと、何々? 死んだ人が歩き回る町――はっはっは、またコレ系の取材なのね」

怖いものが苦手というマリにとってありがたくない取材、しかも前回は墓場での取材で怖い目にあったらしく今まで以上に『怖いもの嫌い』オーラを出している。

「そうだ! こうなれば編集長の権限で取材地を変更しちゃえばいいんじゃん! マリちゃんあったまいい♪」

「こら、職権乱用しないの。取材担当はマリなんだからさ、諦めて行ってらっしゃい。能力者に護衛頼んでるんでしょ?」

チホの言葉に「もちろんよ! 1人でなんて行けるはずないじゃん!」と大きな声でマリは反論してきた。

「あ〜、この取材が無事に終わりますように。死人さん死人さん、呪うならチホに」

なにやら不気味な願い事を言いながら、マリは能力者に護衛を頼むべく本部へと赴いたのだった。

●参加者一覧

神無月 翡翠(ga0238
25歳・♂・ST
クレイフェル(ga0435
29歳・♂・PN
小鳥遊神楽(ga3319
22歳・♀・JG
玖堂 鷹秀(ga5346
27歳・♂・ER
櫻杜・眞耶(ga8467
16歳・♀・DF
シュブニグラス(ga9903
28歳・♀・ER
烏谷・小町(gb0765
18歳・♀・AA
神崎 信司(gb2273
16歳・♂・DG

●リプレイ本文

〜目指すは死人型キメラ〜

「ゾンビかぁ‥‥めっちゃ気持ち悪いん出てきたらどないしょ」
 クレイフェル(ga0435)がため息混じりに呟くと「死人ねぇ?」と神無月 翡翠(ga0238)が苦笑気味に言葉を返す。
「そういう映画は、沢山あるが、数多くないといいんだが? あと動きが早いのだけは、勘弁して欲しい」
 神無月の言葉に「よし、この取材は中止しよう! 怖いから!」と土浦 真里(gz0004)が拳を強く握り締めて叫ぶ。
「あの子から聞いてはいたけれど、本当にマリさんで駄目なものがあるのね‥‥不謹慎だけど、ちょっと可愛いかもしれないわ」
 怖がるマリの姿を見て小鳥遊神楽(ga3319)が小さく呟いた。
「前回の死神に続いてゾンビですか‥‥随分とタイムリーな流れですねぇ‥‥今年はお化け屋敷に行かなくても良さそうですね、真里さん?」
 ふふ、と笑みながら玖堂 鷹秀(ga5346)がマリに問いかける。ちなみにマリは同じクイーンズ記者の仲間が誘ってきてもお化け屋敷だけは毎年行く事はしないらしい。
「幽霊も妖怪も別に死んでいるってだけなので怖くはないんですけどね‥‥」
 櫻杜・眞耶(ga8467)が苦笑しながら呟く。むしろ彼女にとって怖いのは無茶な事ばかりするマリなのかもしれない。
「‥‥何か誘うたびに任務があるわね‥‥」
 シュブニグラス(ga9903)が今回集まった能力者達とマリを見ながら呟く。彼女はマリの記者仲間・チホをネイルアートに誘おうとして、チホから今回の取材について聞かされたのだ。
「さーて、今回の乳はどんなもんやろか‥‥楽しみやね」
 女性陣を見ながら不敵に笑むのは烏谷・小町(gb0765)で、彼女の目的はキメラ退治ともう一つ、女性の乳だった。
「そーいや、その廃墟に何の取材に行くん? その死人型キメラを見に行くのが仕事なんやろか?」
 烏谷の問いかけに「そのキメラと能力者の戦いを写真に撮って、雑誌に載せるんだよ」とマリは言葉を返すと「ふぅん」と烏谷は答えた。
「お化けって大嫌いだから気が重いけど‥‥これも任務だし仕方ないよね‥‥」
 神崎 信司(gb2273)が呟くと「キミもお化け嫌いなんだね!」とマリが食いつくように話しかけてくる。
「そっかそっか、苦手か〜。仕方ないけど今回の取材は中止――「何でやねん!」」
 マリが嬉々として取材中止を言おうとした時、クレイフェルからぺしんと軽く頭を叩かれる。叩かれるとはいっても手を置くような感じなので全く痛みも何もない。
 いつもの彼ならハリセンでバチコンと叩いているのかもしれないが、『人様の彼女をハリセンで叩くのも‥‥』と考えハリセンを自重したらしい。
「‥‥とクレイやんが申しておりますので、取材続行〜、おー‥‥」
 弱々しくマリが手を上げ、取材地である『廃墟』に向かい始めたのだった‥‥。


〜廃墟、キメラ襲撃の爪痕地〜

 今回、能力者達はキメラ退治、それとマリ護衛を果たす為に班を二つに分けて行動する事にした。
 攻撃班には烏谷、神無月、小鳥遊、クレイフェルの四人。
 マリ護衛班には櫻杜、神崎、玖堂、シュブニグラスの四人。
 班分けとは言っても、キメラが現れるまでは一緒に行動して、キメラが現れたらそれぞれの班で動きだす――という作戦だった。
「やっぱり廃墟ってだけあって、人がいる感じは全くないね‥‥」
 マリはカメラを構えて廃墟の様子を写真に撮りながら小さく呟く。
「あれ、玖堂はんもビデオカメラ構えてますけど、何するんですか?」
 櫻杜がビデオカメラを回している玖堂に問いかけると「死人型キメラの性能を記録しようと思いまして」と彼は言葉を返した。
 だけどなぜかカメラはマリを向いており「くくくく」と怪しげな笑みを浮かべながら撮影している。
「それにしても‥‥いかにもな雰囲気‥‥本物が出たら嫌だなぁ‥‥」
 神崎は夜の廃墟内を見渡し、少し震えながら呟いた――その時にマリが足を止める。
「‥‥ゴッド、クレイやん、小鳥ちゃん、鷹秀、まやちゃん」
 突然、名前を呼び出したマリに「どうしたの? マリさん」と小鳥遊が首を傾げながら問いかける。
「シュブちゃん、こまちちゃん、しんちゃん――今回私の護衛を引き受けてくれた能力者って8人‥‥だよね?」
 少し青い顔のマリに「そうだけど?」と神無月が言葉を返す。
「じゃあ、じゃあさ‥‥こ、この方はどちらさまでしょう‥‥?」
 マリが引きつった笑みを浮かべ、自分の足元を指差す。マリの指に合わせて能力者達も視線を落としていく。
 すると――‥‥マリの足首を掴んでいる『誰かの手』が見える。もちろん誰かが寝転がって掴んでいるのではなく、地面から手が生えたような感じで掴まれているのだ。
「‥‥ここまで王道的な事あるんか!?」
 クレイフェルは叫んで『ルベウス』でマリの足首を掴んでいる手に攻撃を仕掛ける。
 問題の死人型キメラという事に気がついた能力者達はマリを下がらせ、攻撃班が自分達に標的を向けるように派手に暴れだす。
 クレイフェルによって攻撃された腕はちぎれ、ぽーんと遠くでへ飛んでいく。
 それを合図にしたかのように地面から次々と死人型キメラが出てくる。
「こんなキメラ、悪趣味の極みだ‥‥」
 神崎が呟きながら、マリの方に近づいてきた死人型キメラに『竜の翼』を使用して突進、そして『竜の爪』も併用して武器の能力を高め『ヴァジュラ』で攻撃を仕掛ける。
 個々としての能力は低いのか、素早さもなければ、目を見張るような強さもない。だけど数が多いので油断は出来ず、マリ護衛班の4人は向かってくる死人型キメラを倒していく。
 もう一方の攻撃班クレイフェルと烏谷も同じ攻撃班の神無月と小鳥遊の援護射撃を受けながら死人型キメラを攻撃していく。
 最初は腹や足、手などを攻撃していたのだが、倒れる事がないので頭を重点的に攻撃していく。流石に頭を潰されては動けないのか、頭を潰された死人型キメラが起き上がる事はなかった。
「まったく‥‥怖いわけじゃないけど、見ていて気持ちいいものじゃないわね。こんな辛気臭い任務はさっさと済ませる事にしましょう」
 小鳥遊が忌々しげに呟き『ドローム製SMG』で死人型キメラに攻撃を仕掛ける。
「全くです、死の国へ帰りなさい。ここは貴方がいていい場所ではありません」
 クレイフェルは呟き『ルベウス』で攻撃を仕掛ける。攻撃する際に死人型キメラが『毒』を持っている可能性があるので、敵の攻撃は受けないように注意をしている。
 攻撃班が引き付けてくれているおかげで、マリ護衛班には死人型キメラが全く来ないわけではないが、最初のように多く来る事はなくなった。
「どのように周囲の情報を得ているのか、確かめてみましょうか」
 玖堂が呟き、実験用に持ってきた三つの道具を取り出す。
 まず、視覚があるのかを確かめるために『光るおもちゃ』を死人型キメラの前に投げる。地面に落ちたおもちゃは発光して死人型キメラの周りをうろうろとする。死人型キメラもそれを見る事が出来るのだろう、おもちゃの行く先々を見て、最後に死人型キメラが拳で殴って壊した。
「‥‥見えてはいるんですね」
 櫻杜が苦笑しながら呟くと「皆さんの攻撃とか避けたりしてますしね」と神崎が攻撃班を見ながら言葉を返した。
 次に玖堂が投げたのは『防犯ブザー』で、耳を閉ざしたくなるような大きな音で鳴るそれを玖堂は死人型キメラの前に投げつける。
 もちろん攻撃をしかけてくれば戦うつもりだったが『防犯ブザー』に興味を示しているのか、マリ護衛班に攻撃を仕掛けてくる様子はない。
「‥‥聞こえて、いないのかしら? こんなにうるさいのに表情一つ変えないもの」
 シュブニグラスが死人型キメラの表情を見ながら呟く。表情とは言っても、顔は崩れ落ち、原型を留めていないので、判断はとても難しかった。
 最後に嗅覚があるかを確かめるために期限切れの食べ物を煮詰めた物を試験管に入れて持ってきていて、それを死人型キメラん投げつける。試験管は死人型キメラに当たると同時に割れ、周囲一帯を異様な匂いが包み込んだ。
「‥‥臭いんだ」
 神崎が呟き、護衛班の能力者が死人型キメラに目を向けると、眉間が寄っているのが分かり、試験管が割れた場所から逃げようとする。
「臭いのが嫌なら、自分自身の匂いも何とかしたらいいのにね」
 シュブニグラスが『ハンドガン』で逃げようとする死人型キメラを攻撃して、櫻杜がトドメを刺すために走り『蛍火』で死人型キメラの頭を突き刺したのだった。
「向こうはまだ死人型キメラが多いみたいね‥‥」
 シュブニグラスは呟き『練成強化』で能力者達の武器を強化する。
「後ろには行かせへん! 何匹でもかかって来いやーっ!」
 烏谷は叫び『流し斬り』を使用して死人型キメラを攻撃して倒していく。
「沢山の墓地でもあったんですかね‥‥この数、多すぎです」
 神無月も『エネルギーガン』で攻撃を仕掛け、苦笑気味に呟く。
 その後も能力者達は次々に現れる死人型キメラを倒し、ようやく次が現れない所までやってきた。
「危ない!」
 櫻杜が叫び、烏谷が「え?」と振り向く。すると千切れた自身の腕を投げつけてくる死人型キメラの姿があった。
 烏谷は別の死人型キメラと交戦中で、腕の方に攻撃を向ければ最初相手にしていた死人型キメラに攻撃される。
 どうしよう、悩んだ時に櫻杜が割って入り『蛍火』と『菖蒲』で腕を斬り、落としたのだった。
「ありがとな」
 烏谷は櫻杜に礼を言った後で「これで最後やぁっ!」と目の前の死人型キメラに攻撃を仕掛け、死人型キメラを無事に倒し終わったのだった‥‥。


〜取材続行、死体だらけの中で取材は怖いよ〜

「‥‥ほんまに死んどるん?」
 ハリセンでつんつんと死人型キメラの死体をつつくクレイフェル、もう現れる事はないけれどまだ倒し損なった死人型キメラがいるかもしれないと能力者達は警戒を弱める事はしなかった。
「‥‥この中での取材、逆に怖いですよね」
 神崎が周りの状況を見ながら呟く。大勢現れた死人型キメラのせいで、廃墟は大量の死体があちらこちらに転がっている。
 神崎の言葉に怖くなったのか、マリが「うー」と唸りながら少しずつ歩いていく。ソレを見た玖堂は自分の左腕を出して「こちら、空いてますから使ってくださいね」と笑顔で言葉をかける。
「さて、最後の仕事で死体を燃やしていかないと‥‥また動き出す可能性もあるからね」
 櫻杜が呟き、倒れている死人型キメラの死体に火をつけて燃やしていく。
「それとマリ姐さん、無茶は程ほどにお願いします。今度、無茶をしたら押しかけ世話係りになりますよ!?」
 覚醒を解除して、やや半泣きの状態で懇願してくる櫻杜に「ぜ、善処します」とマリは言葉を返した。
「それにしても、な〜んかビビっとるマリ見たら調子狂うねんけどなー」
 怯えながら歩くマリを見てクレイフェルが呟く。
「なんですと! そんな事を言うクレイやんなんか‥‥」
 言葉を止めて隠し持っていた『巨大ハリセン』でクレイフェルの頭をすぱこーんと叩く。
「いたっ! 何処からハリセン――これ俺のやん!」
 いつのまにか掠め取られていた自分の『巨大ハリセン』をマリから奪い返し『仕掛けてきたのはマリやん』と自分に納得させるように呟き、マリの頭をすぱこんと叩く。
「またいつものが始まったみたいね、それより私はシャワーでも浴びたい気分ね。体に変な匂いが染み付いてなければいいんだけど‥‥」
 小鳥遊は自分の服を見てため息混じりに呟く。

 その後、本部に帰還する前に能力者達はシャワーを浴びた――のだが、乳ハンターの異名を持つ烏谷によって狙われた櫻杜はスキンシップという名目で鑑賞されたのだとか‥‥。
 そして、余談だけれど死人型キメラが現れた場所は大昔に墓地だったという過去があったらしい。


END