タイトル:とにかく怪しい人達マスター:三橋 優

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/02/01 18:57

●オープニング本文


 霧の濃い日の夜。
 小料理屋の若女将は、最後の客を見送って暖簾を仕舞おうとしていた。
「生暖かくて嫌な感じだねぇ‥‥」
 こんな平地の都市で霧に見舞われること自体が珍しい。
 視界は悪くないがどうにも不気味さを感じさせる。
 若女将は馴染まない空気に、ひとつぶるっと体を震わせた。
 と、その時。
「‥‥?」
 霧の向こうからヒタヒタと近付いてくる、大きな男の影。
 ハットを目深にかぶり、口には黒いマスク。
 体全体を覆うロングコートは、身長の高さも相まって一種異様な威圧感を出していた。
「あ、今日はもう店じま‥‥」
 い!? と、女将は固まった。
 ヒタヒタという足音からまさかと思ったが、その男、裸足なのである。
 靴もない。靴下もない。
 さらなる嫌な予感が女将を襲う。
 その身長2メートルほどの男は‥‥躊躇わずコートの前を全開にした。
「いやーっ!?」
 予想通り。
 やはり何も身につけていない。
 思わず反射的に股間を蹴り上げる若女将。けっこういい根性をしている。

「えー!?」
 女将は2つの意味で『えー』という叫びを上げた。
 その蹴り上げた瞬間、大男の下半身から全身を、赤い光が包んだのだ。
 こいつは‥‥キメラ。
 なんでこんなキメラ作りやがったのだろうかバグアどもは。


「えーと、まあ、その女将さんはすぐに逃げたので無事です‥‥」
 老婦人のオペレーターは頭痛をこらえるようにこめかみを揉み解し。
 集まった傭兵に写真と報告書を手渡してゆく。
「別に露出が目的ではなく、普通に破壊行動をしてますね‥‥」
 そりゃそうだろう。
 露出が目的のキメラなんて居てたまるか。
 既にガソリンスタンドがひとつ壊されており、消防が出動する大騒ぎになっているそうだ。
 迅速に倒すことが求められる。
 攻撃方法は普通に殴ったり蹴ったり、動物キメラと変わらない。
 動物と違うのはただ一点、コートに執着して決して脱がず、人を見つけるとそのコートを開くこと。
 見せ付ける対象は女性とは限らない。
 老若男女を問わず見せられたという被害届けが続出している。
「ULTで確認したのは4体です‥‥その、なんというか‥‥頑張ってください。精神的な意味で」

●参加者一覧

宇佐見 香澄(ga4110
19歳・♀・ST
北条・港(gb3624
22歳・♀・PN
鳳凰 天子(gb8131
16歳・♀・PN
南桐 由(gb8174
19歳・♀・FC
未名月 璃々(gb9751
16歳・♀・ER
蜂巣 麗奈(gc0008
13歳・♀・FC
ティッキ・リー(gc0059
15歳・♀・HG
ゼノヴィア(gc0090
20歳・♀・EP

●リプレイ本文

 町の東西南北に散らばってキメラを探す傭兵達。
 ここは人の住んでいる町‥‥早く処理しなければ。
 なお、時刻は午前4時。気温は約8℃。

 町の南東部、港湾区。
 時刻午前4時にして既に活気づいているエリアを抜け、漁業組合事務所前を通る2人は。
「変態4匹…最低の部類ですわね。作ったバグアも相当な変態に違いないでしょう」
「えぇーとぉぉぉ、なんでこんな依頼を引き受けちゃったのかなぁ」
 蜂巣 麗奈(gc0008)と宇佐見 香澄(ga4110)だ。
「キメラという事を抜きにしても、こんな変態軍団をのさばらせるわけにはいきませんわ!」
「あたし、この依頼が終わったら、お嫁に行けなくなっちゃうんだ‥‥」
 何のフラグだ。
 いや、形式が違うので多分大丈夫。
 それにしても、揃って上着の無い2人はとても寒そうである。
 能力者はこの程度なら戦闘に支障は無いが。
 香澄は体を動かそうというのか、警察署から借りてきたY字さすまたをぶんぶん振り回している。
「警察の無線連絡によれば、刃物を振り回すキメラが出たらしいです」
「霧の夜の切り裂き魔‥‥まるでジャックですわね。こっちは露出も加わったド変態ですけど」

 その人影が見えたのは約10分後の事。
 ひたひたと近付く裸足の足音。
 目撃情報通りの格好だ。
 そして‥‥
 一瞬の躊躇もなく開かれるコート。現れる男の裸体。
「いーーーやーーーっ!?」
 涙目でさすまたを突き出す香澄。
 慌てて、相手の体に対しさすまたを縦に突き出してしまったのだが。
 ぐに。
「!!!!!」
 おぞましい感触に精神が耐え切れなかったのか覚醒する。
 だがしかしキメラなだけあって、もんどりうって倒れるという事は無いらしい。

 同時に、麗奈は既に本気の戦闘に入っていた。
 迅雷で香澄のすぐ隣に飛び込み、ためらわず急所に突きをぶち込む。
 惜しくも狙った部分には当たらなかったが。
「生憎、私にはそんなモノ見る趣味はありませんの。さっさと潰してさし上げますわ」
 目が据わっている。
 人間ならこれで逃げてくれるのだろうが相手はキメラ。
 右腿から血を流しつつ、刃渡りの長い大型のナイフを突き出してくる。
 わずかに麗奈の袖から滴る血。
「この‥‥」
 二度目の斬撃は槍を回転させて受け流し、ついでに石突きでまたも急所を打ち据え。
 麗奈は多少の距離を取り、槍に有利な間合いを保つ。
 ガン、という、巨大スポットライトのような音とともに、光がキメラの股間を抉った。
「容赦しません」
 香澄のエネルギーガンである。
 覚醒し冷静になった彼女は‥‥明らかに急所を狙っていた。
「出る杭は打たれる‥‥恨むならそんな風に作ったバグアを恨むんですのね」
 円閃。
 相手の突きの力も利用して、華麗に回転し薙ぎ払う麗奈。どこをとは言わないが。
 刃と石突きの二重の攻撃だ。
 薙ぎ払いで距離がわずかに開いたところに香澄の射撃が突き刺さる。どこにとは言わないが。
 そして‥‥
 えーと、なんというか、ソレが、落ちた。
 ああ、キメラの意識が落ちたと、そういう事にしておこう。
 2人がかりで執拗に集中攻撃された結果、下腹部のダメージだけで肉体は活動を停止したのだ。
 ‥‥恐ろしいお嬢さんがたである。
「ふむ‥‥まず1体、と」
 麗奈は何回か受けそこねて左手に傷を作ってしまったが、このくらいなら支障は無い。
 1回の練成治療で傷跡も残さず完治するだろう。
 しかし覚醒状態を解いた香澄は‥‥
「ひいぃ〜無理無理〜もう無理です」
 思いっきり泣いていた。


 風が、白衣を羽織っただけの未名月 璃々(gb9751)の体温を奪う。
 しかし妙に燃えているように見えるのは気のせいか。
「変態には変態を、この未名月 璃々、盗撮魔でいきますっ!」
 璃々はなぜか一眼レフカメラを抱えていた。
「依頼の思い出です、初依頼‥‥変態VS変態はどちらが勝つのでしょうっ!」
 そんな対決しなくていい。
「未名月殿、向こうの大通りで爆弾らしきものを抱えたキメラが目撃されたそうだ」
 そんな異様な雰囲気の璃々に、無線連絡を受けた鳳凰 天子(gb8131)が声をかける。
 この2人が向かったのは町の中央部。
 警察の無線連絡を受けてガソリンスタンド破壊の犯人を追っていたのだ。
 璃々の方は『警察は嫌いなんですよね‥‥昔は敵でしたし』と言っていたけれど。
 と、歩いていると、そこに。
「あ! またガソリンスタンド!」
 発見したキメラは、今まさに次の破壊を行おうとしていたところ。
 バシッとスパークマシンを鳴らして璃々はキメラの注意を引く。
「火のつきやすい匂いでも嗅ぎつけているのか? これ以上は許さんぞ」
 そして天子は機械剣を起動し、光の刃を構えた。

「自分は基本的に機械剣で突っ込むしか脳がない。悪いが協力しあってあの変態を叩き潰そう」
「治療はバッチリ、任せて下さいっ! 戦いはお任せします!」
 と、璃々が構えるのはカメラ。
 キメラがコートの前を開けると同時にバシャッと撮影。
 筒状のダイナマイトやら手榴弾やらを巻きつけた‥‥男の裸体。
 お子様にはお見せできません。
 大丈夫かな、と天子は汗を流しつつ、スタンドのコンクリートの踏み心地を確かめた。
「疾風!」
 脚力を高め。
「迅雷ッ!」
 一気にキメラに接近し、光の刃を突き立てる。
 回避しそこねたキメラの脇腹を貫通した。
「爆弾は己の懐には使えまい!」
 キメラの反撃の拳を紙一重でかわし、足元めがけ刃を振るう。
「変態キメラと聞いては狩らずにはいられぬ。バグアの邪な野望と共に我らが切り裂いてくれる!」

 かたや璃々はカメラから再びスパークマシンに持ち替え、天子の後方から援護の体勢。
(「武器は機械剣と超機械‥‥敵を物理的に弱体化させても意味ないかな。それなら」)
 わりと真面目だった。
「練成強化です!」
 そして、続いて自分からも電気を飛ばし応戦する。
 その電圧ショックの一瞬の隙をつき、天子の機械剣がキメラの右足に深い傷をつけた。
 キメラは転倒するが、後方に転がり追撃の剣は回避。
 転がった拍子にシャッターを壊してさらに後方へ、ガソリンスタンドの倉庫内へ。
 すかさず距離をつめる天子に対してキメラは‥‥
「!?」
 投げつけられた巨大なものを斬る寸前の一瞬、天子はその攻撃を後悔した。
 この中身は何だろうか。
 ドラム缶に光の刃が食い込み、火花が散る。飛び散る液体に着火する。
 シャッターが弾け飛んだ。


 また、町の南西部の高級住宅地区では。
「っせい!」
 上から飛びかかってくる相手の股間めがけて渾身の蹴りを放つ北条・港(gb3624)。
 既にキメラのコートの前は全開である。
 そんなもんが上から飛びかかってくる‥‥普通ならトラウマものだが。
「おあいにくさまだ。見えても気にしなければ良いだけだ!」
 豪胆である。
 キメラの腕はぶんと大きく風を切り、港の蹴りは相手の勢いを利用してキメラの肉体にめり込んだ。

「こちらティッキ・北条班〜。キメラ発見ー、とりあえずフルボッコにしてやんぜっ♪」
 港から借りた無線機で連絡を済ませたティッキ・リー(gc0059)は素早く抜き撃ち。
 強弾撃を加えた射撃、しかし最初の一発は相手の帽子を吹っ飛ばしたのみ。
「おお、猿人」
 現れたのはサルの顔。ひそかに戦ってみたいと思っていたタイプのキメラである。
 しかし。
 避けた際にまたコートが着衣状態に落ちついたのだが、それをわざわざ開けて見せてきた。
「‥‥ったく、変なキメラもいるもんだね! 狙い撃つぜ!!」
 本当にどういう習性をインプットされているんだ。

「おっと」
 咄嗟にしゃがんだティッキの頭の上を、物凄い速さの飛礫が通り過ぎる。
 ものを投げる程度の知能はあるようだが。
「相手は‥‥あたしだよっ! と!」
 前衛として敵に立ちふさがり、左右からツバメ返しのごとく蹴撃を放つ港。
 しかし猿としてはキックより銃弾の方が怖いと思えるわけで。
 またもアスファルトのかけらを投げようと‥‥
「セイッ!」
 投げようとしたその腕を、港は蹴り上げた。
 ブーツから生えたSES付きの刃が猿人キメラの皮を裂く。
 さらにティッキの弾丸も逆の腕の肩を抉る。
「みーさん、支援します!」
 いまだ一度も攻撃を当てることのできないキメラ。
 勝てそうにないと見たか大きく後ろに跳び、街灯を掴んで逃走に入った。
「あ! こら!」
「任せろい!」
 大きく跳んだと言っても、まだティッキの射程圏内である。
 自動小銃スコーピオンが軽快な音を立てて街灯の軸を削り、キメラごと地面に落下した。
 ‥‥本当はキメラの腕を狙ったつもりだったけれど。
「ティッキ、ナイス!」
 落ちたところにすかさず港が駆けつけ一撃を見舞う。
 結果オーライ。
 姿勢を崩したままの敵に、下段蹴り、中段蹴り、上段蹴りが襲いかかった。
 最後の上段蹴りで脳を揺らしたか、キメラの視線がさまよう。
 これで終わり。
「セェェイッ!」
 港のティミョトルリョチャギ(回転跳び廻し蹴り)が頭蓋を砕き‥‥
 ティッキのグラディヴァが胸板を貫く。
「女将に代わって‥‥成敗!」
「やっぱりHENTAIだったね」
 そこに‥‥
 つけっぱなしにしていた無線から、爆音が響いた。


「初陣か‥‥しかし、妙な手合いだな」
 探査の眼を用いてキメラを探す全身鎧の姿。
 声から女性とわかるゼノヴィア(gc0090)である。
「‥‥見事に‥‥女の子ばっかり揃ったね‥‥いいのかな‥‥こんな依頼に‥‥」
 由も人のこと言えないけど、とぼそりと呟く南桐 由(gb8174)。
 本当になんで女性ばかり揃ったのやら。
「しかし、出来れば手早く済ませたい‥‥遭遇できるよう幸運を祈るとしよう」
 こちらの2人が担当しているのは北部のビジネス街。
 午前4時ともなると真っ暗だ。
 しかしこちらの方面へハットにコートの長身の姿が来たと情報が入っている。
(「コートをばさっとやられたら‥‥ちょっと恥ずかしいけど‥‥」)
 由は何かを期待しているのだろうか。
(「決して‥‥由のガチな同人誌のネタのためじゃ‥‥ないんだからね‥‥ほんとだよ‥‥うん」)
 誰にともなく心の中で言い訳をする由。

「む」
 探し歩くこと十数分、ゼノヴィアは行く手のコンビニ前でその姿を発見した。
 ちょうどゴミ箱の袋の交換に出てきた店員が、今まさにコートの中を見せられたところで‥‥
 ‥‥それにしては反応がおかしいような。
 微妙に驚いた表情ではあるのだが。
(「まずい!」)
 コートの前を開け満足したという事なのか、キメラは店員に拳を振るう。
 その攻撃を‥‥
 寸前で、迅雷を用いた由が受け止めた。
 覚醒状態でも手が痺れ、ダメージを受けている。
 普通の人間が受ければ命の危険。
「破廉恥な‥‥我が剣にて潔く散るがいい」
 ゼノヴィアは正々堂々と名乗りを上げる。
 コートの中を見せてから攻撃に移るという点で、不意打ちしないという意味では相手も‥‥?
 いや、少なくとも騎士道精神ではありえない。絶対に。
「あ‥‥」
「ほう‥‥」
 帽子の下から、そのキメラの顔が見えた。
 それは‥‥意外にも女性。コートの下の肉体もしっかり女性。
 そして、美人だった。10人の男とすれ違えば10人が振り向くだろうというくらい。
 さっきの店員の態度も頷ける。
 しかし、バグアは畏怖の心やトラウマを利用すべくキメラを作っているのだろうが‥‥
 バグアが乗っ取った人間の中に、美人の露出魔にトラウマを抱いた男でもいたのだろうか? 色々と。

「つっ!」
 しかし凶暴なキメラである事に変わりはない。その足がゼノヴィアの脚甲を打ち鳴らす。
「‥‥由も女の子だからそんな恥ずかしい事は辞めさせたいな‥‥キメラで‥‥あってもね」
 やや短めの槍を片手でしっかり持つ由。
 反対側の手には美しきナイトシールド。カプロイアの美しき盾。美しき。
「来るがいい!」
 ゼノヴィアが防御役、由が攻撃役。
 という事になっていたが、さすがにキメラもこんな硬そうな鎧はあまり殴りたくないのだろう。
 キメラの手刀が由に向かうところをゼノヴィアが盾で止める。
 由も身長は高い方なので、もっと槍が長ければゼノヴィアの肩ごしに攻撃するという事もできるが‥‥
「!?」
 と、キメラがゼノヴィアの腕を掴んだ。
 物凄い握力で引き倒そうとする美人キメラ。
 鎧に慣れているゼノヴィアだが、今回は意表を突かれバランスを崩してしまった。
 しかしそれならばと逆にキメラをしっかと抱え、同時に倒れこむ。
「‥‥あ」
 由が見たのは『コートをはだけた女性が、全身鎧の女性に押し倒される』所。
 その時、由の脳裏に電流が走り新たな創作力を得たかどうかは定かではない。
 ゼノヴィアの持つ炎剣でどこか傷ついたのだろうか、キメラがうめき声を上げながら殴りつける。
 肘や膝が鎧を通してゼノヴィアに衝撃を与え、その膂力がすさまじいものだと理解した。
「だが‥‥」
 攻撃力は強くとも。刃を立てたわけでもなく刃の上に倒れこんだだけで傷を負うなら、防御はもろい。
「ごめん、ね」
 ゼノヴィアが身を起こした次の瞬間、由の槍はキメラの心臓部を貫いた。
 ‥‥人間と同じ位置にあったようだ。
 キメラが完全に動かなくなったのを確認し‥‥
 由は、キメラのコートを閉じてやった。


「もしもし? もしもーし! B班は倒したけど、爆発したのはどこ!? 無事!?」
「あ、ああ、無事だ」
 能力者の肉体はちょっとやそっとの爆発でどうにかなるものではない。
 天子も、後ろにいた璃々も、ダメージは負ったが。
 そしてもちろんキメラも。
「爆弾は飾りか!?」
「わわ、消火消火」
 天子のジャケットに付着した、油らしき大量の液体が燃えている。
 璃々はすぐそばの蛇口を全開にしホースを向けた。
「こちらD班ゼノヴィア、すぐ応援に向かう」
「ありがとう」
 だが。
 もう、すぐ終わりそうだ。
 再び殴りつけるべく駆けて来たキメラを、屈んだ姿勢から伸び上がるように機械剣で切り払う。
「未名月殿!」
 そして璃々の電圧攻撃。
「爆弾は浪漫です、フェイクなんて許しません!」
 天子は再び足を狙う‥‥と見せ掛け‥‥股間から、腹、胸まで。
 下から縦一文字に切り裂いた。

「終わった‥‥か」
 多少、息が乱れている。
 びしょ濡れなので覚醒を解いたらとても寒そうだが。
 でも。
「ふざけたキメラを倒した後は大地の風がこんなにもやさしい」
 天子は大きく伸びをした。
 足元ではフォースフィールドの加護を失ったキメラが火に包まれてゆく。
 爆弾は本当に飾りだったようだ。
「こちらA班、問題なく倒しましたわ」
 傷の治療も済んだ麗奈が。
「ごくろーさまでしたっ!」
 街灯を壊したけれど個人の弁償の必要は無いと言われ安心したティッキが。
 一様にすっきりした声で連絡してきた。
 しらみつぶしに探索して、キメラがいないと確信できるまで、ここには留まらないといけないが‥‥
 ひとまず、着替えてシャワーを浴びよう。