タイトル:最後の人の役割マスター:御影友矢

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/02/24 01:19

●オープニング本文


 王流民(18)は過去を想い出していた。
 王は中国の施設で育った孤児で、孤児院で暮らしていた。
 2006年能力者が誕生してから程なくして、孤児院にも能力者の素養があるか調べに来た。
 その結果孤児院の中から王を含め8人の能力者が誕生した。
 それは王のかけがいの無い友達だった。
 バクアが攻めてきて傭兵になった時、8人で遺書を書き、自分が死んだら孤児院に送り届けて欲しいと‥‥。
 ここに7つの遺書があった。
 初めての依頼は、自分の国を守りたいという事もあって、自分たちに見合ってない、凄く危険な四川省のある山林に潜む蛇型キメラの殲滅だった。
 それは想像を絶する任務で、俺達は甘かった。
 解毒剤を所持してなく、連携せず固まって行動していたため20体近く居たキメラの前に1人‥又1人と命を散らしていき、キメラを半数残し退却を余儀なくされた
 生き残ったのは3人だが、毒に侵され、今は王一人だけとなった。
「ごほっ」
 王は血反吐を吐いた。
 王も毒に侵され、今では解毒剤も効かない状態だった。
(「残り僅かか‥‥だがお前らの敵は‥‥命をかけて俺が」)
 ここに8つの遺書があった。
 それを郵送受付に渡し、依頼に望んだ。

●参加者一覧

九条・命(ga0148
22歳・♂・PN
間 空海(ga0178
17歳・♀・SN
漸 王零(ga2930
20歳・♂・AA
南雲 莞爾(ga4272
18歳・♂・GP
緑川安則(ga4773
27歳・♂・BM
雪村・さつき(ga5400
16歳・♀・GP
イリアス・ニーベルング(ga6358
17歳・♀・PN
シイナ・ライティエッタ(ga6544
23歳・♀・ST

●リプレイ本文

 傭兵達は、山林の麓まで来た。
「まずは自己紹介でもしようか、俺の名は南雲 莞爾(ga4272)」
「俺は九条・命(ga0148)だ」
「私の名は間 空海(ga0178)です」
「我の名は漸 王零(ga2930)」
「私の名は緑川安則(ga4773)だ」
「雪村・さつき(ga5400)よ」
「‥イリアス・ニーベルング(ga6358)」
「‥‥シイナ・ライティエッタ(ga6544)」
「‥‥王‥流民だ」
 王は肩が上気し、話すのもつらそうな状態だった。
「具合が悪い奴はここで待機した方がいい。他の者は敵は蛇型キメラだ。毒が問題だが、解毒剤で何とかなる。部隊を3つにわけ、索敵。発見すれば連絡をとり、キメラを足止め、仲間を待ち、殲滅だ」
 緑川の意見には、皆も賛成したが、王は過去の出来事を、気持ちを振り絞って言った。
「我が責任を持って、一緒にに行動しよう」
「‥お邪魔じゃなければ私も」
 漸とイアリスは王と同じ班になり、話しあった結果3つの班に分けられ、後衛が無線機を持つことにした。
「忘れるな、お前の死ぬ時はこの仕事をやり遂げてからだ、死に急ぐな」
 九条の言葉に王は笑みで返した。

●B班
 中点まで皆で行き、そこからB班雪村、緑川、間は左方面の担当となり、既に覚醒状態だった。
(「悲しくもありますが、余命の使い途は人それぞれ。せめて悔いなく黄泉路に発てる様、精一杯お手伝いさせて頂きましょう」)
 間はそう思いながら捜索していた。
「素敵なお嬢さん方を護衛する騎士ねえ‥‥従兄弟殿が聞いたら喜ぶだろうね」
 と、緑川は少し冗談を言いつつB班の先頭に立ち、いざという時B班を守れるような体制にしていた。
「陸自時代には戦車やら迫撃砲やらも扱ったが、やはり、基本は歩兵だね。歩兵」
 雪村は王流民に納得の行く最期を送らせため、此方は中衛に立ち、索敵を行いつつ全周囲を警戒していた。
 さらに雪村の案で囲まれても背部を取られないよう陣形を組んで防御を固め、迎撃を主体とした戦法をとっていた。
 30分ほど立ったその時、繁みの奥から、がさがさっと音が聞こえた。
 突如三人は立ち止まり臨戦態勢を取った。
「しゃーー」
 ものすごい勢いで、雪村に3体の蛇型キメラが飛び掛ってきたが、緑川が獣の皮膚を使用し、雪村の前に立ち、蛇型キメラを振り払った。
「敵と遭遇したことを伝えてくれ! 私は‥‥足止めを行う!」
「了解!」
「了解」
 緑川は解毒剤を打ち、間は無線機で知らせ、雪村は少し後方に下がった。
「最初の一撃で素早く動き、大打撃を加える! これが電撃戦、Blitzkriegの極意だぜ!」
 緑川は、瞬速縮地や獣の皮膚などを使い、前線で積極的に攻撃を仕掛け、雪村は中衛で、ヒット&アウェイを心掛け、巻き付かれたり毒を受けたりしないよう注意していた。
「皆交戦中よ。終わり次第応援に来るから皆頑張って。狙いなさい、『ナスノヨイチ』」
 後衛の間が戦闘に参加したことで、劣勢だった戦況が5分となった。
(やっぱり大物だな。後はみんなが到着してからだな。Blitzkriegは戦力の疲弊が早すぎるのが問題だしな)
 緑川の披露が見るからに蓄積していた。
「緑川頑張れ、もう少しだよ」
(「お嬢さんの声は元気100倍かな‥‥」)

●C班
 C班は南雲と九条とシイナで右方面を担当し既に覚醒状態だった。
 九条は班の前に出て後衛に近付けさせない様に敵の頭の動きに注意して壁役の様な役割を担っていた。
(王は大丈夫だろうか‥無事成し遂げる事ができるのだろうか)
 九条は王の心配をしていた。
(「出来る事なら行きたいが‥これは依頼だ」)
 九条は気持ちを切り替え、依頼に集中した。
 南雲は中衛で、足元や茂みの動き、木の幹や枝に注意を払い警戒しながら進んでいた。
(「この依頼は、必ず成功させる‥それがせめてもの手向けだ」)
 シイナは少し離れた後方にいた。
(「仲間を沢山失ったから、仲間のもとへと逝く事を望む‥‥か。私からは彼の意思に対して何も思わない‥‥それが彼の望む事ならば、否定も肯定もしないけど‥‥何故かそこにも二律背反を感じる。言葉‥綺麗事から偽悪まで、何に対しても裏側や正反対の事柄が存在する。‥‥理解に苦しむし、信用も出来ないわね」)
これが王に対するシイナの総評だった。
(「でもまぁ‥依頼は依頼‥ちゃんとこなすわ‥」)
 30分経った時、前方の繁みの奥から突如がさがさっと音がし、全員に緊張がはしった。
「しぁぁぁ〜〜〜」
 4体の蛇型キメラが、傭兵達に襲い掛かった。
「南雲行くぞ。シイナ無線してくれ」
「了解」
「分かったわ」
 九条は頭を狙い、南雲は蛍火+小銃S−01を使い、迫ってくる敵には蛍火、距離を取る敵には、小銃を使用した。
「‥全班交戦中。‥B班が応援を要請してるわ‥」
「そうか、とっとと終わらせるぞ」
「悪いがお前らには一滴も情けはかけん」
 瞬天速をかけ九条が、一体の蛇型キメラの頭を潰し、そこを狙ってきた2体の蛇型キメラを、
 銃で1体の頭を潰し、もう1体を真っ二つに切り裂いた。
「―――何であろうと、死の天秤は等しく断罪の制裁を行使する‥‥!」
 逃げようとした1体をシイナのスパークマシーンで痙攣させ、南雲が蛇の頭を斬った。
「4体殲滅。B班の応援に向かいます」
 そして3人は、B班の応援に向かった。

●A班
 A班は上の部分を担当していた。
「――“Auferstanden(蘇れ)”――」
 イアリスは右肘から先が悍ましい漆黒の竜腕に変化し、覚醒した。
「狂いの仮面よ。今ここに」
 銀髪で眼球は赤く瞳に紋様が現れた。
 体調を考慮して、王以外の全員が覚醒した。
 途中途中休憩しながら、漸は王の無くなった仲間の事を聞いていた。
 だが、話を聞きながらも警戒を怠ってなかった。
 イアリスは、そんな会話に耳を傾けながら、周囲を警戒していた。
「依頼が終わった後、必ず仲間物を見つけ、8人分墓を作って埋めてやるよ」
「ありがとう」
 王は微かに涙声で呟いた。
 陣形は王を守るように漸とイアリスがたっていて、30分過ぎたぐらいに、繁みの奥から、物音がした。
 王が走って行こうとしたが、漸やイアリスが止めた。
「――先走るな。狗死にを仲間の魂に誇るつもりか?」
「気持ちは分かるが、先走りは危険だ。」
 その時を狙ったのかどうか分からないが、3体の蛇型キメラが襲い掛かって、王は二人を突き飛ばし、3体に噛まれた。
「早く‥‥止めを」
 王は自分が闘う力が無いと分かっていて、ここに来る前から囮役になると決めていた。
 王が渾身の力で蛇の牙が抜けるのを止めていた。
「さぁ、グランギニョルの開演だ。我を恐れ死んでゆけ」
「切り刻め月鋭」
 3体の蛇型キメラは撃退した。
「迷わず終焉なき闇へと帰るがいい」
 王が倒れる所を漸が支えた。
「‥何か‥役に立ったかな」
「馬鹿やろーが」
「馬鹿ですね」
 そう言っているが、二人は涙を堪えていた。
「‥‥最後は山の頂上で‥‥」

●猜忌
 山の頂上まで来た時には太陽が真上に昇っていて、皆が着いた時には、王は話しをできる状態ではなかった。
「‥‥後は任せろ、何も心配するな」
 九条が王に言葉をかけた。
(「如何受け取るかは本人の自由だ」)
「‥王 流民さん、どうぞ安らかに…」
 間が王に言葉をかけた。
(「夕日じゃなかったけど、凄く美しい景色だわ」)
「王流民、汝と汝の仲間の名を我は我が魂に刻みつけ永劫忘れはしない。今は仲間と共に安らかに眠れ。汝の魂に聖闇の加護があらんことを」
 漸が王に言葉をかけた。
「王よ、その理不尽さは俺が受け継ごう‥だから安らかに眠れ‥」
 南雲が王に言葉をかけた。
「王、言い残すことはないか? 必要であれば苦しみを取り除くぞ」
 緑川が王に言葉をかけた。
「漸達から聞いたわ、命懸けの奴らならどうとでもなるけど、命を捨てて向かってくる奴らは手強い‥‥全く、無茶をするものね」
 雪村が王に言葉をかけた
「避けられぬ死なら、せめて思いのままに死ぬが良い。それが君への手向けとなるのだろうから」
 イアリスは王に言葉をかけた
 シイナみんなに渋い顔をされたが、行く事を拒否した。
「ありがとう」
 それが王の最後の言葉だった。
「エミタは希少だ。残念だが、ここに捨てていくほど余裕はない。そしてこのエミタでまた戦う者が生まれる」
(「残酷だけど、冷静に対応しよう」)
 そう言って、緑川がエミタを抉ろうとしたが、銃とファングと蛍火と月鋭とアーミーナイフを背中に突きつけられ、動作を停止した。
「良くそんな事出来るな」
「非道すぎるわ」
「それ以上したら殺す」
「そういう事だ」
「ほんとに殺すわよ」
「‥月鋭の切れ味味わってみる?」
(「心情的には緑川と一緒だけど、時と場合によるわ」)
 シイナはこの場をそう評した。
「やれやれ、命の方が大切だ」
 そう言って緑川は、エミタを取るのを止めた。
 それから緑川に監視が付き、漸が王に聞いたことを元に山の中を捜索し、遺留品などを墓に入れ、8つ墓を作った。
 そして墓に向かって手を併せ、全員で帰還した。

●全てが終わり
 後日孤児院に8つの手紙が届き、院長が一つの手紙を開いた。
 中にはこう書かれていた。

 この手紙を開く頃には僕は既にはるか遠くへ旅立っています。
 仲間は、生きていたら幸せです。
 僕の活躍耳に届いてますか? 中国を少しは平和にできていますか?
 それが達成できていたら、僕は嬉しく思います。
 孤児院代表として恥ずかしくない死に方をしたいです。
 今まで育ててもらってありがとうございます。
 孤児院の皆もお元気で。

                            王流民