●リプレイ本文
「この絵本で子供達が能力者に対して良いイメージを持ってくれたらいいな‥‥」
今回『クイーンズ増刊号』の企画を聞いて、メアリー・エッセンバル(
ga0194)は笑みながら呟く。
「そうね♪ 少しでも笑顔を作れる力になればいいわよね♪」
メアリーに言葉を返したのはナレイン・フェルド(
ga0506)だった。
「うん、それはええねんけど‥‥傭兵戦隊・戦うんジャーか‥‥これ、マリのネーミング?」
タイトルがイマイチなのを気にしていたのか、クレイフェル(
ga0435)が土浦 真里(gz0004)に問いかける。
「もっちろん! 我ながら素晴らしいタイトルだと感激中だよ!」
確かに『別な意味』で素晴らしすぎるタイトルにクレイフェルも「‥‥そやな」とそれ以上反論する事はなかった。
「幼き日のマリ君も、何かに夢を与えられたのかい?」
企画書を見ながら国谷 真彼(
ga2331)がマリに問いかけると「うん♪」と即答で言葉を返す。
「私の全てに影響しているのはお兄ちゃん。だから私に夢をくれたのもお兄ちゃん。だから‥‥もし私が死んじゃう時が来たら――お兄ちゃんみたいに死にたいかな」
最後の時まで記者でいたいから、とマリは付け足して国谷に言葉を返した。
その様子を見て、今でもマリの中には兄の志が生きていると確信したのか「兄冥利に尽きますね、全く」と苦笑して小さく呟いた。
「マリさん! 篠原 凛(
ga2560)ですっ! いつも妹がお世話になっております。今日は宜しくお願いしますね♪」
篠原は丁寧に頭を下げながらマリに話しかける。
「こっちこそ宜しく! お姉さんかぁ♪ それでも私より若いねー‥‥」
くっ、と悔しがるような素振を見せて言葉を返してくるマリに苦笑しつつ「頑張って良い物を作りましょ!」と拳を握り締めながら呟いたのだった。
「え〜と、それじゃ決めた役を確認の為に発表するね〜♪」
レッド・メアリー
ブルー・ナレイン
イエロー・八界・一騎(
ga4970)
ブラック・クレイフェル
ホワイト・篠原
マリの護衛・国谷
悪の組織幹部・玖堂 鷹秀(
ga5346)
ヒロイン・古郡・聡子(
ga9099)
「今回は子供向け‥‥ですよね? どういう風の吹き回しでしょう」
意地の悪い笑みを浮かべながら話しかけてきたのは玖堂だった。
「えぇ〜、私はいつも読者はもちろんちびっ子の為にも頑張ってるよ〜? 鷹やんだって戦隊モノに夢を輝かせていた時期があったでしょ?」
マリの言葉に玖堂は考え込むような仕草をしながら「記憶の彼方にありますね」と言葉を返した。
「でしょでしょ? 今日はそういう日の自分に戻ってよろしくね♪ 私を助けると思ってさ」
顔の前でパンと手を叩いて『お願い』ポーズで玖堂に話しかけると「まぁ、土浦さんを手伝うのに理由はいらないんですけど」と言葉を返した。
「俺はイエロー役か‥‥やってやろうじゃねぇの」
八界は口では悪ぶって言っているが、イエローになれたのは嬉しかったらしく自前で鮭カレーのレトルトパウチを握っていた。彼なりのやる気の現われだろう。
「それじゃ、撮影始めま〜す♪」
マリの声を合図に『傭兵戦隊! 戦うんジャー』は出動したのだった‥‥。
〜撮影開始! でも相手は本物のキメラ! 〜
最初はキメラのいない場所で古郡がさらわれるというシーンを撮影する事になった。
「この少女は頂いていく。この少女を返して欲しくば私のいる所まで来るがいい――あっちまで」
悪の組織幹部(役)である玖堂はビシッと少し遠くを指差しながら叫ぶ。
彼らにとって重要な研究をしている科学者の娘(という役)の古郡を取引の人質に使う為にさらっていった――という設定である。
「きゃああっ、誰か助けて!」
古郡が助けを求めるように手を伸ばしながら叫ぶ。
「よし! さらわれるページはそんな感じでOK! 次は傭兵戦隊の出番よ〜!」
びらっ、と衣装を取り出しながらそれぞれの役をする能力者達に渡していく。
「それにしても残念。金とか銀とかも用意してたんだけどなぁ」
残念そうに金と銀の衣装を見せながらマリが拗ねたように呟く。その衣装を見て『趣味悪いよ‥‥』とほとんどの能力者達が思ったのだとか‥‥。
問題は此処からだった。マリは『迫力ある写真を撮りたいから』と言ってキメラに近づきたいと申し出てきた。
一般人の彼女をキメラに一人で近づかせるという事は『死』を意味する事でもあり、マリ一人で近づくのは反対だったが、国谷が護衛するという事により、マリが望む『迫力ある写真』が撮影出来る事となった。
戦えない者を抱えている国谷はマリ一人に専念する為、狙われた場合は対処が仕切れないかもしれない。
『傭兵戦隊』がキメラと戦っている間は裏方になる玖堂と古郡の手が空くので、狙われた場合は二人が対処するという事に決まった。
「手を抜くつもりはありませんが、見た目を考えて戦わないといけませんね」
クレイフェルが覚醒をしながら呟くと、すすす、とマリがクレイフェルから離れる。関西弁の彼に慣れているマリとしては標準語のクレイフェルに違和感があるらしい。
〜傭兵戦隊VSサハギロン〜
「行け! サハギロン! 邪魔者を叩き潰せ!」
悪の組織幹部・玖堂は古郡が逃げないように捕まえながら叫ぶ。絵的にはキメラの後ろから命令する姿が必要だったので、多少無理をしてマリが頼み込んでいた。
きっと、キメラからすれば不思議な光景だったに違いない。
「悪い事しているのは誰? おしおき‥‥してあげなくちゃね♪」
ブルーであるナレインが『盾扇』で口元を隠し、ポニーテールを揺らしながら呟く。
「はははは、このサハギロンこそ最強の下僕! お前らなどにやられるはずがないわ! 行けぃっ!」
玖堂はビシッと効果音が入りそうなくらい鋭く指差すとタイミングよくキメラも銛を構えて能力者――傭兵戦隊のところまで走り出す。
最初に攻撃に向かったのはブラックとホワイト、クレイフェルと篠原だった。
しかしヒーロー物の最初の展開といえばヒーロー達がやられるというのがお決まりとなりつつあるので、篠原はキメラの攻撃を受け流すと同時に『瞬天速』を使って、オーバーアクション気味に吹っ飛んでみせる。
「危ない!」
ブルー、つまりナレインが吹っ飛んできた篠原を支える。
「大丈夫!? もう‥‥真っ直ぐに突っ込んじゃダメじゃない!」
「あ、ありがと‥‥ま、マリさん‥‥こんなんでいいかな‥‥?」
ちょっと痛かったと言葉を付け足しながら、篠原は涙目で呟く。
そしてクレイフェルも篠原と同じように『瞬天速』を使用してオーバーアクション気味に此方へと吹っ飛んでくる。
しかし彼は確りと着地を行い、砂埃が舞う。
もちろんその場面もマリは確りと写真に収める。
だが、その時のフラッシュのせいでキメラがマリ達に気がついて標的を『傭兵戦隊』からマリと国谷へと変えてしまう。
「く、国やん! 私は放っていいから戦いに戻らなくちゃ――このままじゃ国やんも怪我しちゃうよ」
向かってくるキメラに多少マリも焦ったのだろう、国谷に護衛をやめて戦闘に戻るように言うが「カメラ、死んでも放さないで。喋っていると舌を噛むよ」と冷静に言葉を返してきた。それと同時に振り下ろされてきた銛を国谷は『パリィングダガー』で受け流し、視線を横にズラす。
すると玖堂と古郡の二人が攻撃態勢に入っているのが視界に入ってきて『エネルギーガン』でキメラを攻撃する。
国谷の攻撃の後に玖堂が『エネルギーガン』で古郡が『アーチェリーボウ』で攻撃を仕掛けて、国谷とマリからキメラを引き離したのだった。
「あなたの相手はこっちよ」
メアリーは『瞬天速』を使用してキメラに接近して話しかける。もちろん言葉が理解できているとは言っている彼女も思っていない。
「こいつを倒すには努力と友情が必要なんだ! めんどくせぇけどそういうのは嫌いじゃないぜ! 俺はよ!」
イエローこと八界が背中に炎を背負うように熱く語る。
ちなみにクイーンズ増刊号はDVDではないので声は入らない。
その時に玖堂と古郡の攻撃で、キメラの動きが一時とまり、メアリーとナレインは視線を合わせて首を縦に振る。
「行くわよ、メアリーちゃん♪」
ナレインの言葉に「そうね」と言葉を返す。
そして二人が攻撃態勢に入った時、国谷と玖堂の二人が『練成超強化』をメアリーとナレインの二人に使用する。
「赤き薔薇と!」
「青き薔薇!」
二人はそれぞれの色の薔薇を取り出し、キメラへと向ける。
「「二つが合わさり虹色に輝く時、2人の体もまた虹色の輝きに包まれる‥‥っ! 行くわよ! レインボーローズアタァァァァァック!!!」」
メアリーは拳、ナレインは蹴りでの攻撃を仕掛ける。
「ふふ、地獄の果てまで送って差し上げましょう」
クレイフェルはブラックらしく、黒い笑みを浮かべながら漆黒の爪『ガンドルフ』を構えて『瞬即撃』で攻撃を仕掛ける。
「あたし達、傭兵戦隊が力を合わせれば貴方なんて――っ!」
篠原も『疾風脚』を使用して攻撃を仕掛ける。疾風脚を使うと足にオーラが出る為、戦隊っぽい場面へとなる。
「俺のリズムに酔いしれろぉぉっ! 必殺! ナイトブレイズビースト!!」
八界は『真音獣斬』を使用して篠原と同じくエフェクト効果を測る。彼は決め台詞で『リズム』と口にしているが、実際に楽しく音が出るわけではない。
「つーか、鮭カレーがありゃなんでもいいんだよ」
攻撃が終わった後、八界は言い捨てるようにキメラに向けて呟く。
そして、戦隊らしくなるように古郡が『スパークマシンα』で電圧を発生させて派手な視覚効果を即って図っていた。
もちろんマリは全てを写真に収めている。
さすがにキメラも能力者達の総攻撃を受けて、なすすべもなく倒れていったのだった。
「おのれ‥‥戦うんジャー、忌々しい奴らめ‥‥貴様たちが来なければ妹にしたい子の少女をアジトに連れ帰れたのに‥‥次に会う時が貴様らの最後だ! 覚えておけ!」
玖堂は高笑いをしながら消えていったのだった――‥‥。
「赤い薔薇は愛の象徴‥‥助けを待つ全ての人達に愛が届くよう、私達は戦い続けるわ!」
メアリーが叫ぶと「そう‥‥」とナレインも言葉を続ける。
「守るものがある限り私達は負けない!」
「ありがとう!」
玖堂が去った後、古郡はナレインに抱きつき、何度もお礼を言う。
こうしてさらわれたヒロインは『傭兵戦隊』に助けられて、大団円となったのだった。
「カァーーーッット! お疲れ様!!」
玖堂の台詞が終わると、マリが満足気に大きな声で「お疲れ様!」と能力者達に話しかけた。
「次は表紙用の写真を撮るから、並んでもらっていいかな?」
表紙用の写真と言葉を聞いて、篠原が「これもいいですか?」と問いかけてきた。
「『こねこのぬいぐるみ』? どうしたの?」
「特撮ってぬいぐるみみたいなマスコットがいるじゃないですか、それに使えないかなぁと持ってきました♪」
確かに篠原が前もって準備してきたのだろう、ぬいぐるみの首輪に『傭兵戦隊! 戦うんジャー』と文字が書かれている。
「あと、背景用に『弾頭矢』と『ロッタ特製ロケット花火』もあります♪」
両手にそれらを持って話す篠原は本当に楽しそうだった。
「あ、弾頭矢なら私もありますので使ってください」
古郡が自分の持っている『弾頭矢』も渡す。
クイーンズ増刊号の初表紙は爆発している背景の前に立つ『傭兵戦隊』だった。もちろん写真を持ち帰った後には合成して玖堂と古郡の写真も入れる予定だ。
「くっはー、疲れた疲れた。見せ方考える戦いって、大変なんやな」
うーん、と伸びをしながらクレイフェルがしみじみと呟く。
「本当に。強いキメラじゃなかったけれど無傷ってワケにも行きませんでしたね」
篠原の呟きにマリも能力者達を見渡す。すると大きな傷はないものの、細かな傷が能力者達にはつけられていた。
「‥‥‥‥ごめんなさい」
突然の呟きに能力者達は声の主、マリを見る。
「いくら雑誌のためとは言っても、皆を危険に巻き込んじゃったわけだし‥‥」
珍しくしょんぼりとしているマリに能力者達は互いの顔を見合わせる。
「ええんやて、そないに素直やと逆に不気味やわ。子供に夢与えるんやろ? ええ事やん。だから気にしな「やっぱり?」――――は?」
結構イイ事言った! 的なシーンでクレイフェルの言葉は遮られてしまう。
もちろん遮ったのは――マリである。
「や〜、今回はさすがに結構無茶をお願いしたからさ、一応謝っておくフリした方がいいかな〜なんて?」
あはは、と笑いながら答えるマリにクレイフェルは『巨大ハリセン』で叩いてやろうと考えたが、彼はハリセンを強化しているため、マリにダメージが行く。
そこで『ぴこぴこハンマー』を代用してマリの頭をピコーン! と叩く。
「ま、マジメに答えた俺の十数秒を返せや!」
見慣れた光景に「何処まで行ってもマリ君ですね」と国谷も苦笑を漏らしたのだった。
「ま、ええわ。これでどんな記事になるか――期待してるで」
クレイフェルの言葉に「私を誰だと思っているのさ」とマリも言葉を返し、帰還後すぐにマリは編集に取り掛かった。
マリが編集の為に編集室にこもりっきりになると、ナレインが柿ピーチョコを持って激励に来てくれた。
「編集とかは私が手伝える事じゃないものね〜。これ、持ってきたからお腹の足しにでもして♪」
「ありがと、お姉様♪」
「私はイラスト描きを手伝うね‥‥色塗りくらいなら、たぶん出来る」
メアリーの申し出に甘える形で、マリはメアリーに色塗りを任せた。
「この絵本を読んだ子供達が、能力者ってカッコイイ! って思ってくれたら‥‥怖がられる事、少しは減るかな」
記事を見ながら呟くメアリーに「‥‥そうなるように頑張る」とマリも言葉を返した。
そして、編集が終わった後に八界の元へ「ふわもこ!」と叫ぶ記者が現れたのは言うまでもない。
〜クイーンズ増刊号〜
普段からクイーンズご愛顧、真に感謝しております。
皆様のおかげで『増刊号』を出すことが出来ました。
増刊号では読者を子供に向け、子供なら好きであろう『戦隊モノ風』に能力者達のことを紹介しております。
もちろん大人でも楽しめるようになっています。
はっきりいって、普通の戦いの方が楽なんじゃないかと思うくらい能力者の皆様たちには無茶を言いました。
現在、バグアやキメラと戦えるのは能力者だけです。
確かに『普通』ではない彼らを怖がる人もいるでしょう。
だけど、彼らは身を削って戦う事のない私達の為に戦っている‥‥そのことを忘れないで下さい。
撮影・監修 土浦 真里
協力者
※メアリー・エッセンバル
※クレイフェル
※ナレイン・フェルド
※国谷 真彼
※篠原 凛
※八界・一輝
※玖堂 鷹秀
※古郡 聡子
END