タイトル:通りすがりの猫であるマスター:三橋 優

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/04/11 21:06

●オープニング本文


 私の名はサナエ。
 当年とって3歳になる。
 両親のもとを離れ、親切な主に出会って暮らしていたが、その主もいなくなった。
 戦争のためどこかに避難しているようだが、無事でいてくれれば幸いである。
 優しい人だった‥‥私のことで気に病んでいないか心配ではあるが。
 気にするな。
 いつか帰って来た時に態度でそう伝えるために、私は生きなければならぬ。
 元気でいなければならぬ。
 持ち主には申し訳ないが畑から食べられそうなものを頂く。
「な〜ご」
 野ネズミや野鳥を捕らえざるをえなくなった、野生に近付いたというのは、はたして幸運かどうか。
 多くの仲間が命を失ったし、まだ生きていられるというのは幸運なのだろうが。
 しかし、このような生活を続けていると、だんだんと野生に回帰していくような気さえする。
 そう‥‥
 今まさに大きな危機が近付いてくる事を察知できるくらいには。

 見晴らしのいい崖上から見下ろすと、畑を巨大な影がふたつほど歩いているのが見えた。
 あれは自然の生き物ではない。
 町の有線放送でときどき耳にしていた『キメラ』というやつだろう。
 人間の形をしているが、相撲取り以上に膨れ上がった筋肉と脂肪の肉体は真っ赤に染まり、頭には2本の角。
 片方は額からも角が生えて合計3本だ。
 虎柄の腰巻を着け、金棒を持った姿は本に載っていた鬼の姿に相違ない。
 三本角の方は体が赤黒く膨れ、今にも爆発しそうに見える。
 農道でなくぬかるんだ荒れ田を通って来るあたり、知能は高くなさそうだが‥‥
 畑から育ち放題に育った作物を抜き取り、むしゃむしゃと食べ始めるキメラ達。

 まずい。
 目が合ってしまった。
 体が恐怖で動かない。
 生来の好奇心が悔やまれる。
 キメラの三本角のほうが、おもむろに大きく口を開けた。
「フギャ!」
 赤熱する泥のようなものが吐き出され、私の立っていた崖に突き刺さる。
 足元が崩れ、私の体が宙に浮く。
 ‥‥5メートル程度落下したところで私のしなやかな体がどうにかなるわけではないが、しかし‥‥
 さて。今の溶岩弾はかなりのスピードで、かなりの距離を飛んできた。
 逃げられる気がしないぞ。

「グオゥッ!?」
 なんだ?
 今の悲鳴は、後ろにいた二本角のほう。
 三本角も振り返りそちらを見た。
 その隙に私は素早く身を翻し茂みに逃げ込む。ああ、神がいるならば感謝しよう。
 あの薄く光を発している武器はなんと言うのだったか。
 そう、その武器を扱える人間は。
 能力者だ‥‥!

●参加者一覧

シーヴ・王(ga5638
19歳・♀・AA
シルヴァ・E・ルイス(gb4503
22歳・♀・PN
小笠原 恋(gb4844
23歳・♀・EP
イーリス・立花(gb6709
23歳・♀・GD
ゼノヴィア(gc0090
20歳・♀・EP
ソウマ(gc0505
14歳・♂・DG

●リプレイ本文

 自然豊かな小さな町の出来事。
 地獄より這い出て来たかのような赤黒い巨躯を相手取るは、シルヴァ・E・ルイス(gb4503)。
 小笠原 恋(gb4844)。ソウマ(gc0505)。
 煉獄の炎を吐き出す紅蓮の鬼に対峙するは、イーリス・立花(gb6709)。
 ゼノヴィア(gc0090)。シーヴ・フェルセン(ga5638)。
 目撃者は猫一匹。
 傭兵にとっての日常。
 それはよくある鬼退治の話。


 私は猫である。
 名前はサナエ。
 最初に茂みの中から目に入ったのは重装戦士の姿であった。
 スコープとヘルメットで頭が隠れ、外套の下から覗くのは黒い金属鎧。
 そして、あのガスマスクはなんだ。
 周囲に他の能力者がいなければ、この町を侵略しに来たかと思ってしまう所である。
 重そうな盾で身を隠し、三本角の鬼めがけ弾丸をばら撒く重装戦士。
「イーリスさん足元気を付けて!」
 女性、なのだろうか。名はイーリスと言うようだ。
 声をかけた方を見れば、おそらく先ほど私の危機を救ってくれたのはそちらの二人組なのであろう‥‥
 ‥‥軍用外套こそ羽織っているが、どう見ても一般人と変わりないニットワンピース姿と‥‥
 ライダージャケットにロングブーツといういでたちの、これまた女性。
 彼女らの拳銃が薄く輝き、二本角の鬼に銃撃が食い込んだ。
 二本角の鬼は憤怒の表情を浮かべ、想像よりはるかに重い足音を立てて彼女らに向かって走る。
「では恋さん、シルヴァさん、予定通り」
「はいっ」
「了解した」
 誤射を避けるためか、イーリス嬢は味方と多少の距離をおいて後ろに下がってゆく。
 いや、鬼を1匹ずつ相手取るためであろうか?
「くっ」
 しかし三本角の方は見境なしに溶岩弾を吐いてきた。
 ライダージャケットの女性、シルヴァ嬢が、後ろに跳びつつ刀の鞘を回して受ける。
 さきほどの動作を見る限り、彼女がかわせない事もなかったはずだが‥‥
 ‥‥ああ。
 彼女の後ろには農機具を置いてあるであろう大きな木造物置。
 引火することを防ぐためか。
 彼女は、細やかな気遣いのできる人であった。

 ここは田畑が多い。
 当然、近くに川もある。
 どうやら能力者達は、このゆるやかに流れる川の河川敷を戦闘場所に選んだようだ。
 急いで走る私。
 彼女らの射撃の妨げにならぬよう、大きく回って移動したが‥‥
「来やがったみてぇです」
 おっと。
 彼女らの仲間か、待ち伏せ中の能力者達の声が届くところまで来てしまったようである。
 具体的にどこに隠れているのかは猫の私にもわからない。
 川の近くでニオイが流れているとはいえ、優れた隠密の術だ。
「影に潜むも時には必要ではあろうが‥‥やはり性に合わんな」
 ‥‥あ、見つけた。
 イーリス嬢に続き、2人目の重装戦士の姿。
 また鎧か。
 いや、威力ある銃撃戦ではなく、キメラを相手にする原始的な戦闘なのだから、これが普通なのだろうか?
「二本角が右ですね。射程距離に入ったらシーヴさんとゼノヴィアさんはそちら側の穴でお願いします」
 少年らしき声が聞こえた。
「合点承知でありやがるです」
「了解した、ソウマ殿も気をつけて」
 口調が特徴的なのがシーヴ嬢か。声から女性と判断する。
 そして私の方から少し漆黒の鎧が見えている人物がゼノヴィア殿と。
 あともう1人、ソウマという少年はまだ姿が見えないが‥‥
 どうやら敵が来たようだ。
 私は大人しく身を隠したまま居よう。

「鬼さんこちらです!」
 敵を引き付けている3人のうちの1人、恋嬢が、二本角の顔めがけて泥の玉を投げる。
 さらに二本角の斜め前からはシルヴァ嬢の弾丸。
 イーリス嬢は三本角の溶岩弾を盾で防ぎつつ、慎重に、かつ遅すぎぬ速度で後退してきた。
 それにしても。
 この鬼達、脳みそが足りていないのではないか?
 確かに、イーリス嬢の後退には不自然さは無かった。
 しかし地面がやや不自然に盛り上がっている事は私にでもわかる。
 目印っぽい枝も立っているし。
 だというのに。
「かかりました。確かに単純な思考のようです」
 すぽんと。
 がぼんと。
 実に綺麗に2匹の鬼は落とし穴にはまり込んだ。
 溝状の落とし穴と円筒状の落とし穴。
 片方は鬼が手を置いた端から土が崩れやすく脱出しづらい。片方は体が完全にはまって脱出しづらい。
 両方とも膨れた腹がまるまる地面の下に落ちている。
 三本角のほうなど、金棒を落としてしまったようである。
「油断もしねぇし、容赦もしねぇです」
 好機を逃さず、傭兵の待ち伏せ班が飛び出してきた。
 妙な喋りのシーヴ嬢はそれっぽいジャケットとヘルメットを着け、『いかにも』な戦闘スタイル。
 ソウマ少年の方は、銀狐を模しているのであろうミミフードつきのパーカーと、ご丁寧にしっぽまで。
「こんな罠にかかるなんて」
 狐のように目を細めての微笑。
「どうやら脳まで筋肉だったようですね」
 それが妙に似合っている。
 飛び出すと同時に何やら粉の詰まったカプセルを二本角の鬼に投げるが‥‥中身が何だったのか?
 鬼は咄嗟に顔を覆ったが、怪訝な顔をするばかりで特に変わった様子は無い。
「効果なしと‥‥もしかして味覚も鼻の感覚も無いとか?」
「まあ、キメラにも色々いますから」
 この匂い‥‥胡椒‥‥か?
 あらかじめ味方に通達はしていたのか、傭兵達は粉を気にせず機敏に動く。
 この湿った地面なら舞い上がる事もなかろう。


 そして竜の兜で顔を隠した黒騎士が、幅の広い両手剣を鬼に向けて構えた。
「私の名はゼノヴィア=リア=バスカヴィル。人々の帰る地を返してもらおう」
 その名乗りが戦いの火蓋を切る。

 溶岩弾を剣で斬り鎧の厚い部分で受けて、縦穴にはまった三本角へと直進するゼノヴィア殿。
 重厚な鎧と大剣からは想像できぬほどの俊足。
「誤射には留意を」
 接敵する直前、横のイーリス殿からの射撃が止む。
 鬼に迫るゼノヴィア殿。
 横に構えていた剣がいつの間にか炎で真っ赤に染まり、いつの間にか上から下に振り下ろされていた。
 私には剣筋が見えないほどの神速の斬撃。
 一瞬ののちゼノヴィア殿が飛びのくと、鬼の左胸から大きく血‥‥いや、体液が噴き出した。
 あんなにも大きな傷をつけていたか。
 鬼も首をひねって頭への直撃はかわしたようだが、いかんせん胴体が動かないままでは動きにも限界がある。
「グオオオオウ!」
 腕の筋肉を真っ赤に大きく膨れ上がらせて、周囲の地面を粉砕しつつ穴から飛び出す鬼。
 なんという脳みそ筋肉。
 その吠え声を上げる口の中を狙ってイーリス嬢はSMGを連射する。
 攻撃は頬の肉を多少削ぐにとどまるが、鬼の怒りはイーリス嬢の方に向き‥‥
 再び穴に、今度は溝状の落とし穴に落ちる三本角。
 怒りのままにイーリス嬢へと溶岩弾を吐くものの、自分自身も突撃したのは蛇足であったようだ。
 穴に落ちた鬼。
 そこにシーヴ嬢が背後から肩の関節めがけて斬りつける。
 角の形状からして頭蓋骨は頑丈だろうから、多分よい判断なのだろう。
「反撃する暇は与えねぇです‥‥と言いたいところでありやがりますが」
「どうも、口を開けば攻撃が来る、という事を学習する知能すら無いようですね」
 そうなのだ。
 傭兵達は溶岩弾を吐かせまいとはしている。
 互いの隙を埋めるように、声をかけあって動いている、のだが。
 銃撃や斬撃を恐れていないので、牽制やフェイントが効果を発揮していないのである。
 ‥‥いや、私はこのような戦闘を見るのは初めてなのだが、そのように思う、という事で。
 飼われていた家で格闘技番組などによる学習はしていたのだ。


 おっと!
 なにごとだろう。
 ‥‥私の隠れていた小さな低木の枝を折りながら、人が落下してきた。
「っつつ‥‥」
 確かこの一般人の格好をした女性は、恋嬢。
「え?こんな所に猫さんが‥‥うわぁ〜可愛いいですぅ〜」
 いきなり抱きかかえられた。
 こういう人間も割と多いので、暴れるような事はしないが。
 しかし今は戦闘中である。
 頭でも打ったのだろうか。
「と言っている場合じゃないですね」
 うむ、良かった、普通に危機は感じているようだ。
 恋嬢は持っていた剣を素早く鞘に収め、銃を持つ。私を抱きかかえたまま。
 ‥‥もしかして私は保護対象として見られているのだろうか。
「!」
 恋嬢が私を抱えて横に跳んだ。
 響く轟音。
 二本角の鬼が金棒を投げつけてきたのである。低木は跡形も無くバラバラになった。
 ‥‥危なかった。恋嬢に感謝しよう。
 敵の方を見ればというと、どうも穴から出ることができていないようだ。
「お前の相手は、そちらではないだろう?」
 シルヴァ嬢がわざわざ鬼の前に回って注意を引き付けてくれている。
 しかし鬼の腕はシルヴァ嬢には届かない。
 ソウマ少年は鬼の背後から攻撃しており、振り向くこともできないようだ。
 二本角は拳を地面に叩きつけるが、ここは湿った土の河川敷。
 砂のように飛び散る事もなく、岩のように砕けることもなく、かえって大地を固める結果となった。
 ぱっと見では気付かなかったが、たぶんこちらは三本角より体格がよいのだろう。
 自重ではまり込んだ穴は、人外の跳躍力をもってしても出られないほど、きつく体を締め付けている。
 いわば、はめた指輪が抜けなくなった状態。
「占ってやろう‥‥今日の君達の運勢は大凶だ」
 ソウマ少年が背後から直剣を突き刺す。
「ツキがなかったな」
 何かしら手応えを感じているのか、そのまま薄く光る剣を押し込むべく体重を乗せる。
 ‥‥なるほど、剣先はおそらく人間で言えば心臓の位置。
 鬼は苦悶の声を上げ、ソウマ少年を引き剥がそうとするが‥‥
 脂肪と筋肉の鎧があだとなり、届かないようだ。
 穴にはまってさえいなければ滅茶苦茶に暴れることでふりほどけたかも知れない。
 現に、暴れるだけで穴がどんどん削れていっているくらいの膂力があるのだから。
 しかしもう穴から抜け出すことは間に合うまい。
 シルヴァ嬢が鬼の手の届かぬ距離から、口の中をめがけて幾度も銃弾を撃ち込む。
 敵は巨体ゆえ、ソウマ少年に当たる心配も無い。
 そして‥‥ついに一発の銃弾が口の中に飛び込み、鬼を苦痛から解放した。


「はあああっ!」
 ゼノヴィア殿の、鎧に包まれた体が再び炎を発する。
 本人に影響は無さそうであるし恐らく本物の炎ではないのだろうが、なんとも‥‥美しい。
「フェルセン殿! 私は貫きに行く!」
「首は任せろ、です」
 シーヴ嬢の体からも炎が発せられる。
 同じタイプの武器を持つ2人の戦士。
 ゼノヴィア殿は鬼の胴体めがけ体ごと突進し。
 シーヴ嬢は背後から鬼の首めがけて刃を振るう。
 2人の剣は大きく食い込み、致命傷を与えた。体液が派手にしぶき、湯気がたちのぼる。
 それでもなお溝から飛び出す鬼。
 ゼノヴィア殿に溶岩弾を浴びせると‥‥
 たまたまこのタイミングで援護射撃をした、イーリス嬢へと向かう。
「いい加減倒れやがれ、です」
「悪いが‥‥終わりにする!」
 横から戦士の時間差攻撃。
 既にダメージを与えていた部位を狙い、再度の攻撃で、ようやく鬼は地面に倒れ伏した。


「疲れました」
 もう動かない事を確認し、まずはひといき。
 イーリス嬢はマスクとヘルメットを脱ぎ、ほっとした表情を浮かべる。
(「私の故郷は無くなってしまったけれども、誰かの故郷は守ることが出来た」)
 どことなく、遠くを見るように。
(「それはとても嬉しいことです」)

「怪我は…ないか?」
 シルヴァ嬢を始め、恋嬢、ソウマ少年は救急セットを取り出して皆の応急手当を行う。
 ‥‥しかし。
「あの‥‥」
 火傷を負ったイーリス嬢の手当てにかかるシルヴァ嬢から、一言。
「猫、置かないか?」
 恋嬢はまだ私を抱えていた。

「熱‥‥この三本角の血はまるで熱湯のようだな‥‥」
 ゼノヴィア殿は鎧に付着した鬼の血を拭っている。
「自爆する様子はありませんし、ULTの人が来る頃には冷めてると思いますけど‥‥一応報告しますか」
 ソウマ少年はわずかに怪我をしていたのか自分の手当て。
 そして‥‥
「人に慣れていますね、飼い猫でしょうか?」
 一息ついた恋嬢は私を撫で回す。
 眉間、頭、耳の後ろ、咽の下、背中、尻尾の付け根、肉球。
「はぅ〜‥‥可愛いです〜〜肉球プニプニですぅ〜♪」
 正直なところ迷惑千万ではあるのだが、命の危機を救われた手前、あまり邪険にするわけにも行くまい。
 ここは鷹揚に構え、しばらく‥‥
 ああ、咽の下は良いな、咽の下は‥‥しばらく味わっていなかった感触であるな‥‥
「はい、シーヴさんもどうぞ」
 むむむ‥‥こんな短時間でよいのか?
「本当、人懐っこいでありやがるですね」
 しばらくぶりの人の手である。
 私が喉を鳴らしても誰の迷惑になろうか。いやならぬ。
 なれば私も堪能してもよかろう。
「猫‥‥‥‥言葉、解ればいいのにな‥‥」
 シルヴァ嬢は何か‥‥遠慮しているようだが。
 仕方あるまい。
「あ」
 ここは私から足元に擦り寄って行くのが礼儀というものであろう。

 イーリス嬢から、久方ぶりの缶詰を頂いた。
 ありがたくそれを食べつつ、能力者達の作業を見守る。
 落とし穴を元通り埋める作業。
 アフターケアも万全である。
「この子どうしましょう?」
 穴の処理が終わった後、恋嬢が呟いた。
 どうも、私が何か動かねばならないようだ。

 ‥‥能力者達がわざわざキメラ討伐に来たということは、この町はまだ価値があるという事であろう?
 人が住むことができるという事であろう。
 さすれば、私の飼い主も帰って来るはずである。
 私の心は決まっている。

「‥‥頑張ってね」
「達者で暮らせ」
 イーリス嬢とゼノヴィア殿の言葉に振り向き、一声鳴いてまた歩く。
「行ってしまいましたね。ちゃんと飼い主の元に戻ってくれるといいんですけど」
 恋嬢の言葉を背中に聞きながら、私はまた山に入る。
 さて、やはり私は無事でいなければならぬようだ。
 私の主のみならず‥‥あのように親切な人々が、私の無事を祈ってくれるのであれば。
 それに応えねばなるまい。