●リプレイ本文
〜桜を狩る為に集まりし能力者達〜
「桜のキメラですか‥‥以前戦った事ありますね‥‥以前の桜キメラは枝による蔓のような物で攻撃と再生能力でしたね。今回もほぼ同じと考えて良いのでしょうかね‥‥」
キメラの情報を見ながら大曽根櫻(
ga0005)が呟く。
「八月に咲く桜――キメラか。確かに気味の悪い話だ、早々に退治するに限るな」
サルファ(
ga9419)が呟く。彼は『キメラ退治』という事の他に『何故その場所にキメラが現れたのか』という事も解明したいと考えていた。
「桜が斬られた場所に桜のキメラ、偶然にしては出来すぎだと思ってな」
サルファの言葉に「確かに‥‥狂い咲きの桜の呪い‥‥って、とこかな?」と櫻杜・眞耶(
ga8467)が言葉を返した。
「とりあえず、町の人に話を聞いてみた方がいいよね? まだボク達が知らない情報があるかもしれないし‥‥」
チャペル・ローズマリィ(
ga0050)が呟くと「そうですね、がんばりましょ」となるなる(
gb0477)が言葉を返す。
「あ、そうそう、防塵マスク――とまでは行きませんでしたが、マスクの貸出が許可されましたので、渡しておきますねぇ」
ヨネモトタケシ(
gb0843)が呟きながら能力者達にマスクを渡していく。
「何事もなく無事に退治出来ればいいんですけどね〜」
GIN(
gb1904)が呟くと「そうね、何事もなければそれに越したことはないね」と沙姫・リュドヴィック(
gb2003)が言葉を返す。
「さて、そろそろ出発しようか――話も聞きたいしね」
サルファが呟き、能力者達は『桜キメラ』を退治する為に問題の場所へと向かい始めたのだった‥‥。
〜狂い咲く桜〜
「ねぇ僕、お姉ちゃんにあの桜のことを教えてくれる?」
問題の町へと到着すると、チャペルは公園で遊んでいる子供達に話しかけて『桜キメラ』について話をしてくれるように頼んでいた。
「父ちゃん達が気味悪いからって切り倒そうとしたんだけど‥‥枝や花びらで攻撃されて殺されちゃった‥‥」
数人の少年達は俯きながら、父親のことを思い出したのか瞳に涙を溜めながら呟いていた。
しかし、少年達の言葉の中に能力者達は一つ引っかかる事があった。本部から仕入れた情報は『枝』についての攻撃は書いてあった。調査に向かった能力者が報告してきたと書いてあったのだが『花びら』についての報告はなかったのだ。
「花びらについて、知っている限り教えていただけますか? それと桜キメラがいる場所も」
大曽根が目線を少年達に合わせるようにしゃがみながら話しかけると「うん」と涙を服の袖で拭きながら首を縦に振り、再び話し始めた。
「人が桜に近寄ると、花びらが舞うんだ。それに当たったらスパッて切れちゃうみたいで‥‥父ちゃんは傷だらけだった――お願いだよ、あの桜を倒して」
少年達がわんわんと泣き叫びながら『桜キメラ』の方を指差し、能力者達に懇願するように話しかけてくる。
「大丈夫だよ、ボク達が桜なんて倒しちゃうから。危ないから家に帰っててくれる?」
子供達が戦いに巻き込まれぬよう、チャペルは家に帰るように子供達に指示すると子供達は首を縦に振って、それぞれ家に帰り始めた。
「もう少し話を聞いてみた方がいいかな」
沙姫が呟き、調査に赴いた能力者と話した男性住人と話をする事になった。
「あの桜が現れる前?」
能力者達は『桜キメラ』が現れる前に何か異変がなかったか男性に問いかけたが、男性は皆目検討がつかないのか、首を横に振りながら「分からんよ」と答えた。
「切り倒された場所に『偶然』『同じ』『桜』のキメラが現れる‥‥あり得ない話ではないだろうけど、普通に考えて起こりえる事じゃないな」
サルファはため息混じりに呟く。
「でも、俺達も斬りたくて斬ったわけじゃないんだけど‥‥植物の先生に診てもらった結果、枯れて花を咲かせないって言われて‥‥それにここ数年花を咲かせなかったし」
男性は俯きながら呟く。
もしかしたら、丘に存在する『桜キメラ』は『住人達の罪悪感』が生んだものなのかもしれない。
もちろんキメラが自然発生するという意味ではなく、何かしら住人の気持ちを読み取り、キメラが『桜』の形を取っている――こう考えるしか出来ないのだ。
サルファも言っていた通り、偶然が重なる事があり得ないわけではないのだが、簡単に起こるものでもないのだから。
「それじゃ、桜のところに行ってみましょうか、暗くなっては此方が不利になりそうですし‥‥」
大曽根が呟き、能力者達は桜が咲き誇る丘へと足を向けたのだった。
〜能力者達と桜キメラとの戦い〜
「問題の桜は向こう――あの丘だね、わー綺麗な桜♪ ‥‥キメラじゃなかったら最高なんだけどなぁー、あれ」
遠くに見える『桜キメラ』を見て、沙姫が苦笑気味に呟く。
「はー‥‥確かに綺麗な桜ですよねぇ〜‥‥」
魔性ゆえの艶やかさなのか『桜キメラ』は誇るように咲いていた。
「自分は桜の散り際が好きでしてねぇ‥‥綺麗に散ってもらいましょうか」
ヨネモトが武器を構えながら呟く。能力者達の気配に気がついたのか、近づいていくにつれて枝が動き始め、花びらが舞い始める。
「過去から未来へ、この地に住まう人々の命を守る為に‥‥」
そして、前衛で攻撃を行う能力者たちが動き始めた瞬間、チャペルが精神集中の言葉を呟いた後に小銃『S−01』で走り出した大曽根に向けて襲いくる枝、そして花びらに攻撃を仕掛ける。
「人を傷つける美しさなど‥‥誰も必要としていませんよ」
大曽根はチャペルの援護を受けながら『桜キメラ』の所まで走り『蛍火』で攻撃を仕掛ける。
「桜を名乗る者として哀れとは思うが‥‥キメラに身を堕とした己を後悔しなっ!」
櫻杜は『ショットガン20』を桜キメラに向けて発砲しながら叫ぶ。反撃するように櫻杜に襲い掛かろうとした枝の一部をサルファが『両断剣』を使用して斬り落とす。
「酒の肴にならない桜に、興味はない。とっとと倒れろ」
サルファは再び『コンユンクシオ』を構えて攻撃を仕掛ける。
「むむー、がんばりますよ!」
なるなるは叫びながら『練成強化』で能力者達の武器を強化して『練成弱体』で桜キメラの防御力を低下させた。
「さあて、皆様お立会い! これに見えますバイクが噂のAU−KV、DN−01リンドヴルム! お代は変形を見てからで結構でッスよ!」
彼にとっては初めての実戦という事でテンションも高くなっているのだろう。
しかし装備力限界まで固めている為か、がちがちの機動装甲歩兵へとなっていた。
「大丈夫、ですか?」
なるなるが問いかけると「だ、大丈夫ッス」と苦笑気味に答えてくる。
「ちゃんと重量とか行動の妨げにならないように考えてきてあるッスから」
そう答えてGINは『アサルトライフル』で桜キメラに攻撃を仕掛けて、前衛のカバーとフォローに回る。
「枝で攻撃してくる、お約束で花びらカッターもやってきた。次は花粉ッスかねぇ?」
GINは攻撃を仕掛けてから、来るか分からないが『花粉』に気をつける。
「あんたなんか薪にしてあげるわ!」
沙姫は「竜の爪食らっときなさい!」と叫びながら『竜の爪』で武器の能力を高めて攻撃を仕掛ける。
そして沙姫の攻撃の後に大曽根が『蛍火』を振り上げ『紅蓮衝撃』と『急所突き』を発動して桜キメラに攻撃を仕掛けた。
大曽根の攻撃に合わせるように、チャペルは『急所突き』と『強弾撃』を発動して攻撃を繰り出し、桜キメラに大ダメージを与えた。
「叩き斬ってやるよ!」
サルファは叫び『両断剣』と『ソニックブーム』で桜キメラに攻撃を仕掛ける。そしてヨネモトが「深く‥‥刻ませて貰いますよぉっ!」と『両断剣』と『二段撃』を使用して桜キメラに攻撃を繰り出し、ダメージを与える。
ヨネモトの攻撃が終わるとGINが『アサルトライフル』で攻撃を仕掛けて沙姫に連携を繋げる。
その後、能力者達の総攻撃により、桜キメラは見事退治されたのだった。
〜桜枯らして、次の命を育む者〜
「一緒に帰りましょう‥‥二度と悪用されないように静かに暮らせる森へ連れて行ってあげるわ」
戦闘が終了した後、櫻杜が切り倒された桜の木片を住人から受け取り、ラストホープで再生できないかを試してみると他の能力者達に呟いた。
そしてチャペルは新しい苗木を用意して、子供達と一緒に植樹する事になった。
「これからは‥‥きっとこの樹が皆を守ってくれるよ♪」
「今度は本物の桜を見たいですなぁ」
まだ小さな苗木を見てヨネモトが呟く。
「何年待てば、これが見頃になるのかなぁ‥‥想像出来ないや」
沙姫が小さく呟く。その表情は優しげできっと花が満開に咲いた時のことを思い浮かべているのだろう。
「これはもう襲ってこない?」
1人の少年がなるなるに話しかける。
「もちろん♪ 悪い桜はもう倒しちゃったから! だからこれは大きくなったら綺麗な花を咲かせる樹になるんだよ」
なるなるの言葉に「じゃあ、僕頑張って育てる!」と手を挙げて言葉を返した。
まだ子供達の中には『桜に殺された父親』のことを考えて笑って苗木を見れない子供も多数いた。それが普通なのだろうと能力者達は心の中で呟く。
でも、いつか此処にいる子供達が笑って樹を見れるようになったらいい――そう思わずにはいられない能力者達だった。
その後、能力者達は今回の事件の報告をする為に本部へと帰還していったのだった。
END