タイトル:危険な遊びマスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/08/11 02:50

●オープニング本文


どうして人間というものは危険な事に首を突っ込みたがるのだろう?

それは心の何処かで『スリル』というものを求めているからだろう。

※※※

最近、子供達のあいだで流行っている危険な遊び。

能力者達がキメラを退治している所を見に行くというものだ。

もちろん巻き込まれたりするかもしれないという危険なデメリットもあるが、子供達にとってそんな事は関係ないのだ。

自分達が『襲われるかもしれない』『死んでしまうかもしれない』という事など夢にも思っていないのだから。

平和な場所にいる人間は『自分達が巻き込まれる』など絶対に思わない。

なぜなら襲われたことがなければ、身近にいる人間が死んでみなければ、誰も危機感なんて持たないのだから。

今回の子供達も軽い気持ちだった――自分達が襲われて初めて気がつくのだ。

『自分たちが死んでしまうかもしれない』――と。

「うわああああああっ!!!」

小さな森の中、子供達の叫び声が響き渡ったのだった。

●参加者一覧

エクセレント秋那(ga0027
23歳・♀・GP
レィアンス(ga2662
17歳・♂・FT
御巫 雫(ga8942
19歳・♀・SN
皆城 乙姫(gb0047
12歳・♀・ER
篠ノ頭 すず(gb0337
23歳・♀・SN
鴉(gb0616
22歳・♂・PN
ファイナ(gb1342
15歳・♂・EL
田中 直人(gb2062
20歳・♂・HD

●リプレイ本文

〜子供達を助ける為に〜

「ちょっと考えれば危険だって分かるのに‥‥とにかく急がないと」
 田中 直人(gb2062)がため息混じりに呟く。子供というものは本当に不思議なもので、危険だと分かっている場所に惹かれるのだ。
 もちろん『子供』だから危険と分かっていても飛び込みたくなるのだろう。
「あたしだって餓鬼の頃は随分無茶したもんさ。本当にいけないのは、バグアやキメラみたいな連中がうろついている現状なのさ。子供達は悪くないんだよ」
 エクセレント秋那(ga0027)が少し悲しそうに目を伏せて田中に言葉を返した。子供は無茶をする、それが当たり前――だけど今の危険な世の中が子供の行動を制限させているのだとエクセレントは呟いた。
「‥‥好奇心旺盛なのはいいが自ら危険な場所に行くのは感心出来ないな」
 レィアンス(ga2662)も田中と同じくため息混じりに呟く。
「まぁ‥‥早々に助けてやれば良いだけのこと」
 御巫 雫(ga8942)が目を伏せながら小さく呟く。
「そうだね、子供達が心配だよ。急いで助けにいかなくちゃ!」
 皆城 乙姫(gb0047)が恋人である篠ノ頭 すず(gb0337)の方を向きながら話しかけると「そうだね、早く向かおう」と篠ノ頭も言葉を返した。
「好奇心旺盛‥‥無謀でも、子供を見捨てるのは出来ないんですよね‥‥」
 鴉(gb0616)が俯きながら「弟妹みたいには‥‥もうしませんよ」と言葉を付け足しながら呟く。
 どうやら彼には何か理由があるようで『子供』という部分に過敏に反応しているようにも見えた。
「‥‥でも今回のことは、ちょっと反省してほしいな。スリルを求めるのは分かるけど‥‥」
 ファイナ(gb1342)が小さく呟く。
「ともかく、急いで現場に向かい、子供達を救出しましょう」
 ファイナが続けるように呟き、能力者達は子供達がキメラに襲われている、もしくは追いかけられている森へと向かい始めたのだった。


〜静寂の中、響く救いの声〜

 今回、能力者達は森の中を捜索するにあたって班を4つに分けて、2人一組で行動するという作戦を立てていた。
 キメラが一匹じゃないかもしれない、子供達が森の中をばらばらに逃げ回っているかもしれない、そういう時のことを考えて4つに分けたのだろう。
 エクセレント&レィアンス、御巫&ファイナ、皆城&田中、篠ノ頭&鴉、もちろんばらばらで行動するわけだから互いの連絡は絶やさないようにしようと話し合っていた。
「すず、気をつけてね‥‥」
 篠ノ頭の頬にキスをしながら皆城が心配そうな表情で呟く。
「うん、乙姫も気をつけて‥‥直人さん、乙姫を宜しくね」
 篠ノ頭が田中に向けて呟くと「もちろんですよ、お互い頑張りましょう」と丁寧に言葉を返した。
「それじゃあ、無事に任務を終わらせよう」
 エクセレントが呟き、能力者達は森の中へと足を踏み入れたのだった。


※一班※
「それにしても広い森だねぇ、これじゃ子供を探す方が苦労しそうだよ」
 エクセレントは森を見渡しながら苦笑気味に呟く。
「確かに‥‥でも追われているか襲われているなら助けを求める声が聞こえるはず。隠れている場合は分からないけれど」
 レィアンスは子供の声を聞き逃さぬように周囲を十分な警戒をしながら言葉を返す。
「‥‥これを見てみなよ」
 エクセレントが地面を指差すようにレィアンスに話しかける。レィアンスは促されるままに地面を見ると足跡がいくつも見受けられた。
「‥‥靴の足跡が違うのがいくつも混じっている‥‥最低でも2人、いや3人か?」
 レィアンスが足跡を見ながら状況を分析していく。
「子供達もばらばらに逃げている可能性が高いかもしれないね」
 エクセレントがため息混じりに呟いた時に「誰か助けて!」と少女特有の甲高い声で助けを求める声が聞こえてきた。
 少女は腕や足などに怪我をしており、その後ろからは少女を追い立てている狼型キメラの姿が視界に入ってきた。
 先に行動を開始したのはエクセレントの方で、彼女は『先手必勝』と『瞬天速』を使用して少女と狼型キメラの間に割り込んだ。
「さぁ、アンタの相手はこっちさ!」
 エクセレントは叫び、素手で攻撃を行っていく。
 しかし、素手でFFは破る事が出来ず、エクセレントが作った隙を縫ってレィアンスが『蛍火』を振り上げて攻撃を繰り出す。
「直線は‥‥いや、言う意味はないか」
 レィアンスは呟きながら右手に持った武器で『紅蓮衝撃』を使用して攻撃を繰り出す。
 そして、その後、左は順手、右は逆手で武器を持つと同時に側面へと回り込み突きと薙ぎの二段攻撃を行い、胴体部分を無理矢理抉るという攻撃を行った。
「さぁ、傭兵の戦いがどんなものか目を瞑らずにしっかり見とくんだよ!」
 エクセレントは叫ぶとリストバンドを投げ捨てて狼型キメラにスープレックスという少女に向けて少しサービス的な戦いぶりを見せ、最後はレィアンスが幕を下ろした。
「あ、ありがとう‥‥」
 少女が礼を言うと「他にはいないのか?」とレィアンスが問いかける。
「き、キメラが4匹現れて‥‥怖くなって皆ばらばらになって逃げたから‥‥他の友達が何処にいるのか分からない」
 少女は俯きながら呟き、エクセレントが『トランシーバー』で他の3班に子供達がばらばらに逃げていること、そしてキメラが4匹存在していて、そのうちの一匹を葬った事を知らせたのだった。

※二班※
「声が聞こえる‥‥キメラのものではないな」
 御巫が伏せていた目を開き、静かに呟く。彼女の言葉にファイナも耳を澄ませて見ると確かに遠くから人の声のようなものが耳に入ってきた。
「エクセレントさん達が1人保護しているんですよね、キメラも残り三匹いるし‥‥気をつけないと」
 まるで自分に言い聞かせるかのようにファイナが呟き、御巫と一緒に声のする方向へと急いで向かう。
 暫く走り続けると、木の上で少年が震えている姿が視界に入ってきた。木の下には上ろうと幹に爪をかけている狼型キメラ。
「雫さん、子供の保護はお任せしましたっ」
 ファイナは御巫に言葉を残して覚醒を行うと『プロテクトシールド』を構えながら『エネルギーガン』で狼型キメラに攻撃を仕掛ける。彼が狼型キメラに攻撃を仕掛け始めると同時に御巫も移動を始め、木の上で震えている子供の所まで登っていった。
「私は御巫雫、傭兵である。もう大丈夫だ‥‥怪我はないか?」
 御巫が少年に問いかけると、瞳に溜めていた涙をぼろぼろと零しながら首を縦に振った。どうやら狼型キメラに追いかけられてすぐに木の上に登ったおかげか、少年は怪我をしている様子は見受けられなかった。
 そしてファイナは御巫が少年を無事に保護した事を横目で見て、改めて狼型キメラへと視線を戻す。
「‥‥敵キメラ発見、戦闘行動開始‥‥」
 ファイナは『エネルギーガン』で攻撃を行い、狼型キメラの攻撃は『プロテクトシールド』で防ぐ――というやり方に徹していた。
 元々はそこまで強くもないキメラなのだろう、戦う能力者が1人なのですぐに倒せた――とまでは言えないけれど何とか無事に狼型キメラを倒して、2人目の子供を保護することに成功したのだった。

※三班※
「まだ2人が保護されていないんだねっ、急がないと‥‥」
 皆城が『トランシーバー』を切りながら呟く。
「保護された子供達もキメラに襲われていたようですし、まだ保護されていない子供もキメラから逃げている最中かもしれませんね」
 田中が「急いだ方が良さそうです」と言葉を付け足しながら皆城に言葉を返した。
 皆城と田中がこの周辺を捜索しているのにはきちんと理由が存在した。子供のものと思われる足跡が存在していたからだ。
「足跡がこの辺で消えてるから、この辺にいるとは思うんだけど‥‥」
 皆城が地面を見ながら呟く、しかし――そこに走って駆け寄ってくる狼型キメラの姿が視界に入った。
「子供を捜すのは‥‥倒してから、になりそうですね」
 田中は呟いた後に覚醒を行い、鋭い視線を狼型キメラに向けた。
「覚醒完了‥‥さて、狩りの時間だ‥‥」
 田中は『試作型超機械剣』を振り上げて、狼型キメラに攻撃を行う。離れた距離から攻撃できたなら『クルメタルP−38』を使用しようと思っていた田中だったが、生憎と狼型キメラは接近して攻撃を仕掛けてくる。
 田中が狼型キメラの攻撃を受け流している時に皆城は『練成強化』で田中の武器を強化して『練成弱体』で狼型キメラの防御力を低下させた。
「お前が俺に勝てるとでも‥‥?」
 武器を振るい、狼型キメラに攻撃を仕掛けながら田中が嘲るような笑みを見せて呟く。攻撃を受けた事によって狼型キメラは少し素早さが落ちて、その一瞬の隙を突いて再び田中が攻撃を仕掛けた。
「その頸、俺が貰い受ける‥‥」
 呟くと同時に田中が武器を振り落として、3匹目の狼型キメラを倒したのだった。
 そして残る問題、それは‥‥まだ見つからない子供だった。足跡があるからこの周辺にいるはずなのだ。
「‥‥あれ」
 呟いたのは皆城。何事かと田中も皆城が見ている方を見れば、小さな少年が木の後ろに隠れて此方を見ていた。
 恐らく逃げている最中に狼型キメラの標的が少年から能力者の2人へと移ったのだろう。
「私たちはキミ達を助けに来たんだよっ」
 皆城が手を差し出しながら少年に話しかけると「お姉ちゃんが‥‥?」と不思議そうな顔で此方を見てくる。
「はは、同じくらいの年だもんね。だけどこれでもちゃんと戦えるんだから」
 皆城が少年に言葉を返すと、隠れていた少年も足を少し引きずりながら能力者の所へと歩いてきた。
「これで3人目、もう1人も上手く見つかるといいんですけど‥‥」
 田中が呟き『トランシーバー』で3人目の子供を保護した事を伝えたのだった。

※四班※
「やっぱり足場が悪いね」
 篠ノ頭が共に行動している鴉に話しかける。その言葉に鴉も首を縦に振って、無言で返事をする。
 森の中、最初に現場を聞いた時に足場の悪さは多少なりとも覚悟していた。これが雨の後でないのが唯一の救いだろう。
「乙姫は大丈夫かな‥‥」
 恋人のことが心配なのか篠ノ頭は少し俯きながらポツリと呟く。
「大丈夫ですよ、さっき連絡が来たじゃないですか」
 鴉が苦笑気味に呟くと「そう、だな」と篠ノ頭が言葉を返してくる。
 鴉は行動開始時に既に抜刀して、いつでも戦えるように備えていた。そしてどんな音も聞き漏らさぬように警戒を強め、キメラ、子供、どちらを先に見つけても迅速に行動が出来るようにしていたのだ。
「‥‥音?」
 突然、篠ノ頭が呟く。鴉も耳を澄ませて見れば子供の叫び声のようなものが聞こえ、2人は互いの顔を見合わせた後に慌てて声の方へと走り出す。
「大丈夫か?」
 篠ノ頭が叫びながら声の場所へとやってくると、狼型キメラに足を噛まれている子供の姿が視界に入ってくる。
 怪我をしている少年の姿を捉え、鴉が『瞬天速』で間合いを詰めて『蛍火』で狼型キメラに攻撃を仕掛ける。鴉の攻撃によって狼型キメラは少年から引き剥がされ、少年の火のついたような鳴き声が森中に響き渡ったのだった。
「これ以上は近づけさせない。もう目の前で怪我なんてさせるかってね」
 鴉が呟くと、狼型キメラは少年を諦めていないのか、視線は相変わらず少年を向いたまま。
「余所見、なんて暇無いだろ、キメラ」
 鴉は『蛍火』で突きながら攻撃を仕掛け、忌々しそうに呟く。
 そして、鴉の攻撃によって生じた隙を突いて篠ノ頭が『強弾撃』を使用して狼型キメラに大ダメージを与える。
「鴉殿、決めてしまおう」
 篠ノ頭が鴉に話しかけると「あいあいさー」と言葉を返して、トドメを刺すために動き出す。
 最初に篠ノ頭が狼型キメラに接近された為『ショットガン20』で攻撃を仕掛ける。その攻撃によって狼型キメラの動きが鈍くなり、それを待っていた鴉が武器を大きく振り上げて、振り下ろしてキメラを退治したのだった。


〜平和が一番幸せな事〜

「ほら。これでも飲みな」
 あれから能力者達は合流して全ての子供を保護したことを確認すると町まで向かっていた。その途中でエクセレントが子供達に『ミネラルウォーター』を渡して飲ませる。
「慌てて飲むんじゃないよ」
 極度の緊張感のためか子供達は渇きを癒すかのように飲み続けていた。
「‥‥今回のことで身を持って教訓を得たであろうし、あまり煩く説教する必要もあるまい」
 これに懲りたら危険な場所に近づくのは止めよ、御巫が言葉を付け足して子供たちに言い聞かせる。
「常に貴様達を心配している人間がいることを、忘れるなよ」
 御巫は町の入り口で待っている子供達の親を見ながら呟くと、子供達は親のところへと駆け出した。
「命が危険に晒されないから、自分が危険な場所にいることが分からないのかもしれない。それだけ平和な場所にいる、両親や周りの人たちに守られている事を改めて確認して、もうこんな事をしないで欲しい」
 皆城が親に抱きつく子供達の姿を見て小さく呟いた。
「本当にありがとう」
 子供達が頭を下げて、助けてくれたことに関してお礼を言ってきた。
「我はきみ達を怒らない。だけれど、皆きみ達を心配していたんだ。本当に」
 篠ノ頭の言葉に「ごめんなさい」と子供達もしょんぼりとした表情で言葉を返してきた。
「直人殿、無理はしなかったか? きみにも無事でいて欲しいんだからな」
 篠ノ頭の言葉に「俺は大丈夫ですよ」と田中が言葉を返す。
「最後に、俺達はヒーローじゃない。俺達の見えない場所じゃ喪われてるものの方が多いからね。自分達がどれだけ危険だったか分かってもらえればいい、かな」
 鴉の言葉に「次からはもうしない」と笑って子供達は言葉を返してきた。何故笑っているのというと、鴉が『鼻眼鏡』をしながら話しかけてきていたからだ。
「人は笑ってるのが一番、緊張も解れるし‥‥泣かせたままは後味も悪いしね」
 子供は元気なのが良いから、鴉は言葉を付け足して呟く。
 そして子供達は反省しているようなので、ファイナはあえて説教をするつもりもなく、今回の事件を報告するために能力者達は本部へと帰還していったのだった。


END