タイトル:【MN】希望を未来へマスター:水無瀬 要

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/09/11 15:38

●オープニング本文


※このオープニングは架空の物であり、登場する機体、武装、特殊能力等は全て『妄想の産物』です。
 よって、現在のCTSの世界観には影響を与えません。

※恐れ入りますが、相談期間中の拘束は通常通りに発生致します。予めご了承の上ご参加下さい。


<西暦2140年8月下旬 地球衛星軌道上>
 ――1990年、外宇宙から飛来した謎の宇宙生物『バグア』の侵略を受けてから、既に150年の歳月が経過していた。
 人類は『能力者』と呼ばれる一握りの選ばれた戦士達と、ナイトフォーゲルと名付けられた可変戦闘機を駆ってバグアと戦い抜いた末に、ようやくメトロポリタンXの開放にまで至る。
 各メガコーポレーションは、数多くのブラックボックスを有するドローム社によって吸収併合され、一つに纏まっていた。
 そして、全メガコーポレーションの技術の粋を結集して新造されたユニバースナイト拾弐番艦――超弩級宇宙戦艦『エルダ』が建造された。
 全長は40kmにも及び、ギガワームをも軽く凌駕するその巨体は、正に人類の意地と反骨精神を具現化した象徴でもあった。
 搭載する機体は、ようやく全容が解明された『試作型重力慣性システム』と『空中変形スタビライザε(イプシロン)』を搭載した最新鋭KV『ロスヴァイセ』を、800機搭載している。

 更に人類は、地球を間に挟み、バグア本星とは対称的な位置に、第2のラストホープとも言える巨大軌道ステーションの建造にも着手しており、完成を間近に控えていた。
 人類は150年もの年月を掛けた死闘の果てに、ようやくバグアと同じ土俵へと上り詰めようとしていた‥‥。

「艦長、敵襲です」
 覚醒して白銀の髪をゆらゆらと棚引かせたオペレーターが敵機襲来を告げる。恐らくエミタを付けた能力者なのであろう。
 この時代になると、エミタも自在な調整を可能とし、АIのサポート能力も、多次元多重情報処理やナノレベルでのマニュピレートといった、より高度な内容を可能にしていた。
 また、別途に言語端末を体に装着する事で、エミタに会話機能を付ける事さえも可能としたが、酷く機械的で淡白な応対と、言語端末が戦闘では邪魔になる為に、最初は珍しがって利用者も多かったが、今ではごく一部の者しか使用していない。

「全艦第一種戦闘配置!」
 白い髭を蓄え、見るからに『宇宙(うみ)の男』といった風貌の艦長は、戦闘態勢への移行を告げた。
「もうすぐ人類の第二の希望とも言える――軌道ステーション『エタニティ』が完成する‥‥。何としても守り抜かねばならん」
「敵の数は!?」
「はい、敵機数‥‥約120」
「‥‥いつもより少ないな‥‥ロスヴァイセ発進! 200もあれば良い。それよりも索敵に全力を注げ! 奇襲があるやも知れんぞ」
「了解しました」
 オペレーターは各セクションに指示を出す。
「杞憂であれば良いが‥‥」
 艦長は髭を扱きながら、敵の意図を推し測る‥‥。

 ――戦闘は人類側の勝利に終わったが、こちらも半数近くを撃墜されており被害甚大であった。
「敵襲。第二波来ます」
「くそ! こちらの疲労と消耗を狙っての波状攻撃か!」
「数、およそ500。例の敵新型もいます」
 熱い艦長を余所に、オペレーターは冷静である。
「こちらも出し惜しみは無しだ! 直掩機以外は全て投入しろ。波状攻撃の波をここで止める!」
 エルダ護衛の100機を除く600機が全機スクランブル。500対600と数の上では勝っているが、敵は新型を投入している為油断は出来ない。
 人類は『最後の希望(ラスト・ホープ)』から未来を紡ぎ出し、『永劫(エタニティ)』を手に出来るのだろうか‥‥。

●参加者一覧

伊藤 毅(ga2610
33歳・♂・JG
夜十字・信人(ga8235
25歳・♂・GD
Anbar(ga9009
17歳・♂・EP
三枝 雄二(ga9107
25歳・♂・JG
火絵 楓(gb0095
20歳・♀・DF
イスル・イェーガー(gb0925
21歳・♂・JG
守上・皐月(gb2240
17歳・♂・DG
雪代 蛍(gb3625
15歳・♀・ER
石田 陽兵(gb5628
20歳・♂・PN
トリガー(gb8359
13歳・♂・DG

●リプレイ本文

●女神の咆哮
<ユニバースナイト(UK)拾弐番艦『エルダ』・艦載機発進デッキ>
『コノ作戦ヘノ参加ハNOダ、生還率ガ低スギル』
「うも! そんなのは関係ナッシングだ! 今回もあたしが居れば楽勝よん♪」
『毎回大破デカ?』
 火絵 楓(gb0095)は、いつものように言語端末を装着して会話が可能となったAIとコントをしていた。
 AIも誰に性格が似たのかは分からないが、結構容赦の無いツッコミを入れて来る。
「にゃ! それは言わないで」
 火絵はAIとのスキンシップを終えると、ロスヴァイセに乗り込む。
「さ〜て、新型機同士の戦い! 面白くなってキター!」

「ロスヴァイセ全機、発進準備整いました」
 オペレーターの無感情とも取れる冷静な声が、艦橋に響く。
「主砲発射準備! 序盤で敵を1機でも多く仕留めるぞ!」
 UK拾弐番艦『エルダ』の主砲は、来るべきバグア本星の外壁破壊を想定して作られた超大型ビームカノン砲である。
 その威力はギガワームをも一撃で破壊可能な程凄まじいが、一度発射するとエネルギーの再チャージに時間を要する為、使い所の難しい兵器でもあった。
「‥‥敵、射程内に入りました」
「よし! 撃て!」
 エルダの船首よる放たれたビームは、敵前衛部隊を一飲みにしていく――、それは宛ら大蛇が獲物を次々と飲み干していく姿にも見えた。
「どうだ?」
「‥‥敵前衛部隊消滅。推定撃墜数‥‥およそ200。続いて、ロスヴァイセ発進します」
 艦長は大きく頷くと、ようやく艦長席に腰を下ろした。彼は指揮を執る時は立ち上がって腕を大きく振り回す仕草が癖の熱血漢である。

「ドラゴン小隊、発進する」
 伊藤 毅(ga2610)率いるドラゴン小隊が、エルダより発進して行く。
「タイガー小隊発進っす!」
 同じく三枝 雄二(ga9107)率いるタイガー小隊も次々と発進して行く。
「タイガー1よりタイガーオール、数の上でもこっちが上っす、一機一殺を心がけるように」

 最後に、エースチームが発進シークエンスに入った。
「こちらゲシュンペスト、これより敵新鋭機迎撃に向う。なあに、こちらも新型だ。気を楽に行こう」
 夜十字・信人(ga8235)は、現在このエースチーム『ラグナロク隊』を任されている。またの名を、過去から来た男とも言われている。
 2009年の戦闘に於いてエミタに深刻な損傷を受けた夜十字は、当時ドローム社が密かに開発した『冷凍睡眠カプセル』によって肉体を保管し、131年後の未来に自らの運命を託したのだ。
 蘇った彼は、エミタの補修とバージョンアップ手術によって運命を掴み取り、再び能力者としての復活を遂げた。

「それじゃ行くよ、ホワイトラビット。スノーホワイト発進します」
 続いて雪代 蛍(gb3625)が発進位置に付く。
 彼女の本当の名前はアリス・ユキシロと言い、エミタ技術の発展段階における実験により、遺伝子段階で調整された赤ん坊にエミタを植え付け育てられた人工能力者であった。
 もちろん非人道的な実験である為、これらは今現在に於いてもトップシークレットに属する情報であり、例え軍の高官といえども秘密を知った者は逮捕拘禁された。
 その後彼女は、雪代 蛍と名前を変え、普通の能力者として作戦に参加している。

「さて‥‥、行きますか」
『シャーネーナ』
「‥‥‥」
『ジョーダンダ、アイボウ』
「ヨウヘイ、出ます!」
 石田 陽兵(gb5628)も威勢よく発進する。
 どうやらこの世代の言語端末は、一様にして性格付けに問題があるようである‥‥。

 ラグナロク隊が全機発進の後、エルダの防空システムが稼動。直掩機の護衛も含め、鉄壁の防御態勢を敷いた。

●竜跳虎臥
「ドラゴン1よりドラゴンオール、これより攻撃隊の支援に入る。主目標、敵戦闘機。攻撃機はドラゴンフライトに任す」
 先行する伊藤の小隊が敵を捕捉した。
「ドラゴンオール、マスターアーム点火、オールウェポンズフリー、ドラゴンフライト、ブレイク」
 各武装の安全装置が外され、ドラゴン小隊は散開して迎撃コースへと進入する。
 試作型重力管制システムによって、鋭角機動を描きながら敵機へと接近する伊藤機。
「ドラゴン1エンゲイジ。‥‥FOX2」
 白き乙女より放たれた矢は、吸い込まれるように敵機へと命中していく。
「さすが新型。前の機体とは全く比較にならないな」
 これまでのSES機構とは明らかに違う攻撃力を持っており、通常のミサイルでも一撃でヘルメットワームの撃墜を可能としていた。
「ドラゴン3、4は右方から突破を図る編隊に対応。5、6はその援護」
 ドラゴン小隊は、7番から10番の4機を失ったものの、素早く隊をまとめ上げて周辺のヘルメットワームを次々と撃墜していく。

「どうした? 緊張しているのか?」
 夜十字にそう訊かれたトリガー(gb8359)は、この隊に配属されたばかりのルーキーであった。
 エースチームである以上、彼もまた高い撃墜数を誇る実績を持ってはいるのだが、生来の性格が災いして不安が顔に出るようである。
「いえ、何でもありません」
「まぁ、俺達がちゃんと仕事をすれば問題なく事は終わるさ」
 イスル・イェーガー(gb0925)がトリガーを元気付ける。
「そうですね。早く終わらせましょう」
 トリガーがようやく落ち着きを取り戻した頃、ラグナロク隊も敵ヘルメットワームの部隊と交戦状態に突入した。
「エタニティは新しい希望だ。バグアなんぞの好きにはさせない」
 守上・皐月(gb2240)は正面の敵機にレーザーで攻撃。素早く転進して避ける敵機!
「逃がさん」
 転進先に回りこむ守上機――。
「もらい!」
 ほぼ同じ動きで追従する機体同士の相対速度は、限りなくゼロへと近づく――。外から見れば激しい鋭角機動による空戦に見えても、実際にはスローモーションの世界と言っても過言では無い。
 レーザーに焼かれて爆散するヘルメットワーム。

「そう言う事だ。エタニティに指一本触れさせる訳にはいかないんでな。寄生虫共は早々に帰って貰うぜ」
 Anbar(ga9009)は隊内でも古参の一人であり、宇宙戦闘を知り尽くした卓越した操縦テクニックで次々と敵機を葬って行く。
「俺たち人間は100年以上前から重力慣性など無くとも、貴様達に食らい付いて戦ってきたんだ。同じ土俵の上に立ったからには機体機動でもはや負けなどないと知るが良い!」
 AAMとG放電装置で削りながらヘビーガトリング砲で止めを刺す戦法は、この機体の基本攻撃力と相俟って敵機を紙のように粉砕していく。
「流石ですね。自分も負けませんよ」
 発奮したトリガーが仕掛ける!
 彼の機体は完全にドッグファイトを想定した武装の為、間合いこそが全てである。
 トリガーは守上同様敵機を追従し、自身の名前と同じトリガーを引いてバルカンの雨を降らせていく――。
 そして敵機の尻に火が付いた!
「悪く思わないで下さいね」
「それにしても凄いです。バルカンでワームを落せるなんて夢みたいです」
「まあ、それだけこの機体の性能が今までと全然違うって事だね」
 そう答ながら石田も、同様にバルカンで敵を仕留めた。

「タイガー1よりラグナロク、ここは我が隊にお任せっすよ。ラグナロク隊は作戦通り『蝿』叩きをよろしくっす!」
「了解した。武運を祈る」
 ラグナロク隊は機体を左右に揺らして合図をすると、編隊を組み直して『蝿』と呼ばれた新鋭機へと進路を変えた。
「タイガーオール、マスターアームオン。接敵と同時に散開、敵の突破を阻止する。神の戦士たちに幸福あらんことを――AMEN!」
 三枝の指揮の下、タイガー隊が残りのヘルメットワーム掃討に乗り出す。
「ここから先は侵入禁止っす! タイガー1、FOX2!」
 この時代のFOX2は、旧時代のミサイル区分にはそのまま適用されない。
 重力波さえも捉える追尾性能は全く比較にならず、ジグザグ機動やV字機動で避けようとも目標を確実に捉え駆逐する。
「ここは守り抜くっすよ!」

●ベールゼブブ
「抜かれた‥‥だと」
 ドラゴン小隊は、敵新鋭機と交戦状態に突入したが――、敵はレーダーにも捕捉可能な分身攻撃で小隊機を翻弄し、次々と撃破していった。
 伊藤は空中変形後、回転を加えながらマシンガンを周囲に撃ちまくりながら弾幕を形成。敵機の牽制に成功した為どうにか軽微の損傷程度で事無きを得た。
「どうやら重力管制システムのお陰で命拾いした‥‥」
「ゲシュンペストよりドラゴン1、後は我々に任せてもらおう」
 ラグナロク隊の到着であった。
「ドラゴン1了解。こちらは脱出した部下の捜索と負傷者の救護に当たる」
 伊藤は救難信号のビーコンを頼りに、宇宙空間に放り出された部下達の救護活動へと移行した。
 宇宙戦闘は地上とは違い、宇宙空間に放り出されれば酸素残量分だけしか生きていられない過酷なミッションである。
 その為、戦闘を担当する者達も宙域を確保すれば、即脱出者や負傷者の救護活動を優先して行う様に訓練されていたのだ。
 
「ロスヴァイセか‥‥S−01に乗っていた頃が自殺行為に思える性能だな」
 夜十字は、戦闘能力以外にも、複数の人命救護をも可能可能とする補助シートの広いスペースにも驚きを隠せなかった。
「きゃあ!」
『――!』
 全機が一瞬の出来事に驚く!
 雪代の機体が、例の分身攻撃を受けて損傷を負った。
「蛍ちゃん、‥‥大丈夫?」
 イスルが心配そうに訊いて来る。
「うん、大丈夫。腕の駆動モーターを一部壊されたけど、他には損傷が無いからまだ戦える」
「よし、これより蝿叩きを開始する。各機、神々の黄昏という名に相応しい奮闘を期待する」
『了解!』
「レッドガイストとAmberは付近の敵を掃討してくれ」
 二機を除く全機は、通称『蝿』と呼ばれる敵新鋭機を包囲するフォーメーションを取り、重力管制システムを活かした相互連携によって少しずつダメージを負わせて行く。
「五月蠅い蝿は退治しないと」
 雪代は、さっきのお礼とばかりに敵機に追随、レーザーガトリング砲を撃ち込んで行く。
 敵機は空中変形で機体をロールさせて回避、振り向き様にミサイルを発射!
「負けない」
 雪代も負けじとミサイルを乱射して迎撃を試みる。
「取った!」
 雪代の迎撃ミサイルの回避行動を取る敵機の背後を捉える事に成功した守上は、変形してドラゴンナックルで『蝿』の左肩に牙を立てた。
「いっけぇぇっ! 龍牙天翔!」
 龍の牙で敵に噛み付き、ビームコーティングアクスによる強力な一撃を加える二連コンボである。
 紅蓮の炎を思わせる熱き戦斧が『蝿』の羽を斬り落す!
 敵機は食らい付いた守上ごと激しいロールを行い龍の牙をもぎ取ると、接近したのを幸いとして剣を抜いて斬り付けた!
「ぐっ! やる」
 守上の機体は斧を持った右腕を剣で斬り落とされ、龍牙の左腕も歪に変形しており、両腕が一瞬にして使えなくなった。
 守上の後退に合わせて間合いを更に詰めてくる敵機。
「ムシウタイはやらせないよ!」
 石田が大鎌のリーチの長さを活かして敵機の刃先を引っ掛けて肉薄!
「SESエネルギーを機杭に集中! 最大インパクトでいくぞ!」
『リョーカイ』
 石田機最大の威力を誇る機杭「ヴィカラーラ」が、先程守上が斬り付けた損傷部分に打ち込まれる!
「ドゥルガーの楔という異名は伊達じゃないよ」
 流石の新鋭機と言えど、同じ場所に攻撃を受けて無傷ではいられない。小規模ではあるが爆発音と共に黒煙を上げる敵機。
 だが次の瞬間、敵はサマーソルトキックで石田機の頭を潰して剣を一閃!
「げっ!」
『マエ、テッキ、キテル』
「それぐらい分かってるよ! このぉ!」
 石田はサブモニターに切り替え、大鎌を振るって牽制する。
「がはっ‥‥げほっげほっ!」
『ムチャシヤガッテ』
「まだだ! まだやれる!」
 石田は前回の出撃の時に重症を負い、その時にエミタもダメージを受けていた為、興奮すると吐血する事があった。
 エミタの調整ミスといった事は有り得ないものの、損傷によるダメージの蓄積による不具合は十分に有り得た。
「あの馬鹿っ、体調も考えず突っ込みやがって!」
 イスルは石田の事が心配な分、逆に熱くなってキレた。所謂可愛さ余って憎さ百倍にも似た感情である。
「すぅ‥‥はぁ‥‥っ‥‥ファイヤ!」
 イスル機の放ったスナイパーライフルの一撃が敵機のスラスターの一部を貫く。これによって敵機は挙動を乱し、石田機が態勢を整える機会を与える事に成功した。
「イェーガーさん、すまない」
「ったく、世話掛けさせんなっての」
 イスルは笑顔で優しく怒る。

「こちらAnbar、周囲の雑魚は粗方片付けた」
 場の空気が少し和んだ所に、Anbarから通信が入る。彼と火絵の二人は味方機が全力で戦闘を行えるよう、周囲のヘルメットワーム掃討を行っていた。
 ドラゴン1が救護活動中と言う事も考慮し、その護衛も兼ねた判断であった。
「うも! Anbarん、今日も大漁だったかい〜? こっちは撃墜記録自己ベスト更新中さー♪」
 火絵は上機嫌である。
「悪い、多分俺の方が2機多いと思う」
「え”! でわでわ『蝿』を落して、今日のエースは頂きだー!」
 火絵が一気にブーストで敵機に迫る。
「あいあい〜い、それでは今日もハピハピ笑顔で〜レディ――GO!」
 火絵の猛追に気付いた敵機は下限方向に急降下。火絵の機体もそのまま90度に曲がって落ちる。
『お〜い、あんまり飛ばすナヨ。酔いそうダ』
「おうおう! 酔ったら酔い止め薬があるから、後で分けてやるよ」
『なら安心だ‥‥ってマテ』
 再び相対速度が縮まる事でスローモーション世界が到来する。
「蝿だけに蝿が止まって見えそうだ」
『笑えねェぞ、ゴラァ!』
 火絵はスラスターライフルトリガーを引く――。全弾外れたものの、敵機の動きを鈍らせる事が出来た。
 オーバーシュートの瞬間、ソードウィングで切り刻む。
「燃料が残り少ないんでな。これで終わりにしたい。援護を頼む」
 夜十字が迫る。
 イスルとAnbarがスナイパーライフルで敵機を牽制、動きを封じた。
「トリガー、タイミングは合わせる。コンビネーションで撃ち込むぞ」
「了解です」
 夜十字はソードウィングで敵機のもう1枚の羽を斬り落とす――。そこへトリガーがバルカン集中させる!
 完全に挙動を乱して隙を作った敵機に、夜十字の練剣「メアリオン」が止めを刺した――!

●戦い終わって‥‥
 死闘の末新鋭機を葬られたバグア軍は撤退を開始。
「生き残ったか。まだ、現を彷徨うとするかね。こちらラグナロク隊ゲシュンペスト、これより帰投する」

 無事任務を終えたラグナロク隊はエルダに帰還、サロンに集まっていた。
 全員がグラスを掲げ、地球に向って乾杯をする。
「翼を並べて共に戦った古き戦友達に――」
「今を築いてくれた先輩達に――」
『乾杯!』

(END)