タイトル:【DR】HW迎撃戦マスター:御神楽

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/04/23 19:15

●オープニング本文


 カンパネラ学園は、あくまで生徒の自主性を重んじる。
 従って、在校生は軍事作戦の参加にあたっては、傭兵とほぼ同程度の選択権が付与されている。ただ何点か違いがあるとすれば、依頼の参加をもって単位の代わりとみなしたりする点だ。
 中でも、出撃回数が多いだろうと見込んだ生徒等は、他の傭兵達に混じり、基地へと泊り込んでいた。
 そしてその予測は――概ね正しかった。
 突如鳴り響く、耳をつんざくようなアラーム。
 待機室に控えていた数名の傭兵が、椅子を蹴って起き上がる。
『緊急事態発生。現在出撃可能なパイロット達は直ちにブリーフィングルームへ!』
 急ぎ、ブリーフィングルームへと集まる傭兵達。
 集まった彼らを出迎えて、作戦士官は地図の一点を指し示した。
 現在、UPCが建設している仮設基地、説明を聞く傭兵達自身が駐留する場所だ。位置は、ヤクーツクから西北およそ150km、ビリュイ・レナ合流地点。最終的には二本の滑走路が建設される予定であるが、残念ながら、現在は一本しか配置されていない。
「さて、悪い知らせだ。我が基地に対するヘルメットワームの接近が確認された」
 確認されている敵機は、ヘルメットワームが4機。詳細な武装等は不明だが、こちらへ接近しつつある事だけは確実だ。このままだと、後15分程度で基地上空へ到達する。
 従って、準備を整え、出撃するタイミングから前後して5分程度の間に敵機が襲来すると考えられており、素早く迎撃体勢を整えたとしても、場合によっては一部の出撃をを欠いた状態で戦わざるを得ないる可能性もある、
「いずれにせよ、敵が来た以上は迎撃せねばならない」
 それに何より、無防備なこの基地が攻撃に晒されれば、滑走路等が破壊され、損傷機等の回収率が大幅に低下する事ともなりかねない。何としても、滑走路を守らねばならないのだ。
「ただちに出撃準備を整えてくれ」
 頷き、傭兵達は直ちに作戦室を後にした。

●参加者一覧

Anbar(ga9009
17歳・♂・EP
火絵 楓(gb0095
20歳・♀・DF
仮染 勇輝(gb1239
17歳・♂・PN
須磨井 礼二(gb2034
25歳・♂・HD
ティリア=シルフィード(gb4903
17歳・♀・PN
ふぁん(gb5174
20歳・♀・DF
卯月 桂(gb5303
16歳・♀・DG
緋桜 咲希(gb5515
17歳・♀・FC

●リプレイ本文

 アイドリング状態で出撃を待つ八機のKV。
 今この時も、ヘルメットワームはこちらへ接近しつつある。のんびりしている暇は無いのだが、滑走路は一本。順番に出撃するしか無く、後続はただ待つしかなかった。
「く〜、敵さんもお暇だよね〜いちいちコッチに仕掛けて来るんだもんな〜♪」
 コックピットの中でヘルメットのバイザーを上げる火絵 楓(gb0095)。
 レジ袋からガサガサとチョココロネを取り出すや、かぷりとお尻に喰らい付く。
「良いではありませんか。笑顔で彼らを出迎えるとしましょう!」
 満面の笑顔を浮かべ、須磨井 礼二(gb2034)が通信回線で応じる。
「な、何だか、凄く上機嫌ですね‥‥?」
「スマイルスマイル、スマイレージ。笑顔貯金ですよ」
 不思議そうな緋桜 咲希(gb5515)の言葉に、やはり笑顔で応じる須磨井。
「笑顔貯金‥‥?」
 何だかよく解らぬまま、彼女は計器類を操作し、パネルを踏み込んだ。ロジーナが自身のVTOL機能を利用して上昇する。何と言うか、彼女は笑顔を貯金する前に現ナマを貯金せねばならないのだ。
「‥‥さようなら、塩スパゲティとパンの耳」
 よしと唇をかみ締める。
 怖いが、戦わなければ依頼料は得られない。ならば、やるしかない。人間、食わねば生きていけぬのだ。
「しかし運が良かった。垂直離陸可能機がいて‥‥」
 VTOL機の上昇を横目に眺めつつ、仮染 勇輝(gb1239)のR−01が滑走路を走る。ぐっと掛かる荷重に、歯を食いしばる。通常の航空機に比べ、KVは遥かに素早い展開が可能だ。そもそもこの滑走路では、通常兵器であれば距離不足なほどだろう。
「ティリア・シルフィード‥‥S−01『Sylph』」
 数十秒の時間を置いて、続けてティリア=シルフィード(gb4903)の機が滑走路に出、エンジンの回転を上げる。
「行きます――!」
 四機のKVが基地上空に揃った。
「残り3分12秒‥‥急ごう」
 仮染の言葉に、皆が頷く。彼等が加速し、前進を開始した頃にも、基地では火絵とふぁん(gb5174)のKVが離陸準備を進めている。
「‥‥くっ、この数分が待ち遠しいな」
 最後尾で出撃準備を待つ、Anbar(ga9009)。
 岩龍のエンジンが起動すると同時に、特殊電子波長装置が展開する。効果半径は20km。友軍がその半径以内で戦っている限りは、せめてもの支援となる筈だ。


●接敵
「来ましたね」
 笑顔を崩さず、須磨井が呟く。
「後続の合流まで頑張りましょう」
 シルフィードの一言に、皆が頷き、KVを加速させる。敵ヘルメットワームの数は四。対する傭兵達の数も四。増援を得るまでは、まずは同数だ。シルフィードはそっと、トリガーに指を掛ける。
 射程距離へ敵を収めた。その瞬間、連装式のロケットランチャーが火を吹いた。
 同時に、ヘルメットワームからも幾筋ものミサイルが尾を引く。
「‥‥来るっ!」
 やや遅れて、仮染機のスナイパーライフルが唸る。
 弾丸が互いに交錯する。
 敵編隊の先頭を進むヘルメットワームに、ロケット弾が次々と吸い込まれ、爆炎を上げる。爆発の中を突っ切るヘルメットワーム。そこを、仮染の放った弾丸が貫いた。
 直撃だ。
 やや速度を落とし、そのまま後備へと位置する。
 だが同様に、ヘルメットワームが放ったミサイルもまた、彼ら傭兵へと襲い掛かった。
「くっ!」
 思わず声を漏らすシルフィード。
 反撃とばかりに叩き込まれたミサイルが、装甲表層部分を剥ぎ取って、宙に舞わせる。がくりと揺れるS−01。だが、まだ戦える。
(意外と早い‥‥これが実戦か‥‥!)
「く、来るな、来るな、来るなぁー!」
 案外冷静なシルフィードに比べ、表情を引きつらせ、機体に無茶な機動を取らせて加速する緋桜。とは言え、ロジーナの運動性能は決して良いとは言えない。しつこく追随するミサイルが、ロジーナの機体後部へと喰らいついた。
「きゃあっ!?」
 炸裂音。
 恐怖を煽る振動に、息を飲む緋桜。
「――あ、だ、ダメージは!?」
 一発、二発と、敵のミサイルは容赦なくロジーナへと襲い掛かるも、その鈍重さと引き換えの重装甲が、ミサイルによるダメージの殆どを防いだ。
 のだが――
「大丈夫そう‥‥これなら落ちな――」
 三発目の衝撃が、機を大きく揺さぶる。
 突然の衝撃に背を煽られ、シートへ叩き付けられる緋桜。
 同じく爆炎の中を重装甲で突っ切って、須磨井が機を近づけた。
「大丈夫ですか!?」
「‥‥っじゃないですか」
「ん?」
 何か、様子がおかしい。
「痛いじゃないですかーっ!」
 ペダルを踏み込む緋桜。
 絶叫にも似た声と共に砲が展開される。
 操縦桿を握る彼女は半ば涙目で、半ベソをかいて、ロジーナを加速させる。距離は徐々に詰められており、既に、敵機を高初速滑空砲の射程範囲に捉えていた。躊躇無くぶち込まれる弾丸。小さな爆炎を吹き上げたヘルメットワームが急加速で逃げ回り、心なしか恐怖しているようにさえ思われた。


●追撃
 戦争の臭いがする。
 どうしても、自分が広大な戦場の只中に居る事を認識せざるを得ない。それでも今は、自分に出来る事をやるしかない。
「よしっ!」
 ぐっと、卯月 桂(gb5303)は拳を握り締める。
「お先に上がります!」
 ハッキリとした口調で告げた。
「あぁ、構わん。先行ってくれ!」
 アンバーの言葉に、卯月の翔幻が急加速を掛け、飛び上がる。
 彼女の機に続けて彼は、遠く爆炎の輝く空を見やった。
「まさか、岩龍で敵の矢面に立つ事になるとは思わなかったが‥‥」
『出撃良し! 出てくれ!』
 整備兵の言葉に頷き、アンバーはペダルを踏み込む。
「‥‥まぁ、仕方ねえか。これも仕事だ。文句を言ってる場合じゃねえしな」
 加速の後、ふわりと滑走路を離れる岩龍。これで、全員が空へ上がった。時間差での出撃は苦肉の策だが、敵の奇襲から始まった以上、止むを得ない。
「先発隊のみんな〜頑張ってる〜?」
「お待たせしました。直ぐに援護します」
 火絵とふぁんのディアブロ、R−01が並んで戦場へ接近する。
『助かりました! 今、そっちへ一機が抜けました!』
 通信機から響くのは、仮染の声だ。
 続けて、シルフィードの通信が割り込む。
『追撃入ります。そちらで迎撃を!』
 翼を傾け、反転する。
 今脇をすり抜けたヘルメットワームが、突如機動を変更した事を思うと、どこか歯がゆい。
「くっ‥‥あれが慣性制御というヤツですか‥‥!」
 腹に響く、急反転によるG。
 一拍遅れて、突破した敵機に対する追撃体勢を整える。そんな彼女を、追撃機を追撃しようと、一機のヘルメットワームが加速を掛けた。だが、そのヘルメットワームの装甲を、数発の弾丸が掠めた。
「そうは行きませんよ」
 須磨井のロジーナが側面より接近し、バルカンで牽制する。
 行く手を阻む攻撃に、追撃を断念するヘルメットワーム。1対1の戦闘では、時折危なげにもなる。が、味方機を追撃させる訳にも行かないのだ。
『こちらふぁん。敵機確認』
「了解、挟み撃ちに‥‥!」
 シルフィードの言葉に、火絵がにやと笑顔を浮かべる。
『あいあいさ〜っ♪』
 翼を水平に保ったディアブロから、英国工廠製ミサイルが切り離された。
 火を吐き、一筋の煙を残して飛び去るミサイル。絶え間なく、二発めを放つ。
 対するふぁんは、ホーミングミサイルを一発切り離すや、今度は自機を加速させた。ホーミングミサイルの弾数は少ない。3.2cm高分子レーザーによる格闘戦へ持ち込む事が彼女の狙いだ。
 ミサイルやロケット弾を次々とかわすヘルメットワーム。
 だが、火絵が放った二発めのミサイルが、その後を追い、至近距離で炸裂した。
「‥‥今だっ」
 即座に背後へと回り込み、トリガーを引く。
 銃身から放たれた閃光がヘルメットワームの装甲を焼いた。あくまで基地を目指すワームが、何とかふぁんを振り払おうと変則的な機動を仕掛けるが、彼女は、辛うじてその機動に追い縋る。
 時間にして十秒にも満たぬ追跡劇であったが、それが命取りになった。
「逃しませんよ」
 加速するS−01、シルフィード機が対戦車砲で横合いを殴りつける。
「いっただきっ!」
 その直後、バランスを崩したヘルメットワーム目掛け、ディアブロが一直線に駆け抜ける。接触。ソードウィングに切り裂かれ、装甲をひしゃげさせたヘルメットワームが、盛大に爆発を起こした。


●撃滅
 突破機を撃ち果たし、後発班が最大戦速で向かう中、最前衛に残った三機の旗色は、決して良いとは言えなかった。
「何で私を追いかけるのーっ!?」
 左右に機を揺らしつつ、緋桜が叫ぶ。
 その背後に迫り、容赦なく攻撃を浴びせ掛けるヘルメットワーム。
「ロジーナ、重いですからねえ!」
 同様に背後の敵機を振り切ろうと、須磨井は歯を食いしばった。
 断続的に放たれるミサイルが、ロジーナの装甲版をめくりあげる。いくら重装甲がウリのロジーナと言えど、こう絶え間なく攻撃を浴びせられては、何時かは限界が来てしまう。
 もっとも、その改造の度合いから言えば、ロジーナの耐久性は驚くべきものだった。
『須磨井さん! 機種を下げて!』
 突然の通信に、須磨井が機種をぐっと下げる。
 開いた空間目掛け、数発のミサイルが煙を引いた。奇襲的に飛来したミサイルが、ヘルメットワームの真正面に直撃し、その勢いを殺す。
「落ちなさぁい!」
 卯月だ。
 彼女の翔幻は、ミサイルの直撃に揺れるヘルメットワームへ向かい、そのまま徹甲弾を浴びせ掛けた。
「基地に攻撃なんてさせないよ! 大人しくそこで落とされて!」
 弾丸を吐き出しただけ、バルカン砲がザラザラと空薬莢をばら撒く。
 弾幕の中を一直線に突っ切るヘルメットワーム。
 その直後、広範囲を包み込む放電に、ヘルメットワームが焼かれた。アンバーは、仲間の攻撃を避ける為に敵が動くのを、じっと待ち構えていた。スペックに不足のある岩龍なら、戦い方を工夫するまでだ。
「悪いが――ここで落ちろっ」
 岩龍が無茶な姿勢を、ブーストで立て直しつつ、続けて短距離用AAMを叩き込む。圧倒的加速力で敵機へ突っ込むミサイル。
 次々と機に突き刺さり、爆炎を吹き上げる。
「敵機、抜けてきますよ!」
 ふぁんの警告に、彼は岩龍を躍らせる。
 ぐわんと大きく避けるや、今まで岩龍の居た空域をヘルメットワームが突っ切り、そのまま炎を吹き上げてシベリアの大地へと飛び込んでいく。
「残り二機。一気に片付けましょう!」
 シルフィードの声が、無線機から響く。
「当然っ!」
「こうなれば全機始末する!」
 火絵と仮染が、交互に無線で応じた。
 こちらの数が八機となるや、ヘルメットワームから排出される巨大な弾頭。
「何だ?」
「どうやら、爆撃は諦めようという事のようですね」
 仮染の疑問に答えるように、須磨井が応じた。
 無論、爆撃を諦めて逃げるというのであれば、見逃すのも一つの手ではあるが‥‥ここまで来て、優しく敵を見逃す理由は無い。仮染は機を加速させ、敵機を追撃する。今なら、仲間と共に敵機を包囲する事も可能だ。
 仮染からのレーザー砲、続けてガトリング砲による弾丸の嵐。
 後方目掛けてレーザーをばら撒きつつ、ヘルメットワームが振り切ろうともがく。
「ブレス・ノウ発動‥‥! 喰らいつけっ!」
 ホーミングミサイルが空を切る。
 シルフィードの放ったミサイルは正確に空を飛び、敵の機動に追随し、爆発を起こして敵機を煽り立てる。
「行けるっ」
「落っちろ! 落ちろ、落ちろぉーッ!」
 機体そのものを突っ込ませるような勢いで、緋桜のロジーナは『ストームブリンガー』によって、最適化された姿勢を保ち、ブリューナクの砲身をヘルメットワームへ向けた。
 砲身が帯電に輝き、咆哮をあげる。
 超高速で撃ち出された強力な弾丸が、一直線に敵ヘルメットワームを貫いた。
 ぐしゃりと潰れ、爆散する。
「残り一機‥‥逃げられるぞ!」
 アンバーが岩龍の機首を敵機へ向けるが、岩龍ではいささか脚が遅い。
 ブーストを展開したとて、これでは相手を追いかけるのがやっとだ。
「そうは行きません」
「そのとーりっ!」
 ふぁんがその背後を追えば、火絵がブーストを展開してヘルメットワームを追い越すほどの勢いで加速する。二機から次々と放たれたミサイルが敵の背後へと迫るが、直後、敵機が急減速を掛けた。
 狙いを外され、追い越して飛んでいくミサイル。
「――しまった!」
 逃すまじと高分子レーザーを放つ、ふぁんのR−01。
 しかし、そのレーザーはヘルメットワームを確実に捉えてはいたものの、撃墜させるにはやや火力不足だったらしい。改めて急加速を掛け、最後の一機は慌てて戦場を離脱して行った。
「はぁ‥‥惜しい事をしましたね」
 逃げる敵を見送るふぁんが呟き、仮染が通信画面に顔を出す。
「しかし、基地はこれで大丈夫です。爆弾も捨てさりましたし、あとは周囲を偵察して帰投しましょう」
「皆さんもお疲れ様です」
 須磨井がやれやれと、やや笑顔を崩した。
「うぅ、死ぬかと思った‥‥」
「良い経験になったと思うしかないね」
 緋桜の目元に、じわりと涙が浮かぶ。
 やや苦笑を浮かべて、それを慰めるシルフィード。KVによる実戦は初めて、という者も今回は多い。戦場には、ちょっとずつ慣れていくしかない。
「まあ、俺としては、コイツでドッグファイトをやらずに済んだだけ感謝だな。岩龍じゃ流石に辛い」
「えぇ、けど、今回は皆さん無事で‥‥火絵さん!?」
 アンバーの通信に返信していた卯月が、ぐらりと揺れるディアブロに声を上げた。
『うぅ‥‥』
 苦しそうな、火絵のうめき声が聞こえる。
「大丈夫ですか!?」
「うえっぷ‥‥チョココロネ10個は、流石に食べ過ぎだったよ‥‥」
 青ざめた顔で応じる火絵。
「‥‥羨ましいなぁ」
 パンの耳を思い浮かべ、はぁと溜息を吐く緋桜。とりあえず、ふらつく火絵のディアブロを最後尾に配して、傭兵達は悠々と基地へと引き上げていった。