タイトル:UG本部崩壊マスター:御影友矢

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/07/04 16:41

●オープニング本文


 そこに2人の男が居た。
 1人の男が言う。
「人類は数年後にはバクアに占領される‥例え能力者が幾ら強くなったとしても。そうなる位なら人類を壊した方が良い」
 男達は2006年10月に人類の希望、能力者が誕生して直に能力者となった者達。
 余談だが、神城達もこの時に能力者になっていた。
 もう1人の男が言う。
「人類は必ず勝つ。俺達もその助けになろう」
「甘過ぎる! 第一100歩譲って、バクアに勝ったとしよう。
 だが今度は人間同士で争う事になる‥バクアを倒すために作られた兵器を使ってな。そして国同士の能力者の争奪戦が始まり、従わない者は殺される‥人は自分達より強い者には畏怖するからな。勝っても負けても能力者には辛い現実が待っている。」
 長時間にも及ぶ話し合いの末、結局お互いの意思を変えぬまま、二人は別れる。
 2006年12月の出来事。
 それから一ヶ月後UGとWBが誕生する。

〜WB仮眠室〜
「夢か・・こんな事を思い出すとは、今日があの日になるからか」
 男は起き上がり、最下層に向かう。
 あれから1ヶ月が経過し、ぎりぎりで成功を遂げた刹那が入り、NO内入れ替え戦の結果、見事6の称号を手に入れる。
 そして、手筈通り、四天王の無手神竜がUGを離脱し‥時は熟した。
 扉を開けると、既に7人のメンバーは揃っていて、刹那以外今か今かと命令を待っている。
(「本当はこんな事したくないんだけどね‥」)
 ここの人達は、戦闘以外はここまで関わって来た人達となんら変わりは無い。
 だが、NO8、9、10と一緒に刹那が始めて死神部隊として行ったときの戦闘は‥女子供でもお喋りしながら本当に楽しそうに殺していた。
 親の前で、子供の首を斬り落としたり、爪の1つ1つを剥いだり・・まさに狂っているとしか言いようが無い‥そんな状態。
 だが、リーダーのNO1と、2、3、5(無手神)、7は殺しに快楽は求めていないと刹那は感じている。
4と11は、まだ見た事がないので刹那は分からなかった。
 そしてNO1が口を開く。
「機は熟した。各UG支部に、既にわが同胞を送り込み、6時間後に強襲する事になっている。我等は既に配置してあるキメラ10体と最下部10人が先に攻撃をし、後から本部を強襲・・そして、ある物を手に入れる。あっちは、此方の思惑通り、支援者の護衛にまわって手薄な筈だ」
(「全てはこの時の為にこの組織を作った」)
 そう、この時の為にWB設立したのである。
「邪魔な奴が出てきたらどうするんだ!」
 ここに居る中で一番の戦闘狂NO8は叫ぶ。
「殺せ」
 凄まじい叫び声が轟く。
「又傭兵呼ぶのだったら、キメラは駄目ね」
「そりゃそうだな」
 NO3は疑問を口にしNO7は同意する。
 そう、偽装依頼をする場合キメラなんてもってのほか。
「あれには根回しが必要で多額の金がかかる。それに傭兵達に薄々ばれているだろうしな」
(「私は話してないのに」)
 刹那は、疑問を持っている事など詳しく話して無いのに、まるで見て来たかのような物言いだった。
 数十分の話し合いの後、移動する。

 それが‥悲惨な殺し合いの5時間前の話

〜UG本部司令室〜
「何! それは本当か」
 大門は相手の最終目標はここだと予測していたが、こんなに早く来るとは思っていなかった。
(「嵌められたと言う訳か」)
 その内容は、今から1時間後に、各支部や本部にWBが攻撃を仕掛けると言った内容。
 新しく恵比寿を加えた四天王や多くの者は支援者の護衛で、3時間以上はかかる場所にいてくることは不可能。
 今いる人間は神城、神楽、海道を含め僅か12人・・とてもじゃないが防ぎきれるような人数ではなかった。
「間に合うか‥」
 至急UPCに依頼を出し、緊急警報を鳴らし、状況を伝えた。

「必ずここを落とさせはしない‥必ず」
 まだ、無手神さんの問いに答えは出でない。
 だが、命に変えてもここを守りたいと‥神城は思っていた。
 それは‥。
「‥そうね」
「まだ来て短いが、WBに落とさせはしないぜ」
 神楽や海道も想いは同じ。

 しかし‥その想いとは裏腹に‥。

●参加者一覧

鳴神 伊織(ga0421
22歳・♀・AA
時任 絃也(ga0983
27歳・♂・FC
西島 百白(ga2123
18歳・♂・PN
烏莉(ga3160
21歳・♂・JG
ランドルフ・カーター(ga3888
57歳・♂・JG
南雲 莞爾(ga4272
18歳・♂・GP
なつき(ga5710
25歳・♀・EL
筋肉 竜骨(gb0353
24歳・♂・DF

●リプレイ本文

 〜開始一時間前〜
 到着した、鳴神 伊織(ga0421)、時任 絃也(ga0983)、西島 百白(ga2123)、烏莉(ga3160)、ランドルフ・カーター(ga3888)、南雲 莞爾(ga4272)、なつき(ga5710)、筋肉 竜骨(gb0353)の傭兵達8人は、時任の案をUG側に伝え、総勢20名は5班に分かれて人を組んでいた。

〜A班〜
 A班は一番前に陣を取っていて、危険で重要な仕事。
 班員は鳴神、南雲、神楽を含め4人。
(「人としての甘さが招いた結果がこれ、か」)
 ここに来る前会った事がないUG上層部に何か言わずにはいられない南雲だったが。
(「結果として水面下の活動を許し、由々しき事態へと繋がっていく‥‥まあ、そんな人間性も組織の頭目の証‥‥だろうな」)
 ここにいる誰もが、頭目を信頼しているのは目を見て分かっていた。
 だから南雲は、言うのを辞め、せまりくる戦いの事を考えていた。

(「後手後手に回った結果がこれですか‥。もっと良い方法があった筈ですが、今更ですね。今はこの場を切り抜ける事を考えましょうか」)
 後の戦闘の事について考えていた鳴神の後ろから声が掛けられた。
「‥伊織さん‥来てくれていたのですね‥ありがとう」
 小さく笑う神楽。
「当たり前です音遠さん‥私達、友人です‥よね?」
 確認するように鳴神は言う。
 鳴神は、神楽と神城の事を大切な友人だと思っていた。
 はっきりと神楽が頷く。
「‥私も‥そう思っています」

「俺がいるの‥忘れてないか」

〜B班〜
 B班はA班の左斜め後ろに位置し、班員は鳥莉を含め3人。
 鳥莉は輸送船に乗って来てから今までチェックに余念がなかった。
(「‥他の者は‥躊躇するかも‥しれないが」)
 鳥莉は最終確認を終える。
 本職がヒットマンである烏莉にとってはそんな悩みなど無いようである。

〜C班〜
 B班の横、A班の右斜め後ろにC班は位置していた。
 ランドルフ、西島を含め三人が班員だった。
「さて‥何人‥生き残るのだか‥」
 敵を含め、西島は全員生き残るとは思っていなかった。
「ちょっときたまえ」
 ランドルフは同じ班員と打ち合わせを行うため、班員を呼ぶ。
「閃光弾でひるんだ所で猪の足を狙う。基本前衛の支援に徹し、状況により敵スナイパー、サイエンティストを攻撃させて頂く‥これでよいな?」
「‥いいぜ‥」
 西島達は頷く。
(「それにしても‥」)
 まだ見ぬ敵に対しランドルフは怒っていた。

〜D班〜
 B班の後方、全体の後方左に位置するD班。
 班員は時任、筋肉、海道を含め5人。
「俺の予想通りになるかは分からんが‥最悪の事態を想定しないとな」
 最悪の事態‥それは撤退。
(「もし、説得に手間取るようなら」)
 時任の瞳が鋭く光る。
 筋肉は、体を動かし、こんな時でも筋肉を鍛えていた。
(「戦闘前の準備体操だ」)

〜E班〜
 C班の後方、全体の後方右に位置するのがE班。
 なつきや神城を含め5人が班員。
「‥何、してるんでしょうね。私達‥」
 誰に問いかける事もなく、なつきは口から言葉が漏れる。
(「人同士が争い合う‥こういう時――無性に、人間をやめたいと思ってしまう。こんな事言ってたら、彼に怒られちゃうんですけれどね」)
 なつきは自嘲気味に笑う。
「浮かない顔だな、嬢ちゃん」
 なつきの浮かない顔を見て隣の班から海道が来る。
「海道さん」
 なつきは海道を見上げ、再び俯く。
「人間同士‥何で闘うのでしょうか? ‥この戦闘で、誰も命を落とさないよう、願うばかり、です。」
「人間ってのは自分勝手な生き物だ。相対する者は闘う。‥優しいな嬢ちゃんは‥敵にも優しさを配れる。嬢ちゃんは嬢ちゃんの目指す闘い方をすれば良いと思うぜ、俺は」
そう言って海道は優しい笑みを浮かべる。

(「‥誰一人仲間を殺させはしない‥例え自分の命が散ったとしても‥」)
 神城の両親や友達がバクアに殺され、兄と2人で暮らしていた。
 だが、兄は突然行方不明になり、ただ1人の親友の海道も、神城が何かを守る力が欲しくて、UGに入った矢先に居なくなる。
(「もう自分には何も無い‥」)
 生きる事に疲れた神城の心を救ってくれたのは大門やUGの仲間達だった。
 だがら‥神城は大門や仲間のために命を捧げると決意する。
 神城は眼を閉じ‥戦いに備えた。

●対決‥
 〜1時間後〜
「‥来たぞ」
 南雲が呟く。
「神楽さん‥もしもあの状態になっても‥私が何とかしますから‥大丈夫です」
「‥迷惑ばかりかけて‥すいません伊織さん‥伊織さんが居れば安心できます」
 そして二人は頷きあう。
 道の最前方からキメラ10体が横から現れ、道全部を埋め尽くし、横一列に突進して来た。
「‥作戦を開始する」
 鳥莉は無表情で言葉をつむぎ
「任務‥開始‥‥面倒だな」
「なんたる浅はかさ! これぞ偽ブライトン博士が狙っていた状況ではないか!!」
 西島とランドルフは勝手気ままなもの言い。
「悪いがここで死んで貰うぜ」
「時間は有限だ、速やかに殲滅する」
 時任と筋肉は戦気を高め。
「願わくは、誰も死にませんように」
 なつきは祈っていた。
 だが、誰も攻撃する気配は無い。
 それは‥。
「今だ‥」
 南雲が叫ぶ。
 そう‥全員南雲の合図を待っていたのだった。
 南雲達が閃光弾を放ち、敵が、目が眩んだ時にキメラに向かって陣を崩さず全員が突進する。
 まず突撃部隊であるA班が口火を切る。
 4人横一列になり中央のケルベロス2体猪キメラ2体のキメラの足を薙ぎ、そのまま前進する。
 続いて、B、C班が、左右のキメラの足を薙ぎ、撃ち抜き、前進する。
D、E班は中央を確保し、キメラを囲むようにD班はケルベロス、E班は猪キメラに標準を合わせる。

「参ります」
 キメラの後ろには10人の敵能力者。
 鳴神は衝撃波を放ち、中央を分断する。
(「血‥」)
「先に行く」
 南雲が瞬天足で、神楽の目が血色になり、同じぐらいのスピードで、後方支援部隊目掛け突進し、鳴神も後に続く。
 分断した中央に、B、C班が入り‥左右に照準を合わせ‥それぞれの戦いが始まる。

〜A班〜
 接近されないよう敵は銃や超機械で南雲と神楽を狙うが、一発も当たる事無く避けるが‥。
 1人が照明弾を構える。
(「まずい‥」)
「どいて下さい!」
 その声に反応し、2人は横に移動する。
 後ろから、鳴神が跳躍していて。
「悔い改めなさい」
 最大級の斬撃を、照明銃を持っているスナイパーに振り下ろし、一瞬で絶命させ、残りの敵三人は鳴神に一斉攻撃を仕掛けようとするが
「させん」
「‥殺す」
 南雲がもう一人のスナイパーに急所突きと瞬即撃での神速の一閃を放ち、敵は前のめりに倒れ、生涯を終える。
 最後尾にサイエンティストの首を神楽が神速のスピードで薙ぎ、大量の血を撒き散らし死に、鳴神は、反転して、強烈な一撃を振り上げエキスパートは深く袈裟斬りされ、絶命する。
「大丈夫ですか音遠さん」
鳴神は駆け寄る。
「私はここで‥早く援護に‥」
 辛うじて衝動を抑えている神楽。
「‥すぐに戻ってきます」
「行こう」
 鳴神と南雲は援護に向かった。

 〜B班〜
 鳥莉は苦戦していた。
 中間距離を得意とする鳥莉に対し、グラップラーは瞬天足を使い、距離を詰める。
 その俊敏な動きに対応できず、傷を負う。
 敵が勝てると思って‥できた僅かな隙。
(「‥今だ」)
 鳥莉は銃を投げ、虚を疲れた敵は、反応が遅れ手でガードし鳥莉を見失う。
「接近戦では銃よりナイフの方が強い時もある」
 既に敵の眼前にいた鳥莉は、ナイフで敵の喉を掻っ切る。
「戦場に情けは無用だ‥生き残りたいのなら」
 鳥莉は投げた銃を拾った。

 〜C班〜
(「どうやら援護は入らないみたいだな」)
 ちらりとランドルフは、A班が後衛部隊を殲滅した事を確認し対峙しているダークファイターに移す。
「若く、そして哀れな若者達よ! それほど世界が嫌なら己で首を括りたまえ! 他人を巻き込むなッ!」
「お前らはここで‥全員死ぬ」
「吼えるな若造!」
 足を影撃ちし‥。
「恨むなら偽ブライトン博士を恨め」
 胴体中央にランドリフの銃撃が当たる。

「貴様は‥何のために‥能力者になった?」
 西島は敵ファイターに問う。
「生きるためだ」
「そこまでして‥生き延びたいか‥」
「愚問だ」
「‥そうか‥来いよ‥片っ端から‥喰らい尽くしてやる貴様らが‥正義と‥言うのなら‥それで構わない‥その正義を‥俺が‥片っ端から‥潰してやるよ」
 先に動き出したのは西島。
 敵の頭に強力な一撃を振り下ろしたが、敵にガードはされたが、敵の武器を弾き飛ばす事に成功し、素早く相手の後方に回りこみ、背中を両断する。
 B、C班のUG社員は、苦戦していたが鳴神達の協力もあり、撃退に成功する。
 全員が後方に目を向けた。

〜D班〜
「サイエンティスト‥時任、海道、筋肉に強化措置を頼む」
 サイエンティストは後方から強化措置を行い、手負いのケルベロス5体を筋肉と時任エクセレンターが前衛となり、その後ろに海道がつく。
「まずは一匹ずつ確実に仕留めるぞ」
「おう!」
 目晦ましの隙に、2体を殲滅し。
「俺と筋肉は一匹ずつ受け持つ。残りは頼む」
「分かったぜ」
 海道は頷く。
 それからターゲットまで移動し、目晦ましの効果が切れる。
 時任は、キメラの攻撃を瞬天速でかわし、機動力を失った、敵の背後に移動し、キメラの背中からつたって、跳躍し、剣をケルベロスの首に突き刺す。
 筋肉は武器に力を付与し、キメラの引っ掻く攻撃を受け止め、槍を首目掛けて勢い良く投げ、突き刺さる。
 海道は、UG社員が何とか攻撃を受け止めている隙に、首を狙い発射し、見事着弾する。
「E班の援護に行こう」
「嬢ちゃん」
 なつきが言った言葉を思い出し、海道は不安に駆られながら援護に向かう。

 〜E班〜
 目晦まし中、神城の狙撃が2体の眉間に命中。
 なつき達が一体に一斉攻撃を仕掛け、倒す。
 そして、目晦ましの効果が切れ。
「一体を俺が倒します。‥後は頼みます」
 神城はそう言い、1体に標準を合わせる。
 なつき達は残りの1体に的を絞る。

(「どうして‥人同士が殺し合わなければならないのだろう‥誰も死なないで欲しいというのは甘い考えなのだろうか」)
 周りを見渡すと複数の敵の死体が見える。
「嬢ちゃんあぶねぇ」
 最後の力を振り絞り猪キメラは、なつきに突進を試みる。
 海道の声で、我に返り、急所突きと影撃ちを使い、何とかキメラを倒す事に成功する。
「すいません、海道さん」
「なあに、嬢ちゃんが無事で何よりだ‥」
 神城は既に終わっていて、敵を全滅する事に成功したが‥

 更なる事態が巻き起こる事など、知る由も無かった。


●撤退‥誰かの道標
「おかしいですね‥本拠地の襲撃の割には戦力が少なすぎます‥わざわざ陽動まで掛けた様ですし、何か目的があるはず‥」
 神楽に水をかけ、神楽に眼を瞑ってもらうよう鳴神は言い、寄り添うように誘導し、血を見ない場所に移動した後、怪しむように考え込む。
(「‥何だろう」)
 なつきは何か胸騒ぎを感じる。
 ランドルフは、敵能力者のエミタを切り取ろうと思っていたが、自爆装置が作動するかもしれないという事もあり、仲間の説得から、断念する。
 時任や南雲や西島は警戒心を緩めていなく‥戦闘開始から1時間50分後‥通報が鳴る。
「20分後、本隊Eleven Pests8名がここを攻めてくる事を確認した‥至急撤退準備に入ってくれ」
 それは大門の声。
「大門さんには悪いですけど‥俺はここに残る‥」
「‥私も‥」
「俺も残りたいが」
 神城達を初め口々に、反対の声が相次ぐ。
 神城達は撤退=UG本部の崩壊だという事は言われなくても分かっていた。
「神城さん、音遠さん。確かにUGの方々にとっては、ここは大切な場所なのでしょう。
しかし‥ここで果てるより、生きる事の方が大切ですからね。生きてさえいれば、やり直しが効きますし、果てればそこで終わりですから‥。それに‥刹那さんの事も私はまだ諦めていませんからね‥。諦めるのはいつでも出来ますし」
「伊織さん‥」
「今、やらねばいけない事は何ですか? 貴方達が欠けてしまったら、UGは成立しません‥!」
「嬢ちゃん‥」
 鳴神やなつきが説得を試みる。
 海道や神楽は説得され、撤退の決意をしたが‥神城は頑なに拒んだ。
(「ここは俺達の家なんだ‥だから‥」)
 そうしている間にも、敵は刻一刻と迫っている。
「御託はいい、さっさと撤退準備に入れ、何がしたいのかは知らんが、今はその時では
無いと諦めろ、お前らの都合で部隊が動いている訳ではないはずだ」
 痺れを切らした時任は神城に向かって銃を突きつける。
「そこまでにしてくれ」
「大門さん」
大門はUG内部から出てきた。
「例えここが滅んでしまっても、信念があれば、どこでも復活する‥全ては俺の弱さが招いた事だ‥神城‥お前に信念を託す。神楽、海道‥神城の事を頼む」
 それは別れの言葉。
 そう、大門は長として、託す者として、ここに残る決意をしていた。
「嫌だ。もう誰も失いたく無い‥俺もここにのこっ‥」
「悪いな」
 時任が鳩尾に拳を叩きこみ気絶させる。
「すまない、傭兵の者よ」
 そして、南雲と神楽と鳴神が先行し、時任が神城を担ぎ、最後尾をなつきと西島が受け持つ。

●託す想い、やりきれない心
 数分後、UG内部から、神楽、海道、神城を抜かすUG社員が出てきた。
「俺達もあいつらに後を託しました‥時間稼ぎぐらいはできます」
「‥すまない‥」
 さらに数分後、Eleven Pestsが姿を現す。
(「やはり、お前か」)
 それは、あのとき決別した男。
「お久しぶりです。原爆の隠し場所の書いた地図と‥を貰いに来ました」
「これが答えだ」
 持っていたスイッチを押し、UGを爆破する。

 最前列や最後尾が周りを警戒し、出口に出たときも、敵がいないか確認した。
「‥ちッ、向こうに一本してやられたか‥」
 そう言いながらも南雲は結末を冷静かつ淡々と受け止めていた。

 ランドルフは、苦言を呈したかったが、心情を察し、言うのを控える。
 なつきはやりきれない気持ちで一杯だった。
(「私が引き止めていればあの方達も」)
「‥」
 なつきは神楽や海道の方を見ると、神楽は鳴神が付き添っていて、海道は気絶している神城の方を見て、拳を握り締め涙をこらえていた。
 そんな姿を見て、なつきは唇を噛み締める。
(「亡くしてしまえば、他に繋がる事は沢山あってもひとつは確実に途切れてしまう。伝えたかった事も、出来る筈だった事も、叶わない――」)
 ‥大切な人が言っていた言葉を、ふと思い出す。

 こうして、この戦いは幕を閉じる。
 やりきれない心と、託された想いを胸に‥。