タイトル:コンビニ店長の憂鬱マスター:水無瀬 要

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/03/04 02:37

●オープニング本文


 OSAKA文化学術研究ミレニアム。
 通称エイジア学園都市は安全に学業を受けたい市民の要望に関西UPC軍が応じ、ドローム社が資金の大半を出資して再開発・整備が進められている学園都市だ。
 保育園や幼稚園から小・中・高・大・院まで学校は完備され、またドローム社をはじめとするメガコーポレーションの研究所までもが立ち並んでいる。
 大阪府北西部の一部を大々的に使ったこの学術研究都市は日夜、創造的な学問や文化の発信の拠点となっていた。

 <コンビニ・エイジアマート>
 『エイジアマート』は、エイジア学園都市内に数店舗の事業展開を行っているコンビニエンスストアである。
 客層は勿論学生主体であり、数十校もの教育機関の密集する学園都市の『食』を支え、昼は学食を買いそびれた学生で賑わい、夕はクラブ活動で小腹を空かせた学生達が下校時に立ち寄る『いつもの場所』なのだ。
 店内には飲食スペースも設けられており、喫茶店代わりに利用する学生も非常に多いのが特徴だ。

「あれ? 売り切ればっかだね」
 御津川 千奈(gz0179)は、今日もお気に入りのファーストフードを注文しようと店内に入ったのだが、売り切れ表示ばかりで驚いてしまった。
 更に店内を見渡すと陳列棚の商品も空きが多く、何だか寂しい店内へと変貌を遂げていた。
 よく見ると店長の顔色も悪く、何か思い詰めた表情でいつもの笑顔が消えていた。
「あのー、何かあったのですか? 売り場が何だか寂しいのですが‥‥」
 千奈は思い切って店長の『深町』に聞いてみる。
 深町店長は、千奈の顔を見て少しどうしようか迷った挙句、静かにこう言った。
「申し訳ありません、便がまだ到着しておりませんのでご迷惑をお掛け致します」
「そうなんですか‥‥」
 千奈は普段は『だねだよ口調』なのだが、目上相手には丁寧――完璧では無いが――な敬語で話す。
「本社の方には連絡を入れておりますので、今暫くお待ち下さい」

 翌日になって、千奈は再びエイジアマートに立ち寄ったのだが、商品はまだ入って来ていなかった。
 さすがに品切れが数日続くと客足も遠のき、いつもは色とりどりの学生服姿を店内に見る事が出来るのだが、今は閑散としていた。
「‥‥」
「いらっしゃいませ」
「詳しい事は分かりました?」
「いえ、どうやら本社も不測の事態に混乱しているようでして‥‥申し訳ございません」
「あの‥‥少しお力になれるかも知れませんので、都合の良い時間帯で結構ですので、ご足労頂けませんか?」
「はい‥‥後20分もすればバイトの子が来てくれるので。あの‥‥どこに行かれるのか聞いても宜しいでしょうか?」
 現状を少しでも良く出来ればと思い了承してみたが、よくよく考えてみれば『常連客』に話すべき内容では無かったと後悔していた。
「この学園都市内で起こった諸問題解決のよろず相談所があるんです。通称なんでも課分室と呼ばれています。そこの室長さんに一度相談してみようかと思いまして」
「分かりました」
 それから20分後、千奈と店長の二人は、諸事問題対策課分室(通称:なんでも課分室)へと向かった。

 <諸事問題対策課分室>
「それはお困りですねぇ」
 室長のアンジェラ・ブロウ少尉は、店長の切羽詰まった訴えに同情を隠せなかった。
「マイホームを諦めてコツコツと貯めた資金でようやく持てた店ですので、正直こんな事で潰したくはないです」
「お気持ちは痛い程分かります‥‥ではこちらでも少し調査させて頂きますね。お手数ですが、本社の連絡先やご担当者のお名前など教えて下さいませんか?」
「ありがとうございます!」
 店長は余程嬉しかったのか、ハイテンションぎみに礼を言う。
「いえいえ、これも仕事ですから」
 アンジェラはにっこりと微笑み、手に持っていた湯呑みを口を付けた。
「ふぅ〜‥‥日本の緑茶はおいしいですね」

 <ラストホープ・UPC特殊作戦軍本部ロビー>
 それからしばらくして、ラストホープに依頼が上がってきた。その後の調査でキメラの存在が確認された為である。
「この所エイジア学園都市方面への商品搬送車両が、次々と消息不明となる事件が続出しております」
「場所は奈良県の山中。今回の任務で能力者の皆さんには、搬送車両に同乗して『囮』になって頂く事となります」
「車両の方は軍が手配してくれますので大丈夫です。しかし、車両の破損は『厳禁』との事ですので、キメラが現れた後の対応につきましては慎重にお願いします」
「尚、今回の依頼には、エイジア学園都市に通うサイエンティスト1名も参加を希望しておりますので、よろしくお願いします」

●参加者一覧

リュイン・グンベ(ga3871
23歳・♀・PN
紅 アリカ(ga8708
24歳・♀・AA
天城(ga8808
22歳・♀・ST
瑞姫・イェーガー(ga9347
23歳・♀・AA
女堂万梨(gb0287
28歳・♀・ST
RENN(gb1931
17歳・♂・HD
大槻 大慈(gb2013
13歳・♂・DG
ドニー・レイド(gb4089
22歳・♂・JG

●リプレイ本文

●囮作戦開始
<奈良県山中>
 能力者達は、一旦奈良市内にあるエイジアマート物流センターに集合し、そこで物資を積載した輸送車両に同乗。現在、大阪北部地域に向けて山中を疾走していた。
「こちらミズキ、今の所異常なしです」
 ドラグーンの柿原 錬(gb1931)と、その姉・柿原ミズキ(ga9347)は、何度目かの定時連絡を行う。彼らは斥候の為、輸送車両よりも先行していたのだ。
 ミズキは弟・錬の操るAU‐KVの後部に座っているのだが、元々AU‐KVは単座シートの為、後部カウルの上に直接座らなければならなかった。
(「座り心地は悪いけど我慢しないと‥‥それにしても錬の背中逞しくなってる。ここに来た頃は全然頼りなかったのに」)
「お姉ちゃん、今なんか言わなかった?」
「何でもない、それより仕事に専念する」

 輸送車両の殿を務めるのも、同じくドラグーンのAU‐KVである。
 大槻 大慈(gb2013)とグラップラーのドニー・レイド(gb4089)のコンビである。二人はカンパネラ学園の生徒と聴講生であり、友人同士でもあった。
「ケツが痛いかもしれないけど、我慢してくれよ〜。本当は女の子の方が良かったんだけどな〜」
 大槻はドニーに軽く冗談を言って緊張を解す。
「それはすまない。大慈が男なのが俺も残念だよ」
「まあ、お互い様って事でよろしくな」
 上手い具合に緊張が解れた矢先、先頭を走っていた柿原姉弟より無線が入ってきた。
「前方に大型トレーラーを発見。道幅が狭くなってるから通過する時は気を付けて」
「了解〜」
 大槻はこの日の為に自前のインカムを持って来ていたので、AU‐KVを運転中でも通信が可能だった。

 一方、ドラグーンに前後を護られながら安全運転を行っている輸送車両にも、ミズキからの通信は届いていた。
「こちら輸送車両、了解だ。引き続き警戒を頼む」
 通信を終えたリュイン・カミーユ(ga3871)は、運転手にトレーラーへの注意を呼びかける。
 輸送車両を運転しているのは、能力者ではなくてエイジアマートの配送員である。荷物の受け渡し手続きは、配送コースや伝票の受け渡し等の専門知識を要する為、止むを得ない措置であった。

●キメラ出現!
 柿原姉弟のAU‐KVは、そのままトレーラーを素通りしていく。色が黒塗りで少々怪しい雰囲気はあったが、特に異常は見受けられなかったからだ。
 カーブを挟んで輸送車両がトレーラーに近づいて来た時、林の中から1匹の昆虫が輸送車両のフロントガラスに張り付き酸を吐いた!
「うわっ!」
 運転手は驚き、慌てて急ブレーキを踏む。
「ん?」
 大槻達も輸送車両の異常に気づき停車。レイドは警戒しながら降車し、武器を手に持ち様子を見に行く。
 大槻もAU‐KVを装着して後に続いた。

「ちっ、羽付きか!」
 カミーユは車両の停車を確認すると、助手席から素早く降りる。現れたキメラは、全長2m程の単体種『キメラアント』であった。
 後部シートに座っていた3名も素早く手筈通りに動き始める。
「‥‥運転手さん、戦闘が始まりますので、指示に従って行動して下さい」
 運転席の真後ろにいた紅 アリカ(ga8708)は、他の能力者達の降車を確認すると助手席に座り直し、運転手と車両の避難誘導へと移行した。

 天城(ga8808)は降りるとすぐさま荷台を開けて、御津川 千奈(gz0179)にキメラが現れた事を告げる。
 千奈は勢い良く荷台から飛び出し扉を閉めた。
「アリカさん、全員下車確認。いつでも出れますよ」
 天城が紅に報告。

「こいつを引き剥がすぞ! 女堂、支援を頼む」
 サイエンティストの女堂万梨(gb0287)に錬成弱体を施して貰うと、鬼蛍を一閃!
 キメラアントの足を切り裂く。
「援護します」
 覚醒して攻撃的性格に変貌した女堂も、エネルギーガンの照準を合わせて放つ。覚醒状態の彼女の髪がゆらゆらと蠢く様は、まるでメデューサを思わせた。

 足を数本切られたキメラアントは、輸送車両から離れて上空へと逃げる。それをチャンスと見た紅は、すぐさま運転手に指示を出した。
「‥‥急いでください。車両や荷物は勿論、貴方にも被害を出すわけにはいかないわ」
 運転手は指示通りにアクセルを踏んでこの場を離れようとした――その矢先、先行した柿原姉弟から慌ただしい無線が入って来る。
「みんな気を付けて! 大きいのがそっちに向かってるよ!」

●巨大な「何か」現る
 先行した柿原姉弟は、キメラ出現の報を聞いて戻る途中、再びさっきの大型トレーラーが視界に入って来ていた。
 カーブの多い山道なので、トレーラーの怪しい動きは輸送車両からは見えていない。
「あれ? あの人達何してるんだろう」
 見ればトレーラーの乗員が幌を外して、積荷を道の真ん中で降ろしていた。
 それが『普通の積荷』であれば、特に気にする必要も無かったのだが――明らかにそれは普通とは違っていた。
「お姉ちゃん、あれって‥‥」
「錬、止まって!」
「うん」
 錬はAU‐KVを停車させてミズキを降ろし、素早く装着状態へと移行する。
 キメラは予め指令を与えられているようで、柿原姉弟を無視して真っ直ぐに輸送車両目指して歩き出し始めた。
「みんなに知らせないと。 錬は乗員達を押さえて!」
 無線機を取り出したミズキは、後方の輸送車両へと緊急連絡を行った。

「‥‥運転手さん、転回して下さい。後ろに下がった方が良いみたいです」
 連絡を受けた紅は前進を諦め、後退の指示を運転手に出した。
 紅は普段無口であまり話さないが、必要最低限度の的確な指示で輸送車両を誘導していく。

 御津川 千奈と女堂万梨というサイエンティストコンビの連携で、味方の武器に次々と錬成強化を施し、戦闘準備が行われる。
「デカいキメラが来るらしいから、こいつを即効で叩く!」
 カミーユの言葉を合図に、全員がキメラアントに襲い掛かる!

 まずレイドがアサルトライフルで先制の一撃を加え、カミーユ、天城、大槻、女堂、千奈と、1対6による圧倒的な火力の前に、キメラアントは反撃の隙さえ与えられず簡単に討ち取られてしまった。
「あっけなかったな‥‥」
 大槻が物足りなげに呟く。
「こいつは車両の足止め要員のようだな。どうやら物資消失事件の本命は大きい方のようだ」
 戦闘に集中していたので気が付かなかったが、重みのある足音がこちらに近づいて来ていた。
「来るぞ!」
 前方側のカーブより、ぬうっとそのキメラは姿を現した。

 キメラは全長8mのキメラ『ビッグペンギン』であった。
 通常のビッグペンギンは5m前後であるのに対し、このキメラは明らかにそれを遙に上回る巨体である。

●巨大ペンギンVS人間
「ひょえー、でっけえ」
「錬成弱化で支援します。御津川さん、皆さんに錬成強化の再掛けをお願いします」
 女堂はまだ経験の浅い千奈に指示を出す。
「うん、了解だよ!」
 二人で分担して錬成スキルをそれぞれ行う間、合流の為に再びバイク形態となった柿原姉弟がキメラを追い抜いて戻って来る。

「行くぜバンちゃんっ!」
 錬成再強化が終わった大槻が、竜の爪を使ってキメラの足を狙い突撃を敢行した!
 しかし、キメラのフォースフィールドは通常よりも固く、堅牢さを誇っていた。
「ありゃ、効いてないって顔してるな」
 キメラは短いが、コンパクトに回る腕で大槻を張り飛ばす。
「大慈!」
「痛てて‥‥悪い、心配させちまった」
 大槻は駆け寄ったレイドと共に、少し距離を取った。
「アレを近づけるのは危険だ‥‥フクロ叩きで良い。足を止めて、削るぞ!」
 レイドの言葉で、近づくと手痛い反撃を受けると分かった能力者達は、射程の長い武器に持ち替えての派状攻撃に移行する。
 これにより堅牢ではあるが、ダメージは徐々に通っている感触はあった。
 時折キメラが逆上して能力者達を張り飛ばそうと果敢に腕を振り回す。
 そして勢いを付けて体当たりをするべく、近くにいるカミーユ目掛けて迫って来た。
 彼女は余裕で避けて痰火を切る。
「我に攻撃を加えるなぞ、100年早い!」
 キメラは勢い余って林に突っ込み、木々を次々となぎ倒す。
「あんなの当たったら大変だね」
 千奈は大槻に錬成治療を施しながら、戦いの激しさを肌で感じてそう呟く。彼女は学生でもあり、まだまだ経験の浅い能力者であるので、それは仕方の無いことでもあった。
「あんがとな、おかげで痛みも消えた」
 千奈は笑顔でそれに応える。

 千奈が大槻の治療中に、女堂は錬成弱体を行いながら、自身もエネルギーガンを使って戦いに参加し、よくチームを支えていた。
 普段はおどおどしている彼女も、覚醒すると行動が逆転するようである。

「自分もキメラの足を狙いますよ」
 天城は即射を使って洋弓「アルファル」を連射して行く。
(「エレキギターの出番は今回は無いかな‥‥」)
 彼女は超機械「ST−505」も準備していたのだが、今回は慣れない武器を使える余裕は無かった。

 レイドは当初飛行タイプのキメラを予想していたので、アサルトライフルを準備していた。
 しかし鳥は鳥でも、大食漢巨大ペンギンであった事から、機械剣αによる接近戦に切り替え、グラップラー独特の素早い身のこなしで、ヒット・アンド・アウェイ攻撃を繰り出し翻弄する。

「よしっ、もういっちょ行くか〜!」
 大槻は再び風天の槍を構えて攻撃を行う。今度は竜の翼で勢いを付けての全力突撃である。
「いっけー!」
 キメラの足に深々と槍が突き刺さり、夥しい血が足元から流れ落ちる。
「今だ! 一気に突き崩せ!」
 カミーユの言葉に全員が火力を集中させる。勿論大槻が深手を負わせた右足にである。
 遠距離攻撃による集中砲火の後、近接武器を持ったカミーユと柿原ミズキの二人が更に斬りかかる。
 傷口は益々拡がり、もはや立っているのがやっとであった。
「ミカエル、僕達の力をキメラに見せつけてやろう」
 キメラの弱体を感じ取った柿原 錬は、AU‐KVミカエルに話し掛けたかと思うと、バイク形態でキメラを挑発する。
 しかし出血によって麻痺したキメラの右足は全く動かない為、錬を張り飛ばそうと腕を振り回した瞬間キメラはよろめく。
「倒れるぞ!」
 ズン! という激しい砂煙と轟音を響かせてキメラは転倒する。
「今だ、頭を狙え!」
 こうなればもうキメラに待っていた選択肢は『死』のみである。
 8人の一点集中攻撃によって頭は砕かれ、キメラ『ビッグペンギン』は絶命した。
「是‥‥結束」
(「これで‥‥終わりだな」)

「あ! そう言えばあのトレーラーどうしよう?」
「トレーラーがどうかしたの?」
 天城が聞いて来る。
「このペンギンキメラを輸送していた大型トレーラーがこの先に止めてあるんだけど、僕とお姉ちゃんの二人で乗員は気絶させて幌のロープで縛ってあるんだ」
「そいつで輸送してたんだね」
 一同は今回の事件で痕跡が見付からなかった理由を理解した。

●激辛好きな美女は嫌いですか?
 トレーラーの乗員達とキメラの遺体は、最寄のUPC軍が回収していった。
 その後避難していた輸送車両が戻って来ると再び配置に付き、一行は山を下って大阪府北部へと入って行く。

 ここまで来れば治安度は一気に上がり平和そのものであった。
「学園都市って聞いてたから学校ばかりかと思ったけど、色々なビルが並んでますね」
 天城が窓の外の景色を眺めて感嘆する。
「うん、ここにはホテルもあるし、スポーツセンター、あと忍者屋敷なんかもあって面白いよ」
 千奈は女堂と交代して後部座席に来ていた。練力の使い過ぎで疲れたので、人のいない荷台で休みたいとの申し出であったからだ。
「ほお、シミュレーションセンターまであるのか」
 カミーユが興味を示した建物は、正式名称を『ドリーム・パレス』と言い、ドローム社直営にアミューズメントセンターである。
 KVのシミュレーションゲームを堪能出来るとして、コアなゲーマーにも人気のスポットであった。

 その後一行は、しばらくしてようやく目的地のエイジアマートに到着した。
「お待ち申し上げておりました」
 店長の深町は配送トラックの到着を確認すると、嬉しそうに走って来た。
「搬入手伝おうか? どうせ暇だし」
「僕たちも手伝います」
 大槻と錬の提案により、搬入作業を手伝ったお陰で作業時間は大幅に短縮、店長は何度もお礼を言った。
「皆さんのお陰で店を閉めずに済みました。感謝の言葉もありません。ありがとうございました」
「いや、これも仕事だからな。店長、つかぬ事を聞くが‥‥ハバネロまんはあるかな?」
 カミーユは少し気になっていたので聞いてみる。
「ございますよ。お礼に無料でお包み致しますよ。幾つでも結構ですので、ご注文下さい」
「ふむ‥‥では厚意に甘んじよう」
「わーい、店長さん、ありがとう」
「店長、太っ腹!」
 別にお礼目当てでやっている訳では無いが、やはり人の厚意は嬉しいものであるから、断る理由は見当たらなかった。
「かしこまりました」
「じゃあ、私あんまん下さい」
「俺はこのピロシキまんを」
 全員が順番に注文していった。

 依頼も無事に解決し、コンビニの飲食スペースの一角を借りて中華まんパーティが開かれた。
「‥‥! リュインさん、何してるんですか!?」
 紅がカミーユの行動を見て、彼女にしては珍しく素っ頓狂な声をあげる。
「ん? タバスコを掛けているんだが、何か問題でも?」
「いえ、辛くないんですか?」
「全然」
 カミーユは全く問題無しと言った表情でタバスコ入りのそれを口に運び、美味しそうに食べる。
「もしかしてリュインさんの脚線美の秘密って‥‥激辛嗜好のお陰かな?」
 千奈がカミーユの脚の細さを見てそう言う。
「ふふ‥‥そうかも知れんし、違うかも知れん」
 些か話をはぐらかされた気はしたが、『そうなのかー』とその場にいた全員が納得してしまったのは言うまでも無い。
 千奈が羨望の眼差しで見つめる程、見事な脚線美を誇っていたのだ。

「中華まんの基本は肉まんだと思うんだが、違うのかな?」
「いえ、あんまんでしょう」
「なんで?」
「饅頭は中国が起源ですから」
「ふ〜ん‥‥でも豚を使った料理も結構古くねぇ?」
 女性達の談義の片隅では、大槻とレイドが饅頭の起源について花を咲かせていた。

 こうして、コンビニ物資消失事件は無事解決し、後日依頼成功の報告が告げられた。

●事件の真相
 関西UPC軍より、捕まえたトレーラーの乗員4名の調書が報告書に添付してあった。
 尋問によって判明したのは以下の事項である。
 1.4名は何れも親バグア派の工作員。
 2.食品物資の大半をビッグペンギンに飲み込ませていた。
 3.食べられない物の一部で溶解可能なものは、キメラアントの酸で溶かしていた。
 4.金属である配送トラックは、トレーラーに積んで運び去っていた。

 以上。