●リプレイ本文
〜屋形船の恐怖〜
今回の任務は(また)キメラがいる場所で公演をしなければならない山吹 嵐の護衛&屋形船をキメラから護るというものだった。
「こんなところでも公演するもんなんですね。これも芸人魂ってやつですか?」
屋形船を見ながら、周防 誠(
ga7131)が山吹 嵐に話しかけた。
「芸人魂って言うか‥‥とりあえず芸人として芸をさせてもらえるなら、何処でも行くッスよ。仕事がなければ『芸人』として生きていけないッスから」
山吹は苦笑しながら答えると「ふぅん‥‥」と周防は言葉を返す。
「でもさ、山吹っていつも頑張ってるよな。頑張ってるやつは応援したいから、頑張れよ」
鳥飼夕貴(
ga4123)が山吹の肩をぽんと軽く叩きながら話しかけると「オッス」と敬礼の真似をしながら山吹は言葉を返した。
「とりあえず、あたしと夕貴は接待役として乗り込むことにするわね」
野之垣・亜希穂(
gb0516)が鳥飼を見て、ウインクをしながら話しかけてくる。
「折角の公演だからね、能力者がぞろぞろいてもお客は気になるだろうし‥‥だから芸者として動くようにするよ」
もちろんキメラ退治も頑張るけど、と鳥飼は言葉を付け足す。
「出来れば屋形船の荷物を降ろしておきたい――ところだけど、無理っぽいね」
愛輝(
ga3159)が呟きながら屋形船の中を見渡すが、これから来るであろう客をもてなす為の料理や飲み物、そして芸で使う山吹の荷物などが置いてあり、それを屋形船から降ろすのは無理であることも分かった。
「そういや、今回のキメラはイカキメラだったな‥‥海中大決戦って所かね」
須佐 武流(
ga1461)が呟くと同時に船がぐらりと揺れ「おおっと」と須佐はバランスを取りながら呟く。
「しかし、こんな安定しないところで戦えって‥‥無茶にも程があるな?」
須佐が山吹を見ながらため息混じりに呟くと「そんな事を俺に言われても‥‥うぷ」と山吹は口を手で押さえながら呟く。
「‥‥そういや、船酔いするんだっけ」
須佐が苦笑しながら問いかけると「船に乗って‥‥酔わなかった事はない‥‥うぇぷ」と言葉を返してくる。
それから暫くした頃に山吹の公演を見に来たお客達が屋形船に乗り込んできて、船を進めながらどんちゃん騒ぎが始まりだした。
鳥飼と野之垣はお客にお酌をしたり、料理を運んだりなど接待をしている。もちろん芸者に見えるように二人は浴衣を着込んで髪型も日本髪にしており、傍目には能力者とは分からないだろう。
他の三人の能力者は周りを見張るようにしていて、キメラが現れたらすぐに戦闘を行えるようにしていた。
「とりあえず、現れたら海中から引っ張り出すしかないよなぁ」
須佐がため息混じりに外を見ながら呟く。
「まだ見当たらないな‥‥」
愛輝は屋根の上に乗り、双眼鏡で警戒をしながら小さく呟く。
「どうやら、現れたようですよ」
周防が呟き、屋形船の中にいる山吹を始め、客たちにも隅に避けておくようにと叫ぶ、その時に戦闘準備を始めていた鳥飼と野之垣の二人は荷物を隅に避けて戦闘に支障がないようにする。
「さて、イカ退治だね」
鳥飼は呟き、浴衣を脱ぎ捨てながら『月詠』と『蛍火』を構えたのだった。
〜足場の悪い場所でイカ退治〜
「おっと!」
声をあげたのは須佐だった。
彼は今回のキメラがイカなので釣りをして食いついてこないかと試していたが、やはり力が強く、海の中へと引きずり込まれそうになって、竿から手を離した。
「厄介な触手だな」
須佐は呟いて船の床を蹴ってイカキメラへと跳躍する。そして『刹那の爪』で攻撃を仕掛けるが、簡単に足を落とさせてはくれない。
「場所が悪いね、普通の地面だったらこんなに戦いにくい事ないのに‥‥」
屋形船の中という悪状況の中で『パイルスピア』で攻撃を仕掛ける。船にイカキメラが取り付かれることだけは避けたいので、愛輝は『パイルスピア』を突き出すようにして屋形船側面から攻撃を行っている。
「人が頑張ってる場所にさ、出しゃばってくるのは良くないと思うよ」
鳥飼は『月詠』と『蛍火』を振り上げて『二段撃』を使用してイカキメラの足を切り落とした。切り落とした足は再び動き出さぬように野之垣が『サベイジクロー』で突き刺して動かぬように固定をする。
「見掛け倒しの部分もあって、間違えさえしなければ倒せない事はないな」
須佐が『ジャック』で牽制を行った後に『刹那の爪』で蹴りで攻撃を行う。
「うわぁっ!」
突然、山吹の声がしたと思ったらイカキメラが山吹に何かを吐きつけようとしていた。
「危ない!」
野之垣は山吹を庇うように、イカキメラから吐き出された墨を受ける。
「お、おい‥‥大丈夫か?」
山吹が野之垣に話しかけると「大丈夫よ、やだ、真っ黒」とガラスに映った自分の姿を見て野之垣はがっくりとしたようにため息を吐く。
「別に何か毒があるとかはないみたいだから、心配はいらないわ。ただ単に真っ黒になるだけだから、水で落とせるしね」
野之垣は山吹に言葉を返すと「気休めだけど」とタオルを差し出してきた。
「ありがとう、でも中に入ってた方がいいわよ。まだキメラを倒したわけじゃないからね」
野之垣の言葉に山吹は首を縦に振ると、屋形船の中へと入っていく。
「頭が見えた!」
愛輝が叫ぶと同時に『瞬即撃』を使用して海から僅かに見えてきた頭に攻撃を仕掛けた。周防は頭を攻撃しようとしている能力者をイカキメラが触手で攻撃しようとしているのを『ドローム製SMG』で援護をしながら攻撃を仕掛ける。
上手いことイカキメラは屋形船に接近していて、能力者達が接近攻撃を行いやすい場所に来ていた。
須佐は頭に攻撃を仕掛け、ひるんだ隙に屋形船へと戻り――というヒット&アウェイを繰り返す。
そして愛輝が『パイルスピア』で攻撃を仕掛ける、その際に鳥飼が援護を行い、愛輝が攻撃をしやすいようにしていた。
「まいったね、もう顔を見飽きたから‥‥やられてもいいよ」
周防は呟くと武器を『菖蒲』に持ち替えて『急所突き』をイカキメラに使いながら攻撃を仕掛ける。
イカキメラは逆に屋形船に接近しすぎで、思うように攻撃が出来ないのか少しだけ船が揺れるだけで大きな被害はなかった。
その後、イカキメラがもたついている隙に能力者達は総攻撃を仕掛けて、イカキメラを退治したのだった‥‥。
〜何故か山吹の芸よりウケている能力者たちのキメラ退治〜
「怖かったけれど、こんな迫力があるものを見れて良かったよ、いや、ご苦労だったね」
客の1人であろう中年男性が能力者達に話しかけてくる。
「本当に、この人の芸より良かったわぁ」
その中年男性の奥さんであろう中年女性が爽やかすぎる笑顔で話しかける――もちろん、その中年女性の後ろでは山吹がショックを受けたような表情をしているのが見え、能力者達は返す言葉に困っていた。
「さぁ、また芸の続きをするんだろ? 準備をしてお客に見てもらいな」
鳥飼が山吹の肩を叩きながら話しかけると「ウッス」と山吹は言葉を返して、再び準備を始めた。
「でも、山吹さんって意外とヒーローの素質が、あるかもしれませんね。主人公の前で頻繁に事件が起きるなんてアニメではお約束です」
愛輝が山吹に話しかけると「‥‥それってイイ事?」と言葉を返した。
「最近は物騒になっているからさ、公演も命がけッスね」
ため息混じりに呟くと「ま、これも俺の決めた道ッスからいいけどね」と苦笑を漏らしながら言葉を付け足した。
「そうだ、イカ足があるから‥‥ゲソ天ぷらでも作ってみようかな? もちろん食べるのは希望者だけ――って事で」
鳥飼が呟くと、イカ足を持って厨房へと向かう。
「どうせなら自分達も楽しませてもらいますか」
空いている場所に座り、周防は日本酒をちびちびと飲みながら山吹の公演を見ていた。
そして、その時に「ふー‥‥やっと落ちたわ」と野之垣が顔を拭きながらやってきた。どうやら普通のイカ墨とは違い、落ちにくいものだったらしい。
「イカ足が幾つかしか残らなかったな、後は沈んじまったし」
須佐が海の中を覗き込むようにしながら呟く。
その後、能力者達は料理を食べながら山吹の芸を見ていたが――‥‥。
前回見た者は分かっているように、全然面白くない芸を一生懸命披露していた。
「これからも要精進ですね」
周防は屋形船を降りる時に山吹を激励しながら降りていった。
その後、能力者達は本部へ帰還してキメラ退治の報告と山吹の芸が面白くないことを報告したのだった。
END