タイトル:僕こんな催促いやだマスター:御神楽

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/09/07 15:31

●オープニング本文


●メール
『ミーシャへ げんきですか、いまめーるしてます』
「‥‥」
『おかあさんはじめてめーるしたから、よみにくてごめんね』
「‥‥」
『ふりこんでくれたおかねありがとう。たいせつにつかいます』
「‥‥」
『ところで、彼女はできましたか? お嫁さんは見つかりましたか?』
「なして突然正確な文面になるべさ!?」
 ベッドの上で一人の少年がじたばたと暴れていた。
「‥‥ど、どうするべ」
 ミーシャ君はシベリアの田舎も田舎、超絶ド田舎出身の男の子。これでも能力者であり、傭兵として残る事になった。今はベルリンにアパートを借り、何とか生計をたてている。僅かではあるが、実家に仕送りもしている。
 依頼の方はえり好みもせず、まぁまぁやっている。難易度の高い依頼こそ請け負っていないが、それこそ、迷い猫探しから畑を荒らすキメラ退治まで。
 本人は都会に憧れてこっちに出てきて、とりあえず父親の許可は得られた。
 問題は、嫁探しである。
 むしろこっちに残れ、とまで言われてしまったのは嫁探しの件だ。
 都会で嫁っ子を見つけて村に連れ帰れ、等と無茶を言われている。彼は現在16歳。村人達もこの年齢で嫁を連れ帰れるとは思っていないだろうが、彼女はどうした彼女はどうしたとやたらとせっつかれる。
「んだども、インターネットなんてよく繋がったっぺな‥‥」
 まぁ、深い事を気にしても仕方が無い。
 これまで貰った手紙でも『彼女は?』『嫁は?』と急かしていた。
 まぁ実際に結婚なんて論外だと言ったって、そろそろ、彼女ぐらいできたよ、と報告したいところ。それに実際、彼だって彼女とかそういった事に興味が無い訳では、ないし。

「‥‥え? 困り事?」
「そうずら」
 彼が相談しているのは、同じアパートに入っている他の傭兵。
 なら、市内のよろず掲示板にチラシでもはったらどうだろう、と言われ、ではと向かおうとした。
「何を張るんだ?」
 問われて、説明するミーシャ。曰く、彼女の作り方を教えてくれ、というもの。
「馬鹿だなぁ。女性の口説きかたを聞きたいって?」
「うん‥‥」
「あぁ、そうだ。今度能力者と一般人が交流するイベントがあってな、結構な人数が参加するらしいぜ。会費を払えば誰でも参加できるって事だし、そこに一緒に行ってくれる人を募集したらどうだ? 女性の口説き方なんてな、パーティーにでも行けば自然と覚えるもんだよ」
「‥‥よし。そうするずら!」
 という事で、チラシが一枚、掲示板に張り出された。
 チラシの内容は単純明快。一緒にパーティーへ行きませんかというもの。署名はミーシャだけでなく、アパートのほかの住人もだ。要するに誘い合わせてパーティーに行くだけ。そんな大事な内容は記されていない。

●参加者一覧

神無月 紫翠(ga0243
25歳・♂・SN
香原 唯(ga0401
22歳・♀・ER
流 星之丞(ga1928
17歳・♂・GP
愛輝(ga3159
23歳・♂・PN
忌咲(ga3867
14歳・♀・ER
蛇穴・シュウ(ga8426
20歳・♀・DF
ナナヤ・オスター(ga8771
20歳・♂・JG
福居 昭貴(gb0461
19歳・♂・SN

●リプレイ本文

 アパートを訪れた傭兵達を、ミーシャが出迎える。
 待ってましたといった風に飛び出し、彼は顔を輝かせ、心強い援軍を出迎えた。
「やあミーシャさん、お久し振りですね。お元気でしたか?」
 ベレー帽を脱いで、ナナヤ・オスター(ga8771)が軽く会釈する。
 他にも、福居 昭貴(gb0461)達も前回彼と顔を合わしていて、久しぶりと挨拶を交わす。一方、もちろん今回初めて顔を合わせる傭兵も多い。
「あなたが‥‥ミーシャさんですか?」
 やや屈み気味に、ミーシャと目の高さをあわせる神無月 紫翠(ga0243)。
「‥‥神無月と申します‥‥本日は、宜しくお願いします」
「こ、こちらこそ宜しくお願いするずら」
 礼儀正しい深い態度に、ミーシャは思わず硬くなる。
 それで――と、顔を出す忌咲(ga3867)。
「ミーシャ君、彼女が欲しいんだって?」
「うん。村の皆から催促もされてるだよ。嫁こさ連れてけえれって」
 頬を赤くし、髪を掻くミーシャ。
「カーチャン‥‥」
 鼻をちんとして、蛇穴・シュウ(ga8426)はわざとらしく涙を拭くまねをしてみせた。
「涙なくしては聞けない話じゃぁありませんか、ミーシャ君。はやぐ嫁っこさ見づけて‥‥あら。訛りがうつっちゃった?」
「でも、ミーシャさんも大変ですねえ」
 ナナヤは脱いだベレー帽で口元を隠し、気まずそうに、頬を赤く染める。
「‥‥実を言いますと、ワタシも色恋の沙汰に関しては疎いものでして。何とかなりそうでいて、こればっかりは難しく‥‥逆にご教授願いたいと言いますか‥‥」
「そうですね‥‥いきなり‥‥彼女を作ろうと、思っても無理‥‥ですよ?」
 紫翠の言葉に、そんなものなのかと、ナナヤとミーシャは首を傾げる。
「んー‥‥んだば例えば、紫翠さんがナンパされたらどう返事するべ?」
「あの‥‥自分、男ですよ? 第一こんなに‥‥背の高い女‥‥いませんよ?」
「‥‥はっ!」
 今頃気付き、手を叩く。
 紫翠の容貌は中性的だが、それでも背がそれなりに高い。ので、皆が皆間違うほど女性らしいという訳じゃない。
「とにかく、まずは服装のコーディネイトから始めましょう」
 香原 唯(ga0401)がにっこりと笑い、流 星之丞(ga1928)へ振り返る。
 星之丞は、懐から数冊の本を取り出した。
「ミーシャさんも大変ですね。しかし、これさえあればもう安心です」
 本のタイトルは『君にもできる! お嫁さんの見つけ方入門』や『ラスホプの母が教える、必勝恋占い』等々。本当に役に立つのか少し心配になる扇情的タイトルだった。
「えぇと、今日のラッキーカラーは黄色みたいですので‥‥」
「黄色‥‥?」
「黄色いマフラーでもしていきましょうか?」
 自分のマフラーを外し、ミーシャの首に掛けてやる。
「私も黄色いアイテムを持ってきました。この安全ヘルメットです」
 続く唯。彼女としては、ミーシャの人柄は評価しているが、やはり存在感の弱さが気になっていた。背景になってしまっては勿体無いので、とにかくインパクトのある格好が必要だ。
 差し出されたヘルメット。受け取るミーシャは、素直にヘルメットを被った。
「似合ってるだか?」
 何というか、一種過激派のようでもある。
「初対面で必要なのは一度見たら忘れられないインパクト! 外見的誤解は後から何とでも修正できます」
 自信たっぷりに解説する唯。
「本当だべか?」
「多分、何とかなると思います」
「‥‥うーん?」
「何とかなるんじゃないかな」
「え‥‥」
「まぁ、ちょっと覚悟は‥‥」
 一抹の不安が漂った。


●いざ!
 ――パーティー会場。
 ミーシャの奇異な姿に、参加者たちが目を丸くする。
「先生、これは、やっぱり少し失敗だったのでは‥‥」
 困ったように顔を向ける昭貴。対する唯もヘルメットはちょっとオーバーだったかな、と思わないでも無いのだが‥‥。
「いえ、ですが大切なのは他人を好きになる前に、自分を好きになる事です。そして恋の感情を知る事なのです」
 唯のもっともらしい説明に、なるほどと頷く昭貴。
 けれど、あの格好の自分を好きになるのかどうか、そんな疑問が少し脳裏を過ぎったりもして。
「人の好き嫌い、付き合いって、難しいな‥‥」
 口を挟む愛輝(ga3159)。彼の服装はミーシャと違い、極めてシンプルであり、いささかも違和感が無い。
「んー‥‥」
「どうかしました?」
 昭貴に問われ、黙る愛輝。
 お節介心でミーシャに服を変えた方が良いと伝えようかとも思ったのだが、今更意味があるとは思えなかった。特に、ミーシャのようなタイプは、下手に着飾るよりも直球勝負の方が良いとさえ思った。
「まぁ、あまり無理をしてもボロが出るだろうし、相手を不快にさえしなければ‥‥」
 喋りながら昭貴の方へ振り返った愛輝が、彼を見るなり言葉に詰まる。
「??」
 真面目そうな顔で眉間に眉を寄せ、昭貴は首を傾げる。
 その仕草にますます、愛輝は言葉を失い、やがて――
「‥‥ぷ」
 普段あまり笑わぬ彼も、その様子に思わず吹きだした。本当に微かにではあったが、耐え切れなくなって、彼は一目散にベランダへと逃げていく。
「うーん?」
 昭貴の頭上では、巨大な虹色アフロがその存在を誇示していた。


「いい、ミーシャ君?」
 キョロキョロと辺りを見回すミーシャ。
 そんな彼を捕まえて、忌咲はこほんと咳を払う。
「私からは、特にアドバイスみたいなものは無いけど、ナンパはあくまできっかけだからね」
「う、うん!」
 小さく手を掲げ、ミーシャが応ずる。
 よしと頷き、忌咲は話を続けた。
「私の場合、ナンパされた経験はあまり無いし、声を掛けてくる相手にはまず警戒する事にしてるけど‥‥」
「‥‥何故だべ?」
「何故って‥‥」
「ねぇねぇお穣ちゃん‥‥」
 まさか、と思って振り返る忌咲。まさか、今、このタイミングでか。そんな思いが頭をもたげる。
「その手のもの、お酒だよね?」
 困ったような表情で、スーツ姿の男性が立っていた。
 声を掛けてきた相手の目的が違うと解って、忌咲は、安心すると同時に、別の意味で溜息をつく。懐に手をやると、無言で身分証名称を取り出した。男性は、カードを見て、信じられない、という視線で彼女とカードを交互に見比べた。
「一応これでも大人だから、お酒は呑んでも良いんだよ」
「は、はぁ‥‥」
 忌咲は、差し返されたカードを懐にしまい込む。
「大人だっただか!?」
「これでも25歳よ」
「に、にじゅうごさい‥‥」
 ポカンと大口のミーシャ。
「これで解ったでしょう? 私に声を掛けてくるのはだいたいそういう趣味の奴。私は見た目が子供っぽいからね。彼氏とか居た事無いんだよ」
 溜息ひとつついて、忌咲は新たなアルコールを求め、人混みの中へと紛れ込む。後には、ただただ驚き、にじゅうごさい、にじゅうごさいと呟き続けるミーシャが取り残された。


 パーティー会場のど真ん中、自分の皿に山盛りの料理を載せる女性が独り。
「タダ飯、タダ酒♪」
 その正体はシュウだ。
「‥‥沢山、食べるんですね」
 隣では、紫翠がゆったりとした雰囲気で佇んでいた。
「料金分は取り返さないと」
 言っていることは普段と変わらないが、しかし、今日のシュウは一味も二味も違う。
 ニコニコ笑みなのは半分作り笑顔。これはあくまで交流パーティーなのだから、高感度アップも重要だ。
 だが、一番の違いはその笑顔ではない。
「シュウさん、楽しんでますか?」
「えぇ、そりゃもう。禁煙なのは残念ですがー」
 ナナヤと昭貴に問われ、シュウはにやりと笑い返す。
 ――と、見てみれば、シュウはなんとチャイナドレスにハイヒール。以前、シベリアを飛び出したミーシャを出迎えた時とは大違いの格好に、二人は素直に驚いた。
「セクシーでしょう? とはいえ、ヒールなんざ履き慣れてないから足が痛えのなんの」
 その様子にくすくすと笑う紫翠。
 彼の場合はスーツに革靴。小皿の上の盛り付けもそれなりに雰囲気があり、服装も極めてオーソドックス。すらりとした身体の線も相まって、或いは品があるという感じか。
「あうぅ‥‥」
 そんな雑談をかわしている彼らの元に、ふらふらとミーシャが現れた。
「あら、どうかしましたかー?」
「緊張し過ぎてるんですよ」
 答えぬミーシャに代わり、星之丞が苦笑する。
「そうですねい」
 皿をおき、腕を組むシュウ。
「最初から『嫁っこ探すだよ!』なぁんて力まずに、自然体で挑むのが一番ですよ」
「そうですね、こういうときは明るく振舞えばいいんですよ」
 そんなシュウの言葉を継ぎ、昭貴はミーシャの肩を叩く。
「いきなり口説くのもチャレンジャーですが、まずは友達作りから始めるのも良いと思いますよ。これだけ多くの人が集まっているのですし、自然と仲良くなれる人とも出会えます。ものはチャレンジですよ」
 そう言われ、ややして、大きく頷くミーシャ。
「もう一度トライしてみるべ」
 ガッツポーズをしてやる気を出すその様子に、星之丞がホッとした表情をみせた。
「頑張って下さいね、ミーシャさん。きっと‥‥ン? この紅茶‥‥なるほど、これはなかなか良い葉を使っているようで」
 ナナヤは大の紅茶派。
 思いがけず出逢った良い茶葉に、彼は満足そうに頷いた。


●彼女ゲット大作戦?
「けど、雑談って言っても難しいべ‥‥」
「まず‥‥自分の紹介から、初めて‥‥共通の話題で‥‥話を続ける事ですよ」
 なんとなくの雰囲気だけでも掴んで貰おうと、紫翠は辺りを見回す。
 近くで一人でふらふらしていた女性を見つけ、彼は歩み寄る。挨拶し、自然な流れから身近な話題へと会話を展開する紫翠。あくまで自然体に、パーティーを楽しく過ごす為ののんびりとした雑談だ。
「おぉ‥‥!」
 感心するミーシャの腕を引き、星之丞は人が輪になっているテーブルを目指す。
 その会話の中には、ナナヤの姿もあった。
「能力者の普段の生活、ですか‥‥僕達もご一緒させて貰っていいでしょうか?」
「どうぞどうぞ」
 パーティーと言っても立ち食い形式。決まった席がある訳でもなく、皆ひょいと隙間を作る。
「‥‥ぷっ」
「こ、これは‥‥!」
 皆が驚いたのは、言うまでも無い。ミーシャの格好である。
 黄色いマフラーなびかせて、工事現場のイエローヘルメット。誰が見ても驚き、ワンテンポ置いて吹きだす。
「うくく‥‥ご、ごめんなさい! でも‥‥」
「似合ってないべか?」
 きょとと首を傾げるその様子が、余計に笑いを誘う。
「ごめんごめん、悪気がある訳じゃないの。けど何でそんな格好を‥‥」
 笑いをかみ殺し、涙を拭きながら、女性が謝る。
 他の一般人達も、大なり小なりその格好に笑いを堪えているらしい。
「今日のラッキーカラーが黄色らしいから借りたんだべ」
「あら可愛い」
 思わずヘルメットを撫でる女性。
「へぇ、能力者さんでも、そういった事気にするんですねえ」
「もっと自信強い人が多いと思ってました」
 他にも、思い思いの感想が発せられる。
 意外な面でヘルメットが役立ち、それを契機に会話が弾み始めた。特に女性だけという訳ではないが、会話が弾むのは良い事だ。星之丞はさりげない所作で、飲み物を追加してくると伝えてその場を離れた。
 ナナヤは銃や弓についての傭兵らしい話題も展開している。ミーシャにも確実に解る話題は供給される筈だから、多分、大丈夫だろう。


 愛輝は一人、ベランダで空を見上げていた。
 手すりにもたれ掛かる彼の表情は、少しばかり世を倦んでいるようにも見えた。
 パーティーのざわめきに耳を傾ける。人との関係をなるべく断って生きてきたが、それでもどこかで、他人の隣が良いと思っているのかもしれない。
「それにしても‥‥交流イベントが必要なんて、そんなに溝があるのか‥‥」
「そんな事は無いと思いますよ」
 声に振り返る。
 昭貴が飲み物を手に立っていた。彼に差し出された飲み物を、軽く礼を言い、受け取る。
「様子を見ていましたが、特に軋轢みたいなものは感じませんでしたよ」
 先ほどまで遠くからミーシャの様子を眺めていた昭貴だ。その感想に大きな間違いは無い。ただ、能力者は、登場してからまだ短い。詳しい事を知っている一般人もまだ少ないだろう。
「イクゾコフの様子は?
「ミーシャ君でしたら、大丈夫そうですね」
「そうか‥‥」
「しかし、16歳で嫁探しを急かされるなんて、彼も大変ですね」
「あぁ、そうだな」
 ミーシャの境遇には、愛輝も少なからず同情している。
 彼にも、見合い話を持ちかけてくるような親戚がいる。適当にいなしてはいるが、そういったプレッシャーがどういうものかは、よく解る。
「跡継ぎなんて‥‥面倒臭ぇ」
 溜息、ひとつ。
「楽しんでますかー?」
「まぁ、それな‥‥」
「朝は赤星〜夜も赤星戴いて〜♪ 同志と仲良くコルホーズ!」
 突然響く歌声。
 二人はぎょっとして、歌姫――というかシュウを見た。
「まぁ、私はバグアどもを残らずぷち殺せれば後は‥‥」
 呑みながら喋るような器用な芸当を披露しながら、手を掲げる。
 隣では呆れた表情の忌咲。
「好きな割に、案外弱いわね‥‥」
「ぷはー! にゃはは、酔ってますね私ってば!」
 かくいう忌咲はケロリとしている。微かに赤みこそさしているが、それはもう、どこからどう見ても酔っているように見えない。うわばみどころか、もはやザルである。
「‥‥というかミーシャ君はどんな娘が好みなんでしょね? ちょっと聞いて‥‥」
 ミーシャの方角を見て、シュウはおや、と動きを止める。
 目に入ったのは、隣の女性――それもおそらくは年上の――を相手にデレデレと雑談に興じるミーシャだ。
「うぅ〜‥‥幸せそうだなぁ」
「目が据わってますね」
 気おされ、唸る昭貴。
「チクショー! 幸せになりてーなぁー! 私ぁ帰りの電車賃もねぇっつーのー!」
「く、完全な絡み酒ね‥‥っ!」
 ふらつくシュウを支えながら、忌咲はやれやれと首を振る。
 体格差が大きくて、なんだか大人を介抱する子供のようにさえ見えた。実際のところは、おそらく忌咲の方が年上なのだけど。


●戦果
「うーん、結局彼女はできなかったずら」
「初めての事ですから‥‥失敗は、つきものです‥‥そのうちいい出会い‥‥ありますよ‥‥」
 ミーシャを相手に宥める紫翠。
「そ、そうだべな。連絡先も幾つか交換したし」
 自らうんうんと頷き、ミーシャは手帳をポケットにしまう。
「その意気です。いつか運命の人に出会えるといいですね」
 唯が小さなガッツポーズをしてみせ、微笑む。
 古来より、英雄や勇者と称えられし人間の出自は王族か田舎者と相場が決まっている。もしかしたらミーシャにもその素質が‥‥なーんて、冗談半分ながらも、超前向きに彼女は考えている。
 それにそう考えれば、村勇者後援会みたいで、何だか楽しい。
 帰り際、ミーシャのPCからシベリアの村へとメールを送って、皆は解散した。お任せ下さいと大きく出たけれど、きっと大丈夫だ。