タイトル:冷えた夜にマスター:三橋 優

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/11/07 14:50

●オープニング本文


 高い山の上の修道院。
 厳しい自然の中で日々の労働と鍛錬を欠かさない、古くからの修道士達が集う地。
 ある日、その険しい山が大きく震えた。
 何かとてつもなく重いものが落ちたような音と振動がして‥‥
 その翌日から、山を歩く人間が消え始めることになる。

 ラストホープのUPC本部内にて。
 初老のオペレーターから説明を聞く傭兵達。
「えー、ULTによる事前調査のための護衛、というのが今回の依頼ですが」
 もちろん倒せるものなら倒してしまってほしい。
 目撃情報によれば、直立して二足歩行するライオンだそうだ。
 外見からして間違いなくキメラ。
「身長2メートル強、大木が何本も倒されており、爪痕はまるでハイイログマのようだと」
 まだ修道院自体は被害を受けていないが、多分それは幸運なだけだろう。
 報告されている破壊痕が真実ならば、石壁さえ軽々と砕けるはずだ。
「調査のみでも可ということで報酬は少ないですが、倒して頂ければボーナスも出しますよ」
 そして、依頼を了承した者は現地に向かう。


 高速移動艇から降りて車に揺られ、はるかな山道を登り、到着したのは午後9時のことだった。
 さすがにこの標高では涼しい、いや、秋口の夜ともなればむしろ寒い。
 しかも間の悪いことに雨まで降ってきている。
 こんな天気では、下手に山を歩くこともできまい。

 その雨の中、18歳の少女、ダークファイター神崎奈々はこの依頼を受けたことを後悔していた。
「宗教上の理由なら仕方ないですけれど‥‥せめて事前に言っておいてほしかったですわ」
 ここは修道院正門脇の物置。
 広い部屋、小中学校の教室くらいの広さはある空間の真ん中にストーブがひとつ。
「寒い‥‥」
 そう、宗教上の理由とは女子禁制であること。
 迷い込んだ女性のためにこの物置を、生活できるように改造したのだというが‥‥
 この広さにストーブ1つは辛いものがある。
 防寒用品なんて、ピーコートくらいしか持ってきていない。
 毛布は貸してもらえたものの、冷え込むわ冷え込むわ。
「修道院と聞いて確認しなかったわたくしも悪いのですけどね‥‥トホホ‥‥」

●参加者一覧

菱美 雫(ga7479
20歳・♀・ER
番 朝(ga7743
14歳・♀・AA
夜十字・信人(ga8235
25歳・♂・GD
霧雨仙人(ga8696
99歳・♂・EP
セレスタ・レネンティア(gb1731
23歳・♀・AA
ルノア・アラバスター(gb5133
14歳・♀・JG
瀬上 結月(gb8413
18歳・♀・FC
リティシア(gb8630
16歳・♀・HD

●リプレイ本文

●正門の屋根の下

 油断はできない。
 傭兵達は周囲の状況を確認し、交代で見張りをしながら休むことにした。

「これだけの壁なら、壊されれば音と振動でわかるか」
「そうじゃの。見張るのはここだけで良かろうて」
 修道院を囲む石壁に沿って歩いていた夜十字・信人(ga8235)と霧雨仙人(ga8696)が帰ってきた。
 黒い軍用外套から雨を払い、煙草を取り出す信人。
「修道院な、宗教的な事情は俺も少しはある方だが‥‥煙草も吸えぬ場所はちと御免だ」
 不良神父である。
 その横では、老体の霧雨仙人に、瀬上 結月(gb8413)が心配して声をかけている。
「大丈夫? お爺ちゃん、寒くない‥‥?」
 見くびるつもりは無いが、なにしろ外見年齢百歳では心配するなという方が無理だろう。
「修道院に入れてもらった方が良かったのでは‥‥」
「はっは、なに、心配は無用じゃよ」
 雨中にコスケンコルヴァを置き、よく冷やす。
 贅沢な冷酒の味。体を温めるには最適の酒である。
 ここは修道院の入り口なのだが。
「辛気臭い小僧だらけの修道院の部屋と、沢山の若いおなごと同室‥‥迷うまでも無いのう」
「それには全面的に同意ですな」
 うんうんと頷く信人。
 結月の後頭部に大きな汗が一筋流れた。


●あたたかなひととき

「‥‥神崎さん、寒いのでしたらこれをどうぞ」
 寒がっている奈々に外套をかけ、セレスタ・レネンティア(gb1731)はストーブの上のヤカンを取る。
 湯がカップに注がれると、良い香りが部屋に広がった。
 菱美 雫(ga7479)と番 朝(ga7743)の持っていた、あったかコーヒーのドリップバッグ。
 心と体を温める一品である。
 皆のカップを持つ手からじんわりと温かさが伝わる。
「そ、そう言えば‥‥神崎さんと、最初から任務をご一緒するのは‥‥これが初めて、ですね‥‥?」
「確かに‥‥」
 身を寄せ合い、雫と奈々は二人して苦笑い。
 今まで奈々を手当てしたり救助したりと関わってきた雫だが、万全な状態を見るのは初めてか。
「しかし女子禁制とは‥‥宗教上の理由なら致し方ないですけれど‥‥」
 奈々の隣、雫とは逆側に座るセレスタ。
 外套を貸してみたら、なるほど確かに寒い。
「あ、すみません。わたくしはもう大丈夫ですわ」
 セレスタから借りた外套を返す奈々。
 雫と一緒にマフラーを巻いて、両脇から人のあたたかさをもらっている今、もう震えてはいない。

 物置入り口のドアが開いた。
 冷たい風が入ってくる。
「お〜さぶ〜実は私冷え性なのよ」
「うう、寒い、ですね」
 ちょっと道の様子を見てきたリティシア(gb8630)とルノア・アラバスター(gb5133)。
 2人で雨に濡れたダウンジャケットをはたく。
 ルノアは簡易鳴子のようなものを設置しようと思っていたのだが、範囲が広すぎて断念した。
 畑を含めた敷地全域を石壁が囲んでいるとは。
 しかし、さっき信人の言った通りむしろ安心と言えよう。
「あ、あの、お2人も‥‥コーンポタージュ、食べません‥‥か?」
「いい、ですね。私も、いいもの、持って、来たん、です」
 もう時刻は9時過ぎだが、これから交代で見張りをするのだし食事にしてもいいだろう。
 雫の誘いに応え、ルノアはとっておきのレーションを取り出す。
「寒い、時は、カレー、です」
 レッドカレー。
 冷え切った体に染み渡る大人の辛さ。
 体がぽかぽかしてくる。
 部屋と体が完全にあたたまるまでのつなぎに、これはありがたい。
 口から胃袋から、熱を皆の体に浸透させた。
「あれ? 朝さんは?」
 外を歩いていた時、目を離すと一瞬で居なくなるルノアの手を引いてくれていた朝の姿が見えない。


●雨の残り香

 彼女は大丈夫だ、と信人は言った。
 ‥‥少なくとも今は何を言っても無駄だろう、とも‥‥

 山林に住み、動物達と親友のように暮らしていた朝。
 その親友達も‥‥家族であった祖母も‥‥キメラに殺された。
 こんな雨の日だった。
 だから、眠れない。
「‥‥」
 朝の方も、信人の気配には気付いていた。何か言葉をかけようとして、やめた信人。
 それに感謝しつつ‥‥冷たい雨に打たれていた。


 そして‥‥雨が、上がった。
 土や草の匂いすら凍らせるような冷たい空気。
 耳が痛いほど静かな、冴え渡った空気。
 頭上の星のまたたきの音までも聞こえるような‥‥

 誰かが近付く気配を感じた次の瞬間、朝の視界は覆われていた。
「3時間だ。交代ですぜ、番長」
 信人の軽い声。
 被せられたのはエマージェンシーキット内のタオル。
 顔が濡れているのは雨のせいだけではない、ということを、他の誰にも悟らせず。
「‥‥俺も時々、雨に打たれたくなることがある」
 今度の言葉は‥‥静かで、優しかった。

 見張りに移った朝は‥‥
「ありがとな、信人くん」
 もう、普段の彼女に戻っていた。


●薄紫色の夜明け

 ついに夜の静寂を破る者は現れず。
「お早うございます、朝(あさ)も少し冷えますね」
 セレスタが扉を開く。
「寒‥‥」
 流れ込む冷気にルノアが起き、かたまって寝ていた結月とリティシアが、空いた隙間の寒さに震えた。

 吐く息が白い。
 出かける前にもう一度、それぞれあたたかい飲み物を一口ずつ飲む。
 薄紫に染まった山間の靄を眼下に、傭兵達は各班に分かれて捜索を開始した。
 美しい景色に思わず息が漏れる。
「こんなに、高い、所に、来た、のは、初めて、です」
「わあ‥‥!」
 ルノアとリティシアは3時間ずつ2回の睡眠しか取っていないはずだが、ずいぶん元気に見えた。
 完徹した朝(あした)も同じように。
「私達の、班は、こちらの、斜面、ですね」
 地図によればこちらは人里から遠ざかる方面。
 昨夜あれだけ静かだったのだから、キメラは既に遠くまで行っているという考えもある。
 かなり歩くことになるだろう。
「う〜重い〜」
 ‥‥この山道では、リンドヴルムを運ぶリティシアはつらそうだ。
 かと言ってルノアや朝は手伝えない。
 なぜなら、目を離すと一瞬で居なくなるルノアの手を朝が引いているからである。


「雨あがりでは、鼻は効かんな」
 湿った土と草の、いい匂いと言えばいい匂いなのだが‥‥目標を探すには向いていない。
 加えて高原地帯の寒い風が吹き付ける。
 信人は外套の襟を直した。
「この山で無闇に探すのはしんどいのう」
 霧雨仙人は既に覚醒し、探査の眼を用いているが‥‥
「ここは逆にあちらから出てきてくれる様にした方がいいかもしれんの」
「なるほど」
 キメラとは、バグアの生体兵器。人間を殺傷するためのもの。
 であれば、見つかれば向こうから襲いかかってきてくれる。
「こちらの姿を見て逃げ出すような相手ではない様じゃしな。奇襲をかけようと潜んでいるなら‥‥」
 霧雨仙人が自身の目を指し示し。
「ワシの『探査の眼』で見破れるしのう」
「では夜十字さん、手始めに銃声をお願いします」
「了解」
 無線で各班に連絡。空砲を撃つことを告げ、派手に山に向かって1発。麓に向かって1発。
 結月は結月で自分のメタルガントレットを時たま打ち鳴らしながら歩く。


「あれだけの音を立てていれば、すぐ見つかりそうですわ」
「そうですね‥‥あ、奈々さん‥‥そこの砂利の斜面は崩れそうです、こ、こっちに‥‥」
 言った途端に足を滑らせる奈々を、素早く支える雫。
「無線はクリアーです。付近にヘルメットワームもいないようですね」
 セレスタは無線機のアンテナを収納し、胸ポケットに入れた。
 他の班と即座に連絡が取れるようスイッチは入れたままだが、位置を知らせるなら照明弾の方がいい。
 どちらでもすぐ使えるよう、油断なく歩く。
「しかし」
 ふとセレスタの頭に浮かんだ疑問。
「こんな山奥にキメラを放す意味があるのでしょうか‥‥?」


●黄金の暴力

 歩き始めてから約1時間。
 いまや昨日の雨が嘘のようにカラッと晴れ、太陽はそれなりにあたたかな日差しを注いでくれていた。
 針葉樹の茂る森の中、木漏れ日の下を歩く傭兵達。
「あ‥‥木が折れてる」
 朝に言われ皆で近付いてみると‥‥
「うわ〜、ひどいわね」
 折れた大木の上に飛び乗ったリティシアはその惨状を見た。
 とにかく滅茶苦茶に暴れました! と言わんばかりの、ミステリーサークルまがいの円形広場。
 直径5メートルあまりの範囲の木々が薙ぎ倒されているのだ。
 傷ついた熊でもこんな事はしまい。
 いやそもそも、こんな事は普通の動物にできることではない。
「足跡、は‥‥昨日の、雨の、中、あっちに、行ったの、だと」
 地面には凶悪な爪のついた大型獣のような足跡。
 しかしここまで綺麗に二足歩行をする猛獣などいるものか。
 ルノアの見たところ、その足跡は‥‥
 そう、ちょうどルノア達を挟んで、霧雨仙人達が音を立てているのと逆の方向に向かっており‥‥
 もし足跡の主が、音に引き付けられて戻って来るとするならば‥‥

「‥‥くる」
 朝の聴覚が、風のもたらす葉の擦れ合う音の中から異常を察知した。
 枝を踏み折りながら近付く大きな呼吸音。
 木陰からそれが姿を見せたと思った瞬間‥‥
「!」
 瞬時に覚醒した朝が、包帯の巻かれた大剣でその獣の爪を受け止めていた。
 伸びた緑髪がばさりと重力に従って下りる。
「こちらB班、南側の森林区域で交戦開始しました。南側を視認できるようであれば照明弾を打ち上げます」
 ルノアもまた覚醒とともに急激な肉体の成長を見せる。
 無線連絡を取る冷静なさまは、先程までと同一人物とは思えない。
「よ〜く狙ってはっしゃ〜」
 ふわふわと光る金色の粒子の中、リンドヴルムに身を包んだリティシアがS−01で銃撃を見舞う。
 その対象は‥‥
 前情報通り、体調2メートル強の獅子。直立していると、本当に大きく見える。

「こちらA班‥‥わかった。よし、ではすぐ向かう」

「C班、了解。既に南側は見えているので合図を頼みます」

 丘陵に鮮やかな色のついた照明が打ち上がる。
「C班は山の上から‥‥A班の方が近いです、後方に誘導しながら戦いましょう」
「りょ〜かい」
 威嚇して突進してきたキメラから距離を取るリティシア。銃弾は注意を引けるくらい痛かったようだ。
 また、沈黙したままの朝もルノアの言葉に従い、大剣を構えたままリティシアとともに退がってくる。
「追加情報です、キメラの動作は緩慢。充分戦えるレベルと判断し、合流までにダメージを与えていきます」

 無線の向こうから、何か激しく体を動かしているような詰まった声で信人が言った。
「それは朗報だ」
 なぜなら‥‥
「俺達の目の前にも同じ奴が現れたのでな」


●狂える獣

 キメラは2匹。
 既に各班とも互いの位置は見えているし、それぞれ森は抜け、キメラをなだらかな斜面に誘い出した。

 A班でキメラを発見したのはむろん霧雨仙人だが、隠れていたというほどの事でもない。
 たまたま岩陰から出てきたのだ。
「くっ」
 大振りながら、出鱈目なせいで避けづらいキメラの攻撃。
 腕を滅茶苦茶に振り回すというただそれだけなのがかえって読みづらい。
 信人は後方に跳んでダメージを抑えつつ、キメラに苦無を投げつける。
 狙いあやまたずキメラの左膝に突き刺さる苦無。
「まだまだ行くぞ」
 信人は新たな苦無を抜き、何度も間接狙いの攻撃を繰り返した。
「ふむ、二足歩行のライオン、か‥‥」
 実際にキメラを見るのは初めての結月だが、恐慌もなく冷静に刀『菫』を構える。
 次の瞬間、結月はキメラの側面まで跳んでいた。
「『迅雷』‥‥『円閃』!」
 刀が弧を描き、キメラの足を切り裂く。深くはないがけして浅くもない。
 グラリとキメラの体が揺らぐも、まだ倒れぬ。
「つっ!?」
 反撃の爪で多少、腕に傷を負ったが、まだ大丈夫。
 結月は攻撃を受ける瞬間に迅雷を発動しようとしたが‥‥
(「エミタAIの事はよくわからないけれど‥‥これは、とっさの場合に使えるスキルではなさそうだな‥‥」)
 気を取り直して、またもキメラの側面を走り抜け、斬撃を見舞う。

 と、キメラが足を踏み出した瞬間、信人が苦無を突き刺した左膝部分でフォースフィールドの光が発現した。
「むう、刺さることは刺さるが、ダメージにはきちんと発動しやがるか」
 そしていまや苦無にはSESの力もないため、もうどこもかしこも抜けかけている。
 2、3回かしいだら抜けてしまうだろう。
 しかし。
「爺様、瀬上君、2、3回あれば充分だな?」
「うむ」
「え? はい」
 ドン! と結月が逆手に隠し持っていた散弾小銃ブラッディローズが火を吹く。
 何をするかはわからないけれど、とりあえず注意を引くことにしたのだ。
 さらに逆サイドにいる霧雨仙人の援護射撃を受け、キメラの死角から肩に飛び乗る信人。
「ジャックポッドッ。なんつって」
 対ワーム用強化拳銃フォルトゥナ・マヨールーの零距離射撃が。
 振り向いたキメラの眼球を貫いた。


 猛烈な勢いで朝の大剣がうなりを上げる。その一撃を受け止めるキメラの爪と指の強度も相当なものだが。
 反動で回転し、帰ってくる追撃の打撃がキメラのみぞおちをとらえた。
 見た目通り獣と同じような体内構造だったらしく、肺から空気を搾り出して固まるキメラ。
 ‥‥その数秒が命取り。
 銃型の超機械ブラックホールを構えたルノアが左足を狙い‥‥
 先程の銃撃では足りないと見たリティシアは、竜の爪を発動させ右足を狙う。
 そこで、雫達のC班が追いついてきた。
「援護しますっ」
 雫の超機械から練成弱体の光が飛ぶ。
「距離50メートル、問題なし」
 セレスタは特製の弾丸を込めたライフルを構え、そのライフルのSESの限界距離から‥‥
 引き金を引いた。
「‥‥この弾丸は一味違います」
 その言葉通り。
 山に響く銃声とともにキメラの頭部から血がしぶく。
 そしてルノアとリティシアが、それぞれキメラの両足を撃ち、移動力を奪う。
 セレスタの弾丸により脳を一部削られても、なお動くキメラ。
 その爪の最後のあがきを腕で受け止めつつ‥‥
 朝の全力の紅蓮衝撃を乗せた豪破斬撃が、キメラの頭蓋を完全に叩き割った。


「さて、これはどうしたもんでしょ」
 その後、傷ついた体を雫に診てもらい、出血していた者は練成治療をかけてもらい‥‥
 また班ごとに分かれてキメラ探索を続けていた傭兵達だったが。
 見つけたのは謎のクレーター。
「キメラを運ぶワームのものと考えるのが自然なんじゃろうが‥‥」
「この、深さは、まるで‥‥墜落、したかの、ような」
 確かに轟音が聞こえた次の日から人が消え‥‥おそらくは食べられてしまったのだろう‥‥だが。
 轟音の原因は墜落?
 だとしたら‥‥もしかしたらバグアがワームを回収しに来ていた可能性もある。
「‥‥鉢合わせしなくて良かった」
 結月がひとつ体を震わせる。
「未来科学研究所に報告だけしておきましょう」
 他のキメラも発見されないことだし、もう日も暮れてきた。
 セレスタの言葉で、今回の依頼はひとまず終了となった。