●リプレイ本文
●それぞれの思い(神城の待ち伏せ)
神城が通る道に待ち伏せをしている、鳴神 伊織(
ga0421)、御山・アキラ(
ga0532)、藤村 瑠亥(
ga3862)の三人。
三人の思いはそれぞれ。
それはバクアやキメラと違い、人が個である証。
鳴神は神城や神楽の事を心配していて、迷った挙句、危険があるこの班についた。
(「やはり前回の事は、大きな傷となって残ったみたいです‥神城さんが飛び出しましたか‥あの方は優し過ぎた部分もありましたし、今の状況に自棄になっているのでしょう。
」)
そして鳴神は伝えようと思う。
(「‥だからと言って、まだ立ち止まる訳には参りません。私達にはやるべき事がありますから」)
今やらなければならない事はなんなのかを。
(「そんな事を言ったら、冷たいと言われるでしょうが‥」)
鳴神は自嘲気味に小さく笑い‥その後、前を見据える。
(「何としても連れ戻しませんと‥」)
「復讐ではなく殉死を選ぶか」
御山は誰に言うのでもなく呟く。
御山は話し合った末、それでも行くと言う、固い決意なら‥通すのも仕方ないと思っていた。
無論、御山は神城達を全力で説得し、仲間が武力で止めようとするなら、自分もつき会う気でいるが、心情としてはそう思う。
(「全ては、来てからだな」)
そっと、コートにある、ある者を握る。
藤村はかつての自分と重ねていた。
(「くそっ、この間の依頼‥俺が居れば、同じ想いをさせずにすんだかも知れ無い」)
だが‥それは全て過去の事で、もう戻らない。
UG崩壊も自分の身に起こった出来事も。
そして藤村は決心していた。
自分の過去言おうと‥。
それでどうなるかは、藤村は分からないが、きっと何か心に残るのではないかと確信している。
そして‥1つの影と共に‥現れた。
●それぞれの思い(追悼式)
追悼式が始まる前に門の前で筋肉 竜骨(
gb0353)となつき(
ga5710)は待ち伏せしていた。
なつきは考え込むように下を向いて、意を決したように前を見据える。
(「‥彼等の前じゃ、涙は見せないって、決めた‥たとえどんなに悲しい事をいわれても)
筋肉はストレッチしながら、依頼内容について考えていた。
(「あいつらに教えてやらねばな」)
それはUGじゃなくもう1つの依頼。
程なくして、神楽と海道が現れる。
「嬢ちゃんすまないな‥身内毎に巻き込んで‥」
「水臭いですよ、海道さん」
本当は痛々しい海道の顔を見て、なつきは心が悲しくなったが、懸命に笑顔を海道に向ける。
神楽は、誰かを探していた。
「鳴神さんと御山さんと藤村さんは神城さんの説得に向かっています」
「そうですか」
神楽は相談したい事があったが‥。
「がはは、心配事か」
後にする事にした。
熊本警察能力者やUGの面々が現れ‥。
四天王(恵比寿以外)の表情が焦っている事に気付いたなつきは、あたりを見渡し‥ある事に気付く。
「拳子さんが居ない‥」
●説得
現れた神城は頬が扱けていて、髪の毛も真っ白‥。
だが目だけは、眼光が鋭く‥そして痛々しかった。
「そこを‥どいてくれ」
それを言うだけの理性は神城の中にまだ残っている。
それは‥説得できるかもしれないと言う希望。
「落ちつきましょう神城さん」
「これでも飲んで落ちつけ」
御山と鳴神は飲み物を手に持ち、慎重に神城に歩み寄ろうとしたが‥後退する。
何故なら、目が、明確な拒絶を示したからだった。
「‥頼む、通してくれ‥できる事なら傷つけたくない」
それは、まだ闇に囚われていない証。
僅かに瞳が揺らいでいた。
「話だけでも聞いてください‥神城さん」
「話をするだけでもしていって欲しい。話の後でなおこの先に進むなら、これを譲ろう」
「少し話さないか‥‥? 行動するのは、それからでも変わらないだろ?」
御山は氷雨、小銃「S−01」、貫通弾を見せる
鳴神と御山の思いが通じたのか、神城は無言で肯定を示す。
初めに説得を試みたのは鳴神。
「私の力が及ばないばかりに‥大門さんを含めたくさんのお仲間を失う事に‥ですが、大門さんが後事を神城さんに託した意味を理解して欲しい‥」
「俺には‥荷が重すぎた‥だからせめて、皆の役に立てるように‥死にたい」
神城は精神的に‥疲れていた。
仲間の死‥大門の死‥。
一晩考えて居る時、自ら命を絶つ‥と言う事も考えていた。
「神城さんが死んだりしたら悲しむ方がいます。音遠さんも、海道さんも、私も‥だから戻ってきてください」
言い終えた鳴神すっと引き下がる。
次に説得を試みたのは御山。
「奴らの拠点に乗り込み、死ぬまで暴れる。殉死としては良いだろう。だが、それで本当に良いのか?奴らが『UGの大門もこんな奴を生かすのが精一杯だったなんて大したこと無かったな』と吹聴しても、死んでも死に切れないとは思わないか?」
神城は頭に血が昇るのを感じる。
「‥大門さんの‥悪口を言うな!」
(「逆効果だったか」)
「自分はバグアが地球に居たままでは死んでも死に切れないから戦っている‥それを忘れないでくれ」
御山は引き下がる。
心は揺さぶられたものの、神城の決意は揺るがなく‥そして。
「もういいか? もしあいつらに合うような事があったら‥『ごめん』と伝えておいてくれ」
最後通告のような言葉を出す。
「待ってくれ‥俺の話を聞いて貰いたい」
今の神城はまるで昔の自分の様に藤村は感じる。
だから俺の昔を話そうと思う。
意を決して藤村は話始めた。
「人として終わらせる。そうするしかなかったかつての俺は、自分の生きる意味を失いそのまま傭兵になった」
藤村は悲痛な面持ちで続きを言う‥言わば振る傷を抉るような行為を。
「何度となく、望んだ死を間近に感じながら、だがそこにあったのは、只の虚しさだけだ。
死ににいくのは、償いにはならない
お前の命は最早お前一人のものではない。
大門はお前に後を託したのだ。
死者の想いを無駄にするつもりか?
もう誰の死も見たくない? 犬死してでも? 甘えるな! 何も背負いもせずに、生き残された者がそう易々と命を棄てれると思うな! 俺は咎を背負い続けるだろう。許されなくても、重すぎても、それでも醜く生きることが、残された者の義務だからだ。
もう一度言う
お前の命はもはやお前一人の物ではない。
大門の託した想い、そして仲間と共に生きなければならない。
目を背けるな、前を向け、お前は常に仲間と共にある」
それは藤村の心の声を‥そのまま言ったもの‥。
それは自分にも向けた言葉でもある。
そして‥神城は激しく動揺する。
「俺は‥」
そんな時、通信機に連絡が入り‥前を見ると‥。
●拳子の理由
「拳子さん‥は‥?」
なつきや筋肉を始め、海道も神楽も四天王の方を見る。
だが‥その問いに答える者はいない。
「どんな事でもかまわないから答えて‥でないと、本当に手遅れになります」
(「あんな思いは‥もう二度としたく無いから」)
「仕方あーりませんね〜。拳子さ〜んの部屋にこんな者が置かれていま〜した」
いつの間にか、乙女のポケットから、手神を抜き取り、なつき達に見せる。
『わりぃ〜な。仲間が殺されたのにただ黙って見てるのは私のしょうに合わない。できるだけ仲間を集めて、倒すつもり‥本当は大門さんの追悼式に行きたかったけど‥。乙女、びくびくするのは貴方の悪い癖だから直しなさい。巨漢はもうちょっとダイエットしなさい‥あ〜恵比寿は‥あ〜適当に頑張ってくれ‥別れの言葉なんてセンチな言葉は私にしょうに合わないから言わないでおくよ。
御剣 拳子』
それを見てから、なつきは激しい心の痛みに襲われたが。
「俺が連絡するか」
「大丈夫です」
それでも、筋肉の申し出を断り、通信機を手に持った。
●暴走者
鳴神は通信を切る。
(「さて、どうしましょうか」)
神城のさらに後方に、拳子と6人の能力者が立ち止まる。
「私と同じ考えだったんだな‥神城」
数分前なら即座に答えられた問いだが‥今は‥迷っていた。
(「俺は‥どうすればいいんだ」)
「神城、今度はお前が仲間を止める番だ」
「犬死することは自分を生かそうとした者の評価を落とすことになる。それを許容できるか?」
「‥」
藤村と御山の言葉にどうする事もできず、視線だけが彷徨う。
「拳子さん‥皆さん。神城さんの方針に従って貰え無いでしょうか?」
「いいだろう。私らは神城の方針に従う‥大将だからな」
どんどんと話が決まって行く‥。
(「俺は‥俺は!」)
いち早く異変に気付いたのは‥鳴神だった。
神城が自分の額に銃を押しつけ自殺を図ろうとしたのを‥鳴神が駆け出し、剣で弾き飛ばす。
鳴神の手はぶるぶると震えていた。
「何をやっているんですか! 正気に戻ってください」
そう言って剣を収め、鳴神は神城の頬に平手打ちを放つ。
「弱音を吐きたい時は吐けばいいのです‥ですけど、藤村さんの言った通り溜め込んで‥犬死や自殺するのはおやめください。誰も神城さんの代わりにはならないのです‥又同じ悲しみを‥仲間に背負わせるのですか‥」
神城は仲間達の顔を思い浮かべ‥力なく座り‥。
「大門さんは俺の心の支えだった‥そんの人が死んで平常心でいられるはずが無い‥でも周りはどんどん決まっていって‥いつしか大将の座に着く事が決まって‥そうさ、俺は逃げたんだ‥死に‥そうしないと俺の心がもたない‥おれは救いたかったんだ‥学校にいた仲間も‥UGの仲間も‥なんで俺だけ生き残る! ‥それに仲間を裏切った俺に、もう居場所なんて‥」
「あるだろうお前には」
「そうだぞ、神城。いるじゃないかここにも追悼式に行っている者達にも」
「そうですよ。皆待っています‥いつもの神城さんを」
「頼りにしてるからな‥大将」
神城は顔を上げると、皆の優しい笑顔があった。
「‥ありがとう‥」
神城は声をあげて泣いた。
●相談
式典はお偉いさんがたの話がメインで、悲劇面しているが、神城やUGの面々に比べると、天と値ほどの差があった。
追悼式で気になる話を聞き、終わった後‥なつきは海道を呼び、筋肉と四天王と特殊課からちょっと離れた所に立ち止まる。
(「さっきの話‥確かめないと」)
「何か相談したい事があります‥よね?」
なつきは海道の眼を真剣に見る。
眼を逸らしたのは海道の方。
「嬢ちゃんには隠し事はできないか‥追悼式でも周りがどう思っているのか分かっただろう‥裏切る者なんて者はどうしようもない憎しみや憤りの矛先に真っ先になる。『また、裏切ってるんじゃないか』、『裏切り者の居場所なんてネーよ』、『今度はバクアに売りつける気か』‥とかな。そんな事よりも‥神城の心を分かってやれなかった方がつらい‥神城ならああいう行動に出るのは分かってたはずなのに‥俺は」
拳を強く握る海道の手をそっと包み込む。
「‥人は、完璧ではありません‥相手が何を想い、何を求めているのか。それこそ神様でもない限りは分かりません‥恐れや不安は、あって‥良いんです」
なつきは海道と視線を重ねる。
「進むしか、無いのでは? 私達だって‥傍に、います物事がどう転ぶか。それは分かりませんけれど‥きっと、大丈夫だから」
海道は眼を見開き‥優しい表情になる。
「ありがとな嬢ちゃん。元気出たぜ。‥嬢ちゃんも悩み事があるんじゃないのか?」
「駄目ですね私。今日は不安な顔しないって決めてたのに‥UG本部での戦争は‥恐ろしかった‥止めたかった。誰一人、死なせたくなかった。けれど‥どうにも、ならなかった」
数秒、間を置き。
「私は、傭兵には向いていない人間なのかもしれません‥‥人を殺した先にある、生にしがみ付く事ができないから‥‥」
落ち込むなつきに、海道は優しく頭を撫でる。
「嬢ちゃんは、本当に優しい人間だ。味方だけでなく敵の事も考えてる。よし! 嬢ちゃんは俺が守ってやる‥といっても、俺は傭兵じゃなしここに来た時だけだけどな」
「当たり前です」
そう言ってなつきはくすくすと笑う。
「行きましょう‥皆の所に」
なつきの差し出された手を海道は握る。
一方筋肉は特殊課の面々を集め講義をしていた。
彼らの言い分によると、初めて人の死を見て、そんな所で‥足が竦まず、恐怖に打ち勝てるか‥と言う内容だった。
「いいかお前ら、よく聞け。本物の戦いってのは潰すかつぶされるかだ。喧嘩なんかと訳が違う。相手に呑まれて体が動かなかったり、油断すると、すぐに潰される‥取り戻そうにももう何も無い。だから、揺るぎ無い信念をもって戦いに挑みな」
「そうです。戦い方を決めるのは‥貴方達自身じゃありませんか?」
それから、四天王や海道も混ざり、何かしらの決意を持ったようだった。
●新たなる決意と‥
参列者が続々と帰るなか‥ある人物が来るのを待っていた。
そして‥。
「仁!」
「‥神城さん」
神城はよろよろと歩み寄り‥なんとも言えずに押し黙る。
「帰って来たなこの、心配かけやせやがって」
「‥お帰り」
「お帰りなさい」
「お帰りだな」
「お帰りぃ〜」
「おかーえりなさ〜い」
「お帰りなさい」
ここでも涙を出しながら‥神城は言う。
「‥ただいま、皆」
なつきは神城を呼び‥隣に座る。
「‥随分、お痩せになられましたね」
言うほどなつきは心配してない
何故なら、確かに痩せていたが、今は活力が戻っているから。
「‥命を奪う事は、守る為でもあります‥逃げないで下さい。前を向いて下さい。貴方に全てを託された、大門さんの想い‥捨てないで‥貴方は、独りじゃない。それだけは‥忘れないで、欲しい」
「‥ありがとう。‥俺はもう迷わない‥仲間のためにも‥大門さんのためにも‥死んで行った者のためにも‥お前達がそれを気付かせてくれた」
藤村と御山も混ざり、特殊課の講義が続く中、鳴神は神楽のがいない事に気付き‥探しに行く。
「どうしたのですか‥音遠さん‥悩んでいる事があったら言ってください」
神楽がいたのは会場の隅の方‥。
鳴神の顔を見て、一瞬頬が緩む‥が、すぐに沈んだ表情に変わる。
「‥怖いんです。‥刹那を、まえみたいに思えない‥自分に」
そう、神楽が悩んでいる事は、刹那は、大門を殺した組織に入っている。もしかしたら大門を殺したのは‥。
そう考えると‥もう姉妹として見れない‥。
だからその事を考えないようにしているが‥一度考えるとふかみに嵌ってしまう。
「‥それに‥近いうちに会う‥そんな気がします」
‥それはUGにとって最悪な形で‥実現する。