●リプレイ本文
●初顔合わせ。
鳴神 伊織(
ga0421)、なつき(
ga5710)、ネール(
gb0342)、筋肉 竜骨(
gb0353)の4人はUGの面々と合流後、指定された病院に向かっていた。
(「あれから、何も音沙汰が無かったですが・・とうとう来ましたか」)
鳴神がこの依頼を知った時に思った事で。
(「相容れない事を確認して終わりと言う感じもしますが‥」)
今は警護対象である神楽の方を見ていて、神楽は何か思い詰めたような顔をしている。
(「‥音遠さん大丈夫でしょうか‥」)
今日の主席者の中に刹那が居る可能性が高く‥音遠の心情を思うと、鳴神の心が苦しくなる。
(「それでも行くしか無いのでしょうね」)
だが‥止まることや後退する事は‥死に繋がると鳴神は良く知っていた。
一方なつきは海道の傍にいる。
(「海道さんは、元WB‥だから。何となく‥危険な気がする」)
それはWBの事を知っていれば当然思いつく事で‥当の海道が思いつかないはずは無い‥なのに。
「どうした嬢ちゃん? 緊張してるのか。大丈夫だ、今日は話し合いだけだ‥もし、相手が攻撃してきたら守ってやるぜ」
ほんとは誰よりも怖いはずなのに、海道は笑みをなつきに向ける。
その事がなつきにはたまらなくつらい。
「‥どうしてそんな事言えるんですか? ‥彼等が。何もしないわけがありません」
なつきには海道がそう言う事を言うのが分かっていた‥。
(「元WBだった貴方なら分かる筈‥でも海道さんはきっと、約束を守ろうとして、私を護ってしまう筈‥だから。」)
「私が海道さんをお守りします」
筋肉は神城の護衛をしていた。
(「駆け引きとか俺にはしょうにあわないから、余計な事は言わず、危なくなったら、仲裁役に入るぜ‥もし、神城が襲われたなら俺の筋肉で守るぜ」)
筋肉は体を這ってでも神城を守るつもりでいて。
(「神城から攻撃しようとするそぶりを見せたら‥全力で抑えるぜ!」)
神城が激情に駆られようとした時、抑えようと思っていた。
ネールは後方で探査の眼を使い、危険が迫っていないか、集中している。
(「わっ私にはこういう事しかできないから‥」)
戦力的には足手まといだと思っていて、すぐぼろを出すと思っているネールは、口を閉ざし自分のスキルに集中する事しか役に立てないと思っていた。
(「無事に終わらせるよう頑張ります」)
ネールは自分に言い聞かせるように頷く。
神城→神楽→海道
筋肉→鳴神→なつき→ネール
の順で、罠は無いか、他のUGメンバーは来て無いかなど、細心の注意を払いながら、病院に到着し、約束の場所の扉の前に着く。
(「‥今は冷静に‥」)
そう自分に言い聞かせての神城の心臓の鼓動は高鳴っていた。
それは、皆も同じで、それぞれの思いを抱きながら‥。
「‥行くぞ」
神城の掛け声と共に、筋肉が扉を開けた。
●対面
部屋の中は16人ほど座れる大きな丸いテーブルに奥側の半分に8人座っていて。
なんとも言えぬ‥例えるなら、灼熱の砂漠から、絶対零度の北極に移動した‥そんな空気。
「あわわ、たっ大変です」
危険な感じを察知し、慌てふため、仲間に耳打ちするネール。
神楽は空気よりも‥ある人物じっと見つめ、鳴神は2人を心配そうに見つめている。
海道は自分に向けられている殺気に冷汗を流し、なつきは敵の目から遮る様に、顔は空気に威圧され強張り、体もぶるぶると震えていたが、懸命に海道の前に立ち。
(「出来る事を精一杯」)
そう自分に言い聞かせ、なつきは真正面から敵を見据える。
神城は湧き上がる怒りを隠そうともせず、殺気を敵に放ち。
「今日の所は‥俺らは話し合いに来たんだぜ」
筋肉は神城の肩を軽く叩き、軽く笑い。
神城は、殺気を消した。
(「‥俺は、一番冷静にならないと」)
それは、大門の変わりに上に立った者として‥志を受け継ぐ者として、殺気を出した自分を恥。
「・・ありがとう」
と素直に神城は言う。
「やめろ‥」
中央にいた仮面の男の一言で、殺気が無くなり。
「すまない‥席に座ってくれ」
座るよう足された神城達は、海道、なつき、筋肉、神城、鳴神、神楽、ネールの席順で座り‥話し合いが始まった。
●会合
「まずは自己紹介から始めよう。私がNO1だ」
順にWG側が自己紹介を初め。
「‥NO5だ」
その言葉を発した人をなつきは見つめる。
(「無手神さん…は。どういう気持ちでこの会合に参加しているのだろう。
あの時‥小さいけれど、確かに聞こえた「ごめんな」。裏切りを指示した者は‥誰?」)
無手神は無表情で、なつきは心情は読み取れず、変わりにWB側出席者の顔を一人一人眺め脳内に記憶し、危険そうな人物をピックアップしていた。
「NO6よ」
鳴神は複雑な心境で、刹那と音遠を見る。
両者の自己紹介が終わり、本題に突入した。・
「人間は生きる価値がないと思わないか? バクアが来る前は、環境汚染、戦争、開発、破壊・・弱肉強食の最上位にいる事を良い事に、地球の崩壊を早めている人間・・バクアは‥地球にとっての救世主‥人類にとってのメシアだ」
淡々として語るNO1に、うすら寒いものを感じたが、神城は質問する。
「そんなことはない。人間よりも強いものは大勢いる。」
「偽善かもしれませんが、生きる価値のない人間などいないと思います。」
「小難しいこと分からないけど人間ってのは誰度も同じく尊いものだと俺は思うぜ。」
神城、筋肉、鳴神と次々と反論意見が出るのか、なつきの考えは同じ意見‥あくまで自分個人だけだが。
(「自分も生きる価値がないと思っているのでしょうか‥そう思う私も‥何故、生きているのだろう。‥そんな事を考えれば、此処には居ない大切な人が哀しく笑うのが目に見えているのに。」)
「ぎゃっはは〜死刑決定」
「右に同じ」
いきり立った8と9を1は手で制す。
「そうだな。では逆に聞くがバクアが来る前、人間以外の動物に対し、ずっと怖い思いをしてきたか?」
その問いに答えるものは誰もおらず、1は話を続ける。
「凶暴な動物にあったとしても、その時恐怖を感じても、のちに恐怖感は無くなる‥それが人間が食物連鎖の最上位にいる何よりの証だった」
そこで1は口に手を当て、不気味な笑い声を出す。
「バクアが来る前はな‥おかげで人は永続的な恐怖に駆られ、戦争は無くなり、共闘しあったが‥勝てない。・・勝てない勝てない勝てない」
会議室全体がうすら寒くなり、ネールの探査の目も危険を感じていた。
(「まずいですね」)
みんながこの雰囲気にのまれていると感じた鳴神は
「気をしっかり‥それでは相手の思う壺です」
仲間を叱咤する。
意図は、仲間を正常に戻すことと、敵への牽制。
「すまない。そんなつもりはなかったんだがな‥そんな時、エミタが開発され‥能力者が誕生する‥そして俺は思った‥能力者こそが世界の中心になるべきだと‥誰のおかげでバクアやキメラに勝ち、誰のおかげで今日まで生きてこられたと思うか‥能力者の存在だ‥なのに人間どもはそれを当たり前だと思っている、俺たちは命をかけているのに‥。そこで考えた‥今日の本題だ『俺達のところに来ないか?』真の地球の支配者は能力者であるべきだ・・前責任者と違って理解ある返答を求む」
(「貴様!」)
瞬間に憎悪の感情が神城を支配し、懐にある銃に手にかけようとしたが鳴神に手を掴まれる。
「いずれ戦う事になるのです、今ここで手を出さずとも‥」
鳴神が静止の言葉をかけ。
「神城さん」
なつきがやんわりと落ち着かせるように言い。
「頭に血が昇るのもわかるが頼むぜ大将」
筋肉が軽く神城の背中をたたき、気を削ぐ。
(「又やってしまった」)
神城は大門の事を出されると、我を忘れる‥。
それが、大門を‥仲間を殺した者なら尚更。
鳴神は神城が落ち着くのを待ってから、このタイミングしか聞けないと思い言う。
それは迂闊には聞けない質問。
「大門さんを殺したのは‥貴方ですか?」
「ああそうだ。最後の勧誘も拒否したため、他に居た奴は‥嫌がる6と5に殺させ、俺が大門を殺した。それが同じ仲間だったものとしての手向けでな」
事も無げに言う1と肩を震わせる刹那‥音遠はどうにもならない感情に鬩ぎ合い、鳴神は必死に自制している。
(「酷い事をしますね」)
(「惨すぎます」)
(「狂ってるぜ」)
他の者も一様にショックを隠しきれず‥気がある人物から逸れた。
「‥断る!お前等の下につく位なら死んだほうがましだ!」
言い過ぎだ‥と誰もがおもったが後の祭りで・・1がぱちんと指を鳴らす。
初めに動いたのは8。
「ぎゃっはは〜死にな!」
神城目掛け、机を蹴り神城目掛け、カギ爪で胸目掛け突き刺す。
遠距離型で、怒りで冷静になれず対応が遅れた神城は、なすすべなく・・当たるのを見届けるしかなかった・・。
(「大門さんすいません‥」)
コマ送りのように時間が緩やかになり、神代は目を閉じ‥死を覚悟した。
が何時までたってもその時はやってこず、目を開けると。
筋肉が剣でガードしていた。
「話し合いじゃなかったのか」
その頃9は一番欲しい頭部‥低い体制で鳴神のところに向かい、首を狙い、神城側の机付近で飛び。
「‥その頭頂戴」
体格に似合わず、すさまじい剣速で斬り上げる。
だが、鳴神は既に予測していて、剣を抜き、9の剣を受け流そうとしたが、剣の重みと衝撃で後ろに後退する。
「‥残念」
追撃が来ると予測し、身構えていた鳴神だったが、9は戦意を失ったかのように武器を下ろす。
(「まずいですね‥相手の狙いわ・・海道さんが危険です」)
1が指で合図した本当の理由‥それは海道の抹殺。
WBにとって裏切り者は例外無く殺してきた。
今回の会合での、WBの二番目の目的で、ずっと機を窺っていた。
「きっ危険です海道さん」
海道の危険を察知したネールが叫び、なつきが前に出ようとしたが手で制す。
なつきが海道の横顔を見る。
それはまるで死ぬのを予測していたような安らかな顔。
海道はここに来る事は自分が死にに行く事だと分かっていた。
だが、海道は友にいらぬ危害を加えさせないため‥自らが犠牲となる事でこの場での、自分以外の危害を無くそうとした。
(「それが、友に‥神城に命を救ってもらった俺の‥最後の役目だ」)
7が素早い動作で懐から銃を取り出し。
「あんたに恨み事何もあらへんけど、これもルールやから‥大人しく死にや」
トリガーに指を掛け‥。
バン!‥っと火薬の音が聞こえ‥。
(「もう‥守られるだけは‥嫌だから!」)
無我夢中で、気付くとなつきは海藤を突き飛ばし。
なつきの左腕を銃弾が掠める。
「譲ちゃん‥」
「言ったはずですよ。私が海道さんをお守りします‥って」
「はは、譲ちゃんに一本取られたな」
そう言って、体を入れ替える。
(「一瞬でも俺を守ってくれて‥ありがとな譲ちゃん」)
「駄目です、海道さん」
そして、二発目の銃弾が発射される‥。
天井に銃弾が当たりWB、UG、傭兵全員が銃弾を撃った音の方向・・1を見る。
「まぁいい、7も一発しか持ってこなかっただろう?」
「ほんま悪いな大将」
それは人一人殺そうとしていた会話ではなく、世間話レベル。
まるで結果はどうでも良いような感じに見え。
(「狂っていますね」)
(「狂ってるな」)
(「狂っています」)
鳴神、なつき、筋肉等全員が同じことを思っていた。
1はそんな神城達の顔を見て、口元を歪め笑い声を出し、左端にあるスクリーンを見るよう促す。
そこには‥‥。
絶句するような映像が流れる。
まず最初に浮かんできた映像は、どこかの島の上空で、どんどんと島に近付いていき。
檻が現れ、その中には‥。
「‥そんな嘘だろ」
「‥人間じゃありませんね」
熊本警察特殊課の面々、パトロンの人達が居た。
「‥日時と場所はおって知らせる‥全面決戦と行こうじゃないか‥どちらが生き残るか‥来なかったら分かってるな」
こうして会見は終わりを告げる‥様々な思惑とともに。
会議場を後にするWBメンバー。
「無手神さん‥どうして?」
「裏切りを指示したのは、誰‥ですか?」
神城の真摯な叫びも、なつきの問いかけにも、無言を貫き、会議場を去る無手神。
「‥まだ間に合うから、戻ろう刹那」
「そうです刹那さん。まだきっと間に合います」
音遠と鳴神の言葉に、通り過ぎようとした刹那の足が止まり。
「もう、引き返せるわけないじゃない」
小声で呟きその場は去る。
●そして‥
既にWBの面々は帰っており、残っているのはうちひしがれたUGと傭兵達。
誰も、なにも言葉を発することなく、それでも傭兵達はUGの依頼をこなしながら会議室をあとにする。
帰りの最中、気付けば3組に分かれていた。
鳴神は、ぽつりぽつりと話す音遠の言葉を聞いていた。
刹那の事、自分の不安の的中、これからの事。
すべてを話し終わった後。
「‥伊織さん。本当に、刹那と闘わなければいけないのでしょうか?」
神楽の心は揺れていた。
仲間を殺した刹那に対しての感情と刹那の姉としての感情が。
そして、鳴神は安心させるような笑顔で言う。
「大丈夫です。私が音遠と刹那さんを仲直りさせます」
「ありがとな譲ちゃん。俺を守ってくれて」
「いつも守ってもらっていますから‥それにしても」
なつきは影を落とす。
「‥どうなるんだろう‥これから」
(「無手神さん、刹那さん、1、UGにWB」)
考え込んでいるなつきに海道は頭に手をのせ、優しく撫でる。
「今度は俺が守る番だな」
神城は歯をギリリと鳴らす。
(「すべては‥の掌に踊らされてた」)
「そんなに落ち込むこと無いって、元気出せ元気」
「そっそうですよ」
筋肉とネールは励ますが、神城の耳に届いていなく。
神城の心は憎悪で埋め尽くされていた。
そして‥。
全てが交錯し‥最終決戦に突入する