タイトル:古代動像の行進マスター:三橋 優

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/11/16 13:40

●オープニング本文


 UPC本部に送られてきた情報に、オペレーターも驚いた。
 あまり戦略的価値も無さそうな町に、ゴーレムの小隊が押し寄せて来たと。
 その数、9体。
 うち1体は色違いだというから、強化人間の操縦する有人ゴーレムか?
 もしかしたらバグア兵が乗っている可能性も‥‥
「ただちに傭兵達にも応援要請を!」
 将兵の決断も早かった。
 戦場は市街地での陸戦となり、空爆は許可できない。
 今は無人とはいえ、住める町だ。
 戦闘による破壊も最小限にとどめ、そして相手の破壊行動を迅速に止めなければならない。
 難易度の高い依頼となりそうだ‥‥

 そんな緊張感はどこへやら。

「なんだよありゃ‥‥」
 現地に到着した人々は脱力したように、いや、完全に脱力した。
 お世辞にもスマートとはいえないそのボディ、突撃するしか能が無いようで‥‥
 自分自身の突撃によってもパラパラと石の破片が飛び散っている。
 もっと言えば、能力者ではない、軍の兵器でもわずかずつ削れているのだ。
「遮光器土偶じゃん!?」
 現場の人間からの情報によれば‥‥
 ‥‥総合すると、雑魚。
「これ明らかにただのキメラじゃん!」
「動く土人形だからゴーレムだろ!?」
「違ぇよ! そういう意味じゃない、UPCじゃゴーレムってのは強力な‥‥」
 後ろで何か言い争いが起こっているが、そんな事は気にしていられない。
 報告者のミスだろうとも、今現在この町が脅かされているのには変わりない。
 傭兵は自分達の機体を操り、土偶キメラを止めるべく行動を開始した。

●参加者一覧

アルト・ハーニー(ga8228
20歳・♂・DF
霞倉 彩(ga8231
26歳・♀・DF
ルナフィリア・天剣(ga8313
14歳・♀・HD
ファイナ(gb1342
15歳・♂・EL
美空(gb1906
13歳・♀・HD
鷹代 アヤ(gb3437
17歳・♀・PN
鹿島 綾(gb4549
22歳・♀・AA
瀬上 結月(gb8413
18歳・♀・FC

●リプレイ本文

「ゴーレム相手に街の被害を抑えつつ戦えとは中々難しい事を‥‥って、何だこれ‥‥」
「‥‥ゴーレムって聞いたんだけど‥‥」
 いきなりな光景に呆れ気味のルナフィリア・天剣(ga8313)と田中 アヤ(gb3437)。
 いまひとつ緊張感に欠けるが、街が壊されかねない事態ではあるし、KVの出撃許可はちゃんとある。
「まぁいい。土偶だというなら、愛と勇気と力とで倒すまで」
「ちょうどいい、機動テストと行きましょう」
 アヤは新しいKVシラヌイの腕を伸ばし、ぐっと握らせてみた。
 機体名メタトロニウス。銀白に塗装した『玉座に侍る者』。

「えっ!? KVが整備不良!?」
「へ?」
 その声は無線からではなく、外部スピーカーから聞こえた。
 どうもファイナ(gb1342)の機体に整備不良が起きていたらしい。
「‥‥先に出撃してくださいっ! 後から全力で追いかけます!」
「わ、わかった」
 妙なプログラムでも暴れたのだろうか。
「お、音声入力〜!? なんで!?」
 微妙に悲しい感じのファイナの叫びを背に、土偶に向かって歩を進める傭兵達。

 アヤは鹿島 綾(gb4549)とともにライフルを構え、胴体を狙って威嚇射撃。
「まあ、まずはいつも通り、バシバシ撃っていきましょか‥‥ねっ!」
 相手は下り坂の途中。
 まず、粉砕しても転がり落ちて行かないように平地部分まで誘い出すのだ。
 街に被害が及ばぬよう、ほぼ確実に当てられる距離から精密な射撃。
「シラヌイを試すって言ってたけど、違和感なさそうだね」
 綾は新機体を操縦するアヤを気にかけているようだ。
「うん‥‥まだこれからかなあ」
 ちなみに綾の読みは『アヤ』でなく『リョウ』である。
 銃撃する綾の頭には、ひとつ疑念があった。
「ご丁寧に中身が空洞って事は無いよな? んな訳無いよな?」
 そこまで壊れやすそうなたわけたつくりだとバグアの頭を疑ってしまうが。
 と、プロック塀を踏み壊しながら進んでいた土偶キメラ達が道路に出た。
「んんん、引き付けられた?」
「前情報通り9体ともひとかたまりですけど、引き付けられたようです」

「了解、道路の真ん中を通らせるように引き付けてみる」
 相手の移動を見て、霞倉 彩(ga8231)も砲撃開始。
 帯電粒子加速砲をキメラの腕の先端めがけて発射。
「うわ」
 遠目からでもバゴッと音が聞こえてきそうなほど上手に壊れた。
 さすがに内部が空洞ではなかったらしい。
 しかしそれにしても非物理攻撃の効きっぷりに感心する。
 素早くリロードし、もう一度の砲撃。
 なお‥‥彩の読みも『アヤ』ではなく『サイ』。
(惜しくも読みのかぶらない3人がよく集まったもんだ)
「土偶か‥‥ちょっと可愛いかも」
 ぼそっと瀬上 結月(gb8413)が呟く。
 その彼女のKVは砲撃戦装備。
「市街戦向きでは無いが‥‥やらかした際は建築業の需要を高めたということで、色々と納得してもらおう」
 あまり納得できるとは思えないが、なぁに、的を外さなければ問題は無い。
 結月は、がちっとレールガンのセイフティを解除した。
 だがしかし、まだ使わない。
 ここは彩とともに引き付けよう。
 互いのリロードを補うように連発される帯電粒子加速砲。
 少なからぬダメージを受けた土偶達は、それで完全に狙いを傭兵達に定めたらしい。
 円陣を組んだ9体の土偶が一斉に進軍速度を速めた。
 坂道を上り、傭兵達の操るKVに迫る。
「で、あの土偶はいつ可愛らしく鳴くんだ?」
 鳴きませんよ結月さん。


 そして土偶達が坂を上りきった時、この土偶戦の影の主役と呼んでいいだろうその男が立ち上がる。
 ハニワ軍団総帥アルト・ハーニー(ga8228)のディアブロ改。
 やる気の源は。
「埴輪ではなく土偶のキメラを作るとはバグアの奴らはわかっちゃいない!」
 常人にはあまり理解できない部分だった。
 結月とは正反対の感想で、あからさまな『敵』に立ち向かう。
「悪の土偶はこの、ハニワ軍団総帥。アルト・ハーニーが叩き潰してくれる!」
 いきなりパニッシュメント・フォース。全力全開のハンマーの一撃を土偶に振り下ろす。
 景気のよい音が響いた。
 刃物に強いなめらかなボディも、打撃に対しては無力。
 ハンマーは見事に土偶の頭部を粉砕し、体にまでめり込んでいた。
 しかし相手はまだ動く。
 反撃の体当たりを受け止め、ディアブロの胴体がギシギシときしんだ音を立てる。
 だが、たった一撃ではハーニーを止めるにはまったく足りない。
「砕けろ! 俺のハニワ力(ちから)の篭ったこのハンマー!」
 二撃目は右上からの叩き下ろし。
 土偶の肩を粉砕し、腕部は地面に転がった。
 あらかじめ遠距離砲撃でかなり削っていたとはいえ‥‥もろい。
 そしてとどめの三撃目。
 ダークファイターとして普段やっている流し斬りのように、一歩踏み込んで‥‥
 横から叩き付けたハンマーは、土偶の腹部を派手に爆砕した。
「おっと」
 ボタボタと泥のような体液が土偶キメラの中からこぼれてくる。
 まさかスライムが土偶を操っていたというオチじゃあるまいな、と思ったが、まったく動く様子は無い。
「まず1体!」
 そしてハーニーの派手な戦闘のおかげか、綾と彩は土偶達の後ろに素早く回りこむ事に成功。
 はさみうちだ。

 ハーニーの初撃と同じタイミングで近距離から派手に連射されるガトリング。
 その対象となったのは、綾の狙撃によって胴体に大穴を空けられた土偶だった。
 ガガガッとさらに派手に削られ、その攻撃の主である美空(gb1906)を優先すべき敵ととらえる土偶キメラ。
 9体まとまって動くと言っても多少は離れられるようで、20メートルほど先の位置にいる美空に向かう。
 しかし‥‥それは死に向かって踏み出す歩み。
「美空は」
 下がる美空。
「前からこれが」
 追う土偶。
「ずっとやってみたかったのでありますよ!」
 その追って来た土偶に向けて装輪走行最大加速。ブーストダッシュ。
 接敵するまでの2秒にも満たない時間でプログラム・ライトニングクローII起動。
 内蔵爪がパリパリと、心地よい危険な振動を発する。
 肉薄。
 そして、激突。
 土偶の脇腹をいとも簡単に突き破り‥‥
 美空のリッジウェイは土偶達の後方まで駆け抜け、ちょうど回り込み終えた彩のシラヌイの隣で静止した。
 1秒ほどの間があり‥‥
 前のめりにゆっくりと倒れる土偶キメラ、その脇腹の大きな穴から亀裂が広がる。
 そして。
 大地に倒れ伏すと同時にバラバラになった。
「〜っ」
 夢の実現に心震わせる美空。
「ライトニングクローIIはじめて使った気分は最高なのでありますよ。普段の戦闘でも使えるともっと良いのでありますが」
 なんとも派手な戦いである。

 さらにハーニーと美空と同じタイミングで攻撃した者がもうひとり。
「トイフェルより各機へ。攻撃開始する」
 いや、彼女が一斉攻撃の合図となったと言ってもいい。
 機体名フィンスタニス、ルナフィリアのウーフーは、その両腕に凶悪な得物を下げていた。
「割れろ」
 振り上げられた真デストロイアックス。
 ザゴッと形容しがたい音が響き、避けようとした土偶は妙な角度で斧の刃を噛まされてしまう。
 そこを逃さず右腕でアッパーを打ち込むルナフィリア。
 仕込まれたデアボリングコレダーが強く唸りを上げ電撃を放つ。
 ボロボロと崩れゆく土偶のボディ。
「脆いな‥‥だが逃がしはしない」
 一片の容赦もなく、ルナフィリアは崩れてゆくボディのさらに奥深くにデアボリングコレダーをねじ込んだ。
 上から食い込む斧、下から打ち込まれた腕。
 体当たりしかできない土偶キメラは必死にもがくが‥‥
 ビーストホーンでの頭突きがキメラの肩を粉砕する。
「この距離なら外さん、受けろ、蛇縛呪!」
 とどめのメガレーザーアイが土偶キメラの頭部から背中へと抜けた。
「‥‥なんてね」

 射撃組は、建物に当たらぬよう主に頭部を狙って攻撃を繰り返す。
 近付くまでの十数秒でも打撃を与えていたが、今はもう目的は完全撃破。
 下り坂の方には綾と彩がいる、たとえ土偶の大きな腕が転がっていったとしても彼女達が粉砕してくれる。
 だから憂いなしに派手な攻撃を繰り出せるのだ。
 まあ、サポートのみならず。
「民家に倒れこむんじゃあない!」
 綾はパニッシュメントつきの帯電粒子加速砲2発で土偶の上半身を蒸発させたりもしているが。

「‥‥来る!」
 射撃を行っていた結月に、土偶の1体が体当たりを仕掛けてくる。
 だがもとより狙いはその攻撃の瞬間。
 闘牛士のごとく寸前で横にかわし、その突進の勢いを利用してGFソードで刺し貫く。
「!?」
 予想以上に体当たりの勢いは強かった。
 スイッチを入れるためにGFソードを強く握っていた腕が引っ張られ、結月機は姿勢を崩してしまう。
 が。
 銃声とともに土偶の脚部が砕かれ、土偶は結月機に追撃を仕掛ける前に倒れた。
「『侍る者』が援護しますよっ」
 アヤのライフルによる援護。
「すまない、ありがとう」
 脚部を失った土偶は起きるために少し転がらなければならないもよう。
 ‥‥本当にこのキメラを作った輩は何を考えていたのやら。
 改めてGFソードを突き立てて、相手の動きを固定。
「ダッジ・ディス(避けてみろ)」
 そして結月機の小型帯電粒子加速砲が土偶の胴体を貫いた。


 5体の土偶が粉砕され、中央の黒い土偶に動きが現れる。
 ガクガクと震え出し‥‥
「なんだ‥‥? 皆、気をつけろ!」
「色違いとなれば強いはずだ。何か別の攻撃方法‥‥目からビームとか持っていてもおかしくないな」
 ハーニーが。
「きっと目からビームが出る仕様だと推測するのですよ」
 美空が。
「‥‥まさかとは思うが。まさか‥‥目からビームとか、そういうお約束じゃないだろうな?」
 綾が、揃ってその危惧を口にする。
 黒い土偶の頭部だけがグルリと回転し、綾の方を向いた。
 その瞬間。
 黒い土偶の頭部めがけ発射されたアーバレストの矢が突き刺さる。
「わざわざ手の内を見る気は無いよ‥‥一気に仕留める‥‥」
 彩である。
「いかにもその通りだな‥‥この斧やっぱ使い難いー」
 ルナフィリアも黒い土偶に切りかかった。
 加えて、黒い土偶の頭部が回転した方、さっきまで背面だった方向から、突撃してくる新たな影。
「頭部を掴めっ! パルマ・ピストーーーーッレ!」
 なかばヤケクソ気味の声がKVの無線から響く。
「す、すみません‥‥遅くなりました‥‥」
 機体名ホワイトナイト。
 ファイナの、格闘機と化したS−01H。
 使う武装によっては音声入力しか受け付けないというおまけつき。
 本当になんでこんな事になってしまったのやら。
 だが、黒い土偶が本当にビームを発射する前に、掌銃パルマピストーラはその顔面を破壊した。
 威力は本物である。
「くっ‥‥なんで声しか‥‥」
 嘆いても仕方がない。

「普通の土偶の体当たりは大した事はない、受けた俺が保証する。危ないのは黒い奴だけだろう」
「ああ。こいつらは‥‥脆い!」
 彩は、機刀「陽光」、練機刀「月光」の二刀を振るい‥‥
 敵がどちらの攻撃にも弱い事を証明するかのように、十文字に断ち割った。
「それに、土偶は半減した‥‥あー、スパローよりアヤへ。サポートはする。思いっきり行け!」
「了解! ‥‥よし!」
 アヤのKVの手が練機刀「月光」に伸びる。
「たまにはアグレッシブに行かないと。月光、抜刀!」
 黒いヤツへの行く手をさえぎる半壊土偶に狙いを定めるアヤ。
 綾はその土偶の足に照準を合わせ帯電粒子加速砲をぶっ放す。
 姿勢を崩したところに、壊れかけた部分を狙った斬撃が食い込み‥‥そのまま両断してしまった。
「雪村キィィィック!」
 その前方では雪村全然関係ないファイナの蹴り。
 フットコートの施された脚が、ハーニーに低空タックルを仕掛けようとしていた土偶を迎撃する。
 倒れた土偶は可哀想なほどボコボコにされた。
「‥‥帰ったら、ちゃんと調整しなおさないと‥‥」
 ため息をつくファイナ。
 もう普通の土偶はいない。あとはボスだけだ。

「さっきの手応えからして防御力は‥‥田中さん! プランBで行きましょう!‥‥プランBってなんですか‥‥?」
 誰に聞いているのかファイナよ。
「わかりました! ‥‥って、プランBとかそんなのないですよっ!?」
「ならこっちに合わせて!」
「あ、はい!」
 彩とアヤ、2人の練機刀が前後から黒い土偶に襲い掛かる。
 KVに比べてあまりに鈍重な体は避けきれない。
 普通の土偶よりは非物理攻撃への抵抗力もあるものの‥‥すべてを受け止めきれるはずがない。
 かろうじて腕部の切断はまぬがれたようだが。
「連携攻撃でフルボッコ‥‥と、今だ!」
 ルナフィリアが、腕部を突き出して体当たりをかけた土偶の正面からデアボリングコレダーを突き刺した。
 合図をするは結月機。
 ようやくこれの出番だ。
「‥‥私はコイツを撃ちたくて来たんだよ」
 KVに膝をつかせ砲口を上に向けて、建物を壊さぬよう。
 さらにはPRMシステムを起動。
 姿勢の安定と駆動系の補佐のためにありったけの練力を使い、命中率を高める。
「ファイア!」
 大威力電磁加速砲「ブリューナク」。
 黒い土偶の頭を含めた中央部分で小爆発し、そのままはるか彼方まで突き抜けた。

 ぼうっと光が集まる。黒い土偶の腕部に。
「まだ動くか!?」
「目からだけじゃなかったのか!?」
「そうはさせないのでありますよ!」
 ビームが来る、その読みは当たっていた。
 美空が機槍「アテナ」のブースターを用いて一気に突撃、その左腕を串刺しにし‥‥
 なんと途中で無理矢理攻撃方向を下に向け、土偶の腕を地面に縫い付けた。
「ハニワは土偶には負けない!」
 右腕から放たれようとしていたビームもハニワ軍団総帥の手によって叩き潰される。
「ハニワこそ正義! ハニワこそパワーだ!」

「ファイナさん!」
「行きますっ!」
 今度こそアヤとファイナは通じ合った。
 倒れこんだ黒い土偶。ここで当てられないわけがない。
「この一撃で‥‥雪村! 切り裂けぇぇぇぇ!」
 頭から綺麗に真っ二つ。
 動けぬ土偶はその活動を停止した。


「ふ、この俺に土偶風情が勝とうというのが間違っているのだ。これでまた、ハニワ征服の野望が一歩進んだぜ」
「土偶なんか、敵ではないでありますよ。次は埴輪でも仏像でも連れて来いなのであります」
 実際に大したことがなかったとはいえ、ひどい言われようである。
 街にはさしたる被害もなく、作戦は成功。
 少々派手な戦闘ではあったが、それはもうしょうがない。
 結月の言った通り、建築業の方々に頑張って修復してもらおう。
 その結月は何やら考え込んでいるようだが。
「‥‥鳴かぬなら、砕けて散れよ、どど土偶」
 どど土偶ってナニ。

 なおハニワ軍団総帥の部屋には、砕けた土偶を背にポーズを決める総帥と、仲間の写真と‥‥
 ちゃっかり拾ってきた土偶の欠片が飾られることとなった。