タイトル:裏切り者を暴けマスター:御影友矢

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 4 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/06/03 11:23

●オープニング本文


 その日二つの紙がUG掲示板に貼り出された。
 1つはUG本部内のランキングで、もう1つはUG全体のランキング。
 かなりの人数がそれ目当てで集まっていて、とある3人も、例外ではなく‥。
「5位と6位と10位か・・相変わらずスゲェなお前と嬢ちゃんは」
「‥よせよ、お前こそ来たばっかりなのに、いきなりランキングトップ10内に入るとわな」
「‥そちらの方が・・凄い」
「と言ってもぎりぎりだけどな‥あん時はありがとな」
 そう‥話してる人物は神城仁(20)と神楽音遠(18)と海道昇(20)。
 先日の教会占拠事件で、海道はUG内の勾留場所に拘束され、海道の処分をどうするか、会議が開かれ。
 神城や音遠の説得で、WBについて知ってる事を述べれば、ここで働いても良い‥という事になった。
 それから海道にWBについて知っている事全てを話して貰い、分かったことが二つ。
 1つは、死神部隊とはWB中心『Eleven Pests(11人の疫病神)』の中の4人であり毎回変わると言う事。
『Eleven Pests(11人の疫病神)』のメンバーは凄まじく強く、一部を除いて、NO11まである中で、(海道がいた頃は一つ空位だったが)上にいくにつれて実力が上がる。
 海道はWBに入ってきた当初に、一度対戦したが、NO10にすら、手を抜かれて惨敗していた。
 もう1つは、ここの情報が筒抜けだった事。
 同時爆破テロ事件のUGメンバーの配置も、WB側には分かっていたと海道は言う。
 それについては、分かっていた事だったので、驚きは無かったが。
 神城は悲しそうな顔をしていた。
(「‥できる事なら信じたくなかった‥出鱈目であって欲しかった‥」)


 そして30分後、神城、海道、音遠の3人は大杉大門(56)から司令室に呼ばれる。
 中に入ると、大門と、大門の横に1人の巨大アフロの髪型の男がいた。
「はぁーい、皆元気にしてるかーい」
 一同唖然とする。
 紹介しようと思っていた大門さえも‥。
「皆元気ないねー」
「いやちょっと面食らってるだけだ」
「‥誰かの知り合い?」
「初対面だ」
「ごほん‥紹介しよう熊本支部から転属してきた、ダークファイターの恵比寿・プレス・リーだ」
 絶対偽名だと思う面々だったがその名前には聞き覚えがある。
 それは今朝出たもう一つの紙に記されているUG全体のランキング。
 今回は神城が初の10に入り、神楽は16位、海道は28位。
 その中で不動の5位にランクインしているのが、恵比寿・プレス・リー。
「よく、あちらが受けてくれましたね」
 熊本支部との関係は悪く(あちらの本部長がこちらを目の敵にしているだけだが)、疑問に思った神城が質問する。
「それについては」
 言いにくそうに、大門は口ごもる。
「それはーあちらさ〜んののりがあわなかったからで〜す。もう耐えられませ〜んでした。」
 若干引き気味の一同。
「まぁそう言う事だ‥それよりも、お前達に重大な話があってここに呼んだ」
 苦笑した後、大門は真面目な顔に変わる。
 紹介は前菜に過ぎず、本題は別にある。
 だが、神城にとって見れば、ひどくつらい現実を突きつけられる事に。
 大門は4枚のプロフィールを机の上に並べ、神城は驚愕の表情を浮かべる。
(「ばかな‥」)
「調査の結果、裏切り者はこの4人の中に絞られた」
「そんなはずはありません‥彼等は」
 とうとう押さえ込んでいた言葉が口から漏れた。
「残念だがこれは事実だ。俺もまさかこの4人の中に裏切り者がいるなんて思いたくなかったが‥仕方ないんだ・・」
 それはまるで自分に言い聞かせるように。
 そう‥それは四天王と呼ばれる人達だった。
「休日に尾行し、何としても裏切り者を割り出してくれ・・傭兵にはもう依頼してある」

 神代達が帰った後、もう1つ資料を出し、大門は溜息をつく・・
「そう攻めてきたか‥」
 それはUGの支援者‥つまりパトロンの名前が書いてある資料。
 高額支援者20人いる内、7人は既に何者かの手によって殺害されていた。
 実は恵比寿・プレス・リーが居た熊本支部は、支部に多額のお金を提供していた人物に、恵比寿を除く熊本支部トップ10を初めとする、多数の人物がボディーガードとしていっていたが、先日の襲撃により、領主は含め多数の死者が出ており。
 恵比寿の本当の理由は、仲間の敵を取るためだった。
「早急に対策せねばな」
 大門はそう呟き、資料から眼を逸らす。

「あいつには‥辛い事になるかもしれないな」
 本当は‥大門は裏切り者が誰か、8割方分かっていたが、とうとう言えなかった‥が裏切り者である可能性が高いと。

●参加者一覧

鳴神 伊織(ga0421
22歳・♀・AA
漸 王零(ga2930
20歳・♂・AA
なつき(ga5710
25歳・♀・EL
カラクリ(gb0365
20歳・♂・ST

●リプレイ本文

 UPCから携帯電話市街地マップが、全員分支給された。

●再開と沈黙
 鳴神 伊織(ga0421)は、いろいろな事を考えながら、ある人物を待っていた。
(「裏切り者が四天王の一人‥そこまで強いとなると向こうでもそれなりの位置に付いているのでしょう。捕まえて情報を聞き出したい所ですね‥それにしても組織内の順位ですか‥私があの中にいたらどの位か知りたい気もします。自分の程度が判るでしょうし」)
 鳴神の尾行対象は御剣拳子‥休日はパチンコ三昧との情報があり、今日もパチンコに行くだろうと鳴神推測していて、武器は袋に入れている。
「‥鳴神さん‥お久しぶりです」
「神楽さん‥」
 鳴神は神楽の顔を見れなかった。
 それと言うのも、この間の依頼であった刹那の顔が忘れられない。
(「言わなければいけないでしょうが、長くなりますし、対象がパチンコ店に入った時‥言いましょう」)
 数分後、拳子が部屋から出てきて‥尾行を開始した。

●恋人
「‥海道さん、お久しぶりです。私の事‥覚えておられますか?」
「嬢ちゃんだろ久しぶりだな」
 対象である姫島乙女のアパート近辺で、海道となつき(ga5710)は合流し、乙女が、部屋から出てきたのを機に尾行を開始したのだが。
「あのさ嬢ちゃん。もう少し離れてくれるとありがたいんだが」
「何でですか?」
 不思議そうになつきな首を傾げる。
 なつきは腕を組んで恋人同士を装っていた。
 それは話し合って決めた事なので、なつきは自分が考える恋人のそれを演出していて、海道に聞き返す。
「俺はこういう経験が無いから、嬢ちゃんみたいな可愛い子が、こんなにも近くにいると、尾行所じゃなくなるからな」
 そう言い、海道を組んでない方の手で、赤くなった頬をかく。
 それを見てなつきはくすくすと笑う。
 楽しそうな2人は、乙女のペースに合わせながらデパートを目指し、歩いていた。

●アメリカン
「う〜ん、いつになったら来るのだろうか、我輩は心配ですね」
 約束の時間を過ぎ、本気で狂大巨漢の尾行を1人でやる場合の事もカラクリ(gb0365)は考えていた。
 そして巨漢がのしのしと部屋から出て来た時。
「すいませ〜んね。あざま〜しが鳴らなかったんで〜す」
 巨大アフロのアメリカン男が現れ。
 カラクリは、はずれを引いたかもしれないと理解する。
「よっ宜しく」
 若干引き気味にそう言い、尾行を開始した。

●受け入れたくない想い
(「あまり考えたくない内容だが‥‥割り切るしかない」)
 漸 王零(ga2930)は神城を待っている間、そんな事を考えていた。
 やがて神城が来て。
「この間は世話になったな。今回もよろしく頼む」
 漸が挨拶し。
「こちらこそ宜しく頼む」
 神城が返し、握手を交わす。

 尾行対象である無手神竜の尾行の最中神城はこの想いに苛まれていた。
(「‥くそっ、何で仲間を疑わなければいけない。先輩達は絶対裏切りなんて」)
 そう思う自分と、疑っている自分がいて、神城は酷く自己嫌悪に陥る。
「大丈夫か」
 神城の顔色が悪いと感じた漸は心配そうに見る。
「ああ、すまないな」
 詫びをいれ、神城は気持ちを切り替え。
(「心配ない、何も無いさ」)
 そう自分に言い聞かせた。

●理由と真実と
 鳴神達は今パチンコ店から少し離れた距離の場所にいた。
 拳子はパチンコ店に入り、拳子と合流した人物がパチンコ店の前に立っているからだった。
(「丁度いいかもしれませんね」)
 そう鳴神は決心し、真摯な目で神楽の目を見る。
「お話したい事があります」
 空気で感じ取った神楽は頷き。
「その前に‥私の話から‥長くなりますけど‥」
「もちろん、構いませんよ」
 鳴神は優しい笑みを向け、話がしやすいような雰囲気を作る。

「よく話してくれましたね」
 神楽が話した内容に鳴神も驚いていた。
 内容は、音遠と刹那は東京で両親と暮らしていたが、バクアの襲撃にあい、目の前で両親が殺され、それがトラウマとなり、二人とも血を見るとあのような事になるが、間近で両親が殺されるのを見て、両親の血が自分の顔にあたった音遠の方が、血を見たときの衝動が酷かった。
 そして祖父と祖母が暮らす熊本に来たが、UGに入ってから数日後、些細な喧嘩が元で、刹那が家を飛び出して以来、会ってないと言った内容だった。
(「神楽さんには辛い話になるかも知れませんが・・言わなければいけませんね」)
「神楽さん、下の名前で呼んでも宜しいですか」
「‥その方が嬉しいです。‥私も伊織さんと呼んでもいいですか?」
「構わないですよ」
 鳴神はにっこりと笑みを作り、そして、真剣な表情に戻る。
「刹那さんの事ですけど‥」
 やはり‥というような表情になる音遠。
「無理やりだと思いますが、彼女はWBに入った様です」
 そして、この間あった依頼の出来事を説明する。
 それは衝撃的な内容で、神楽は悲痛な表情に変わる。
「それで、音遠さんに『ごめんなさい』と伝えるよう、伝言を頼まれました」
「そう‥ですか‥」
 その言葉は何処か上の空で、音遠は考え込んでいた。
 それから1時間経過し、拳子が店から出る頃には、幾分か冷静になり、調子を取り戻していた。
 だが・・そこで距離を詰めて、尾行がばれていた事に鳴神達は気付いていなかった。

 路地裏の中腹まで来た時、それは起こる。
 突如ベランダからライオンの男が現れ投網を投げ、銃を発射して来た。
 それは突然の不意打ち。
 だが鳴神たちは冷静に対処し、投網を避け、銃弾は、ペイント弾で、鳴神が腕でガードした。
(「また‥貴方ですか」)
 それは、先の事件でも敵側としていた人物。
 拳子達も振り返り、駆けつけ‥鳴神は尾行がばれていたと知る。
「すいません伊織さん‥私が違う事を‥考えていたばかりに」
「誰のせいでもありませんよ。今は‥」
(「ここをどう乗り切るか考えないといけませんね」)
「なっなんで尾行なんてしたんですか?」
 もう1人の女がそう尋ねてくる。
「訓練の一環で、尾行しただけです」
 音遠と考えた尾行理由を言う。
 それを聞き、拳子は仲間の2人を他の場所に行くよう促す。
「まぁ、嘘がばればれだからそんなことはどうでも言いんだけどね。それより今から勝負しましょう。私に攻撃を当てたら、音遠、貴方の質問に正直に答えるわ。だけど私が勝ったら‥猛省しなさい」
 そして、2対1の戦いが始まる。

(「あまり長引かせるわけにはいきませんし‥ここは早急に決着をつけます」)
 鳴神は音遠に目配せし。
 音遠は頷く。
 距離は5m。
 鳴神が高く跳躍し、強大な一撃を振り下ろし。
 音遠は低い体制で駆け出し、下段に薙ぐ。
 絶対に避けられない攻撃。
 だが拳子は小さく笑みを作り、音遠の攻撃を受け流し、回りこんで強烈な蹴りを背中に浴びせる。
 着地した鳴神は、背後を取られる。
(「負けません」)
 だが、鳴神は素早く拳子の後ろに回りこんだのだが。
(「いません」)
 忽然と拳子の姿が消えていて。
「‥上です伊織さん」
 数m飛ばされた音遠は叫ぶ。
 そう、鳴神が回りこむ前に拳子は予測し後方に飛び半回転し、鳴神の高等部を狙う。
 鳴神は音遠の声に反応し、前方に飛び出し回避する。
 拳子は、、四天王内で一番攻撃力が低く、普段は爪の付いた武器だか今はナックルを使用している。
 だが、回避力は一番高く、加えて賭博ではまったく発揮されない直感で、大体の攻撃を読む。
 鳴神は音遠がいる所まで下がる。
「もう終わりなの」
 拳子が意地悪な笑みを浮かべ、指をコキコキと鳴らす。
(「さすがは四天王と行った所でしょうね」)
(「やはり‥強い」)
 一発当てれば勝ちという条件だが‥。
 普通にやったら当てるのは難しい。
 小声で2人は話し合った後‥。
 2人は拳子に向かい合う。
「そうこなくちゃな」
 拳子は燃える様な笑みを向ける。
 走り出したのは音遠。
 瞬発力を生かした速い斬撃だか、苦もなく拳子は避ける。
 が、音遠の狙いは別にあり、武器から手を離し、喧嘩スタイルで拳子に殴りかかる。
「武器も無しに、私に喧嘩を挑むなんて、十年速いわよ」
 かっとなった拳子は、余裕で音遠の攻撃をかわし、渾身の力で鳩尾を殴る。
 息もできないほどの攻撃を音遠は耐え、両手で拳子の腕を捕まえる。
(「しまっ」)
 気付いた時には、壁を蹴って鳴神が高く跳躍し最大級のソニックブームが放たれた後だった。
(「‥勝った」)
(「やりましたか」)
 肉を斬らせて骨を絶つ、の発想。
「まったくやられたわね」
 この勝負は鳴神達の勝利に終わった。
「で、あんた達の用件って何?」


●動物のきぐるみにご用心
「‥‥目が、ちかちかします」
 なつきはふりふりのスカートを見て思わず呟く。
「そうか、嬢ちゃんには似合うと思うぜ‥それにしても」
 海道は試着室コーナーを見る。
「‥あの人、可哀想です」
「ああ、同情するぜ」
 海道となつきが見ていたのは‥乙女の護衛の女がデパートの可愛い系専門の服屋で、明らかに今来ている服と正反対の可愛らしい服。
 それを代わる代わる着せかけ人形の用に着せられ、羞恥心に耐えていた。
 だが、海道の顔もさっきから少し顔が赤い。
 何とか腕を組むのは止めて貰ったが、変わりに手を繋ぐ事に。
 手の平からなつきの体温を感じる。
「どうかされたんですか」
くすくすと笑い、上目遣いでなつきは海道を見る。
 海道はさらに顔が熱くなるのを感じていた。
「なっ何でもないぜ嬢ちゃん」
(「あっ遊ばれているなこれは」)
 海道はそう思っていた。
 乙女達は服屋を出て、屋上に向かい、なつき達も一定の距離を保ち、歩き出す。
 来たのはデパートの屋上だった。
「あっ、ライオンさんです‥海道さん行きましょう」
 なつきは海道を引っ張って、誰も近寄っていない、ライオンさんのきぐるみを着た人の所に来た。
 それが罠とも知らずに。

 それはいきなりの不意打ちだった。
「危ない嬢ちゃん」
 ライオンが銃を取り出し、海道はなつきに覆いかぶさり、ガードする。
 が、完全に不意打ちのウサギのぬいぐるみを着た女が投網を投げ‥海道達は捕まった。

「どうしてこんな事するの〜」
 乙女はつかまった2人に問う。
 下手な事を言えば、きぐるみから洗礼がある状況。
(「やるしかないか」)
 海道はズボンの裾に銃を仕込んでいて、捕まった状態でも撃つ事は十分可能。
「駄目です。ここは子供が遊ぶ場所‥そんな所を血みどろにさせるきですか?」
(「一般人の安全も考えずに攻撃するなど、テロリストのやる事。だと。折角の休日。仲間同士で傷つけ合うのは、悲しい事です」)
 なつきはそう考え、瞳を潤ませ、海道を見る。
 なつきは捕まっても、海道の事を信じていた。
 あの時守れそうもなかった約束を、あの時と同じ笑顔でもう一度言う。
「‥無理は、しないで下さい。信じたいのは、皆、一緒。貴方が、一番良く知っておられる筈です‥!」
 目を丸くし‥。
「そうだな‥ごめんな嬢ちゃん」
 海道は攻撃の意志を無くす。
(「悪いな‥皆」)
 海道は話す‥今回の計画を‥ありのままに。
 そして、なつき達の縄を解き、きぐるみ2人と、護衛の女はペイント弾二つを海道と乙女に渡し、去る。
「折角だし勝負しようよ〜」
 それはさっきまでと違うく気楽なものだった。
「言い機会だしやってみようと思うが‥良いか嬢ちゃん」
「仕方ありません‥勝ってくださいね」
 なつきも海道に笑みで送る。
「ああ‥」
 海道はなつきの頭を撫でる。
 2人ともスナイパーなので勝負方法は10m離れてのコイントスによる早撃ち。
 コインはなつきが投げる事になった。
「負けないからね〜」
「それはこっちの台詞だ‥」
 乙女の無邪気な表情が変わり、戦闘時のような酷く無機質な者に変わる。
(「噂には聞いていたが」)
 乙女の放つ冷気を感じ、海道は薄ら寒く感じるが。
(「嬢ちゃんと約束したからな」)
 自分を鼓舞し、背中合わせに10歩歩き、なつきがコインを投げる。
(「お願いします。海道さんを勝たせてあげて下さい」)
 なつきは祈る‥海道の勝利を願って。
 周りにはたくさんのギャラリーがいて‥勝負を見守っていた。
 コインが地面に到達し、2人は振り返り、2発の銃声が鳴る。
 勝ったのは‥。




 乙女で、心臓部分に綺麗に命中していて、海道の弾は乙女の右肩部分に当たっていた。
(「やはり強いぜ四天王は」)
 そしてなつきは海道に駆け寄る。
「ごめんな嬢ちゃん」
「負けても、無事が一番です」
 あの時の笑顔をなつきは海道に向ける。

●暴走
 恵比寿があの事件を知ったのは翌日。
 我を忘れて仲間が護衛していた領主の屋敷まで来て‥かろうじて生きていた仲間に状況を聞く‥。
(「俺が居ればこんな事には‥くそっ」)
 激しい自己嫌悪と殺意。
(「部下達の敵は俺が必ずはらす」)
 恵比寿は最後と決心した涙を流す。

 そして‥1人の復讐鬼が誕生した。

「本当に闘うのですか?」
「そうで〜す、闘いま〜す」
 恵比寿の決意は固く、結局カラクリは妥協する形となった。
 そして‥今は倉庫街に来ていた。
「ヘイ! 君達待ちなさ〜い」
 尾行者がターゲットに声をかけるのは前代未聞の事。
 カラクリは思わず手で顔を覆った。
(「我輩には信じられません」)
 巨漢達は振り返り、カラクリ達が尾行者だと分かる。
「悪いですけど、我輩は逃げさせていただきますよ」
 巨漢達に背を向け、走り去り巨漢の護衛の女が追いかける。

(「こいつが裏切りものなら‥悪いが殺す」)
 相手はランキング下位‥恵比寿は負ける気はさらさら無かった。
 それは恵比寿が思っていた通りの展開となる。
 巨漢の攻撃は凄い破壊力だが、当たらなければ意味が無く、恵比寿は難なくかわし、あせった巨漢は最大限の大剣による斬撃を試みたが、それも恵比寿はトリッキーな動きでかわし、その隙をつき足払いをし、巨漢を倒し、首筋数mmの所に、剣をつきたてる。
「巨漢は裏切り者か」
「いやそいつは違う、な」
 恵比寿は振り返った。

 カラクリは、追ってくる人が居る事を確認し、暗闇が支配する廃倉庫の中に入った。
「やはり日の当たらない所の方が我輩には、似合ってますね」
 カラクリは隠れそれから数十秒後、追っ手が廃倉庫の中に入る。
 見つからないよう慎重に移動し‥そして、知覚攻撃を行う。
「当たりましたね」
 相手が痙攣しているのを確認し、もう一撃を食らわせようと試みるが。
「何やっているのか、な」
 背後から聞こえた台詞に振り返り見た者‥それはライオンの仮面だった。
 カラクリは武器を捨て降参のポーズをしたが、あやなく撃沈した。

●裏切り者の正体
 古本屋を出た二人は何処かへ移動し、神城と漸はばれない様着いて行く。
 着いた先は、キメラがいるため、廃港と化している熊本港。
「そろそろ出てきたらどうだ‥神城」
 そう、竜は最初から尾行していた事に気付いていた。
「どうする」
 漸が神城に問いかける。
「とりあえず‥出よう」
 それが長い沈黙の後に出した結論。

 2人は竜の前に姿を現した。
「汝が素直に下ってくれるなら他の連中への手出しは絶対にしないしすぐに手を引く‥‥‥だからこちらに従ってはくれぬか?」
 漸が説得を試みるが
「‥神城と話がある‥悪いがもう一人のほうを頼む」
 それは決裂に終わり。
「もはや是非もなし。やりあうしかないのか‥‥‥」
 二人は頷きあい、神城を残して漸は移動する。

 数百m離れた所で立ち止まり。
「【狂える仮面】よ。我が元に」
 戦闘を開始した。
 相手の特効を何とかガードし、そして、銃を相手に向けたが、同じ動作をしてきたため距離を取る。
(「強いな‥だが!」)
 漸は銃を捨て懐から短剣を取り出し投げ、虚をつかれた相手は、ガードしたが、体制を崩し、走りこみ懐から短銃を取り出し、相手に向かって撃つが、体を捻って、致命傷は避けた。
 相手は大きく距離を取り‥。
「「天剱絶刀―――猟犬の爪牙、あんたに理解出来まい」
 初め何をされたか分からず、攻撃されたと分かった時には、吹っ飛ばされ倉庫のシャッターに激しくうちつけられた後だった。
 意識が朦朧とする中‥漸は立ち上がるが‥。
 これ以上の攻撃はなかった。

 ‥総勢8名を乗せた大型ワゴン車がスピード制限を大幅に超えたスピードで、疾走する。
 運転席は拳子。
「目がくるくるします」
「大丈夫か嬢ちゃん‥って俺も中々きついものがあるぜ」
「‥捕まる」
「無事に着く事を祈りましょう」
「拳子ちゃんもっとスピード落として〜」
「おら、速い方が良いだ〜」
「我輩、車には酔った事がないですが‥これはなかなか」
「がたがた言ってないでもうすぐつくわよ」
 拳子が大型ワゴンを脅迫に近い形で無理矢理貸して貰い、鳴神が携帯電話で連絡を取り、乗せて行き‥カラクリから恵比寿は既に行っていると聞き、8人でライオンの助言を聞き、港に向かう。
 港まで来て、拳子は横滑りに車を止め、固まっている一帯に駆け寄る。
 そしてカラクリが尾行者の皆の練成治療をし‥そこにいた熊本警察特殊課の4人、新嶋零、陣野馬気、雨射岩子、中ノ字乙姫から話を聞く‥それが誰も望まない話だとしても。

●絡まぬ想い
 今対峙しているのは竜と神城。
 だが、2人には大きな想いの差がある
 仲間を傷つかせたくないと、迷いが生じて、いつもの力の半分も出せない神城に、竜は容赦ない攻撃を浴びせる。
 元々の実力の差は竜の方が若干上だが、神城が本気を出せばこんなにも一方的な戦いにはならない。
 それは2人の想いの差でもあった。
 そして、竜の剣で神城の銃は吹っ飛ばされ、銃口を突きつけられる。
「‥俺が裏切り者だ」
 その言葉に神城の瞳が揺らめく。
「‥どうして‥」
 それはやっと絞り出した声。
「‥それは俺の目的を達成するためだ」
 淡々と述べる竜。
「だからって‥仲間を見捨てるのか。俺も四天王の先輩達も‥みんな‥みんな‥捨てるのか! WGからこの土地を守るんじゃなかったのか、皆を守るんじゃなかったのか‥そうだろ‥そうだと言ってくれよ!」
 気付けば神城は感情を言葉に出していた。
 それを聞いてもなお、無表情で神城を見下ろす竜。
「‥これが俺の最後の助言だ。俺は俺の目的を達成するために‥仲間も‥友達も‥、今日全てを捨てるつもりで、ここに立っている。そうしないと全てが中途半端になり守りたい信念守れなくなる。‥神城、全てを守るなんて甘ったれた絵空事を言うな‥全てを失う事になるぞ。何かを守りたかったら何かを捨てなければならない‥それが例え仲間だとしても」
 そして竜はその場から離れ、変わりに来たのは、バイクに乗ったライオン仮面だった。

 ライオン仮面の活躍で、裏切り者である竜を取り囲む事に成功。
「裏切り者、と言われても‥。まだ‥戻れますよ。大丈夫。帰りましょう?」
 なつきが自分の考えをありのままに伝え、四天王も必死で説得するが、どれも竜の心には響かなかった。
 そして‥包囲網がじりじりと狭まっていくなか。
「皆の者下がれ」
「‥下がる」
 その声に反応し、竜から距離を取る一同。
 そこに現れたのはナイトフォーゲルだった。
 無手神はナイトフォーゲルの手に乗り。
「さらばだ‥皆‥」
 無手神は言い。
「ごめんな‥拳子、巨漢、乙女」
 最後の方は小声でつぶやき、海の方に逃げていく。

●それぞれの想い
 それぞれが別の場所にいた。
「これにて任務完了‥‥‥しかし、後味が悪いな」
 残された四天王を見て‥そっとその場を後にする漸。

「結局何も守れませんでした」
 俯き加減でなつきは呟き海道はぽんぽんっと軽く頭に触れる。
「嬢ちゃんは良くやったよ。悪いのは俺らだ‥くそっ俺が一番あいつらの手口を分かっていたのに」
 そう悔しがる海道。

 音遠と鳴神は、恵比寿に領主殺害事件の事について、分かる範囲で説明した。
「ありがとう、ガール達‥」
 手を下した1人である鳴神は、憎しみ恨まれても文句は無いと思っていて。
 感謝されるのは予想外の事で、素直に驚いた。
 それを見た、恵比寿は感謝の意味を説明する‥真剣な口調で。
「何も情報が無い中、今日ようやくどう言う形で仲間が殺されたか知りました。貴方がた傭兵達も私の仲間も、依頼のため‥任務のため、理由は違えど命を賭けて戦った‥それだけです‥恨みはしません‥刹那さんについても同様です。生きるために領主を殺した‥それだけです。‥ただ許せないのは、仲間を平気で裏切った無手神竜‥刹那に指示した者とNO7だけです」
 恵比寿の瞳は怒りと復讐の炎に包まれる。

「‥俺は中途半端なのか」
 神城は1人仲間と離れ竜の言葉について考えている。
(「思えば俺は‥いつも後手後手だった‥皆を守りたいと言う気持ちとは裏腹に‥それでも皆を守りたいと言う気持ちには変わり無い‥仲間を捨てるなんてできない‥だけど」)
 神城は海を眺める。
 この先本当に仲間を守りきれる自信は‥今は無かった

 無手神竜の裏切りにより、仲間の心に何かしらの想いができる。
 だが‥更なる衝撃が待ち受ける事を‥誰もまだ知る事は無かった。