タイトル:【JV】夜の森の悪夢マスター:三嶋 聡一郎

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/09/09 01:19

●オープニング本文


 その一週間は夏休みの楽しい思い出になるはずだった。

 夏休みに入る前から計画していた家族そろっての山へのバカンス、ビジネスマンの父親と専業主婦の母親、やんちゃ盛りの息子に小学校に上がったばかりの娘、能力者を輩出したわけでもバグアにさらわれた子供がいるわけでもない平凡なだが幸せな家庭だった。
 父親が会社の休みを取ってからの一週間、昼間には川で遊び、夜にはコテージの庭でバーベキューをして、夜にはランプの明かりの下で子供達が母親の語る童話を聞きながら眠りにつく。
 そんな、平和なひと時、それが明日も続くと思っていた。

 それは山に来て数日後の夜の事だった。最初は単なる気のせいだと思った。その音はだんだんと強く激しく扉を打ち鳴らした。

 ドンドン!ドンドン!!

 父親が誰だと訪ねても返事はなく、ただただ、強くドアを叩く音だけがコテージの中に響き渡る。
 闇に包まれた山林のコテージの外で強い力でドアを叩き続ける何かというのは酷く不気味に感じられ子供達も今日は寝付けないでいた。
 しばらく待っていると急に音が鳴り止む。
 そっと、ドアに父親が近付いても、何もなかった。得体の知れない何かは去ったのかもしれない。
 それを確認するために父親がカギを開けてゆっくりとドアを開けた。
 正面には暗闇に包まれ何も見えない森が広がっている。ゆっくりと周囲を見回しても何も見えない。
「ふぅ」
 そう、きっと、風か何かだったのだろうと父親がため息をついた瞬間だった。
 父親の頭上にさす影、その影の主を見上げてみればそこに立っていたのは目を見張るような巨体だった。
 二メートルを軽く越える身長に筋骨隆々の肉付き、来ている服は袖や裾がボロボロで埃まみれだった。だが、何よりも異常なのが、顔を覆うホッケーマスクだった。
 そして、マスクからのぞく瞳は無機質な狂気をたたえているように見えた。そして、振り上げられている手に持っているのは大振りの鉈だった。
 それを見た瞬間、
「―――――――――――――!!」
 父親が何かを叫んだ。本人にも何を言いたかったのかは分らなかったと思うような絶叫。
 だが、その絶叫も鉈の一振りの前に途切れた。
「―――――――――――――!!」
 その父親の姿をみて母親も何かを喚き立てるが、その傍らで近くの窓から子供達を逃がした。
 芝生の上に投げ出された子供達が見たのは巨漢が母親にも大鉈を振り下ろす瞬間だった。
 それを見た娘は呆然とし、息子の方は泣き喚きながら森へと娘の手を引き逃げ出したのだった。

 子供達が逃げるのを見送る巨漢。マスクに覆われた顔は見るものに何を考えているのか教える事はないだろう。
 やがて、のっそりとのっそりとコテージを後にする。まだ生きている獲物を求めて。

 その事態は別の形で治安機関に知られる事となった。
 バカンスに来ていた客がキメラを発見し警察に連絡、それが、ULTに伝わり、救助活動が行なわれ民間人の避難と救助が行なわれている時、そのコテージも発見された。
 発見した救助隊員が死亡した夫婦のほかに人がいた痕跡を発見、キメラを退治すると同時に行方不明の人間の救助が傭兵達に依頼されたのだった。

●参加者一覧

ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
木場・純平(ga3277
36歳・♂・PN
旭(ga6764
26歳・♂・AA
優(ga8480
23歳・♀・DF
絶斗(ga9337
25歳・♂・GP
美環 響(gb2863
16歳・♂・ST
夜光 魅鞘(gb5117
16歳・♀・FC
美環 玲(gb5471
16歳・♀・EP

●リプレイ本文

●惨劇
 森を切り開いた場所に静かに建っている木造のコテージ、優雅な夏の一時を演出してくれるその場所は部屋中を血で汚していた。
「‥‥酷いな。」
 むせ返りそうな血の臭いに顔をしかめながら夜光 魅鞘(gb5117)がつぶやく。
「ふむ、この様子では多分、一撃だね〜。凶器は‥‥切れ味の鈍い刃物か」
 現場にあった死体の検分をしていたドクター・ウェスト(ga0241)がこれ以上は調べても無意味と判断した。
「何か分ったか?」
「ふむ、とてつもない筋力の持ち主、というのが精々だね〜」
 そうか、と言って魅鞘もウェストも黙る。風に吹かれて揺れる木葉の音がやけに大きく聞えた。
「ダメだな。建物の付近には誰も居ない」
「報告通り、森に行ってしまったのだろう」
 いつの間にか二人と同じく、今回の事件で緊急招集された絶斗(ga9337)と木場・純平(ga3277)がコテージの入口に立っていた。
「オレ達が間に合っていれば‥‥」
「あんたが気に病んでも仕方ない」
 目の前の夫婦の死に責任を感じる魅鞘に絶斗が思考を切り替えるようにうながす。
 ヨーロッパはかなり安全な地域とはいえ、少数での浸透戦術はどうしても防ぎきれない。それが、現状だ。
 四人の傭兵達は頷き合うとキメラと子供の行方を捜すために夜の森へと消えていった。
 まるで、夜の果てにも思える闇に包まれた森へと。

●魔物の森
「はい‥‥了解です。こちらも、キメラの駆除しつつ捜索に当ります。ふぅ‥‥」
「その様子だとコテージの方には誰もいなかったのですね」
 コテージを探索していたチームからの連絡を受けていた優(ga8480)の落胆した様子を見て美環 玲(gb5471)も事態を察する。
「数の分らないキメラに加えて、子供の捜索ですか時間との勝負になりそうですね」
 そう言うのは玲とそっくりな外見の美環 響(gb2863)だった。響の言う通り、不透明な現状では時間が経つほど事態は悪化していくもので絶対に好転はしない。
「では、予定通り僕達は橋の向こう側を探します。こちらの方はお任せします」
 響とペアを組む旭(ga6764)が探索する地域の確認をする。
「ええ、あなた達の方も気をつけて」
「はい。それでは、玲さん、優さん。また、のちほど」
「それでは、行ってきます」
 そう言うと明かりを持った二人はつり橋を渡って川を挟んだ森へと消えていった。
「私達も行こう。子供ではキメラに見つかればひとたまりもない」
「ええ、参りましょう」
 そうして、残った二人も森の奥へと消えていった。
「今回の占いの結果は、過去に【13】の死、現在に【11】の力、未来に【16】の塔‥‥あまり良いモノではありませんね。何事もなければいいのですけど」
 まるで玲の不安を増長させるかのように闇に満ちた森の木々が不気味にざわめくだけだった。

 それは不意の事だった。声を張り上げながら、子供達を探していた木場と絶斗へ向かって暗がりから何かが飛び出してきた。
「何?」
 木場を狙った一撃目は絶斗が割って入れたが、放たれた二撃目が木場の肩を掠めた。
「キメラか?」
 子供の探索に集中して敵の気配を取り損ねていたらしい。
(いや、この森の中では無理もない事か)
 茂みの間を走り抜けて攻撃を仕掛けてくるキメラに木場がカウンター気味に合わせた攻撃を打ち込む。
「ギィッ!」
「もらった!」
 不快な悲鳴を上げながら動きを止めた所に絶斗がすかさず止めを刺す。
「やれやれ、スーツが破れてしまったな」
「大した強さじゃないが、不意を突かれるのはキツイな」
 闇の中で光をつければそれだけ敵の目に着くのは当たり前の事だ。二人は気を引き締め直して探索へ戻った。

「足跡一つ見当たりませんね。別のエリアでしょうか」
「こう、暗くては痕跡一つ探すのも苦労するね」
 響と旭も持てる能力全てを駆使して探索に当っているが何も見つかっていない。
「まだ、このエリアには敵があまり来ていないのかも知れないね」
 敵の少ない場所に子供が居てくれればと旭も思うが、自分達に左右できる問題ではないのも分っていた。
「しょうがない、他のエリアへ‥‥どうかしたかい?」
「いえ、どうやら、僕らがここに居たのも全て無意味ではないみたいですよ」
 響が向く方向に視線を合わせてみれば、草木を掻き分けて鱗を纏った大型の肉食獣のキメラが近付いて来ていた。耳を澄ませば周囲で茂みがざわめく音がする。
「そのようだね」
「ええ、では参りましょうか」
 二人は武器を構えてキメラを迎え撃った。敵を倒せばそれだけ子供達が助かる確率は上がるのだ。
「さあ、自然なるモノ達よ。無様に踊り、泡沫の夢へと帰りなさい」
 そして、響がレインボーローズを素早く振るうといつの間にかその手にガトリンクシールドが現われていた。
 そして、ガトリンクの銃声が彼らの戦いの開始の合図だった。

「了解。こちらも先ほどキメラを倒した所です。あと、残念ながら子供の姿はまだ‥‥」
 他の班と互いに報告を交わしたが、いまだに子供は発見できていないようだ。
(‥‥いや、焦っても仕方ないか)
「‥‥これは困りましたわね」
 通信をしている優とは別に玲は手に何かをぶら下げた物を眺めながらゆっくりと周囲を見回す。
「玲。あなたは、何をしているのですか?」
「ダウジングですよ。優さん」
 それで何が分るのかと合理性を求める優にはいささか疑問が感じられた。だが、今の状況で他人の主義を否定して結束を崩すのは合理的ではないと判断した。
「それで、何か特定できましたか?」
「それが‥‥実を言うと反応が多すぎて」
 どういう事か優が首をかしげるが、玲の方も困ったという顔をするしかなかった。
「これが何を示すのか分りくいですが、もしかすると‥‥」
「なるほど、あながち占いも馬鹿には出来ないですね」
 そういうと優が月詠を抜いて殺気を放ち始める。
「優さん?」
「敵のようです」
 闇を割って現れた三体のキメラ、大型の虎、不定形生物、巨体なムカデ、しかも、それぞれが牙や爪が従来の生物よりも鋭く、触手など本来ないはずの器官まで備えている。
「まるで蝋燭の火に誘われる蛾ですね。まあいいでしょう。さあ、傅きなさいっ!」
「無駄な消耗は避けたい所ですが、ここはお相手して差し上げます」
 玲と優がそれぞれの武器を構えて背中合わせになる。そして、その二人目掛けてキメラ達が一斉に襲い掛かった。

「くっ、本当に一体どこに居るんだ!」
「落ち着きたまえミサヤ君、この暗闇だ。今の状況は泥の中に沈んだピースメーカーを探すようなものだよ」
 ウェストの一言は本気なのか、それとも、場を和ますための冗談なのか判然としないが、難しい状況だからこそ落ち着かないといけないのも確かだ。
「今はそのような事を‥‥ん?」
「どうかしたかね?」
「いや、今何かあっちで動いたような‥‥」
 キメラという可能性もあるが、不意打ちに遭い続けた状況を考えると今までとは違う気がした。
(‥‥確かめてみるか)
「ちょっ、ミサヤ君! 我輩を置いて行かないでおくれ!」
 そんな事を言うウェストを尻目に木を蹴りその何かが居た場所へと降立ちその影を捕まえる。
 特に何の抵抗もなく影は動きを止めた。それどころか、小さく悲鳴を上げる。まさかと思い、森の切れ目から降り注ぐ月光の下で目を凝らすとそこに居たのは多分に幼さを残した少年だった。
「君は‥‥」
「うっ、ひうっ」
 パニック寸前の少年を確認すると魅鞘も手の力を緩めた。それにあわせて少年も腰が抜けたのか地面に座り込んでしまう。
「っ! 大丈夫か? 怪我は? 怖いヤツはどこに行った? 報告だともう一人居るはずだ。そっちは?」
 矢継ぎ早に聞いてくる魅鞘に少年はただ、首を力なく左右に振るだけしか答えを返して来なかった。
「こらこら、少年君が怖がっているぞ。妹の方は無事に木場君達の方が確保したそうだ」
「そうか。スマン、怖がらせてしまったな」
 追い付いたウェストの報告を聞いて魅鞘も落ち着きを取り戻して少年を抱き上げる。ウェストの方も他の班に一度、少年を保護して森を出る事を報告した。
「なら、まずは子供を安全な場所へ連れて行きましょう」
「うむ、焦らずに‥‥」
『きゃああああああああ!』
 絹を引き裂いたような少女の悲鳴が森全体に木霊する。一瞬、何があったのか分らず脳がパニックを起す。
『こちら木場だ。先ほど強力な人型キメラと接触した! 現在、絶斗が一人で食い止めている。誰か救援を頼む!』
 そんな報告がウェストの無線機から聞えてくる。少女のものらしき子供の泣き声も聞えてくる。
「‥‥ミサヤ君は我輩に代って少年を安全な場所へ」
「おい、おまえは何するつもりだ?」
「我輩は絶斗君の救援へと赴く、それに子供にこれ以上のトラウマを与えるわけにも行くまい」
 まだ言いたい事もあったが、確かに絶斗を助けるためにもここで別々に行動するのも理にはかなっている。
「くっ、分った」
「では、頼む」
 そして、二人はそれぞれで反対方向へと夜の森を走り出した。魅鞘は自らの力不足に後悔しつつ、ウェストは狂った凶喜の思いを胸に抱きながら全力で走り出した。

●悪夢の使者
「悪いな。あんたは俺が足止めさせてもらう」
 巨大な斧剣を構えた絶斗の前にはホッケーマスクをつけた巨漢が佇んでいた。絶斗も立派な体格の上に重厚な鎧を纏っているが、目の前の巨漢はそれよりもさらに二周りは大きな体躯を誇っていた。
「ちっ、巨漢にホッケーマスク‥‥あんた、どこのジェイソンだ」
 もちろん返事はない。ただマスクに開いた穴から覗く無機質な双眸が絶斗を見つめ続けていた。
「なめるな!」
 敵に呑まれる前に気合と共にジェイソンの太ももへと斧剣を振り下ろす。
「なっ?」
 だが、返ってきた手応えはとてつもなく堅く、まるでSESなしで鉄骨でも斬りつけたような感触だった。
「こいつ、カタッ!」
 絶斗が向き直った瞬間にジェイソンの拳が物凄い速さで胸の辺りに命中した。
「があっ!」
 体の中で何かが折れたのを感じた次の瞬間には背中に走った鈍い衝撃に息がつまる。ようやく周囲を認識できるようになった時には全身が酷く熱くまともに動けそうになかった。
 その絶斗へ一歩、また一歩と子供の胴ほどもある木をへし折りながらジェイソンが近付いてくる。
(くっ、ここまでか‥‥)
 そして、目の前に来て片手の大鉈を振り上げる。
 だが、それが振り下ろされる事はなかった。
 轟音と共に空気を切り裂いて鉛弾の群れがジェイソンへと襲い掛かる。
「けひゃひゃ! 我輩がドクター・ウェストだ〜」
 闇の帳をどけて現れた新たな敵の存在にジェイソンが動きを止める。しばしの無言、周囲に妙な沈黙が下りる。
「おや、反応はなしかね?」
「反応があっても困りますよ」
 おどけるウェストに旭が少し困った声で答える。
「絶斗さん、今のうちに撤退して下さい」
「くっ、スマン。気を付けろ、そいつは強いぞ」
 ジェイソンは銃口を向けられても特に反応せず。黙って三人の方を見続けながら、ゆっくりと体を三人に向け直す。
「‥‥グオオオオオオオオオ!」
 そして、ジェイソンが地獄の底から響くような咆哮を上げて両腕を天へと突き上げた。
「来るか?」
 次の瞬間、人の胴ほどもある幹を持つ木が三人に向かって飛んできた。

「うわーーっ!」
 ジェイソンの攻撃をモロに食らった響が空高く殴り飛ばされて背の高い木の枝に引っかかって動かなくなる。
「ちっ、物理攻撃に対する高い耐性かね」
「厄介ですね」
 まさしく鋼の如く堅牢な肉体にほとんど攻撃が通らないでいた。さらに厄介なのが傷を与えたそばから高速で再生していく能力まである。
「コノキメラは危険極まりないな」
「ええ、このまま野放しにはででません」
「絶対に倒すぞ!」
 既に二人もスキルを連続で使用したおかげで生命力も練力もギリギリの状態、後は自分達が倒れるかジェイソンが倒れるかのチキンレースの状態だ。
 ウェストが鍛え上げた防具で攻撃に耐える。その戦力に脅威を感じたのかジェイソンもウェストへと狙いを絞ってきた。
「ふむ、メガネがなければ即死であったな。では、これでどうかな!?」
 連続でエネルギーガンを頭の近くに集中して撃ち込む。
「やったか?」
 だが、旭の口にした希望もはかなく潰えた。ゆっくりとだが確実に再び動き出すジェイソン、再び攻撃を加えようとするがそれより早くジェイソンが地面を蹴って肉薄してきた。
「くっ、あと一息の所を!」
 ジェイソンの振り抜いた鉈がウェストを捉える。10メートルは吹っ飛ばされてウェストも動かなくなった。
「くっ、させるか!!」
 最後の力を振り絞った旭の攻撃では既にジェイソンの再生能力に追いつかない。そして、戦いの行方は決した。

 ジェイソンも戦いに勝ったが、止めを刺す事は出来なかった。ジェイソンの体に突然、袈裟懸けに傷が走る。
「くっ、間に合わなかったか」
 子供を保護した魅鞘や木場がギリギリで戦いの現場に到着したのだ。そこには優の姿もある。
「何、まだ誰も死んではいません。それで、十分ですよ」
「さて、あれは俺と優君が引き付けよう」
「はい‥‥お願いします」
 そう言うと魅鞘は先に森の奥へと消えていった。
「さあ、あなたにはもう少し私達に付き合ってもらいますよ」
「グオオオオオオオ!」
 優が言葉を向けるといまだに闘いの興奮冷めやらないジェイソンは真っ直ぐに二人に向かっていった。
 だが、二人はそれをまともに相手にはせずに連携を取りながらある場所へとジェイソンを誘導していく。

「来られたみたいですわね」
 橋を挟んで対岸の森から聞える轟音と咆哮に耳を傾ける。それに先んじて魅鞘が玲の隣へとやってくる。
「準備は?」
「ええ、いつでも」
 やり取りのすぐ後に木場が橋の真ん中の辺りまで来る。そして、それを追うように上からジェイソンが橋の上に降り立った。
 ジェイソンの巨体が落ちてきた衝撃で橋が大きくゆれた。
「グオオオオ!」
「ふん!」
 木場がジェイソンが振り下ろした腕を捕まえる。
「悪いが、貴様の好き勝手にはさせん」
 魅鞘と玲がそれぞれの武器を橋を支えるワイヤーへと全力で叩きつける。
「グゥ?」
 それを見ると急いでまだ繋がる反対側へ向かおうとする。
「させん!」
 反対側から現れた優も月詠でワイヤーを断ち切る。
「そういう事だ。もう少し付き合え」
 そして、最後に木場が落ちる寸前でジェイソンの足を掴んで川へと引きずり込んだ。

●夜明け
「はい‥‥そうですか。みなさん、木場さんも無事保護されたそうですよ」
 その報告を聞いて全員が安堵する。
「これで今回の悪夢も終わりですね。だけど‥‥」
「子供達は全てを亡くしたわけではない。大丈夫だよ」
 いつになく真面目な口調でウェストが語る。
 今日も一つの悪夢が終わった。

 だが、世界を包む悪夢がまだ終わったわけではない。能力者達とバグアの戦いはまだ続くのだった。