●リプレイ本文
今回は『週刊個人雑誌クイーンズ』の記者である土浦 真里(gz0004)は能力者の休日を取材するために前もって許可を取っていた。
「さぁて、取材に行っちゃいますか!」
マリは取材道具を抱えて、最初の取材者の所へと向かい始めたのだった。
〜元気っ娘の休日〜
「あれぇ? 時間間違えたかな‥‥?」
現在の時刻は朝の八時を少し過ぎたところ、最初の取材者は群咲(
ga9968)で待ち合わせは彼女の自宅だった。
「出直した方がいいかなー‥‥」
どうしようかマリが悩んでいる所に「ふぁ〜‥‥」と玄関のドアを開けて群咲が顔を覗かせた。
「おはよーござーっす‥‥あれ? もう八時? うわ目覚まし止まってる!」
「と、とりあえず何か服を着た方が‥‥」
ただいまの群咲の格好、それは下着の上にランニングを被っただけの姿。
「そんな格好で寝るのはいいけど、玄関のドアを簡単に開けちゃだめだよ〜」
マリが苦笑しながら話しかけると「だって暑いんだもん」と言葉が返ってきた。
「えーと、ゴメン。シャワーだけ浴びさせて。部屋の中は好きに見てていいから」
そう言いながら群咲は風呂場へと消えていった。暫くすると水音が聞こえはじめ、マリも部屋の中を見渡した。
まず目に入ったのは本棚、少年漫画や同人誌などが主のようで、それでも確り整頓されていて綺麗なものだった。
「あれ――‥‥ベッドの下にも本が‥‥」
落ちたのかな、マリは呟きながら端だけを覗かせている本を手に取る。どうやらその本はダンボールに入れられていたようで本を引っ張った事でダンボールもズレて姿を見せた。
「聞いた事ないタイトルだけど、どんな話――――‥‥」
マリはぱらぱらと本を捲って固まる。何故なら美少年の同性愛が綴られているものだったからだ。
「‥‥これは見ちゃいけない、いけない」
マリはダンボールをベッドの下に押し込めた所で風呂場から出てきた。
「ふー、すっきりしたぁ、あれ? どうしたの?」
群咲はタオルで頭を拭きながら出てきて硬直しているマリに問いかける。
「や、何でもない! 登山用品があるから山登り好きなのかなー‥‥って」
マリが玄関頭上の棚に置かれている色々な登山用品を指差して問いかける。そして扉が半開きになっている収納棚からは水着や海用品が姿を覗かせていた。
「昔はアウトドア派オタクと呼ばれていたけどサバゲはやめちゃった」
だからあそこに直してあるんだ、と群咲は苦笑気味に答えた。
「サバゲやめちゃったの? 何で? 飽きた――とか?」
マリが問いかけると「違うよ」と彼女は首を横に振りながら言葉を返してきた。
「普段本物の戦場にいると、プレーする気が起こんなくて。ゲームと本物は違うから」
群咲の言葉に「‥‥そうなんだ」とマリは納得したように呟いた。
「これから修練に行くけど、一緒に来る?」
群咲は準備をしながらマリに問いかけると「もちろん! 取材だもの」と答えて群咲の後を着いていき『NHBジム』までやってきたのだった。
「普段は此処で受身と歩法の修練をしているんだ」
群咲は呟くと同時に覚醒を行い、静かに演武を始める。元気に、だけど優美さを感じさせる円の動きを行った後、マットに倒れ、その直後に大きく体を回転させて起き上がる。
どれもが『一般人』であるマリには無理な動きであり、羨ましく、そして少しだけの嫉妬を感じさせた。
「キメラにはF・Fがあるから拳で攻撃しても無駄、でも防御なら素手で出来るんだから」
ぱしん、と空気を切るように拳を前に素早く突き出しながら群咲は呟く。
「でもまぁ、それも能力者の体あってのものだけどね」
苦笑気味に群咲が呟き「さて、汗流しにお風呂屋さんに‥‥時間大丈夫?」と言葉を付け足して問いかけてくる。
「う〜ん、ギリギリ大丈夫かな。お風呂好きなの?」
マリが問いかけると「仕事上色々あるもん、昨日だって下水のキメラ掃除‥‥」と言いながら群咲はズーンと沈んできた。
その後、マリは沈んだ群咲を慰めながらお風呂屋へと向かい、そこで別れたのだった。
〜所長の休日〜
「どうも! マリでーっす♪」
続いての取材者はドクター・ウェスト(
ga0241)で『ウェスト研究所』の所長でもある。
彼は分子生物学が専攻だが、現在はフォースフィールド無効化の研究に着手しているらしい。
「けひゃひゃ、我が輩がドクター・ウェストだ〜」
研究所の中に入ると、取材者のドクター・ウェストが椅子に座ってマリを迎えた。
「はぁ、こういう面倒な事はさっさと終わらせるに限るね〜‥‥」
ドクター・ウェストはうんざりとした表情でため息混じりに呟く。
「爽やかなくらいに嫌な顔をしてるわねー‥‥」
マリが苦笑しながら問いかけると「だってね〜‥‥」とドクター・ウェストは大きなため息を吐いて言葉を続ける。
「イメージアップしようが、どうせ心無い者から叩かれるのだからね〜‥‥」
ドクター・ウェストはマリに出す紅茶を淹れながら呟いた。
「その気持ちは分かるかなぁ。私も記者だから結構色々言われたりするんだよね〜‥‥私の場合は言われるような無茶ばかりしてるからなんだけど」
あは、と笑いながらマリは渡された紅茶に口をつける。
「それにしても結構な資料ねぇ」
マリは周りを見渡しながら数々の資料を見る。
「昼間は集めた資料の整理や、キメラ細胞の解析かね〜。しかし解析はあまり進んでいないのだがね〜」
その後、ドクター・ウェストはフォースフィールドの原理を思考的に解析し、対応策を練り、試作品の開発を続けているのだという。
「まぁ、我が輩の休日は大体こんなものだね〜。朝夜は研究所で研究談義と言ったところかね〜‥‥で? ほかには?」
ドクター・ウェストの言葉に「差し支えなければその試作品、見せてもらえない?」とマリが言葉を返すと
「現在の試作品というか‥‥時折実験するだけだが〜‥‥」
ドクター・ウェストはため息混じりに彼が開発した『カーボン弾』をマリに見せる。
そのカーボン弾は能力者ではない一般人対応の対フォースフィールド弾なのだとか。フォースフィールドを電磁障壁とし、電波吸収素材であるカーボンナノコイル弾を弾頭に使用――という使い方らしい。
「成果は芳しくないのだがね〜‥‥」
がっくりと肩を落としながらドクター・ウェストが呟く。
「何か勉強になったような気がする。ありがと! ドクちゃん♪ あ、何か言いたいこととかあったらどーぞ♪」
マリがメモを取りなが問いかけると「そうだね〜‥‥」と考え込みながらドクター・ウェストは呟く。
「今は誰が作ろうが、何処が開発しようが関係ないと思わないかね? 取らぬ狸の皮算用――だったかな、現状では出来もしない未来の事に関心を向けている場合ではないからね、それに人類が一丸となってバグアを地球から殲滅しなければ、地球自体が危ういからね〜」
ドクター・ウェストは自嘲気味に呟き「これからも頑張ってね! 応援してまっす」と言葉を残してマリは『ウェスト研究所』を後にしたのだった。
〜カレーは飲み物、名言少女の休日〜
「ふぅ、すっかり遅くなっちゃった‥‥初日最後の取材だ、ガンバロ」
マリは少し急ぎ足で三人目の取材者、最上 憐(
gb0002)との待ち合わせ場所であるBAR『GULP』へと向かっていた。
「んん?」
BAR『GULP』の近くまで行くとウサギの着ぐるみを着てプラカードを持っている少女の姿が見える。大きなリボンをつけているウサギはとてつもなく可愛らしい。
「えぇと‥‥れんちゃん、だよね? 記者のマリでっす♪ ところで‥‥何してるの?」
「‥‥ん。真里が来るまで客寄せ宣伝してたの」
最上は可愛らしく言葉を返してくる。
「何でウサギ?」
マリが問いかけると「‥‥ん。これ。ばにーがーる。衣装。パパ。ばにー好きだから」と最上は言葉を返してきた。
「‥‥ん。それに。これ着てると。知らない人が。食べ物くれたりする。お得」
今日も貰ったのだろう、最上はいくつかのお菓子を見せながら呟く。
「そ、そうなんだ? 今日の取材はれんちゃんオススメの場所なんだよね?」
マリがBAR『GULP』を見ながら問いかけると、最上は首を縦に振る。
「‥‥ん。真里にエベレストカレーを紹介する。宣伝効果」
幼いながら意外としっかりしている最上にマリは苦笑するしかなかった。
「‥‥ん。取材して貰えば。知名度上昇するかも。お店うはうはかも」
言いながら最上はBAR『GULP』の店内へと案内をした。店内はテーブル席は2席のみで、ほかは全てカウンターと小さめの店だが、雰囲気がよく、マリも心地よさを感じていた。
「‥‥ん。パパ。エベレストカレー2個。注文。後牛乳大盛り」
最上はテーブル席にマリと一緒に座ると注文をする。
「そういえば何で『エベレストカレー』なの? エベレストって山だよね?」
マリが問いかけると「‥‥ん。すぐに。分かる」と最上は言葉を返してくる。彼女の言う通り『エベレストカレー』が来たと同時にマリは名前の意味を知る。
「‥‥‥‥な、なにこれ‥‥」
マリと最上の前に聳え立つ山――もといカレー。天井すれすれまで盛られた超特大カレーで明らかに重力を無視したものに見える。
「‥‥た、食べきれるかな‥‥」
マリが見ているだけでお腹いっぱいになりそうなカレーを見て小さく呟く。
「‥‥ん。大丈夫。残したら。私が食べる。安心」
最上に視線を移すと、既に半分以上を食べている。
「だ、大丈夫なの? そんなに食べて‥‥」
「‥‥ん。カレーは飲み物。飲み干すもの」
最上はさらりと呟く。思わずマリも「そうだよね〜」と言ってしまいそうなほどさらりと。
「‥‥ん。(ぐびぐびぐびぐび)‥‥パパ。おかわり」
マリが半分も食べていない時に最上は「おかわり」と次のエベレストカレーを食べている。
「‥‥ん。‥‥真里。顔色良くない。体調不良?」
「や、大丈夫‥‥気にしないで」
マリは手を振って言葉を返すが「‥‥ん。体調不良。早く休む」と残りのカレーを綺麗に平らげて「‥‥ん。送る」とマリに話しかけてくる。
「や、気にしないで‥‥って食べるの早い!」
「‥‥ん。送っていく。大丈夫。引きずって連れて行く」
さすがは能力者、こんな小さい子供なのにマリはずるずると引きずられて編集室へと戻されたのだった‥‥。
〜奏者の休日〜
「おっはよーーっ!」
休日取材2日目の朝、乾 幸香(
ga8460)の取材をする為に彼女の自宅へと赴いていた。
「いらっしゃい、朝食は済ませました?」
乾は玄関を開け、マリを家の中へ招き入れると問いかける。
「あ、今日は寝坊しちゃってまだ食べてないや」
思い出すと同時に「ぐぅ」と鳴る腹を押さえながら苦笑気味に呟く。
「簡単なものですけど、良かったら食べてください」
乾はにっこりと笑ってトースト、ベーコンエッグ、野菜サラダ、それにコーヒーを差し出した。
「コーヒーはサイフォン式でそれなりに拘ったものなんです」
ミルクと砂糖をマリに差し出しながら乾は呟く。
「あれ? ブラックで飲むの?」
乾がそのままコーヒーを飲んでいるのを見て、マリが首を傾げながら問いかける。
「えぇ、あ‥‥何で砂糖とミルクが常備されているか、でしょう? あたしはコーヒーそのものの味や香りが楽しめるブラックがすきなんですけどね。訪ねてくる友人が駄目なんですよね、ブラックが」
彼女の言う『友人』に心当たりがあるのか「甘いものが好きだもんね」とマリも苦笑しながら言葉を返す。
「でも、私は幸香ちゃんの方が甘党に見えてたけどなぁ」
マリが呟くと「外見のせいか、よく言われます」と乾は苦笑気味に言葉を返した。
その後、乾の自宅で朝食を済ませた後はマリも見覚えのある貸しスタジオへとやってきていた。
「いつも練習をしてるの?」
マリが問いかけると「えぇ」と乾は答えた。
「やっぱり、お客さんに聞いてもらう以上日々の練習は欠かせませんからね。今日はあたし1人ですけど、友人と日程が合えば欠かさず2人で練習していますよ」
乾はキーボードを引き出しながら答え、マリに自分達のユニット『Twilight』のナンバーの練習を始める。
「何か、楽しそうだね♪」
練習している乾を見て、マリが問いかける。
「だって楽しいですもの。本当の自分に戻れる時間って楽しいじゃないですか。だから後悔しないようにいつだって全力投球です」
乾は心から楽しそうに笑って答える。
「そうだね、私にとっては記者活動、幸香ちゃんは傭兵と音楽、方向は違うけど全力投球なところは似てるかも」
マリは笑って答え、時計を見る。次の取材の時間が迫りつつあるのだ。
「ゴメン! もっと聞いていたいんだけど時間がそうさせてくれないみたい‥‥」
申し訳なさそうに顔の前で両手を合わせて乾に謝る。
「謝ることなんてありませんよ、取材、頑張ってくださいね」
乾は手を振って慌てて走るマリの姿を見送ったのだった‥‥。
〜デート? 取材? 豆知識の休日〜
「さてさて、今日は半日宜しくお願いします‥‥と言うかもう、デートで良いですよね?」
五人目の休日取材、それは先日交際を始めたばかりの玖堂 鷹秀(
ga5346)だった。
「うぅ‥‥取材だもん。お仕事だもん」
照れているのか、マリは俯きながら言葉を返す。
「ところで何処に行くの? さっきから歩いているばっかりだけど‥‥」
そう、玖堂はマリと一緒に歩いているだけで特別な事は何もしていない。
「買い物兼散歩です。外出には目的が無い事が多いので。ぶらぶらしながら気になった店に入る感じです。立ち読みで半日潰れた事もあったりしますが」
玖堂は苦笑しながら話す。
「‥‥半日潰すなら買って家でゆっくり読んだ方がよくない? って思うのは私だけ?」
う〜ん、と唸りながらマリが呟いていると「オススメのパン屋があるんですけど、行きません?」と玖堂が話しかけてくる。
「あ、うん♪ 行きたいかも」
そのまま二人はパン屋へと行き、買ったパンを公園で食べる。玖堂がオススメと言うだけあって、パンはとても美味しかった。
パンを食べた後は取材(デート?)に戻り、休日の取材を続けた。
「ついでに晩御飯の材料も買っていきましょうか、いつもは兄が作ってくれるんですが、今は仕事で家を空けているので‥‥二人で並んで作ります?」
少し意地悪そうな笑みを浮かべながら問いかけると「‥‥いい、けどさ」とマリは言葉を返す。
その後、二人は晩御飯の材料を買い、玖堂の自宅へと向かう。
「そうだ、これを」
自宅に到着すると玖堂は部屋に戻り、何かを取ってきて、それをマリに渡す。それは薬のカプセルのような形状で大きさは親指程度のプレートだった。
「表には真里さんの誕生日と星座であるうお座のマークを、裏には山茶花の花を彫りました」
山茶花? とマリはプレートの裏側を見ながら首を傾げる。
「山茶花の花言葉は『困難に打ち勝つ』『ひたむきさ』です、一番真里さんらしいと感じたところを現してみました」
マリはプレートを握り締めて「これに穴開けられる? ネックレスにしたいんだけど」と玖堂に問いかけた。
「もちろん、少し待っててくださいね」
玖堂は部屋へと少し戻り、穴を開けてチェーンを通した状態でマリに手渡した。
「‥‥ありがとね、大事にする」
顔を真っ赤にしたマリは台所へと向かって料理を作り始めた。玖堂も手伝う、と申し出たのだが「駄目」と言われて仕方なく座っていることになった。
その後、マリの作った料理を食べ、玖堂はマリを送ることになった。もちろんマリは「1人で大丈夫」と言って断ったのだが、断ることを玖堂に断られ、夜道を2人で歩いているのだ。
「うぁっ、ななななに!」
突然、手を繋がれてマリが驚いたように声を出す。
「ちょうど良い所に手があったので、つい繋ぎたくなってしまいました」
けろりとした表情で答える玖堂に反して、マリは顔を真っ赤にして「びっくりするじゃん‥‥」と言葉を返した。
「そろそろですね、真里さん、おやすみなさい」
手の甲に口付けしつつ、玖堂はマリを編集室へと送ると、再び帰路についたのだった。
〜車をこよなく愛する能力者の休日〜
「手製のピザでもご馳走しよう、まずは買い物だな」
六人目の取材者、レティ・クリムゾン(
ga8679)はマリが訪ねて、暫くすると話しかけてきた。
「シザーリオを紹介出来るのはちょっと嬉しいな」
レティの言う『シザーリオ』とは誰のことなのだろうと「一緒に行く人?」とマリが問いかけると「これがシザーリオだ」とレティが紹介をしてきた。
紹介された『シザーリオ』は『ジーザリオ』という車で、レティはとても気に入っているようだ。
「そうだ、良かったらシザーリオとの写真を撮らない? 休日取材だし、雑誌に載せさせてもらおうかな〜って思うんだけど‥‥ダメ?」
マリの提案に「悪くないな、お願いするよ」とレティはシザーリオに手をかけて写真に写った。
そして2人は車に乗って、ピザの買い物へと出かける。
「音楽をかけてもいいかな? シザーリオと一緒に出かけている時は、音楽をかけるとシザーリオの機嫌がよくなるのだ」
レティの言葉に「もちろん♪ それにしてもすごく気に入っているのね」とマリが笑みを浮かべて問いかける。
「もちろん、私とシザーリオは親友のような関係だからな」
レティの言葉を聞いていると、本当に車が好きなのだという事がよく伝わってくる。
「そういえば、マリさんは食べられないものとかあるか?」
レティが運転をしながら問いかけてきて「そうねぇ‥‥」と考え込むように返事をしていると「好き嫌いは認めないが」とレティが言葉を付け足してくる。
「えええ、それって聞く意味あるの!? 私はこんにゃく以外なら食べれないものはなかった‥‥はず。ピザにこんにゃくは入れないだろうし‥‥」
「確かにピザにこんにゃくは入れないな、残念だよ。ピザに入れるもので嫌いなものがあったら、入れて克服させてやろうと思っていたのに‥‥」
レティがため息混じりに呟くと「そ、そんな親切は結構!」とマリが慌てたように言葉を返した。
その後、レティは買い慣れたように材料を素早く取っていき、再び彼女の自宅へと戻る。レティの自宅は機能的で綺麗に整理されている。
そして買い物と同じように慣れた手つきでピザを作っていき、少し早めの昼食として食べる事になった。
「おいしい! 今度このピザの作り方教えてもらっていい?」
ピザを食べながらマリがレティに問いかけると「かまわないよ」と短い言葉が返ってくる。
「‥‥ちょっと聞いてもいいかな?」
「ん〜〜?」
ピザを食べながら返事をすると「恋愛感情ってどういう物なのだろう?」とレティが問いかけてくる。
「私は鈍い。よく分からないので良ければ、意見を聞かせて欲しい。あとオフレコで頼みたいのだが‥‥」
レティの言葉に「もちろん、じゃあ此処から先は雑誌には載せない方向で行くね」とマリがピザを食べ終わり、飲み物を飲んだ後で「恋愛感情かあ」と考えるように呟く。
「マリさん自身の体験でも、取材した人たちの様子でも良いのでそういう価値観を教えて欲しい」
頼む、と言葉をつけたしレティは真剣な目でマリを見る。
「う〜ん‥‥恋愛感情って人に教えてもらうものでもないんじゃないかなぁ? やっぱり価値観って人それぞれだと思うし‥‥一緒にいて楽しい、もっと一緒にいたいとか思い始めたら、その人は自分にとって特別なんじゃないかなぁ」
マリが珍しく真剣に答えていると「そうか」とレティもまた真剣な表情で言葉を返す。
「‥‥私も鈍いとか言われてるから、偉そうなことは何も言えないんだけどね」
苦笑しながらマリが呟く。
「いや、参考になったよ、ありがとう。長居させても悪いかな、次の取材があるのだろう?」
レティが時計を見ながらマリに話しかけると、もうすぐで最後の取材者の取材時間が迫ってきていた。
「今日は楽しくためになった。ありがとう」
慌てて出て行くマリにレティが話しかけると「此方こそ! 取材させてくれてありがとね」と答えて、マリは慌てて走り出したのだった‥‥。
〜魚釣りお姉さんの休日〜
「ごめんなさいっ! おくれちゃった‥‥」
マリは慌てて藤田あやこ(
ga0204)との待ち合わせ場所にやってきた。既に藤田は来ており、五線譜を綴っていた。
「どうも、初めまして☆ 藤田あやこです♪」
藤田は挨拶をするとマリも自己紹介を行う。
「何をしてたの?」
マリが藤田の五線譜を覗き込みながら問いかけると「芸能関連の仕事やmns用の歌ね」と言葉を返してきた。
「燕中隊は世界一持ち歌のある傭兵部隊だから」
「そうなんだ〜? でも持ち歌のある傭兵部隊って楽しそうかも」
マリが藤田の隣に座って言葉を返すと「楽しいわよ」と藤田が答える。
「あ、見てみて♪」
突然、藤田が呟き何事だろうとマリが彼女に視線を向けると、藤田は服を捲って紺のタンキニをチラっと見せていた。
「えへへ、いいでしょ〜。急なKV依頼で海に墜落した時の為に夏場はずっと着てるのよ」
藤田の言葉に「墜落とか、あるの?」とマリが驚いたように言葉を返す。一般人である彼女にとって、能力者にとっては当たり前のKVの話も珍しくて仕方ないのだ。
「そりゃあ墜落もするわよ。何なら今からKVで海に行かない? ボート代わりよ」
藤田は笑って提案してきたが「こ、怖いからやめとく」と両手を振って全力で断った。
「そう? 慣れれば怖くなんてないのに‥‥仕方ないなぁ。じゃあボート借りて鰯釣りしようか」
藤田の提案に「いわし?」とマリが問いかける。
「私の田舎は大分の漁村なの、ところで真里さん、釣りは初めて?」
藤田が釣り道具を抱えて、移動しながらマリに問いかけるとマリは首を縦に振る。
「餌とか気持ち悪いのがあるから、ちょっと苦手かも」
マリが苦笑して答えると「大丈夫、私が用意したのはキモい餌じゃないから」と言って餌を見せる。藤田が用意した餌、それはカップ麺でお馴染みの小エビだった。
「針が連なりになった糸の先に小さな籠、冷凍海老のブロックを解して籠に入れて釣るの」
釣り場までやってきて、最初は藤田が手本を見せるように竿を投げる。糸を中指で押さえて竿を勢いよく投げると同時に糸を離す、藤田は説明してくれたのだが釣り初心者のマリにはさっぱり分からなくて失敗ばかりをする。
「面白いほど釣れるはずなんだけどなー‥‥」
藤田が苦笑気味に呟き「ゴメンナサイ」とマリが申し訳なさそうに謝る。
「ま、いいわ。私が釣ったのがあるし。内臓取って塩胡椒に片栗粉まぶして揚げるの。美味しいわよ」
言いながら藤田は慣れた手つきで内蔵を取っていき、次々に揚げていく。
「あ、お願いがあるんだけど。紺のビキニ姿でグラビア撮影お願いしてもいい? mnsの音楽ビデオ撮影も兼ねて歌うから♪」
「い、いいけど、じゃあ撮影始めるよ〜」
超音速のディーヴァ
それは獅子座の奇跡
それは意識の飛跡
語りかけてみてよ
畳み掛けてよ
心に届かない風―
試みた、ときめた夏
君は見た トキハナツ
銀河散りばめた海より綺麗なひ・と・み・で
私を待ってる Looking sky high!
青いレギュラスが道しるべ〜
ほら見てよ 碧い風
帆をあげて諦めない
歌姫歌姫うたかたの歌い手
歌姫歌姫うきよはうら楽し
Yah そうね私は
超音速のっディーヴァ〜♪
何故か途中で藤田の休日取材からグラビア撮影に変わってしまったような気がするが、これはこれで休日取材になるのかも、と思いグラビア写真を藤田のページに掲載させてもらう事にしたのだった。
こうして三日間という時間をかけた能力者達の休日取材も無事に終わり、この後、マリは編集作業に追われて眠れない日々が続いたのだとか‥‥。
何はともあれ、取材させてくれた能力者の皆様、ありがとうございました!
クイーンズ記者・土浦 真里
END