●リプレイ本文
今回集まったのは5人の傭兵達で、担当の刑事が来るまで、被害者の扉の前で待っていた。
そして各々が今回聞かされた依頼の事を考えていた。
チャペル・ローズマリィ(
ga0050)は今回来る刑事さんの事を考えていた。
刑事さんのように自分の仕事に誇りを持っている人を、僕は尊敬している。お手伝いできる事ならなんだってしたい。だっておまわりさんは、いつだってみんなのヒーローであるべきだもん。
ヒカル・スローター(
ga0535)は人間の考え方について考えていた。
「侵略者と戦争している最中でも人間同士は殺しあえる物なのだな」
誰にも聞かれないよう小さく呟き、妙に感心するひかるであった。
ホアキン・デ・ラ・ロサ(
ga2416)は、犯人の事を考えていた。
「刑事ドラマみたいだ」
殺人は許せない。犯人を逮捕したい。
捜査を速やかに進めるためにどんな刑事でも立て、協力者に徹する。
シリウス・ガーランド(
ga5113)は今後の事について考えていた。
担当刑事が来た時、面通しをしよう。
一応共同作業であるからな。
梶原暁彦(
ga5332)は威圧感を放ちながら‥‥夕食の事を考えていた。
夕食までに間に合うか‥‥。
こつん‥こつんと足音ともに片桐司がやってきた。
片桐の表情は隠そうともせず不機嫌で、一瞥する様に傭兵達を見た。
「初めまして片桐司です。捜査資料は読みましたか」
全員が頷いた。
「それでは私の方から話をつけてきますので、好きに行動してもらって結構です。何か御用があれば、被害者の部屋にいますので何でも質問してください」
そう言って、片桐はさっさと何処かに行ってしまった。
あまりの放置ぶりに呆気に取られる傭兵達だった。
「とりあえず、自己紹介でもしましょうか?」
話を切り出したのはホワキンだった。
「僕賛成!」
元気のいい声でチャベルが言い、全員が頷いた。
「言いだしっぺだからまずは俺から、俺の名はホアキン・デ・ラ・ロサだ」
「ボクの名前はチャペル・ローズマリィだよ」
「我の名はシリウス・ガーランド。エクスレンターだ」
「私の名はヒカル・スローターじゃ」
「‥‥俺の名は梶原暁彦だ」
一通り自己紹介が終わった後 作業分担の話になった。
「俺としては、4つに分かれて行動した方がいいと思いますが、皆さんそれでいいですか?」
全員が頷いた。
そして話し合いの結果、被害者の部屋にチャペル、神崎の部屋にシリウスと梶原、河井の部屋にホワキンとヒカル、妹の部屋は、早めに終わった誰が行くことになった。
「行動開始だ」
シリウスの号令と共に、各持ち場に散らばった。
●被害者の部屋
チャペルは刑事さんに聞きたい事がたくさんあった。
‥とその前に手袋着けて、手掛かりになるもの見つけないと。
部屋の中は、いくつか警察に押収されていたが、他は事件が起こった当時と変わらぬ状態で保存され、中は散乱していた。
部屋の中やベランダを探し回ったが、カレンダーは復元不能、ベランダの鉄柵には縄の跡があったが、怪しい物が無く、結局捜査資料以上のものが見つからなかった。
そういえばルミノール検査ってやったのかな? ボク一度でいいからやってみたいんだ。
ルミノール検査とは、ルミノール試薬を吹きかけ、血痕を見つける作業だった。
仏頂面で立っている、片桐に声を掛けた。
「何ですか?」
片桐の口調は丁寧ながらも、顔はさっさと行ってくれと言わんばかりの表情だった。
「ルミノール検査ってやったんですか?」
●神崎の部屋
シリウスが神崎の部屋のチャイムを鳴らした。
「誰ですか?」
ドア越しに聞えた神崎の声は、若干緊張していた。
「傭兵でこの事件に助力しているシリウス・ガーランドだ、室内を調べたいので開けてくれ」
間があって、ガチャリと扉が開いた。
神崎は妙に厚着をしていて、落ち着かない様子だった
事前に決めてあった通り、梶原が部屋を調べ、神崎の聞き込みはシリウスが担当した。
「重要な確認作業だ。偽りは後の不利となるから正直に申告することだ」
●河井の部屋
一方河井の部屋にはホワキンとヒカルが既に中に入っていた。
「少し聞きたい事があるのですけど、宜しいでしょうか?」
「はい」
河井は若干強張った様な表情をしていた。
ヒカルが部屋を調べ、河井の聞き込みはホワキンが担当した。
「そんなに緊張しなくてもいいですよ」
ホワキンは愛想笑いをして、質問をした。
「被害者の事は知ってますよね?」
「ええ、京ちゃんとは友達で、京ちゃん明るくいい子なのに誰がこんな事を‥‥」
河井は悲しい表情を作ったが、人を騙す事に長けているホワキンにとってそれが嘘だとすぐに分かった。
しかし、ホワキンの表情は変わらなかった。
「妹さんの事知っていますか?」
「はい、仲の良い姉妹でしたし洋子ちゃんが可哀想で仕方がありません」
「そうですか‥‥所で、手相占えるのですけど、良かったらどうです?」
●妹の部屋
早く妹の部屋に着いたのは、チャペルとシリウスと梶原だった。
「どうでした?」
「色々と収穫があった。詳しくは後で話す」
そう言ってシリウスはチャイムを鳴らした。
「はい‥‥」
それは、憔悴しきった様な声だった。
「僕達はこの事件を担当している傭兵なんだけど、ちょっと聞きたい事があるんだけど、開けてくれないかな?」
やや間があって弱弱しく扉が開かれた。
中にはやつれた女の子の姿があった、
年頃が近い事で、チャペルが聞き込み役になりシリウスと梶原が部屋を調べた。
「ためる事はよくないことだから、ため込んでいる物ボクに言って。」
●推理
証言を元に5人で被害者の部屋を調べた後、傭兵達は用意された部屋に集まっていた。
「まず犯人についてだが‥‥どう思う? 俺は神崎が犯人だと思ってる」
シリウスが切り出した。
「僕は妹だと思う」
「俺は河井が怪しいと思う」
「河井が犯人じゃと」
「‥‥犯人は神崎だ」
結果は、妹1票、神崎2票、河井2票だった。
「まず、チャペルから聞くがどうして犯人だと思った?」
「被害者の服装はパジャマでスッピンだったし、妹さんと話したんだけど、引っ越してきた直後からお姉ちゃんに苛められてたみたい。それに犯行時間のアリバイの事を聞いた時、何かに怯えてるような表情だったし、後被害者の部屋を調査した所カレンダーの端部分に少し血痕がついていたの。でも散乱していた他の物には何も無かった事から工作じゃないかと思ったの。それと携帯電話を押収されて現場には無かったけど、ほんとに妹さんなのかな?ボクに妹がいたら絶対名前で登録するよ」
続いてヒカルが話し始めた。
「私はベランダの水溜りに注目したのじゃ。逃走経路としてあらかじめ用意していた物と考えられる。ロープを被害者のベランダまで繋げるために錘として氷の塊で反動つけて、被害者のベランダに投げ込んでおき、被害者宅を訪問。被害者を殺害後、訪問予定が書き込まれていたカレンダーを破り、ベランダから階上の自宅に逃走。その後、逃走に使用したロープは端に錘となる氷をつけて階下に投げ下ろす。鉄柵についたロープ跡はこれで、錘の付いたロープは氷を通常よりはやく切断し1階に落下。ロープはあとで回収したか今も下に落ちているのではないか。これにより、神崎に罪を着せられると判断したのじゃ。動機面からは妹は些か動機が薄弱と推測される。神崎についても同様。河井綾の場合、怨恨の線でも動機は十分と判断だ出来るとしたのじゃ」
次にホワキンの番になった。
「チャペルと同じで携帯の着信履歴は不自然だと思った。仲の良い妹と思う姉なら、「妹」などとせず名前で登録する。早朝5:30にかけたのも、姉の生活実態を知る妹らしくない。ヒカルが言ったようにベランダの水と鉄柵の縄跡も不自然だ。水浸しになる程巨大な氷を支えに縄で下へ降りたなら、寒い冬の早朝、融解が早すぎる。姉が自ら振った元彼を、携帯に触らせ部屋に迎え入れるとは思えないが、同性の友人なら十分にあり得る。「妹」と携帯に登録できたはずだし、早朝に訪問しても迎え入れただろう。『K1N』の血文字は『河井綾』のイニシャル『K/A』を書き損じ、『A』の横棒を書く寸前に力尽き『N』の形になったのではないか。カレンダーは、とられた彼氏とのクリスマスデートでも見つけた河井が激情のまま引き裂いたのではないか。ならば、現場で唯一の衝動行為だ。よって犯人は『河井綾』だ。そう思っていたが、河井に尋問した結果、傷も無く、犯行をやっているようには見えなかったが、怪しいのには変わりない」
次にシリウスの番になった
「状況から判断してベランダが脱出路だ。トリックはロープの先に大き目の氷の塊を結びつけ、それに絡めるような形でベランダから垂らしたロープを引っ掛ける。ロープを伝って階下のベランダへ移動着いたらロープを緩め、先端の氷を上階のベランダの床に打ち付け壊す。一時的な固定具が無くなったロープを回収する。故に神崎京介が最も怪しい。カレンダーが破損していたことからも、引っ越してきた時期が最近である彼に疑わしい。尋問したが、怯えているような落ち着かない様子や、小さな切傷や、妙に厚手の服装がそれを裏付ける」
最後に梶原の番になった。
「俺はやはり犯人は『神崎』では無いかと思っている。越してきた日にちで犯人だと断定されては困るからカレンダーを引き裂いた。そこで被害者は犯人にダイイングメッセージだと悟られないように『K1N』と自らの血で書き残した。これなら犯人に気付かれないと思ったのだろう。不幸だったのは警察がそれの意味に気付かなかった事だな。では何故隣に越していた妹が気付かなかったのか?また、電話だけしたのか?これについては共犯者だったからでは無いかと思っている。手を組み、姉を殺害する計画を立てたは良いが、途中で怖くなり姉に電話をした。しかし時間は早朝の事だ。気付かなかったのだろう。侵入及び脱出経路だが‥‥あらかじめ妹に頼んでおき、合い鍵を入手。部屋に侵入し被害者を殺害。その後、鍵をかけ用意しておいた氷と縄を使い脱出した。ダイニングメッセージだが、あれはイニシャルではなくKの1と言う意味だと思う。つまり『か』の事を現し後ろの部分をつけると、『神』になるのではないかと考えている。」
話し合いの結果、神埼が犯人で共犯者がいるなら被害者の妹だと言う意見にまとまりその旨を片桐に伝えた。
「そうですか。ご協力感謝します」
それだけ言われて、帰るよう足された。
「やはり俺達は歓迎されてなかったな」
帰り際のホワキンの言葉がみんなの気持ちを代弁していた。
●解決
数日後犯人は逮捕された。
容疑者は神崎京介で共犯は赤井洋子で理由は恨みからによる犯行だった。
大方傭兵達の推理通り妹が合鍵を神崎に渡し、直前になって怖くなり、事前に計画していた犯行直前に電話したが通話できず、神崎は眠っている被害者に忍び寄ったが気付かれ、被害者の口に手を当て、包丁で複数回刺し、その後部屋を荒らし、カレンダーは、彼氏との予定が書いていた事に逆上し、ぐちゃぐちゃに破った。
逃走経路は氷と縄のトリックを使い、完全犯罪を装ったが、ダイニングメッセージやカレンダーについていた血痕が決め手となった。
「今回ばかりは感謝しないとな。」
いくつかの手掛かりは傭兵達が見つけたものだった。
「謝らないとな」
片桐は冷たい態度をとっていたことを反省していた。
それには理由があった。
今まで傭兵達は偉そうにしていて大金をふんだくる奴ばかりだと思っていた。
そう3つ目は、今までの傭兵達との捜査でどんな事をしていたのか見ていたからだった。
少し傭兵達を見直した片桐だった。
「さてあいつらに負けず仕事するか!」