タイトル:無限の闇マスター:御影友矢

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/10/01 11:34

●オープニング本文


 バクアが攻めて来てから、避難民として大量に人々が溢れ、当然、家族や知人が近くの都市に全員居るはずも無く、地下に潜る人達が増えてきた。
 人類とバクアとの戦いが激化して行く中、家の崩壊や恐怖から段々とそう言う人達が増えて来て、『地下都市』と呼ばれる集落の集合体がいくつか存在するようになる。
 例えば、かつて地下鉄だった場所。
 入り口を塞ぎ、商人や難民など、ここにくる者の為に、一箇所だけ人がやっと通れるぐらいのスペースは残してあり、そこだけが唯一外界と繋がっている。
 そこは昼も夜も関係なく、明かりだけがこの漆黒の闇を照らしている。
 まるで自分達の心の様に。
 日が当たらない場所なため、頬が青白く扱け、活力もなく、ただ生きているだけ‥。
 それでも、ここに住む人達は願っていた。
 ‥いつか、バクアが居なくなり、安心して地上に出られる事を。
 だが彼らは知らない。
 せまりくる地底キメラの存在を。
 このキメラのせいで、他の『地下都市』の人間が多数なくなった事を。
 ひっそりと‥確実にせまりくるキメラ。
 結局、安全な場所なんてものは無く、どこに逃げても結局は同じ事。
 だが幸運にも、その日『地下都市』の偵察として傭兵達が来る事になっている。
 キメラを倒すだけで無く、はたして本当の意味で、彼らを救う事ができるか。
 それは、傭兵達に委ねられる。

●参加者一覧

鳴神 伊織(ga0421
22歳・♀・AA
葵 コハル(ga3897
21歳・♀・AA
南雲 莞爾(ga4272
18歳・♂・GP
レールズ(ga5293
22歳・♂・AA
周防 誠(ga7131
28歳・♂・JG
城田二三男(gb0620
21歳・♂・DF
GIN(gb1904
19歳・♂・DG
鬼道・麗那(gb1939
16歳・♀・HD

●リプレイ本文

●地下都市の調査
 地下都市の偵察と言う事で、午前10時に、南雲 莞爾(ga4272)、鳴神 伊織(ga0421)、レールズ(ga5293)、周防 誠(ga7131)、葵 コハル(ga3897)、鬼道・麗那(gb1939)、GIN(gb1904)、城田二三男(gb0620)の8人は、今回調査する『地下都市』の入り口前にいた。
 入り口は人1人分が入れるスペース以外は木で塞いでいて、屈強な2人の護衛が、立ち塞がる。
「地の果てになんのようだ?」
 敬語だが冷たい声。
 それもそのはず、ある者は住む家を無くしたり、ある者は大切な人を無くしたり‥人に裏切られ、人に追われ、この地に来た人間は、地上に住まう人間の事を毛嫌いしており、商人やおなじ理由で来た人間以外は追い返される。
 偵察のため傭兵だと名乗る事ができない8人は、こんな時の為にあらかじめ決めてあった言葉を言う。
「UPCの要請によりULTから派遣された傭兵です」
「今更貴様らに用は無い、消えろ」
 間髪入れず、レールズの言葉は寸断される。
「やむおえません。少し寝むりについていただけませんか」
「暫しの眠りに誘え」
 それからの行動は早く、鳴神と南雲は首筋に手刀を軽く打ち、昏倒させ、中に入る。
「ごめんなさい」
「ごめんですよ」
 最後尾の鬼頭とGINが寝てる見張りに謝罪し、全員が中に入る。

●潜入
 事前に2人1組で行動する事と決めてあり、鳴神と城田は闇市の方を調べていた。
(「地下都市ですか‥今では地下も安全とは言い難くなってきましたし、LHでさえ襲撃されたという情報があったので‥安全と呼べる場所は地球上には存在しないのかもしれませんね」)
 天井を見つめ、その後、鳴神は闇市の方に眼を向ける。
 闇市は祭りの屋台風で商人達が持ち込んできた品物が並べてある。
 闇市の値段は相場の約4倍ほどで、やせ細ったか細い声で、必死に値切りの交渉をする 住民に冷たくあしらう商人達。
 ここでの序列関係はもはや形成されており、住民は商人の下の位。
(「ここで私が行ったとしても‥その場限りで何も変わらないでしょうね」)
 その事を鳴神は歯痒く思う。
(「ここの住民はまるで死人の様ですね‥こんな世の中ですし、疲れきってしまったのでしょうが‥。」)
 闇市の見周りを終え、鳴神はもう一度天井を見つめる。
(「まずは住民達の意識を‥生きる方向にもって活きませんと‥それが私達の今できる事ですからね‥」
 一方城田は鳴神の後ろに付き従い、言われた通り、周囲を警戒していた。
「この方が楽だ」
 これが城田を培ってきた行動概念。
 それは‥。
 全体の行動にあわせる事‥。

 南雲とレールズは手分けして、テントの見周りと衛生面の確認をしている。
 南雲の担当はテントの見周り。
(「此処は、言うまでも無く光の裏側だろうな‥‥だが人は知らないだろうさ、日の差し込まない世界だけが光の裏側とは限らない事を‥」)
 遠い昔を思い浮かべ、自嘲気味に笑う。
(「だからこそ、何か言える事があるかも‥知れないな」)
 そして、テントの中にいる人は、眠ってるのか、生きているのか分からない位に生命活動を停止している者が多い。
 日が当たらない空と同じように、この暗闇が徐々に精神を蝕んでいき、テントの外に出ている者はまだ言い方で、この時間にテントにいる者の多くは、生きる気力を無くした無気力状態の人達。
「死んでいるように生きているだけの、脆い存在か‥‥」
 テントを見終わり、南雲はそう呟いた。

 一方でレールズは衛生面や換気の問題、設備や施設の老朽化等の状況を確認していた。
 テントの人達にも話を聞こうと思ったのだが、聞く事をはなっから拒否している人達に、見切りをつけ、テントの外にいる人達や商人に話しを聞き回り、自分の足でも確かめる。
「衛生面は駄目ですね、虫や蜘蛛の死骸があり、ゴミもそこかしかにある。換気は『ダクト』が機能していて一応大丈夫なのですが‥腐敗周がします。話しを聞いても、誰かが整備を行ったという情報は無いですね。このままでは‥‥」

「何かをしてあげるじゃダメじゃない?一緒に楽しまないと!GINさん手伝ってくれる?」
「よし、俺は思春期中二病トークでも‥」
 鬼頭に睨まれ。
「冗談ですよ」
 あわててGINは訂正する。
「まったく‥」
 呆れ顔でため息をつく鬼頭。
「そろそろ行きますわよ」
 鬼頭とGINの2人は子供達を集める。
 集まったのは、下は4才ほど、上は高校生ぐらいの顔立ち。
 場所は、商人スペースから少し離れた線路。
「ねぇみんな、こんな歌知ってる?」
 子供達の前に立ち、少しの踊りを交えて、楽しそうに童謡を歌う。
「ほら、GINも踊って‥あなたが踊らないと皆踊りにくいでしょう?」
「俺はあっちでトークでも」
 まだGINは‥トークを諦めていなかったのだが‥。
「後でどうなるか‥分かっています?」
「盛大に踊り歌わせていただきます」
 二人につられて、下の者から順々に踊り、歌い始める。
 青年と呼ぶべき人達は恥じらいを見せ、躊躇していたが。
「ほら、恥ずかしがってないで、楽しめば恥ずかしさなんて吹っ飛びますよ」
 最後は全員で踊り‥歌う。
 楽しそうに‥この暗闇を照らす小さな光の様に。
「私は麗那、お友達は『姉様』って呼ぶの、宜しくね」
 それから、二つの班に別れて、GINの班は飛行機作り、鬼頭の班は『闇生音頭』と呼ばれる健康体操のような子供向けの簡単な盆踊りを教えている。
 小さな子供はおおはしゃぎで、青年達も心から楽しんでいた。
 子供達との遊びが終わりにさしかかろうとしていた頃、入り口付近で大音量が鳴り響く。
 それは‥。

「まいったね。何で自分がこんな事しなければならないんですかね」
 周防は、ぶつくさ言いながら、入り口から入って、階段から下りた所に簡易ステージを、葵と二人で作っていた。
「ぶつくさ言ってないで、やる」
「まいったね。理不尽すぎて言葉もありません」
 それから黙々と作業する2人。
「こんな所があったなんて、全然知らなかった‥‥ちゃんと日光浴びないと健康にも良くないし、気だって滅入っちゃうだろうし‥」
 ぼそりと呟く葵。
(「歌手の友達と慰安コンサートに参加してみた事もあるけど‥‥他にもこーいう所、いっぱいあるの‥カナ‥‥」)
 ここの人達の様子を見て葵が感じた事。
「まいったね。その人達を元気付けるためにこのステージを作ってるのじゃないのかね? まったく無駄もいいとこですね」
 もっとも。
(「彼らは、各地でバグアの襲撃で命を散らす人が多い中で立派に生きている。
 生きていれば、まだ見ぬ未来に進んでいくことができる。
 だから、生きていることそのものが希望と言えるんじゃないかと自分は思っています。
 住人にも出来るだけ前向きに考えてほしいですね」)
 周坊も自分の思いを重ねている。

 アイドルであるの葵には歌がある。
 人々の心に響く歌が。
「そうだね。歌う前からこんなんじゃ、聞く人に何も伝わらないよね。よし! 頑張るぞっ!」
 葵は握り拳を作り突きあげる。
 大音量が鳴り響き、傭兵達を初め、テントの中の人以外、ここの住人や商人達もステージの方向に集まって来る。
 歌というのは、歌っている者の心を写し、それを分け与える。
「ほら、皆踊りましょう」
「踊るですよ」
 鬼頭やGINは子供達と踊りながら歌い。
「皆が笑い合える世の中になるために‥私達がいるのでしょうね‥」
(「決して楽ではないです‥戦争も終わりが見えませんし。でも‥いつか‥」)
「‥‥」
 鳴神は未来に想いを馳せ、城田は全体を見渡している。
「光の裏側にひっそりと潜む小さな光か‥‥」
「まるで、太陽のようですね」
 レールズと南雲は人々の心の中にある、太陽の様な小さな光を感じ取る。
「まいったね。ここまで人の様子が変わるかね」
 周坊は悪態をつくが、顔は穏やかである。
 一時ではあるが、人々の心に暖かなものがしみこんでゆく。
 だが‥‥それは、長くは続かなかった。

●地中に住む魔物
 地下が横に、縦に揺れる。
「‥地震? ‥まさか?」
 レールズが考えうる中で最悪の事態が‥起こる。
 そもそも地下都市の調査を行うようになったのは‥地下に住むバクアの襲撃が多数報告されており、キメラの討伐も項目に入っていた。
「私達は、UPCの要請によりULTから派遣された傭兵です。重要な事ですが、最近バグアの地中型ワーム、キメラが確認されています。あわてずゆっくりと移動してください‥葵さん先導を頼みます‥皆さんが外に脱出しましたら、安心できるよう‥歌ってください」
「分かった! 皆! 慌てずついてきてね」
 地下民の最後方を鳴神とレールズと南雲がガードし、横を鬼頭とGINと周坊と城田がガードする。
 先ほどの歌が聞いたのか、慌てるものはおらず、着々と誘導が進む中、鬼頭のスカートに捕まっている、一人の小さな女の子。
「お姉ちゃんも一緒に行こぉ〜」
 その子は鬼頭に一番懐いていて、鬼頭が危険な事をすると感じ、泣きそうな表情で見上げている。
 鬼頭はしゃがみ、女の子と同じ目線で安心させる様に頭を撫でる。
「大丈夫。お姉ちゃん達強いんだから‥あんな怪獣ぱぱっとやっつけて、また一緒に遊ぼう」
「約束だよぉ〜」
「うん。約束する」
 指切をして、女の子は鬼頭の傍から離れる。

 幸い、キメラが出現した場所は商店より大分奥の方だったので、テントの中の人以外は目立った被害は無いが、それは時間の問題で‥傭兵達は迅速な対応が迫られる。
「私と南雲さんで先陣を切り、時間を稼ぎます。後の皆さんは対策法を‥」
 いうが速いか鳴神と南雲は奥へと向かう。
 残された、人達は対策法を考え、
・テント前の防衛:レールズ、周防、城田
・入り口前(ここ)の防衛:GIN、鬼頭
 と言う事になり、各自持ち場に移動する。

「はぁぁ〜」
 鳴神は確かな感触を感じ剣を振り抜き、次の気配へと感覚を研ぎ澄ませる。
 鳴神達が言った先の前方には無数の穴があり、鳴神は眼を閉じ、心の眼を開け、前方に移動し‥現在に至る。
(「相手が見えない所から攻撃するというのなら‥攻撃が当たる前にこちらの攻撃を当てるまでです」)
 眼を閉じた事によって四感が研ぎ澄まされ、視覚の誤差を無くす。
 16体ほどのモグラ型キメラがいたが、少し傷を負ったぐらいで、5体ほどのキメラを倒し、残りは、テントの方向に行ってしまったが、鳴神は仲間を信頼して後を託す。
(「後は、頼みましたよ」)

(「俺はこの一閃に駆ける‥狙いは顔を出した瞬間‥」)
 鳴神より少し後方で南雲は銃を上に向け発射し、キメラが顔を出すのを待つ。
(「‥今だ」)
 南雲は超人的スピードで一気に間合いを詰め、神速で剣を薙ぎ、3体を一辺に上下を分断させ、一体を眉間に銃撃を命中させる。
 南雲は他の者にも攻撃しようとしたが、一足速く地中に潜り移動していた。
(「‥後は‥頼んだ」)

 戦場は南雲の後方、テントがある、プラットホームの下の線路移る。
 線路に2人、プラットホームに1人。
 レールズは下から這い出し、鋭く尖った爪で足元を攻撃しまた潜るモグラを相手にし、何とか避けたり、槍でガードしたりと防戦一方かに見えたが‥。
 実はタイミングを測っていた。
「慣れてしまえば‥!」
 リズムを取り、タイミングを合わせ。
「ここだ‥!」
 何も無い地面に振り下ろす。
 数瞬後モグラが頭を出し、左右真っ二つに割れる。
 そして、元の体制に戻る。
 馴れ始めると、傭兵側が有利になり、プラットホームから周防の援護射撃もあり、今の所、優勢に進めていたが‥。
「‥がっ」
 そんな時、少し離れた所で、戦っていた城田の右太股がキメラの爪で抉られ、倒れる。
一角が崩れた所に、残ったキメラが、移動し。
「まいったね‥俺が殺るしかないか」
 プラットホームに移った敵を、攻撃して来る前に、攻撃ポイントを予測し、先に銃弾を放ち、違う場所から攻撃された場合は剣でガードする。
 後ろから、レールズ、南雲、鳴神が順にやってきて、何とか、テントにいる人達に被害は無かったが‥二匹仕留め損ない‥。
 その二匹は‥。

「来たわよGIN、へましないようにね」
 そう言って、鬼頭はリンドリウムの足部分に錬力を流し、自由奔放に動き回り、地中に潜っているキメラを撹乱させる。
(「子供達には指一本触れさせはしない‥絶対に」)
 撹乱しながら、頭が出るタイミングを見計らう。
 最終防衛戦であるため、子供達を‥ここに住まう人達を守るために失敗は許されない。
 3メートル手前でキメラが頭を出す。
「必殺!闇黒竜星剣!」
 リンドリウムの両手の部分に錬力を集め、力一杯振り下ろし、地面事粉々に砕け散る。
 後ろからもう一匹のキメラが攻撃を仕掛けてくるのを感じたが鬼頭を心配していない。
 ‥何故なら。
「後ろが疎かですよ姉様」
 GINが仕留めてくれると分かっていたからだった。

●その後
 全部のキメラの死亡を確認し、地上にいて、心を込めて、休まる歌を歌っている葵に通信で無事を知らせ、後片付けをした後、地下の住民を迎え入れる。
 それから各々の場所に移動する。

 レールズと鳴神と南雲はここの代表者や大人達を集め今後の事について話し合っていた。
「あなた達は自分が無力だと思ってるでしょ? それは大間違いです。ある人はステージで、ある人は調理場で、農場で、放送室で、喫茶店で、オフィスでその人の戦いがあります。
 無力の人なんていません。未来は常にあなた達自身に委ねられています。ただ逃げ隠れ祈る事しかしないのも‥自分に出来る戦いをするのも‥あなた自身が決める事です」
 レールズは大人達に微笑を向ける。
「その通りです。何かを変えたければ、行動を起こすしか無いでしょう。
何もしなければ、何も変わらないですから。自分に出来る事をやる事が大事だと思います‥一人一人が行動を起こせば未来は変わる‥そう、思います」
 鳴神は優しく微笑む。
「脅威に怯え安息を求めて死んだように生きるだけなら誰でも出来る。
だが、今のあんた達はただそれだけしか出来ないだけの‥‥理不尽に巻き込まれて死した奴等と何も変わり映えしないと思うがな‥本当にそれでいいのか?」
 南雲は無表情で問いかける。
「周りを見てください」

「もし、私に逢いたくなったら、カンパネラ学園に遊びに来てね! できる人はいるかな〜?」
「「「「は〜い!」」」」」
 子供達にまけない声で、GINが叫ぶ。
「GIN、貴方は後できついおしおきが必要ね」
 子供達の無邪気に笑う声。

「そんな物書いてないで、ガードマンして」
「まいったね、何で俺が」
 群がる住民達に、サイン攻めにあう葵と、ぶちぶち言いながらも、列を正す周防の姿。
「こんな地下にだってしっかり太陽があるじゃないですか‥それを守って下さい」

『地下都市』の民に活力が蘇る。
 だが、更なる絶望が襲う事を‥彼らはまだ知らなかった。