タイトル:嵐の鷹 陽動マスター:緑野まりも

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/03/05 02:21

●オープニング本文


「カウフマン博士の潜伏場所がわかったよ」
 軍の一室。ミハエル少佐に呼ばれたマサキとアンナ中尉は、挨拶もないまま発せられたその言葉に、驚きの表情を浮かべた。
「どこだ! カウフマンはどこにいる!」
「まぁ、まずは落ち着いて」
「そのような言い方をして、いまさら落ち着けも無いでしょう。ともあれ、どうして見つけることができたのか、そちらのほうが私は気になりますね」
 ミハエルに詰め寄るマサキに、いつものもったいぶった態度を見せるミハエル。そんな態度にアンナも呆れたように言いつつも、興味深そうに話の先を促す。
「いくつか怪しい場所を諜報部に調査してもらったんですよ。前回のキメラのほとんどは、携帯しやすい‥‥まぁ小型の種子みたいなものを現地へと持っていって発芽されたものと予想される。ならばそれぞれの現地から近い場所、キメラの現れた各地から線を延ばして重なりあう場所の付近で、潜伏に適した場所が怪しいとなるからね」
 そう言って、用意された地図に線を引き、ある地点に円を描くミハエル。そして、潜伏先であるという建物の写真を見せた。だが、アンナはその話を聞いて怪訝な表情を浮かべる。
「しかし少佐、これは‥‥」
「うん、おそらく罠だろうね。あえて発見させるために、あのように各地にキメラを送りこんだに違いない。けれど、カウフマン博士がここに潜伏しているのは間違いないようだよ」
 アンナの言葉に頷くミハエル。どうやらこの潜伏先の発見は仕組まれたものであるようだ。
「罠であろうと関係ない! カウフマンがいるというのなら、俺は行く」
「マサキ! 勝手な行動は許さないぞ! これが罠というのなら、敵は万全の体制で待ち構えているはずだ。そして、その狙いはお前なんだぞ!」
「悪いが、やつを追い詰めるこのチャンスを逃すつもりはない」
 しかしマサキは、危険であると知っても、カウフマンを追うことをやめるつもりはないようだ。一人でも敵基地へと突入しかねないマサキに、ミハエルはいつにない真剣な表情で言った。
「我々もこの機を逃すつもりはありませんよ。カウフマン博士をこれ以上野放しにしては、被害が大きくなるばかりです。罠であろうとも、この場で彼を捕らえます」
 どうやらミハエルも、危険を冒してでも今回でカウフマンと決着をつけるつもりでいるようだ。その言葉に、マサキもその場にとどまり彼の話を聞く態度を見せる。
「ですが少佐。無策で敵の罠に足を踏み入れるような、危険を行うわけにはいきません」
「ええ、ですから。今回我々は部隊を二つ用意します。一方は敵の注意を引く陽動。そして、もう一方でカウフマン博士を確保します」
 ミハエルはアンナの意見にも頷き、今回の作戦の説明を行った。
「まずKV部隊が敵基地へと発進する。さすがに相手もこれが陽動であるとわかっていても無視することはできず、迎撃部隊を用意するでしょう。そして、その隙をついて直接侵入する部隊を送り込むわけですが、マサキ君にはこちらに参加してもらいましょう。各部隊を直接指揮する部隊長は、中尉が選出してください」
「了解いたしました。しかし、陽動を出したとしても、基地の警戒が緩むとは思えませんが」
「そうだね。そこで、陽動であるはずのKV部隊にも敵を引き付けるだけでなく、むしろ相手を撃破し、基地へと攻撃を行えるようにがんばってもらおうと思う。これは総力戦だね、両部隊が全力でカウフマン博士を追い詰める」
「わかった、それでいいだろう。だが、カウフマンは俺が必ず倒す」
 ミハエルの作戦に頷くマサキ。まさに今回は、カウフマンの一連の事件の正念場といったところだろう。UPC傭兵部隊『S.T.O.R.M. Hawks』の総力をもってことにあたることに決まったのだった。

・依頼内容
 KVにて敵基地を攻撃し、迎撃部隊を撃退せよ

・概要
 バグアに協力するカウフマン博士の潜伏先が判明した。KVにて敵基地を攻撃し、迎撃部隊を撃破せよ
 部隊の主な任務は陽動とし、敵基地へと直接侵入する部隊を援護する。ただし、可能な限り敵迎撃を撃破し、敵基地へと攻撃を行いカウフマン博士確保する
 同作戦にて、別部隊である敵基地直接侵入部隊が、陽動成功後に敵基地へと侵入を開始する。協力して作戦を成功させること

・NPC紹介
アンナ中尉 UPC傭兵部隊『S.T.O.R.M. Hawks』(通称『嵐の鷹』)の隊長を務めるUPC所属の女性軍人。性格はいたってまじめだが、多種多様なエミタ傭兵と付き合う程度の柔軟性も持ち合わせている。本名アンナ・ディアキン。
マサキ 元バグアによる改造人間の青年。改造後バグアの下からを脱走、UPCの保護下に入る。現在は、肉親を奪ったバグアに対し復讐することを誓い、エミタ能力を得て特殊部隊『嵐の鷹』へと参加することとなった。本名マサキ・ジョーンズ。
ミハエル少佐 アンナ中尉の上官であり『嵐の鷹』の総責任者。『嵐の鷹』はUPC所属ではあるが、彼の子飼いの特殊部隊扱いとなっている。主に北米を中心に活動しており、かなり自由な裁量を行える立場にあるようだ。本名ミハエル・ディアキン、アンナの兄である。
カウフマン博士 黒人系の美形の青年で、植物学者として博士号を得ている。かつて、マサキの家族と同時期にバグアに拉致されており、消息が不明となっていた。現在では、バグアに協力し凶悪な植物キメラを製作、各地で植物キメラによるテロ活動を行っている。かつてはマサキの友人であり、師とも呼べる存在であった。

●参加者一覧

榊 兵衛(ga0388
31歳・♂・PN
リン=アスターナ(ga4615
24歳・♀・PN
エリアノーラ・カーゾン(ga9802
21歳・♀・GD
仮染 勇輝(gb1239
17歳・♂・PN
アンジェラ・D.S.(gb3967
39歳・♀・JG
アリステア・ラムゼイ(gb6304
19歳・♂・ER
イーリス・立花(gb6709
23歳・♀・GD
秋月 愁矢(gc1971
20歳・♂・GD

●リプレイ本文


 侵入班の配置完了の報告後、基地から次々とKVが飛び立った。
 傭兵らしい多種多様な編成で総数は8機。
 敵基地攻撃の先鋒になるメンバーである。
「さて‥‥少し離れている間に、色々と事態が進行してたみたいね?」
 敵の迎撃機が出現するのを待ちながら、リン=アスターナ(ga4615)は呟いた。
「そうなのか? 俺はここに参加するのは初めてだが、重要な一戦なんだな」
 仮染 勇輝(gb1239)は計器類で機体に異常がないか確認しつつ、
 他のメンバーの話に耳を傾けた。
「カウフマンは‥‥‥ここで押さえておきたい」
「個人的にもあの博士は気に入らないし」
 前回の作戦も同行した秋月 愁矢(gc1971)と、
 エリアノーラ・カーゾン(ga9802)がそれぞれに感情を露にする。
 この作戦に参加するそれぞれの想いはあるが、
 彼が有能な学者であれば放置は出来ない。
 殺すにせよ捕縛するにせよ、なんらかの決着を着けなければならない。
「最初に説明したとおり貴方達の任務は陽動だ。まずこの任務の達成を目指して欲しい」
 空中管制機がミハエル少佐の言葉を中継する。
「良かろう。精々暴れて敵の注意を惹いてやる事としよう。ところで‥」
 榊 兵衛(ga0388)は言葉を区切り、獰猛な笑みを浮かべた。
「陽動と言っても、全部倒してしまっても構わないんだろう?」
「これはこれは。頼もしいですね。是非ともお願いします」
 単純に自信の表れと取ったか、無謀な宣言と取ったか。
 ミハイルの返事からはどちらの意図も見えなかった。
 少なくとも、相手がヘルメットワームであるなら、
 榊にはその言葉を言い切るだけの実力はあった。
「こちらは初めての機体で初めての空戦ですのに、自信たっぷりですね。
 私も期待させてもらいます」
 イーリス・立花(gb6709)はやや半信半疑と言った体で榊の雷電:忠勝を見た。
 普段の彼女はもうすこし柔らかいのだが、
 覚醒しているために言葉は冷たい。
「‥‥ヨロシク、ラグナ」
 それでも生来の性質までは変わらないのか、願掛けをする言葉には感情がこもっていた。
 基地へ進路を向けてから数分後、基地のある方向に反応。
 レーダーがHWの編隊を確認した。
 大型2機に中型10機。12機のみであるが戦力としてはかなり大きい。
「来ましたね。始めましょうか。釣果は多い方がいいですよね」
 先頭近くを飛んでいたアリステア・ラムゼイ(gb6304)の言葉を境に、
 傭兵達の敵の陣形に対応するように散開する
「コールサイン『Dame Angel』、襲来した迎撃HW群を強襲殲滅する。
 生身侵入による敵指揮官への道標となるわよ」
 アンジェラ・D.S.(gb3967)が配置につき、陣形は完成。
 2者は相対する。
 先手をとって仕掛けたのはHWだった。
 12機によるプロトン砲の一斉射撃が空を薙ぐ。
 淡紅色の光が傭兵達のKVを覆った。
「なんの!」
 仮染はバレルロールで3発のプロトン砲を回避。
 無傷のままHWに詰め寄る。
 イーリスやアンジェラなど回避し損ねた者もいたが基本的に小破程度で済んだ。
 散開していた為に狙いが分散したことが幸いした。
 ダメージを受けながらも接近したKVが砲門を開く。
「始めるぞ!」
 榊の雷電とイーリスのパピルサグがK−02を全弾発射。
 複雑な軌道を描き、1000発のミサイルがHW群に降り注ぐ。
 回避が困難なHW達は機体各所に備えたパルスレーザー砲で
 ミサイルを次々と落としていった。
 そのミサイルの乱舞が終わる前に、アンジェラが更に追撃を仕掛けた。
 127mmロケットランチャーを1機の中型HWに相手に連射。
 中型HWは尾を引いて直進するロケット弾を回避しきれず、
 腹に直撃を受けて爆散した。
 他の機体も種類の違うミサイルの攻撃を受けて、被害が拡大していく。
 大方のKVはミサイルやロケット弾による攻撃だったが、
 エリアノーラは更に接近して直接トドメにかかった。
 スラスターライフルと十式バルカンを相手の回避軌道上に設置するように発射し、
 相手を同じ空間に繋ぎとめる。
 その間にエリアノーラのシュテルン・Gは最高速度でHWに肉薄した。
「遅いわね‥」
 回避に手間取っているとはいえ、彼女の目にはHWが止まっているようにも感じられた。
 エリアノーラ機は擦れ違いざまに、翼に装備したソードウィングでHWを切り裂く。
 中央部分を大きく切断されたHWは、火花を散らした次の瞬間に爆発していた。
 これで数は8:10
 初手では傭兵有利の結果に終わったが、数は依然として劣勢だ。
 懐に飛び込んだ各機はドッグファイトに移る。
 これでもう敵はプロトン砲が撃ちにくくなるはずだ。
 武器をかえ、戦い方を替え、空戦は熾烈さを増していった。



 航空戦がドッグファイトに移ってしばらくした頃
 地上の友軍から通信が入る。
 もう一つのチームは無事、基地へ侵入を果たしたらしい。
 中では激戦となっており詳細はわからないが、
 地上でも激しい戦闘が行われているとのことだ。
「作戦の目的は果たした。あとはこいつらを始末するだけだが‥‥くっ!」
 秋月の機体に中型HWが迫る。
 胴体には近接格闘用の鋏が装備されている。
 体当たりする気だ。
「三次元機動がっ‥‥」
 秋月はシュテルン・Gのブーストを起動。
 推力を一気に最大まで持ち上げる。
「お前たちの‥‥‥専売特許じゃない‥‥って事を見せてやるぜ!!!」
 強引な機動で鋏を回避した。
 歪んだ機動のあとに、補助スラスターが陽炎を残し、
 秋月の機体は急降下する。
 HWは慣性制御ですぐさま反転し、秋月の機体を狙うが‥。
「そうくると思ったよ!」
 僚機のアリステア機がUK−10AAMを発射。
 無防備になった背中に次々にミサイルを命中させる。
 その一発がどこか致命的な部位に命中したらしく、
 HWは爆ぜて飛び散った。
 他のHWは秋月やアリステアを狙おうとしたが、
 同じく僚機のエリアノーラ機に阻まれ、有効打を与えることはできなかった。
「これで残り2機」
 そう言ったアンジェラの表情は、呟いた結果に比して暗い。
 長い戦闘で数は8:2。
 傭兵が圧倒的有利と思えたが、そうは行かなかった。
 残った大型HWが強度が尋常ではなかった。
「こいつ‥!」
 リンはエネルギー集積砲で片方を狙う。
 大型HWはその巨大ゆえに回避は出来なかったが、
 機体の向きをずらすことで攻撃を装甲で弾いた。
 傾いた機体の上面には複数のフェザー砲が設置されている。
「リン殿、かわせ!」
 僚機のアンジェラが叫ぶ。
 リンはブーストで光線の雨をかいくぐるが、
 複数の拡散フェザー砲を回避することはできなかった。
 何発かが機体に命中し、一部の兵装が弾けとんだ。
「こいつら‥流石に強い」
 旋回しながら隙をうかがっていた榊が唸った。
 傭兵達は初手こそミサイルの乱舞で中型を減らし、
 且つ生き残った機体も次々に撃破した。
 だがここに来て誤射の危険性が無くなったため、大型HWが全武装を開放。
 一気に戦力バランスが変わってしまったのだ。
 光線の輝きが乱舞する。
 それぞれに牽制などという余裕は無い。
 この2機を放置した状態では、とても降下など出来ない。
「予定とは変わりますが、まずはこのHWを叩きましょう」
 突入班はそのままそれぞれのHW相手に個別に展開。
 機体の損傷の激しいリンとアンジェラをバックアップにしつつ、
 光線を乱舞させる大型HWに襲い掛かった。 



 比較的損傷の浅かった榊、仮染、イーリスの3機、
 射程距離の問題でどうしても被害の大きかったリン、
 エリアノーラ、アンジェラ、アリステア、秋月の5機は、
 それぞれに大型HWに挑んだ。
 おおよそ互角に戦闘は進んだが、どちらのチームも苦戦を強いられた。
 序盤で敵を一掃するためにミサイルを使い切っているため、
 攻撃方法がどうしても単調になってしまう。
 旋回から軸を合わせて各種機銃で狙い撃つが、
 慣性制御で逃げられると追いかけるのも難しい。
 大型とは言え、速度と機動性は小型のHWに引けを取らない。
「‥しつこい!」
 榊は擦れ違いざまにスラスターライフルを連射。
 HWの装甲にいくつも穴を開ける。
 HWは胴体を傾けつつ、擦れ違った榊の機体にフェザー砲で追撃。
 回避行動で致命傷は避けているが、被弾がないわけではない。
 回避能力の低いイーリスの機体は更に悪く、撃墜一歩前といった様相だった。
 それでもイーリスは慣れない機体でよく戦った。
 ブラストシザーズなど稼動部位が大きめの武装が大きいため、
 擦れ違いざまに攻撃をあてる機会は他の2人よりも多かった。
 火力自体は小さいが、大型HWは警戒して大きく回避行動を取らざるをえなかった。
 ここでようやく、仮染が位置に付いた。
「全能力起動! 『オーバードライブ・トワイライト』!」
 大型HWの直上から仮染の機体が、旋回しながら突撃する。
 迎撃の拡散フェザー砲を次々と回避し、勢いをつけたままミサイルを叩き込む。
 この距離なら狙いをつけずとも当る距離だ。
 秒単位で近づく距離。
 ついに何発かの光線がクロノスに直撃するが、仮染は怯まない。
「このぉっ!」
 ツインブーストの方向を変化。
 大型HWと衝突ぎりぎりのところ、軌道を替え回避。
 二つの機体は擦れ違う。
 仮染の機体はぼろぼろになっていたが、大型HWは怯んだ様子が無い。
 そう見えた直後、ミサイルの集中砲火を受けた部位から爆発が起こる。
 蓄積されたダメージが装甲を突き破り、内部機構にまで達したのだ。
 爆発の影響で傾いた機体は、平衡を保つのですら難しいようだった。
「一気に畳み掛けるぞ!」
「はい!」
 後は簡単だった。
 散漫な砲火では小さな機体を捕らえることはできない。
 密度が薄く、更には砲撃の穴のできた光線を回避するのは難しいことではなかった。
 榊の雷電のスラスターライフル、イーリスのパピルサグの重機関砲が、
 それぞれ機体に穴を開けていく。
 光線から逃げ切った後、旋回して仮染が攻撃に加わる頃には、
 大型HWに新しい穴がもう一つ開いていた。
 そこから撃墜まではあっと言う間だった。

 もう一方の戦いも決着がつこうとしていた。
 ソードウィングの一撃は大型HWの装甲を強引に切り裂いていった。
 抉っていくという表現のほうが正しいかもしれない。
 だが流石に元の質量が違いすぎた。
 ダメージは装甲をすこし突き抜けた程度で終わり、
 それ自体が致命傷になることはなかった。
 その後方を守るように秋月が重機関砲、アリステアがミサイルで大型HWを攻撃。
 エリアノーラへの追撃を牽制する。
 人数が居る分、隙間無く攻撃することでHWを押さえ込んでいるが、
 それぞれの機体の損耗が大きいため、下手をすれば一気に崩れかねない編成だ。
 攻撃も回避も慎重を期して行われるため、
 なかなか敵に致命傷を与えることが出来ない。
「このままでは埒があかない。リン殿、援護を」
「了解」
 アンジェラを先頭に2機が並んで突撃する。
 大型HWは拡散フェザー砲で突入するアンジェラ機を迎え撃った。
 これに対してリンのイビルアイズがロックオンキャンセラーを機動。
 高い命中精度の光線は照準のミスであらぬ方向に流れる。
「これでトドメね」
 アンジェラ機の照準が大型HWを捉える。
 発射された弾丸3発は狙いたがわず、エリアノーラの作った装甲の穴を貫通した。
 内部機構を破壊されHWは横転するように機体を傾ける。
 破壊された場所から連鎖的に広がった爆発は、やがて全体を飲み込んだ。
 2機のHWが空中でそのほとんどが粉々になる。
 少々は破片が地面に振るだろうが、下には誰も居ないので問題は無い。
「手間取ってしまったわね。降下を始めましょう」
 制空権を確保したとは言え、戦いの本番はこれからだ。
 息をつく間もない。
 エリアノーラ、アリステア、秋月愁矢の3名を先頭に、
 傭兵達は基地への降下を開始した。




 傭兵達が地上施設をなぎ払う頃には、内部での戦闘も佳境に差し掛かっており、
 基地は組織だった反撃もできずに壊滅した。
 カウフマン博士は死に、キメラは燃え落ちる残骸の下に全てが埋まる。
 陥没して炎を上げる地下施設は、カウフマン博士の墓の代わりにも見えていた。

(代筆 : 錦西)