●リプレイ本文
「敵戦力、不明。敵能力、不明。ぶっちゃけ当たって砕けろ? 面白い状況だなぁ? ‥‥って笑えねぇよ!?」
一人ノリツッコミで話しているのは山崎 健二(
ga8182)だ。
「敵の姿形が分からぬのは厄介だが、征くしかあるまいよ」
山崎の呟きに言葉を返したのはイレーネ・V・ノイエ(
ga4317)だった。
「場所は‥‥森と‥‥湖か。どちらも攻撃を仕掛ける側からは厄介な地形だな。足場も悪そうか?」
送られてきた写真を見ながら龍深城・我斬(
ga8283)が呟くが、足場の確認までは流石に出来ない為、此方は現地へ到着してから確認するしかないようだ。
「水中戦とかには付き合いたくねぇな‥‥」
龍深城がため息混じりに言葉を付け足す。湖という場所があるので水中戦になる可能性も低くはない。
どちらにせよ、情報が少なすぎるので考える事が多いのは変わりない。
「そういえばキアラについて話をするんだったね」
MAKOTO(
ga4693)が思い出したように呟く。龍深城にキアラの事を話す約束をしていたらしく、MAKOTOはキアラについて分かっている事を話し出した。
町の住人たちに生贄まがいの事で家族を失ったこと、そしてキメラに町を襲わせて壊滅させたこと――他にも話したが、話している途中でMAKOTOは自分がキアラを如何したいのかを考え始めた。
「彼女にはいつも逃げられているからな‥‥今回は捕獲‥‥もしくは説得できればいいが‥‥」
神無 戒路(
ga6003)がため息を吐きながら呟き。
「彼女が‥‥何を考えているのかは知らないけど‥‥何を成すにしろ‥‥今のままでは前に進めない――それが分かっていないのか‥‥」
サイオンジ・タケル(
ga8193)も俯きながら呟く。
「キアラからの呼び出し‥‥私は彼女からの救難信号と受け取っている。助けてほしい、と心が叫んでいるのだろう」
レティ・クリムゾン(
ga8679)が呟き、能力者達はキアラからの呼び出しの場所へと向かい始めたのだった。
〜掴めぬ意図を持つ少女〜
現地へ到着すると烏莉(
ga3160)が他の能力者たちに聞こえぬくらいの小さなため息を漏らした。
彼の心に引っかかっている事、それは敵が待ち伏せしている場合があるという事。心に留めるくらいなら言えばいいのだが、寡黙な彼は聞かれなければ言わないという性格だった。
今回、能力者達は班を二つに分けて行動をする事にしていた。
A班・烏莉、MAKOTO、山崎、サイオンジの四人。
B班・龍深城、レティ、イレーネ、神無の四人。
だが、これは敵が複数存在した場合の話であり、敵の出方が分かるまでは全員で行動する事になっている。
「湖だけの写真が同封されていたって事は‥‥湖にいるよって事かな?」
MAKOTOが写真を見ながら呟く。確かにキアラからの手紙には町の写真の他にもう一枚の写真が同封されていて、湖だけを写したものだった。
その写真は封筒に貼り付けるようにしてあり、普通に見ていただけなら気がつかないものだった。
「その可能性もないとは言えないな。もちろん罠――という可能性も」
イレーネがMAKOTOに言葉を返す。
「それじゃ、湖の近くまで行ってみるか‥‥」
神無が動きながら呟くと「ちょっと待った」と山崎がストップをかける。
「確認するけど、正体不明のキメラを倒しゃいいんだよな? 余分な事はしなくていいんだよな?」
念押しのように問いかける山崎だったが、この言葉には『手紙の送り主は手にかけないぞ』という意味が込められていた。
「もちろん‥‥話もしなければならないし‥‥倒すのはキメラだけで‥‥十分です」
山崎の言葉にサイオンジが言葉を返す。キアラ自身を倒す機会ならば今までにも幾度となくあった。
だけど、それを能力者達がしなかったのはキアラを助けたい、キアラの事を分かりたいという能力者達の優しさからだった。
「ま、頑張っていこうぜ」
龍深城が呟くと「あぁ」とレティも短く言葉を返し、写真の湖へと急いだのだった。
〜湖にて待ち受ける者〜
「遅いよ。待ちくたびれちゃった」
森を抜け、湖の場所までたどり着いた能力者たちに向って、足を水に漬け、水を撥ねさせながらキアラはため息混じりに呟いた。
「何故‥‥私達を呼び出した?」
レティが問いかけると「質問タイムは後でね」とキアラは意地の悪い笑みを見せながら言葉を返してきた。
それと同時に上空から能力者たちを襲う大きな鳥型キメラが視界に入る。完全に虚を突かれた状態からの攻撃だった為、回避する事が出来ず、能力者達は重傷ではないがダメージを負ってしまう。
「まずはコイツを倒せ――って事かよ」
山崎は舌打ちしながら呟き『ショットガン20』で鳥型キメラを攻撃する。上空、しかもそれなりに素早さが高い相手なのでショットガン20での攻撃しか出来ないのだ。
「追いかけろ、狂いなき賢者の時計よ‥‥」
サイオンジが鳥型キメラに向けて『ワイズマンクロック』を向け、呟きながら攻撃を仕掛ける。ワイズマンクロックは追尾機能が搭載されているので上空を飛び回る鳥型キメラにはちょうどいい武器なのかもしれない。
「なるほどね、ひねた面構えしてやがる‥‥」
龍深城は『デヴァステイター』で鳥型キメラを攻撃しながら、キアラに視線を向けて呟く。
「‥‥一体何がしたいんだろうな、私たちを罠にかけようと思えば出来たはずなのに」
戦いやすい広い場所で待っていて、しかも罠などは一切ない事にレティは少し疑問を感じた。
「‥‥本当に助けを求めているのかもな」
レティは『スコーピオン』で攻撃を仕掛けながら、小さく呟く。銃を武器に使う能力者達が翼を中心に狙って攻撃を行っていたので、鳥型キメラは上空に居る事が出来ずに、大きな音をたてながら地面に落ちてくる。
「自分たちは早く貴公を倒して、あの少女に話を聞かねばならないのでな、早く終えさせてもらう」
イレーネが呟き『アサルトライフル』で鳥型キメラを攻撃する。その際、鳥型キメラの右目に銃弾を撃ち込む。右目に銃弾を撃ち込んで倒す、これは彼女の流儀なのだそうだ。
「さて、地面に降りてきてもらった事だし――遠慮なく倒させてもらうよ」
MAKOTOは呟くと、鳥型キメラとの距離を詰めて『フロスティア』で攻撃を行う。
そして烏莉はキメラに見つからぬようにしながら、鳥型キメラの至近距離まで行き『鋭覚狙撃』を使用して攻撃を繰り出した。
「この一撃で終わらせる!」
鳥型キメラが弱ってきた頃、トドメとして山崎が武器を『クロムブレイド』に持ち替えて『流し斬り』と『両断剣』を使用して攻撃を行い、無事に鳥型キメラを倒す事が出来たのだった。
〜信じたいもの、それは‥‥〜
「いつまでこんな茶番を続ける? わざわざ能力者を呼び出さず、キメラに町を襲わせればオマエの目的に近づくんじゃないのか?」
鳥型キメラを倒した後、湖を挟んだ向こうに立つキアラに神無が問いかけた。
「別に意味はないよ。次はおにーさんのリクエスト通りに町を襲わせてみようか?」
くす、と声をもらしながらキアラは言葉を返した。
「テロ行為は許せるモンじゃないが、オレじゃ憎しみを忘れさせる事なんてできねぇし‥‥遣る瀬無ぇなぁ」
山崎がキアラを見ながらポツリと呟く。MAKOTOが龍深城に事情を説明している時、彼も話を聞いていた。
だからこそ、何も出来ない自分が無性に歯痒いのだろう。
「キミの心は変わらない‥‥でも、否定する事は出来ない‥‥誰しもが持つ可能性あるものだから‥‥」
サイオンジが俯きながら呟くと「じゃあ、おにーさんもコッチに来る?」とキアラがおどけたように言葉を返してくる。
「俺は‥‥ソッチには行かないよ」
首を横に振りながらサイオンジが言葉を返すと「冗談だよー」とキアラも苦笑しながら呟いた。
「君、自分の不幸に酔ってない? 皆死んでしまえばいいって言ってるらしいけど、皆死んでしまえば平和って言葉自体に意味がなくなるんだよ」
龍深城が口調はやんわりと、言葉の内容は厳しく問いかけると「アンタに何が分かるの?」と不快感たっぷりの表情でキアラが言葉を返してくる。
「分からないね。一人で勝手に諦めて他の人を巻き込むな」
がきんちょ、と言葉を付け足すとキアラは言葉を返す事はせずにジロリと睨んでいるだけだった。
「不器用だな、君は。キメラを使わなければ私たちと関係が構築出来ないか? 今からでも此方側に戻ってこないか?」
レティの言葉に「そんなの――絶対にゴメンだわ」とキアラは即答する。
「――近寄らないで」
MAKOTOがキアラの近くに歩いていこうとした時、キアラが冷たく呟く。キアラの言葉を聞いた後、MAKOTOは『フロスティ』を地面に突き刺して戦意がないことを示す。
「何も怖い事なんかないんだからさ、話をするだけでもしようよ。今回は嫌だって言われても聞いてあげないからね」
MAKOTOは呟きながらキアラとの距離を詰めていく。
だが、MAKOTOがキアラの所に行くまでにキアラが逃げようと行動を起こした――のだが、気配を絶って背後に回っていた烏莉がキアラの腕を掴んで『アーミーナイフ』を首に当てた。
「動くな、死にたくはないだろう」
烏莉が冷たく呟くと、キアラは体を震わせている。
しかし、その震えは決して恐怖からではなかった。
「あははっ、やっぱりね。結局はこういう手段に出るんじゃないの。綺麗事ばかり言って! 私を騙そうとして!」
キアラは叫ぶと、隠し持っていたナイフで烏莉の手を掠る程度だが傷を負わせる。
そして『アーミーナイフ』を手放した所を湖に突き落とし「ばいばい」とキアラは瞳に涙を溜めて姿を消していったのだった。
やっぱり誰も信じられない――という言葉を残して。
「‥‥心にある思いを隠す方が、心にない思いを粧うよりも難しいというが‥‥さて、な」
イレーネは去っていったキアラを見ながら小さく呟く。
「‥‥私が如何したいのか、やっぱり答えは出ない。だから答えが出るまではキアラとのデートを重ねよう――本当に望む答えが何か、分かるまで」
MAKOTOは呟き、地面に刺したままだった『フロスティ』を取ると、能力者達と一緒に報告をするために本部へと帰還していったのだった。
END