タイトル:罠屋敷へようこそマスター:三橋 優

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/11/24 15:07

●オープニング本文


 とある屋敷が、キメラの棲み処になっている。
 その通報を受けてULTが調査を行った結果、確かにキメラは存在した。
 根城にしている屋敷は、とある日本人が建てたという和風建築である。
 対象は『ユウレイ』型キメラ。
 白装束を纏い両手を前にぶらさげ、腫れ上がった顔で「ウラメシヤァ」と鳴くという。
 浮いて移動しており足はなく、下半身は尻尾のように切れている‥‥
 ‥‥色々突っ込みたい所はあるが、バグアが妙なキメラを作るのは別に珍しくない。
 傭兵達は綿密に作戦を練り、屋敷に突入した。

 いない。
 はて、この中は既にキメラが留守の間に調べておいたはずだ。
 裏口はふさいである。
 飛ばれると厄介なので、逃がさないようこの屋敷の中で片付ける作戦だったが。
 まさか本物の幽霊でもあるまいし壁を抜けるなんて事は‥‥


 傭兵達はその場所を見つけて驚いた。
 台所の破れた板から覗くのは、地下へと続く隠し階段。
 夜のうちは見えなかったが、太陽の光がさしこんでくる今ならよく見える。
 さてどうするか。
 安全策を取るならULTに再調査してもらう手もある。
 しかしその調査依頼もどうせ能力者に回ってくるのだろう。
 それなら連絡だけ入れて、報酬を少し上乗せしてもらう方がよい。

 連絡を終え、心を決めた傭兵達は暗い地下へと足を踏み入れた。
 人工的に作られた地下。窒息する恐れは無いだろう。
 ULT支部から借りた懐中電灯があるので明かりの心配もいらない。
 少しドキドキしながら歩を進める傭兵達。


 ‥‥やっぱ再調査してもらった方が良かったかも‥‥
 傭兵達がそんな事を考え始めるまで、さして時間はかからなかった。


 降りる鉄格子。両脇から迫る石壁。
 分断されるパーティー。
 もちろん能力者の力ならば壊す事もできるだろうが、息つく暇もなく襲い掛かる罠。

 通路いっぱいに満たされる大量の水。
 水に流されて落ちていった先は、天然の鍾乳洞らしき壁。
 しかし天然ではなく、ここにも人の手は入っていた。
 映画のワンシーンのように転がってくる大岩。
 ご丁寧に通路は見事に中央がくぼんでおり、通路脇に寝転んでも潰されるという徹底ぶり。
 脇道に逃げ込んで一息つけば、道の向こうからヒュンヒュンと飛んでくる矢、矢、矢。

 分断されて屋敷に残った方も悲惨である。
 床板を踏めばガクッと落ち窪み、床板はシーソー式に後ろを歩いていた人間のアゴに直撃。
 よろけて壁に手をつけば、お決まりの回転扉。もちろん一方通行。
 ブンブンと派手に揺れる処刑振り子? から身をかわしつつ、扉から中に飛び込むと‥‥
 物々しく揺れる部屋、閉ざされた扉。
 あまりに殺風景で何も置かれていない部屋に不安を覚え、ふと天井を見る。
 やっぱりかといった感じで、ビッシリと槍の生えた天井が降りてきて。


 傭兵達は、果たしてこの屋敷から無事に生還できるのであろうか?

●参加者一覧

鳴神 伊織(ga0421
22歳・♀・AA
ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416
20歳・♂・FT
ウォンサマー淳平(ga4736
23歳・♂・BM
アンジェリナ・ルヴァン(ga6940
20歳・♀・AA
フェリア(ga9011
10歳・♀・AA
ヴァン・ソード(gb2542
22歳・♂・DF
ルドルフ・ハウゼン(gb2885
18歳・♂・DG
ホーリィ・ベル(gb2933
16歳・♀・ST

●リプレイ本文

「ハアッ!」
 気合一閃、氷雨を使って十数本の槍を薙ぎ払い、ドアの破壊にとりかかる鳴神 伊織(ga0421)。
「幽霊キメラ退治だった気がするのですが‥‥屋敷の方が厄介ですね」
 もう罠など片っ端から壊していっていいかも知れない。
 ドアの鍵を叩き切り、開けると‥‥
 刃のついた振り子が揺れているが、落ち着いて対処すればどうという事は無い。
「ふっ!」
 振り子を繋いでいる鎖を断ち切ってゆく。
「あ、鳴神さん」
 その時、リンドヴルムを纏ったルドルフ・ハウゼン(gb2885)が回転扉の向こうから姿を見せた。
「その声は‥‥」
 次の瞬間。
 床が、抜けた。
 どうも老朽化していたらしい。

「〜〜〜〜!」
 声を上げたいが、口を開けるわけにはいかない。
 伊織が落ちたのは、部屋を埋め尽くすように大量の蚊が生息している、湿った水たまりの小部屋だった。
 扉は鋼鉄製のようだが‥‥これを壊すしかなさそうだ。



「鳴神さーん! 大丈夫ですかぁー!」
 声は返って来ない。まあ能力者だし大丈夫か?
「しかし、こう来るとは、からくりニンジャ屋敷ということかいっ」
 今入って来た回転扉がもはや開かない事を悟ると、ルドルフはメモにマッピングを始めた。
「畳の部屋‥‥」
 入ったのは、少し空気がこもってはいるが、普通の畳部屋だ。
 そっとすり足で、壁を伝って移動するルドルフ。
 リンドヴルムを装着している超近代的なニンジャ・スタイルだ。
 バイク形態で持ち歩いていては、いつ罠にかかって手放してしまうかわかったものではないので装着している。
「襖には罠はない‥‥かな」
 隣は床の間。
 誰もいないのに、空気はよどんでいるのに。生花が活けてある。
 なんだか空恐ろしい。
「ん?」
 ふと目に留まったのは棚。
 その茶器のうちのひとつが妙に気になり、手を触れると‥‥

 カコッ。

 茶瓶を乗せてあった部分が浮いた。
 掛け軸の向こう、どこか遠い所から、仲間達の悲鳴が聞こえた気がした。



 ズドム!
「へぶらっ!?」
 階段の上から突進してくる、吊られた丸太。
 顔面を強打して階段の下まで落っこちるヴァン・ソード(gb2542)。
「ごふっ!?」
 背中からしたたかに叩き付けられた。
 さらに階段下には、さっき華麗に避けた缶の中身――油、が飛散している。
 ツーッと滑って壁に頭をゴン。
「罠屋敷‥‥うん、楽しそう♪」
「楽しくないっ!」
 たまたま分断された時に一緒にいたホーリィ・ベル(gb2933)が何の緊張もなく笑う。
 ヴァンはめげずに立ち上がった。
「やー、根性ですね」
「どこぞの‥‥はぁ‥‥泥棒と‥‥違って‥‥体は丈夫だからな‥‥」
 言って階段を上がってゆく。
 と、ホーリィは唐突に、壁にスイッチのようなものを見つけた。
「ぽちっとな」
 ガタン。
「どぉあああ!?」
 階段が、ただの坂になった。
 同時にホーリィのすぐ横の床に穴があいた。
 そして階段の上から大量の水が鉄砲水のように流れてくる!
「へぅっ!?」
 流されてきたヴァンがホーリィにぶつかる。
「あああぁぁぁ‥‥」
 2人でまとめて階下にご招待。
 いってらっしゃい。



 かたや地下では、ウォンサマー淳平(ga4736)が飛ぶ矢のトラップを調子よく回避して通路の端に辿り着いたところ。
 さすがはビーストマン。
「こんな物騒な建物を何のために建てたのか分からないけれど、面白い。全部クリアして見せようじゃないか」
 いつの間にか目的が変わっている。
「さあて次は何が出てくるんだ?」
 油断しまくった淳平の後ろから、一歩遅れて発動する最後のトラップ。

 スコンっ。

 自信と好奇心たっぷりに、颯爽と通路を歩いてゆく淳平。
 しかしその肩の後ろ側には、細い矢が突き立っていた。
「痛い‥‥」
 いや、抜け。



 さらに下、ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416)が暗い洞窟の中を歩いてゆく。
(「心理的に追い詰められるジャパニーズ・ホラーは苦手だ。せめてもの救いは、敵がキメラと分かっていることだが‥‥」)
 長剣とエネルギーガンの柄に白く五芒星を描き呪文を唱えるなど、念が入っている。
 筋金入りのお化け嫌いなのだろうか。
 と、通路の突き当たりからT字路のように階段が伸びているのが見えた。
 片方は下へ、片方は上へ。
 今までの岩肌そのままの床ではなく金属の板で作られた階段。
(「洞窟には転がる岩や水流のトラップがある‥‥キメラは屋敷の地下部分にいる可能性の方が高いか」)
 そして長い階段を上り始めたホアキン。
 が。
 上り階段の最後の1段を踏んだところで、階段が滑り台になった。
 さっきの下り階段にそのまま落とされ、そこもまた滑り台。
 最後はバシャン、と深い水の中。
「くっ‥‥!」
 不吉な予感。
 水の中にうっすらと見える、白っぽい動くもの‥‥
 それが水面に姿を現した。
 ワニ。
「なんでこんな所にワニが住んでいるんだ!!」



 真面目に屋敷地下を探索しているフェリア(ga9011)には。
「にゃー‥‥誰かいますかー? ‥‥だーれも居ませんね? なのです」
 歩き出そうと足を踏み出すと、床の一部がカコッと凹む。
 それがスイッチになっていたのであろう、廊下の両側から鋼鉄のヤリが突き出した!
「‥‥‥‥」
 ヤリが元に戻る。
「にゃあ、あと1cm高ければ危なかったのです‥‥」
 身長が低すぎて意味が無かった。
「‥‥うぅ、微妙な悲しみが‥‥」
 しかし本人に精神的なダメージを与えることには成功したようだ。

 ヒュンヒュンと、首をはねるべく回転する刃の風車も。
 天井から顔面を狙って振り子のように飛来する丸太も。
 フェリアには何の意味もなさない。
「複雑な気分なのです‥‥」
 3mある刀、国士無双にはガンガン当たるが、フェリア自身にはまったく害なし。
「しかし広い屋敷なのです。3mあっても天井につかないとは。‥‥欲しいなぁ‥‥」



 蛍火に持ち替えて床を思いっきり叩いてみると、床に開いた無数の穴から長い棘が突き出した。
「ふッ!」
 アンジェリナ(ga6940)は夏落と氷雨の二刀で、棘をすべて断ち折ってゆく。
「ちっ、この様な小細工ばかり‥‥」
 階段を下りて来たが、十字路には落とし穴、行き止まりの通路には鉄格子。
 あるものは回避しあるものは粉砕して、くぐり抜けてきたトラップの数は両手の指で数え切れない。
「む」
 次は。普通の行き止まりの石壁に見えるが‥‥アンジェリナの視覚は違和感をとらえていた。
「‥‥黒色火薬だ」
 既にしけっていて、そうそう爆発するような事は無いと思われる。
 その火薬が、壁一面に敷き詰められ固められているのだ。
 さらに、脇の石壁には細い溝が。
「隠し扉か。こちらに扉を開け放った時になんらかの仕掛けで着火される‥‥?」
 向こう側から扉を開けた人間は、爆発により石の扉に押し返されて向こうにふっとぶか、または扉から身を乗り出していれば石壁と扉に挟まれて重傷を負う、と。

 そして。

 ガションと石扉から音がして、開いた。
「なに!?」
「あれっ?」
 ドゴン!!
 今まさにアンジェリナの予想した通り、小爆発を起こす壁、押し戻される石扉。
 そして壁の向こうからは、落ちてゆくルドルフの声。
 今見たのがリンドヴルムだとアンジェリナが理解した頃には、彼は地面に激突していた。
「けほっ、けほっ、けほっ‥‥」
 全身ススだらけ。
 おまけに今の爆破音で、耳がキーンとして聞こえない。
「く‥‥どこの誰だこんな厄介なカラクリ屋敷を作ったのは‥‥!」
 やり場のない怒りを抱え、アンジェリナは目の前の隠し扉を思いっきり蹴る。
 ルドルフが鍵を開けたのだろう扉は、ちょっと刀を差し込めば簡単に開いた。
 見ると、そこは狭い空間。
 足場はあるが、2m先はすぐ穴だ。
 その穴に上から縄が垂れ下がっている‥‥そう、ルドルフは掛け軸の裏からここに降りて来たのだが‥‥
「とりあえず‥‥下りて助けに行くべきか」



 鋼鉄の扉の鍵部分を粉砕して、蚊の部屋から出た伊織。
 扉を開けるまでには10秒もかかっていないが、扉を閉め、体中にまとわりつく蚊を叩いていたら時間が経ってしまった。
 目の前には、何もなさそうに見える長い廊下。
「‥‥油断はしません」
 コツコツと床を叩き、壁をつぶさに観察し、天井にも気を配り、少しずつ進む。
 しかし。
「え゛‥‥っ」
 何の変哲も無い床板、ちゃんと叩きながら歩いていたにもかかわらず、伊織は跳ね上がった床板に激突し、転倒。
 転んだ先にもさらに同じバネ仕掛けの床が、さらにその先にも、と、どんどん後ろに転がってゆく伊織。
 そして彼女はまた蚊の部屋に逆戻りした。



 ワニ池から脱出したホアキンは、今度こそ慎重に階段を叩きながら上ってゆく。
 上りきった場所は、天井が木製だった。
「という事は、ここは屋敷部分の最下層という事か」
 さてと。
 とりあえず屋敷に入れそうな所というと石壁にいくつかある鋼鉄の扉を開けるしかなさそうだが。
 ガチャリ‥‥
 ギシッと錆び付いた音をたて、扉を押し開けるホアキン。
 物置か何かだろうか、狭い部屋だ。
 向こうにも扉がある。
 と、一歩部屋の中央に踏み出したその足元がカチリと凹んだ。
「うっ!?」
 天井が一気に開き、ドロドロした液体が落ちてくる。
 頭から液体をかぶってしまったと同時に、さらに頭上で音がした。

「きゃ〜〜〜」
「ぐはっ!?」
 まず落ちてきたのは伊織。さっきのバネ仕掛けの床に転がされたせいでまだ目がぐるぐるしている。
「いたたたた‥‥」
 そして、彼女が落ちてきたという事は。
 羽音をさせて飛んでくる蚊、蚊、蚊。
「この匂い‥‥何かの蜜か!?」
 ここでホアキンは自分のかぶった液体の正体に思い当たる。
 伊織とともに向こうのドアに逃げるか。
「ユウレイを退治しに来て、俺は何と戦ってるんだ‥‥!」



「うひょ〜〜〜!」
 淳平は‥‥
 思いっきり楽しそうな声をあげて、トロッコに乗っていた。
 トロッコと言っても本格的なものではない。
 ちょっと揺すれば壊れてしまいそうな、危険な乗り物。
「有名配管工みたいに、溶岩に落とされるとかってないよな‥‥」
 溶岩は無いが‥‥
「あちゃちゃちゃ!」
 油が撒かれて火をつけられる仕掛けは有った。
 ガタンガタンと何回もジャンプさせられるし、後ろからはそれなりの大きさの鉄球が迫ってくるし、よくもまあ壊れないものだ。
「って‥‥ええ!?」
 行き止まりである。
 見るからに硬そうな石の壁。
 もちろんこのトロッコにブレーキなんてついていない。
「ちょっ、ストップ! ストーップ!」



「ふんふん、ふふーん♪」
 いかにも何かがありそうな古めかしい部屋に辿り着いた2人。
 思いっきり無用心に部屋を探索するホーリィ。
「やめといた方が‥‥」
 ヴァンは気になるのか、ぱたんとタンスの引き出しを閉じる。
「はぶっ!?」
 タンスがよっぽど密閉性のある品なのか、ホーリィの目の前の引き出しが開いた。
 おでこをぶつけるホーリィ。
 沈黙。
「‥‥えい」
 バタンっ。
 ゴンッ。
「いて」
 ホーリィが閉じれば、お約束のようにヴァンの前の引き出しが飛び出る。
「‥‥」
 バンッ!
 スカンっ。
 バシンッ!
 ゴンっ。
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
 ホーリィとヴァン、2人がかりでタンスのほとんどの引き出しをカバーし‥‥
 タイミングを合わせて、引き出しを閉める!

 ドシンッ!
 ゆらゆらと部屋が揺れる。
 ふぅ‥‥と2人が一息ついていると。
「‥‥あ?」
 壁が、倒れてきた。
 2人の頭に派手な音を立ててぶつかり、そのままメリメリと壊れてゆく。どこぞの大道具のように。


 ガンッ!
「いてっ」


 ゴンッ!
「あたっ」


 ガィン!
「へみ゛っ!?」


 同時に屋敷内のあちこちにタライが落ちた。
 なんでだ。
「この屋敷作った人‥‥わかってるねっ!」
「何を!?」



 頭上から落ちてきたタライは、持っていた国士無双で真っ二つになっている。
(「まだ自分から何もしてないのです‥‥」)
 フェリアは少々アヤシイ通路を発見し、どうも建物地下の中心部であろう場所に来ていたが。
「?」
 ばったり。
「にゃああ!?」
 ユウレイキメラだ。
 まさか1人で出くわすとは思っていなかった。
 しかし逃げるのではなく、フェリアは立ち向かった!
「とりゃー、悪霊退散悪霊退散!」
 ‥‥まるで幽霊を怖がる少女がごとく!



 そして屋敷の掛け軸のある床の間まで上ってきた2人、ルドルフとアンジェリナ。
「くっ! ライジングフロアか!」
 上がる床。
 天井に押し潰される前に飛びのく。
 飛びのいたところに上から降ってくる何か。
「もごっ!?」
 ルドルフの視界が真っ暗になった。
「今度はカビンか!」
 花瓶をわざわざ片仮名にする意味は?
 そして迫ってくる壁、飛来する矢。
「プッシュウォールにスリットアロー! 次はなんだ!」

 ガィーン。

 タライである。
「‥‥‥‥」
 ぷつん、と何かが切れた音を、ルドルフは確かに聞いた。



 ホアキンと伊織は都合よく落ちてきたタライを振り回し、蚊の群れを退治する事に成功。
 一息ついたところで、表――地下洞窟へ続く方の道――から大爆発の轟音が聞こえた。
「なんだ?」
 扉を開けてみると。
 もうもうと上がる土煙、破砕した木の破片。
「げっほ、げほ‥‥」
 もちろん淳平である。
 あの行き止まりは罠にかかった者を地面ごと階上へ跳ね上げるという乱暴なエレベーターだった。
 そして、ワラと泥で作られた床――もちろん上から乗れば落とし穴になる――を突き抜けて、淳平はここに着地したのである。
「お互いずいぶん汚れましたね‥‥」
「一旦、地上に出よう。無線機も使いたい」



「おい、押すなよ? 良いか? 絶対押すなよ!?」
 無論、ヴァンのそんな『お約束』を無視できるホーリィではない。
「えい。」
 とてもイイ笑顔で、大きく『危険』と書かれたスイッチを押す。



 そして、屋敷の中央部が吹き飛んだ。
 もっとも地下にいたホアキンと伊織と淳平も。
 次いでホーリィとヴァン、その上の階にいたルドルフとアンジェリナ。
 キメラと戦っていたフェリアまでも‥‥

「うぐ」
「ぶぎゅ」
「グハァ」
 息もたえだえになって脱出してくるメンバー達。
 爆発で中央が崩れた事で、迷うことなく上がってこられたのだ。
 肝心のキメラは、というと。
「なんか、刺さってたのです」
 爆発して落っこちた衝撃で、たまたまフェリアがSESに力を流し込んでいた国士無双に刺さったらしい。
 うらめしやの一言も言えずに倒されるとは無念すぎる。


「しかし‥‥ワニや蚊など生き物を飼うにはエサも必要」
「花も活けてあったし」
「蜂蜜も乾いていなかった」
「罠だって、一度きりしか発動しないものが多すぎる」
 この屋敷を利用した黒幕がいる。
 あれだけ暴れたのだ、もう逃げているだろうが‥‥
 またトラップで勝負してくるかも知れない。
 十中八九はバグア派だろうが‥‥
「やー、楽しかったね〜」
 次があっても願わくば『楽しい』で終わってくれる罠でありますように。