タイトル:廃工場の救出マスター:みろる

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/12/30 15:18

●オープニング本文






 ずらりと並んだ書籍の棚から、めぼしい小説を抜き取ろうと佐藤は、手を伸ばした。
 色あせた背表紙に指先が触れた時、背後から別の手が伸びて来て、触れた。見ればきちんと手入れされた、美しい爪が見えて、あー指先のきれいな男の人はポイント高いですよねーとか、あれ何かこれって、ドラマとか漫画とかで良く見るやつじゃないですかー、とか思って振り返ったら、飯田が立っていた。毎度のごとく、優秀なサラリーマンのようにも、美形だけど怪しげな詐欺師にも、見える。
「やあ、佐藤君」とか無表情に言われたので、「どうしたの、マザコン君」
 とかちょっと調子に乗ってふざけてみたら、凄い真顔でじーとか見つめられた。
「ごめんね。マザコンって言われるのやだったの」
「佐藤君」
「なに、飯田君」
「俺は、マザコンでは、ないよ」
「うん、もういいよ。必死な飯田君なんて誰も見たくないよ」
 飯田は棚に伸びていた手を掴み、佐藤を後ろから抱きしめるようにする。全然無表情だったけど、拗ねているのかも知れなかったし、関係ないかも知れなかった、だいたい常に、何となく憂鬱そうな青年に見えなくはないので、良く、分からない。
「それでね、また、救出の依頼、持って来たんだけど」
「ねえねえ、飯田君」
「何だろう、佐藤君」
「さっきから、あそこのカウンターの店員のオジサンが、どうしよう、目の前で女装男とサラリーマンがいちゃついてる、どうしよう、みたいな感じでおろおろしてるんだけど」
「いいんじゃないの。どうせ、暇そうな古本屋なんだし」
 いや、聞こえたんじゃなかな、とかちょっとどうしようみたいになってる佐藤から離れ、飯田は持っていたビジネスバックみたいな、機能的なデザインの黒い鞄から、クリアファイルを取り出す。「俺が集めた、情報。今回も生贄、つまり、救出民間人は、二人です」
「何で二人かって、良く分からないよね」
「さあ、好きな数字なんじゃないの、誰かの」
「またいい加減なことを」
「場所は、金属工場跡。機械とかが微妙に残ったままだったりして、見通しは、悪いね。キメラも出現するから、気をつけて捜索して」
「バグアやキメラに浚われてしまう前に、救出しないとね。でもさ、そろそろ、向こうも気づいてるだろうね。毎回、阻止されてるわけなんだからさ」
「でも俺は、多分まだ、全部の情報を掴めてるわけじゃないから。見つけられた情報だけを、提供してるだけで」
「そうなんだ」
「そうなんだよ」
「民間人を浚えてたら、バグアは彼らをどうするつもりなんだろうね」
「さあ、それはまだ、俺にも分からない」
「飯田君にも、分からないことがあるんだ」
「ごめんね、実は万能の霊能力者じゃなくて」
「落ち込んでるの」
「あんまり、大したことないって、佐藤君にばれたくないよね、男としては」
「そうなんだ、じゃあママが優しくしてあげようか?」
 とかまた調子に乗ってふざけてみたら、凄い真顔でじーとか見つめられた。「佐藤君さ」
「うん」
「あの時、凄い全然、興味ないよ、聞いてないよ、みたいな顔、してたじゃない。俺が佐藤君が自分の母親に似てるって話してた時」
「そうかな」
「意外とちゃんと聞いてたんだね」
「聞いてたよ。だから、僕に女装勧めたんだー、とか、分かったし」
「うんもういいよ」
「恥ずかしい?」
「恥ずかしいね」
「じゃあ、ママが優しくしてあげようか?」
「気に入ったんだ、それ」
「うん、ごめんね」









●参加者一覧

ロジー・ビィ(ga1031
24歳・♀・AA
空閑 ハバキ(ga5172
25歳・♂・HA
アンドレアス・ラーセン(ga6523
28歳・♂・ER
御巫 雫(ga8942
19歳・♀・SN
フローラ・シュトリエ(gb6204
18歳・♀・PN
ジリオン・L・C(gc1321
24歳・♂・CA
毒島 風海(gc4644
13歳・♀・ER
緋本 かざね(gc4670
15歳・♀・PN

●リプレイ本文






 とーう、とか何か、ジリオン・L・C(gc1321)の野太い声が廃工場内に響いていた。
 その後、「改!」とか叫んで腕を動かし、「烈!!」とか言って腰を振り、「激!!!」とか言って足を動かし、最終的に珍妙なポーズで静止する。とか一連の動きを、見なきゃいいのに何でかいつも最後まで見てしまって、いつもの如くやっぱり、このあんまりにも何もない感じに、アンドレアス・ラーセン(ga6523)は、何で見たんだ自分、とか残念な気分になりながら、目を逸らせた。
「今度は廃工場ですのね」
 ぴこぴこ、と何か可愛い音がするな、と思ったら、ロジー・ビィ(ga1031)が赤い色のプラスチック製のハンマーのハンマーたる部分を叩き、音を出していた。「何だかドキドキしますのっ!」
 ぴこぴこぴこぴこ! とか、その高ぶる気持ちを表現するかのように、連打する。
「危険な薬品とか残ってないとは限らねぇ。気をつけ」とか言ったら早速、空閑 ハバキ(ga5172)が辺りにある機械を不用意にぺしぺし触っていた。
「でも俺金属、駄目なんだよなぁ」
「おいぃー、いやもうあんま触んなって」
「出たアスの心配性」とか言ってくすくす笑い、また煽るように、触る。
「どうなっても知らないからな、金属アレルギー」
「どうせアクセなおされは出来ないよ!」
「いやおされて、だから叩くなって」
 とかジリオンはその間にもずっと静止していて、早く誰か何か言え! みたいな雰囲気がもろに出ていて、アンドレアスはもう何も言いたくない。そしたら「見ろ!」とかジリオンが叫んだ。絶対見ないし、とか思ってたら、続けて「これが、あらぶる勇者のポーズだ!」とか全然誰も聞いてないのに、説明し出した。
「いやもうそのあらぶる勇者が分かんねえもん」
「でしたらあたし達は、敢えて言うなら勇者様ご一行ですわね?」
「いやロジー、構うと面倒臭いから」
「勇者に僧侶に女戦士に遊び人! 素晴らしい! 魔王の手先から彷徨える魂を救うにふさわしいパーティだ」
「あ、じゃあじゃあ、ロジーは騎士さまでしょ、アスは魔法使いで」
 とかそこまで来てハバキは、ハッとし、続けておろおろとする。「俺、遊び人じゃないよ! 俺凄く一途だよ! ねっ、アス?」
「大丈夫あいつもう全然聞いてないから」
「滾るほどに熱いこの魂で、導いてやるぜっ! さあ皆、俺様についてこーい!」
「チッ、おま、おい、不用意に触るな! 覗くな! 隠れるな! 走るんじゃねぇ!」
「出た、アスの四連発突っ込み!」
「ちがもー若手組の方が真面目に捜索してんじゃねぇかこれ」




「キメラがいるとなればのんびりとはしていられないわねー」
 腰のベルトの辺りに装着したウォーキングライトで地面を照らしだしながら、フローラ・シュトリエ(gb6204)が言った。
「今回は廃工場ですかー。なんか、廃虚になったとこばっかりですよね。もっとこー、陽の当たるカフェのお仕事とか、ないんですかね」
 緋本 かざね(gc4670)が答える。その声に、毒島 風海(gc4644)が機械とか見ていた目を、向けた。
「ストレスですね」
 ぼそ、と言う。
「え?」
「カルシウム不足ですよ、かざねちゃん。女子にはカルシウムとか、鉄分とかが重要なんですよ。鉄分、ちゃんと摂ってますか? 貧血になっちゃいますよ。ほら、なんなら今回のキメ」と、そこで不意に、辺りの警戒に目を光らせていた御巫 雫(ga8942)が「女か」とか、しみじみ、呟いた。
 あれ、何ですかその重い感じ、とか、二人して雫を見やる。とりあえず何か、あんまり興味とかないんだけど何となくフローラも見た。そしたら何か、「いや今不意に、前回私が、佐藤と付き合ってると言った時、思い切りスルーされた事を思い出してしまってな」とか話してる雫の横の横で、何かこそこそしてるかざねが、見えた。腰に下げた袋から、黒い物を取り出している。え、ガスマスク?
「今ですか」
「今だ。問題があるのか」
「いえ問題はないですけど、え? 今ですか」
「私も相手の手の内を見定めるハッタリだったとはいえ、どうにも、負けていた気がしてな」
「え、気にしてたんですか」
「気にしてたんですか」
「っていうかそんな重い質問だったんですか」
「そんな重い質問だっ」
「いや、かざねちゃん、繰り返さなくていいか、えー! 何時の間にガスマスク被ってたんですか」
 ふふ、とかくぐもった声で笑ったかざねは、「キメラの粉塵にはやはり、このマスク・ド」とか何か言ってたけど全然聞いてない雫が、言う。
「少しは、容姿に自信はあったつもりだが。やはり女性として、何か欠けているものがあるのだろうか」
 とか、雫はすっかり遠くを眺め出す。何か、シーンとした。何だこの人達、とフローラは思った。思ったけど人のこととか基本結構どうでも良いので、放っておくことにした。




「それにしても、案の定裏になんやら蠢いてやがったんだな」
 アンドレアスが皮肉っぽく微笑みながら、唇を、舐めた。
「まあ、飯田の話では、そうだね」
 ジリオンの挙動を見やりながら、笑うハバキが、言う。
「親バグア派組織からの転向者ってか? 俺は半信半疑だな。ま、確かに民間人救助は人類側のプラスではあるけどさ」
「ねえアスー、ここって何作ってたんだろうね?」
 とかいう問いかけを、「あー?」とか話半分に聞いて、アンドレアスが何かいろいろ真面目に観察とかし出したので、暇だな、とか思って、自分も真似して実は大して見てもないのだけれど、きょろきょろしてたら、何か、ボタンを発見した。
「あ」
 それがまた凄い押したい形っていうか、もう押し込んで! 今すぐ押し込んで! みたいな、魅惑の形をしていたので、押したい誘惑にもう駆られた。
 どうしよう、とか思って、こっそり辺りを窺ったら、ロジーと目が合った。「あら、何ですの、ハバキ」と近づいて来たロジーが、ボタンを見て、ハッとする。「あら。そのボタンは‥何でしょう?」
「お、押し」
 二人はちょっと何か探り合うような、見ようによっては甘酸っぱい感じで、そわそわと見詰め合う。「押してみる?」
「おいぃー! こら待てー!」
 ポチ。
「ハバキ!」
「いやだってほら、動かした先に見つかったり、とか!」
 とか何かやってたら、前方の大きな機械ががこがこ動き出して、全然明後日の方を向いていたホースのような部分がブイイン、と一同に向かって張り出し下降した。滑り台みたいだな、とかぼんやり思った瞬間、そこからしゅるしゅる、と何かが落ちて来た。と思ったら、キメラだった。
「い、いたぞ! キメラだ!」
 とか明らかへっぴり腰のジリオンが言った。「ゆゆゆ、勇者パーティ、出撃だ!」
 それまで一番前に居たくせに、俄然誰か他の奴前に出ろみたいな、間合い計ってますってポーズで赤い刀身の炎剣ゼフォンとか構えているわりに、全然前に出る気配とか、なかった。
「勇者様、徹底的に撃破しますわよ! 片っ端から撃破。撃破ー!」
 二刀小太刀「花鳥風月」を構えたロジーが覚醒状態に入る。体を包む蒼い闘気をまるで、背中に広がる羽根のように揺らめかせながらキメラに向かい突進した。
「うおお! いけー女戦士ー! パーティが揃えば怖いものなど!」
「いやもうお前、黙れ」
 覚醒の影響で足元まで伸びた髪を揺らしながら、エネルギーガンを構えるアンドレアスが練成弱体を発動した。その直後、キメラがぶにぶにとした体を揺らしたかと思うと、あ、そいつやっちゃえばいいですか、みたいな雰囲気で、ジリオンに向かい粉塵を噴出する。
「粉塵だー」
 しゃらん、と腰に下げたダークシルバーチェインを揺らしながら、ハバキが覚醒状態に入る。チェインに通した二つのローダンセの指輪がカツン、と音を立てた。
「ハッ、勇者がコーティングされて、勇者の像にっ」
 ハバキ、助太刀いたすーとか何か、いまいち緊張感のない声で言ったハバキが、プロテクトシールドを構え走りだした。アンドレアスとロジー、大事な友人二人からの贈り物、チェインと指輪が、きらきら、と陽の光を反射する。柔らかさすら感じられる、俊敏な動きで粉塵の前へと躍り出ると、盾を突きだし、ぐ、と体を入れた。
「うおー! 危なかったが流石俺様未来の勇者様! 勇者の必殺技勇者よけが、今日も唸るぜ!」
 とか言ってそこで本当に有効に唸ったのはロジーの花鳥風月で、キメラの硬い体にぐ、と押し込むと、そのまま、ずおと振り上げた。キメラの体が勢い良く宙に舞う。
 空中でろん、と中身をこぼしかけたその場所目掛け、アンドレアス、ロジー両者のエネルギーガンから放たれた青白い光が飛んで行く。




「しかし、バグアの目的が気になりますねー。そろそろ、向こうから仕掛けてきてくれると、助かるんですけど」
 とか言った風海の言葉に、「うむ。飯田がドジを踏むとも考え難いが、そろそろ勘付かれてもおかしくない」
 とか一応真面目に言った雫が、「奴の協力も、遅かれ早かれ当てに出来ないときが来る」と傍にあった機械に手を伸ばし、「それまでに、知りうる情報は手に入れておきたいものだが」と、触れた。
 とにかく見ている分にはただ、触れただけだったのだけれど、そこで、何か分かんないけど、機械が、がちゃあああん、とか凄まじい音を漏らし崩れた。っていうか、何か、絶対裂けないような、むしろ裂けてはいけないような場所が、裂けた。
 かざね、風海、フローラの三人は、何かとりあえずちょっと唖然として、言葉を失った。
「うむ」
 雫一人だけが、凄い普通だった。「私にカラクリの類は、触らせない方が良いぞ?」
「いや何でそんな偉そうなんですか」
「ごちゃごちゃ言ってる場合じゃないよ! キメラだ!」
 すぐさま覚醒状態に入ったフローラが、甲の部分に銀色の紋章を浮かび上がらせた手で、機械の割れ目を指さす。「民間人もまだ見つけてないってのに。この辺りに居たりしないでよねー」
 檜扇の形状をした超機械「扇嵐」を素早く、構えた。「放置しておくのもあれだし、倒しちゃうけど」
「あはは。ゼリー状のやつは一度戦ってますからね! それなりに耐性はついているのですよ! 虫とかに比べれば、どんとこいです!」
 金色の髪の毛をふわ、と舞い上がらせたかざねが、白く美しい槍、セリアティスを構え、だっと駆けだした。「かざねー、本当は、ガスマスクーのくだりー、流されてー、悲しかったーの巻ー! どーん!」
「ブレスに気をつけろといっても、どっちが口か分からん」
 同じく覚醒状態に入った雫が、黒耀石のような黒く美しい色合いの刀身を持つ刀「黒耀」を振り抜きながら、さささ、と走り出した。「近接で仕留めるしかあるまいな」
「これ、チョコレート食べたら、チョコスライムになったりするんでしょうかね? その上にキャラメルかけて、軽くバーナーで炙ったら、美味しくなりそうですよ」
 超機械「シリンジ」を構えた風海が練成強化を発動する。淡い光がかざねと、雫の武器へ飛んで行く中、続けてフローラが練成弱体を発動した。
「そんな鉄で固めたって、所詮はゼリーなキメラ! 私の敵じゃないです! さあ、貫きますよ! えーいっ!」
 真燕貫突を発動したかざねの槍が、キメラのフォースフィールド突き破り、更に「えいえい!」と、堅い外殻を突き破る。
「ひっ! ぶちゅっとしたーっ!!」
 尿意を我慢する人みたいに、足をばたばたばさせたかざねの横から、雫がすかさず急所突きを発動させた。「フ。貴様に用は無い、さっさと退場するがよい」
「さーもう全部片付けちゃうわよー! 電波増幅!」
 フローラの扇嵐から放たれた竜巻が、黒耀の攻撃ですっかり中身だけになったキメラや、辺りに降り積もる塵や埃をずおお、と飲み込んだ。そのまま工場の外へと吹き飛ばして行く。
「次は、美味しく育ってきてくださいね〜」
 風海が、暢気に手を振りながら、言った。




「そしてまた勇者は新たな旅に出る! 俺様の勇者街道は、まだ始まったばかり! ときめきながらまってろよ、運命よ! 心のナレーション、バーイ、ジリオンラ」
「ほんでお前それ全部声に出てるんだって、さっきから」
「相手が仕掛けてくるなら、救出対象が罠な可能性もあるかとは考えていたんですが」
 風海が、ジリオンの動きを一瞥し、また懐に抱いた機械らしきものをこちょこちょ弄くりながら、言った。
「ねえ、風海ちゃん、何してるの、それ」
「ああ、使えそうな物がないか探してるんです。私、古い機械を直したりするの、好きなんですよ。ほら私の部屋にも脚付きテレビあったでしょ? あれも私が直したんです。部品から作ったので、かなり手間がかかりましたが。あと今ちょっと、古いカメラを直したくて」
「さすがエレクトロリンカー」
「あれそれ関係あります?」
「怪我はないみたいだけど、これは、薬なのかな。意識がはっきりしてない」
 フローラが、民間人の安否を確認しながら、言う。その隣で、彼らの衣服のポケットや表情の確認に、ハバキが勤しんでいた。
「ポケットなんて、どうして調べるの?」
「今日の俺は、いつも良く良く見てくれてた人の代わりだからね」
「メモを探してますのよ」
「メモ?」
「しかし生贄、ね。なら年恰好なんかはどうでも良いわけか?」
 アンドレアスの声に、雫が腕を組む。「だが必要だからバグアはこれを要求している。それが毎度妨害されるのだ。そろそろ提供する側かされる側か、或いはその両方かが、シビレを切らしてひょっこり顔を出すやもしれん」
「そうですね、そろそろその可能性も、っていうかかざねちゃん、何でラムネとか持ってんですか」
「え」
 薄っすらと青い瓶を持ったかざねが「いや何となく喉乾いたからとか、思って」と、今まさに蓋を開こうとしていた手を止めた。
「あ、私、貰ってあげても、いいですよ」
 かざねちゃんとラムネで間接キスとか甘酸っぱいですよね、とか風海が呟いたのを聞いたか聞いてないか、かざねがポン、と栓になったビー玉を押し込む。と、思ったら別に振った覚えもないのに中から凄い勢いで、炭酸飲料が飛び出た。
「俺様ジリオン、未来の勇者、どああ! 何だこれは! 水の魔法か!」
 丁度、傍にいたジリオンの顔面に直撃した。あ、すいませーんとか全然申し訳なさそうな声が言った。

「でね、俺思ったんだけど」
 ハバキが、言う。「誰が迎えにくるか、待ってみる、ってのはどう? 目的、気になるよね。どこかで区切り、つけなきゃだし。事が動く可能性あるから、飯田くんと、佐藤くんに相談してさ」
「そうですわね。またお会いしたら、民間人はどんな基準で選別しているのか、攫われた人達に共通点はあるのかどうかなど、その辺りもお聞きしたいですし」
「待ってみる、ねえ」
「じゃあそゆことで、この人らは今日も、俺がおんぶ一人」
 とか呟いて一瞬黙ったハバキは、「たまには、お姫様抱っこも良くない?」
 軽やかに微笑んだ。