●リプレイ本文
その者、右手に剣を携え、金色の毛を持つ猪に騎乗して降り立つ。
豊穣の神と謳われるその者の名は――フレイ。
〜戦いに赴く者たち〜
「神話の神を真似たキメラか、肩慣らしにはちょうどよいな‥‥しかし、神を真似るとは奴らも相当な数奇者だな‥‥」
赫月(
ga3917)がため息混じりに呟く。
今回のキメラは神話上の神をも真似て作られたと思われる『フレイ』だった。最も本物の『フレイ』ならば町人を手にかける事などしないのだろうけれど。
「既に犠牲者も出ているようですね、それならば尚のこと‥‥他の住人達に危害が加えられないように退治しましょう」
石動 小夜子(
ga0121)が俯きながら呟くと「そうですね‥‥」と紅 アリカ(
ga8708)が言葉を返してくる。
「今回のキメラは男神――男性型なのですよね?」
鐘依 委員(
ga7864)がポツリと問いかける。
「そうみたいだなぁ。神話の神だなんて燃えるシチュエーションだぜっ」
シズマ・オルフール(
ga0305)が拳を強く握りながら楽しそうに言葉を返す。
しかし、彼とは正反対に鐘依の表情は暗いまま。
「せめて見た目麗しい女性型であったなら救いのあったものを‥‥」
男嫌いな性格も影響しているのだろうか、鐘依は今回のフレイキメラに対してかなりの嫌悪感を見せていた。
「それにしてもやる事が悪趣味に過ぎますわね‥‥いくら神話の再現が好きなバグアとはいえ、目障りですしさっさと消してしまいましょう」
白虹(
ga4311)が呟き、他の能力者達も首を縦に振る。
「まず、現地に到着したらキメラ捜索の前に住人の避難を行った方がいいですね」
麻宮 光(
ga9696)が考え込むように呟く。確かに今回の戦闘場所は『町の中』なので、戦闘を始めたら住人が巻き添えになる可能性も低くはないのだ。
「そうだな、誰かに住人の避難状況とかを聞いた方がいいだろう」
來島・榊(
gb0098)が言葉を返す。
その後、能力者達はキメラ退治に向けて準備を行うと、目的の場所へと移動を始めたのだった。
〜堕ちた神・フレイ〜
「俺の担当は猪かぁ‥‥そっかぁ、ちょっと‥‥ガッカリ‥‥」
がっくりとうな垂れながら町へ向かうのはシズマだった。彼は『フレイ』と戦うのを楽しみにしていたのだが、担当が猪になってしまい落ち込んでいるのだ。
ちなみに能力者達が分けた班は以下の二つになった。
A班・石動、シズマ、麻宮、白虹。
B班・赫月、來島、紅、鐘依。
もちろん、フレイが猪型キメラ――つまり『グリンブルスティ』に騎乗していたとなると戦い方も違ってくるが、基本的にはこの班分けで戦闘を行う。
「此処を真っ直ぐ行くと町みたいですね」
石動が地図と前方とを交互に見ながら呟く。
「住人達はどうしてるんだろうな――」
シズマが呟いた時に「あんた達、何しに来たんだ」と老人が話しかけてくる。姿格好を見る限り、問題の町に住んでいる住人の一人だろう。
「この先にはキメラがいる、危ないから避難所の方に――‥‥」
老人が呟くと「そのキメラを退治しに来たんです」と鐘依が言葉を返した。
「キメラを‥‥あんたら、能力者か」
老人が能力者達の顔を見ながら訝しげに問いかけてくる。
「‥‥えぇ、そうです。町の方に住人の方は?」
紅が町の方を見ながら問いかけると「誰もおらんよ」と老人は言葉を返してくる。
「皆、隣町の方へ避難していったわ。わしもその一人じゃ。町の農作物は大事じゃが、命には代えられんからな」
老人はため息混じりに「頑張って退治してくれよ」と言葉を言い残して隣町の方へと歩き出した。
「住人は避難済み、それなら問題はナシだな」
來島が呟く。
「さて‥‥神の姿を真似したモノが、どの程度の力なのやら――」
赫月がクッと笑みながら呟き、見えてきたキメラに対して能力者達は攻撃態勢を取り始めたのだった。
〜戦闘開始! VSフレイ&グリンブルスティ〜
視界に入ってきたフレイキメラはグリンブルスティに騎乗して右手に剣を携えていた。
「騎乗していても標的は同じ、頑張りましょう」
麻宮が呟き『ファング』を装備して攻撃準備を行う。
「よっしゃ、いっくぜぇっ! お前がフレイなら俺様はベルセルクだぁーっ!」
シズマが『ゼロ』を装備して猪キメラに攻撃を仕掛ける。だが、騎乗しているフレイによりシズマの攻撃は遮られ、持っていた剣で攻撃を受けてしまう。
「やはり騎乗していると厄介さが増しますね。別々で行動してくれていた方が有難かったですわ」
石動がため息混じりに呟き『刀』と『菖蒲』で攻撃を仕掛ける。彼女の攻撃もシズマ同様にフレイの邪魔が入ったが、石動は『刀』でフレイの剣を受け止めて『菖蒲』でグリンブルスティの足を攻撃する。
多少なりとも攻撃を受けた事により、グリンブルスティは悲鳴のような声をあげ、暴れ始める。
グリンブルスティが暴れた事により、フレイのバランスが崩れて紅と赫月が攻撃を仕掛けた。二人掛りの攻撃でフレイはグリンブルスティから弾かれ、地面へと膝をつく。
「ここからはそれぞれの相手と戦えばいいんだな」
シズマが呟き「早いのがお前だけだと思うなよ!」と麻宮が叫んでグリンブルスティに攻撃を仕掛ける。
「単身ではその程度ですの? やはり偽者の神はなまくらですわね」
白虹がため息混じりに呟き『ライフル』を構え『鋭覚狙撃』と『強弾撃』を使用して攻撃を繰り出す。白虹の攻撃により、グリンブルスティはよろめき、倒れかける。
「そのまま倒れてろい!」
シズマが叫び『瞬天速』で間合いを縮め『瞬即撃』をグリンブルスティに食らわした。フレイとグリンブルスティ、騎乗時での戦闘ならば不利だったかもしれないが、それぞれを引き離すと単身ではそこまでの能力は持ち合わせていないらしい。
グリンブルスティは苦しげに一度呻いた後、ズズンと地面に沈んでいったのだった。
「向こうは終わったみたいですね」
鐘依は『フォルトゥナ・マヨールー』でフレイに攻撃を仕掛けながら、視線だけをグリンブルスティの方へと向けて呟く。
「醜いわね‥‥実に不愉快だわ」
鐘依が忌々しげに呟き「私の望みはただ一つ。消えうせなさい」と言葉を付け足す。
「調整にはちょうどいいが‥‥クク‥‥調整程度で神殺しか‥‥愉快だね」
赫月は不敵な笑みを浮かべて両手に『刀』を持ってフレイに攻撃を仕掛ける。フレイは赫月の攻撃を剣で受け止めるが、赫月はそれを弾いて攻撃を続ける。
「神もキメラも余計な存在に変わりはない、大人しく失せ果てろ」
來島が長弓『クロネリア』で攻撃を仕掛けながら呟く。彼女が放った矢をフレイは剣で落とすが、そこへグリンブルスティを倒し終わった能力者達が参戦して、隙を突いて攻撃を仕掛けた。
「いくら武器を持っていても、それを扱う者が強くなくては意味がありませんわね」
石動が『刀』と『菖蒲』で攻撃を仕掛け、呟く。
「‥‥神の名を騙るとは‥‥不届き者にも程があるわね――その命‥‥神に還してもらうわ‥‥」
紅がフレイとの間合いを詰めながら『クロムブレイド』と『菖蒲』をフレイに向けて振り下ろす。
フレイが剣での反撃を行おうとした時、紅はそれを『クロムブレイド』で防ぐ。
「その程度で‥‥私の刃を止められると思わないことね‥‥」
くす、と笑みながら紅は『菖蒲』でフレイに攻撃を仕掛けた。
やはりグリンブルスティを倒した能力者達が合流したのが、最大の勝因となるのだろう。4人の能力者相手に対処しきれていないフレイが8人に増えた能力者を対処できるはずもないのだから。
「武器を持つキメラというのは初めて見たのですけど、大した事はないですわね」
石動が呟き、剣に視線を向けるが扱うフレイの攻撃は見切れる程度で、お世辞でも『強すぎる』という事はいえない。
「うりゃあっ! ベルセルクの俺様が相手だぁっ!」
シズマが『ゼロ』でフレイを攻撃しながら叫ぶ。その姿はまさしく闘神・阿修羅のような勢いでもあった。
その後、能力者達は攻撃によって弱りつつあるフレイに総攻撃を行い、見事に豊穣神・フレイを倒したのだった。
〜神、屠りし者たち〜
「全く‥‥いくら神話マニアとはいえ北欧神話の豊穣の神とは――敵の神経を疑いますわね」
白虹がため息を吐きながら呟くと「神を騙るのはいいが‥‥奴らは少々遊びが過ぎたな‥‥」と赫月が言葉を返した。
「使っていた剣もごく普通だったし、興ざめね」
紅が誰に言うでもなく、ぽつりと呟く。
「‥‥神――か。この世界に‥‥紛い物の神は必要ないんだよ‥‥」
麻宮は死体となっているフレイにポツリと呟く。
「神なんて救いもしないモノ、今のこの世に必要はないんだ‥‥」
空を見上げながら麻宮が呟くと「確かにな」と來島が言葉を返した。
「‥‥ま、本当の神ならば人の世なんざに興味ありやしないだろう。キメラの方がまだ欲望に忠実な分、人間臭い生き物なのかもな」
來島が自嘲気味に呟く。
その後、能力者達は住人達が避難している場所まで赴き、フレイとグリンブルスティを倒したことを知らせ、町まで護衛をして送っていった。
住人達を送り終わった後、能力者達は本部に報告するために帰還していったのだった。
END