タイトル:昆虫キメラを捕獲せよ!マスター:緑野まりも

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/07/03 22:22

●オープニング本文


「キメララット、サンダーマウス、ゴムパイン、ナイフプチャット、ボンバーマウス‥‥ふむ、哺乳類系のキメラは十分か、そろそろ爬虫類や昆虫類のサンプルを集めんとな‥‥」
 梶原一三は今まで集めてきたキメラのサンプルを確認しながら、小さく頷いた。
「メリル! おい、メリル!」
「は、は〜い」
 研究室にいつもの怒鳴り声が響き、慌ててメリルがやってくる。あまりにいつものこと過ぎて、他の研究員達は顔を上げることもしない。
「ご、御用はなんでしょうか?」
「お前、昆虫類と爬虫類、どっちが好きじゃ?」
「え!? あ、あのぅ‥‥えっと、昆虫と爬虫類ですか‥‥、どっちも苦手‥‥ですぅ」
「ふん、ならどっちのほうが嫌いじゃ?」
「そ、そうですね‥‥。どちらかといえば‥‥虫のほうが嫌いかも‥‥だってあの節足の様子とか見ていて悪寒が走りますよぅ」
「そうか、ならば今度は昆虫類じゃな」
「は、はい!?」
「なにをしておる! 今度は昆虫類のキメラを捕獲してこいと言うとるんじゃ!」
「え、ええ!?」
 梶原の指示に驚きと嫌悪で声をあげるメリル。どう考えても、メリルが嫌いな方をわざと選んだとしか思えない。
「どうして昆虫のキメラなんですか〜!?」
「なんじゃ、文句があるのか? だったら、お前が爬虫類キメラを捕らえてくるか? ん?」
「そ、そんな! とんでもないですぅ〜!」
「だったら、口答えせんでさっさと捕獲する昆虫キメラをピックアップして、能力者どもに捕らえさせにいかんか!」
「は、はい〜〜‥‥」
 梶原の怒声に、ガックリと肩を落として捕獲の依頼する準備を始めるメリル。それから数時間、メリルは苦手な昆虫キメラの情報と睨めっこすることになるのだった。

・依頼内容
 昆虫キメラの捕獲

・概要
 北米競合地域付近に生息する昆虫型キメラを生きたまま捕獲する。
 捕獲する昆虫キメラは、特に指定はない。大きさ、種類など様々な昆虫キメラがいるが、檻に入るサイズであればどのタイプの昆虫キメラでも可。
 捕獲の際には、全長2メートルの特殊合金による檻が用意されているので、それにキメラを入れること。檻はだいたい大人4人で持ち運ぶほどの重さで、能力者でも一人で持ち運ぶのは難しい。
 捕獲の方法は一任するが、捕獲に必要な道具などは各自で用意を行なうこと。現地への移動、キメラの輸送にはトラックが用意されている。

・キメラ出没地域
 下記に昆虫キメラが生息していそうな場所をピックアップされている。キメラを捜索する際に参考にすること。ちなみに、これらの地域はそれぞれ近いところにあり、一日程度で往復も可能な範囲。

荒野 岩と土だけの何も無い荒野。過去に何度もUPCの部隊が昆虫キメラに襲われた地域。大変見通しが良いが、それ以上に広いため目的のキメラを探すのは困難。定点で行なわれる罠なども効果が薄いと予想される。
森 多くのキメラが生息していると思われる深い森。昆虫キメラも多く生息していると思われるが、それ以外のキメラも生息しているため大変危険である。
廃墟 バグアの攻撃によりすでに人が居なくなったビル街の廃墟。様々なキメラが生息しており、廃墟に適した昆虫キメラが生息していると思われる。ビルを一つ一つ探索しなければならないので時間がかかるが、逆に発見した場合は室内なので逃げられにくく捕獲しやすいと予想される。

●参加者一覧

ナレイン・フェルド(ga0506
26歳・♂・GP
水鏡・シメイ(ga0523
21歳・♂・SN
ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416
20歳・♂・FT
アヤカ(ga4624
17歳・♀・BM
梶原 暁彦(ga5332
34歳・♂・AA
風代 律子(ga7966
24歳・♀・PN
黒江 開裡(ga8341
19歳・♂・DF
白・羅辰(ga8878
17歳・♂・DF

●リプレイ本文

 昆虫キメラの捕獲の依頼を受けた一行は、昆虫キメラがよく出没するという地域へと向かった。
「こ〜見えても運転くらいできるのよ♪」
 トラックにキメラ捕獲用の檻を載せ、現地に向かいながら、ナレイン・フェルド(ga0506)が少し自慢げにトラックの運転をする。中性的な美しい容姿に、女性物の服で着飾り、日焼けしないように白手袋まで着用しているナレインがトラックを運転する様子には違和感を感じざるを得ないが、彼はれっきとした男である。
「意外と言いますか、運転できても似合わないからやらないなどと申されるかと思いましたが‥‥」
 助手席で、ご機嫌な様子で運転をしているナレインの様子を見ながら、水鏡・シメイ(ga0523)は意外そうに呟く。ちなみに、他の仲間達はトラックの後ろの荷台に座っていた。ちなみに彼が何故、特等席とも言えるその席に座れたのかは、語られることは無い。
「あら、それはなに?」
「ああ、触らないほうがいいぞ。粘着シートを大型用に張り繋げているんだ」
 荷台では、風代 律子(ga7966)が黒江 開裡(ga8341)の作業に問いかける。開裡は複数の虫取り用粘着シートを張り繋げているようだ。ただ、本当に昆虫キメラに効果があるのは疑問である。
「虫捕り‥‥か。‥‥昔には戻れないな」
「にゃ! 頑張るニャ!」
 ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416)は自分の呟きに何かを思い出すように苦笑を浮かべた。子供の頃にしたであろう虫取りのことでも思い出しているのか。そんな呟きに、アヤカ(ga4624)が元気な声をあげる。
「結局、カメラは用意できなかったわね」
「ああ‥‥しかたないな」
 律子の言葉に頷くホアキン。UPCに今回の依頼で使用する赤外線付き監視カメラを申請したのだが、民間からの依頼であるうえに、どうしても必要であるとは認知されなかったために却下された。民間業者にも当たってみたが、時間が無かったためちょうど貸し出してくれる所は無かったようだ。
「それにしても、こんだけゴツイ檻だと、持ち運ぶだけでかなりの筋トレになりそうだぜ」
「持ちながらスクワットでもしてみるか?」
「いいっスね!」
 荷台に積まれているキメラ捕獲用の檻を眺めながら白・羅辰(ga8878)はニヤリと笑みを浮かべる。それに梶原 暁彦(ga5332)が無表情のまま声を掛けた。特殊合金製のかなり重い檻を、今回はこの二人が持ち運ぶようだ。
「それにしても、退屈だニャ〜。早くつかないかニャ〜」
「あ、そうだ‥‥。ふふふ‥‥これこれ‥‥こいつでナレインさんをからかってみようかな」
「ニャ!? 悪戯? 悪戯? わくわく‥‥」
 しばらくして、アヤカが移動に飽きてきて退屈そうにし始める。それに、羅辰がなにやら荷物から蜘蛛の玩具を取り出した。悪戯好きなアヤカはその様子に、目を輝かせる。
「ふんふふ〜ん♪」
「ナレインさん、髪に蜘蛛が乗ってるぜ〜」
 そして、羅辰は荷台と運転席を隔てる窓から手を伸ばし、蜘蛛の玩具をナレインの髪に落とした。
「え!? く、蜘蛛‥‥? い‥‥いやぁぁ〜〜〜〜!!」
「うぉっ! ちょ、危な!!」
 そんな悪戯に、虫嫌いのナレインは悲鳴をあげる。しかも、運転中であるにもかかわらず、半狂乱になって暴れるものだから、トラックが右へ左へと暴走してしまった。そんな状況になれば、荷台に乗っている者は堪ったものではない。
「イヤイヤ! 取って! 誰か早く取ってぇ!!」
「ちょ、ちょっと待ってください‥‥ね。よっと‥‥。はい、ナレインさん取れましたよ‥‥。だ、だから、落ち着いて‥‥」
「ほんと!? ほんとに取れた? もういないの?」
「え、ええ‥‥ですから‥‥」
「よかったぁ‥‥ああ、気持ち悪い、早くトリートメントしなきゃ」
「ほっ‥‥。玩具ですから大丈夫ですよ」
 隣のシメイが蜘蛛の玩具を取ってなんとか事なきを得たが、ナレインは真っ青な顔で身を振るわせるのだった。
「ふにゃ〜、目が回ったニャ〜」
「おい、羅辰‥‥」
「あ、梶原さん‥‥すいませんっス。運転中はまずかったっスよね」
 振り回されたアヤカが目を回し。暁彦が無表情のまま羅辰を見る。羅辰は怒られるかと思ってバツが悪そうな表情になるが。
「蜘蛛は昆虫じゃないぞ」
「え‥‥あ、ああ、そうっスね‥‥」
 続く暁彦の言葉にどう反応していいかわからなかった羅辰であった。
「それはともかく‥‥あれは放っておいていいのか?」
「あれ?」
 その様子を眺めていたホアキンが、慌てた様子もなく何かを指差した。その指差す先を見る一行だが。
「んぐ〜! ふぐぐ〜‥‥!」
「あら、大変ね」
 そこには、粘着シートを顔に貼り付けて苦しそうにしている開裡。律子が粘着シートを取るのを手伝ってなんとか無事だったが。くつろいでいるホアキンに、気づいてるなら助けてやれよと思う一行であった。

 さて、現場へついた一行。予定では森に餌を置いて、観察用にカメラを設置後、ビル廃墟へ向かうつもりであったが、カメラが無いので森へ行かずに廃墟へと向かった。
「よっと‥‥捜索場所を移動するたびに、檻を持って階段を昇り降りするのはなかなかキツイぜ。これが終わるころには、筋力アップ間違い無しだな」
「そうだな‥‥」
 羅辰と暁彦が檻を持ってビルを昇り降りしつつ、二手に分かれて廃墟を探索する一行。しかし、この日はこれといってキメラに遭遇することも無かった。

 次の日、律子と開裡を廃墟に残し、森へと向かう一行。
「ふんふふ〜ん♪ ららら〜♪」
 ご機嫌な様子で森を進むアヤカ。動物的な部分のある彼女は、自然の中だと気分がいいのだろうか。
「ああ‥‥嫌だわ。こういう森には、色々と虫が出てくるから‥‥」
 逆に憂鬱な様子なのはナレイン。虫嫌いの彼にとって、自然の森は恐怖の対象かもしれない。
「大丈夫ですか? 無理しないほうが‥‥」
「い、一応克服するつもりで‥‥参加してる‥‥のよ。これぐらい我慢しなくちゃ‥‥。で、でもやっぱり怖いから‥‥。ねぇ‥‥絶対そばにいてよ?」
「わかりました」
 冷や汗を流すナレインに優しく微笑みながら、とりあえず虫克服のために、昆虫キメラが出たらナレインに任せてみようと思うシメイであった。

「こんなものか‥‥」
 ホアキン達は、森に檻を設置すると、その中に餌となる食糧を置いて、昆虫キメラを誘き寄せる作戦にでた。
「ただ連絡を待つだけってのもつまらないよな〜。どっかそこら辺にいないもんかね」
「大人しくしていろ」
 シメイ達哨戒班がキメラを探し回っている間、こちらは檻の周囲に隠れて待っている。羅辰はジッとしているのが性にあわないのか、しきりに周囲を見回しており、暁彦に注意されたりしていた。
「‥‥きたぞ」
 しばらく待っていると、森の草むらをガサガサと分け入ってくる音が聞こえる。ホアキン達は息を潜め、何者かが姿を現すのをジッと待った。やがて、草むらから檻の前に現れたのは、黄色と黒の縞模様が印象的な獣‥‥。
「虎‥‥?」
 そうそれは虎と呼ばれる猛獣。もちろん、こんなところに野生の虎がいるわけが無い、虎の姿をしたキメラである。その口に収まらないむき出しの牙はとても長くて太い、1メートルはあるかもしれない。図鑑の中でぐらいしか見たことの無い、サーベルタイガーに酷似していた。それが、檻の中の餌に誘き寄せられ近づいていく。
「予定の目標とは違うな‥‥」
「じゃあ、あれやっつけちまっていいんだろ? くぅ、虎退治は格闘家のロマンってやつだぜ」
 今回の目的は昆虫キメラである。目標とは違うキメラに顔を顰めるホアキンと、ようやく暴れられると笑みを浮かべる羅辰。ともかく、余計なキメラを追い払うために、三人は隠れていた場所から出ると、能力を覚醒し戦闘態勢に入った。
「はぁ!」
 全身に血管を浮き上がらせた羅辰が、両手の爪でキメラを切り裂く。一行に気づいたキメラも、その鋭い牙を刃のように振るい攻撃を返してきた。ホアキンが銃で援護し、暁彦が素早く側面に移動して爪を突き刺す。
「ぐっ!」
「くそ、やるな!」
 痛みに暴れるキメラが、力強い腕を振るい暁彦と羅辰を吹き飛ばした。二人はダメージを受けつつも、再びキメラに接近し攻撃を繰り返す。そしてホアキンも武器を剣に持ち替え、一気に止めを刺そうとする。やがて、キメラの大きな図体は血を流しながら地面に倒れて動かなくなるのだった。
 その後、キメラの死体を適当な場所に処分し、再び昆虫キメラを待つが、結局それ以上は何も現れなかった。

 廃墟へと残った律子と開裡は、適当なビルに餌を設置し、それを近くのビルから観察していた。
「こうジッとしているのは退屈だな。こんな仕事、さっさと終わらせて遊びにでも行きたいものだ。あんたもそう思わないかい?」
「別に、私はこういうことには慣れているから‥‥」
 交代制で観察を続ける二人だが、ジッとしながら双眼鏡で同じ場所を観察するのは、慣れていない者にとっては辛いものだ。開裡の愚痴に、律子は少し微笑んで観察を続ける。
「また‥‥新しい子が増えたわね」
「キメラか!?」
「いえ、ネズミよ」
「なんだ‥‥このままだと全部ネズミに食われるぞ」
 餌を設置した場所には、しばらくしてネズミが姿を現しだした。キメラではない普通のネズミである。この廃墟を根城にしているのだろう。ネズミが餌を食べている様子を、少し楽しそうに眺める律子に対し、開裡は目的のキメラでないことに残念そうに肩を竦めた。
「‥‥なに?」
 それからまたしばらくして、突然ネズミ達が何かを察したように、慌てて逃げ出していく。その様子に、律子は表情を引き締めて周囲を探る。
「きた‥‥」
「昆虫キメラか!」
「ええ‥‥」
 律子の報告に、開裡も双眼鏡を構えて隣のビルを眺め見た。そこには、逃げ惑うネズミ達を追いかけるような甲虫の姿。コガネムシのような姿をしているが、その大きさは1メートル前後はあるだろう。その昆虫キメラは、捕まえたネズミを獰猛な牙を持つ口で引き裂き食べていた。
「なるほど‥‥キメラは生餌がお好きってことか。俺達で捕まえるか?」
「いえ、やめておくわ。森に行った皆が戻ってくるまで、生かしたまま捕まえておくのは、無理そうだし」
 ネズミを食べる様子を苦笑しながら眺めている開裡に、律子は首を横に振って観察を続けた。
「戦うために生み出された生き物か‥‥」
 キメラは獲物がいなくなると、再びどこかへ行ってしまう。律子は微かに悲しげな表情を浮かべ、小さく呟いた。
 その後は、何度か昆虫以外のキメラも現れたが、特に注意すべきことはなかった。
「こう虫だらけだと気持ちのいいモンじゃないな‥‥。しかし、やっぱりキメラは引っかかっていないか」
 そして開裡は虫が好みそうな場所に、粘着シートを仕掛けておいたのだが、引っかかっていたのは普通の虫ばかりだったようだ。

 三日目、一行は再び廃墟で探索を行なうことにした。前日と同じく、餌を設置しつつ、ビルの内部とその周囲を探索する班に分かれて探索を行なう。
「なかなか見つからないもんだな」
「いやだわ、このままだと日焼けしちゃう」
 その日は日差しが強く、ビルの外はかなりの熱気に包まれていた。開裡とナレインは流れる汗を拭きながら、双眼鏡を覗きこんで周囲を警戒している。
「今日中には見つけておきたいですね」
 シメイも困ったように呟く。あまり時間をかければ依頼人の評価が悪くなるし、期限も差し迫っていた。
「うっ‥‥」
「どうかしましたか?」
 それからしばらくして、ナレインが何かを発見したように嫌そうな呻き声をあげる。
「あそこに居るのって‥‥やっぱりやだぁ〜気持ち悪い‥‥」
「ようやくお出ましって所だな」
 涙目になりながら報告するナレイン。指差す先には黒い塊のようなもの。よくみれば、全長1メートルほどの体格に鎧のような外骨格で身を包み、二つの鋭い牙、額には二本の触覚があり、大きな複眼がついている。それはつまり、巨大な蟻だった。それに、待ちに待っていたとばかりに、開裡がニヤリと笑みを浮かべる。
「こちら黒江‥‥昆虫キメラを発見した。至急、檻を持ってきてほしい」
『こちら風代‥‥了解したわ』
「お願いだから‥‥早く来て!! これ以上耐えられない‥‥」
「早いなおい。だ、そうだ、よろしく頼む」
 ビル内部班に連絡を取る開裡。そうする間にも、威嚇射撃を行なうナレインがすでに顔面蒼白だ。とりあえず、救援を頼んでおいて自分も戦闘に参加しようとする開裡だが。
『ごめんなさい、どうやらすぐには行けそうにないわ‥‥こちらも昆虫キメラを発見』
「そうかい、じゃあ、こっちは倒してしまっていいんだな」
 再び送られてくる律子の連絡に、開裡はニヤリと笑みを浮かべた。

「ごめんなさい、どうやらすぐには行けそうにないわ‥‥こちらも昆虫キメラを発見」
 律子達内部班は、開裡達からの連絡があるとすぐに向かおうとした。しかしそこへ、餌に釣られたのか、それとも一行に釣られたのか、巨大な蟻キメラが現れる。その数は三匹、隊列を組んで襲い掛かってきた。
「蟻ってのは昆虫だよな。とりあえず、一匹残してやっちまっていいんだろ?」
「無駄な殺生はしたくないんだけれど‥‥そうも言ってられそうにないわね」
 戦いとなると羅辰が喜色満面で指を鳴らす。律子も、戦いは避けられないと判断し、能力を覚醒し武器を構えた。
「これを捕まえれば任務達成か‥‥やり過ぎないように‥‥」
「わかってる。よし、いくぜ梶原さん! 一気に捕獲だ!」
「おぅ‥‥」
 ホアキンが一応の忠告を出し、開裡と暁彦が蟻キメラに突っ込んでいく。二人はヒットアンドアウェーを行ないながら、捕獲する一匹には手加減しつつ、残り二匹には本気で攻撃を行なう。
「‥‥調節が難しいな」
「無茶はしないで。あまり大きな傷を与えるとまずいわよ」
 ホアキンが、剣から衝撃波を出しキメラを吹き飛ばそうとするが、威力がありすぎて切り裂いてしまう。律子は苦笑を浮かべながら、射撃で援護を行なった。
「よしチャンスだ」
 やがて、蟻キメラが数を減らすと、隙を見て弱ったキメラを羅辰が抱え込み、そのまま檻へと投げ入れた。そしてすぐに暁彦が檻を閉めて、捕獲完了となる。
「こちら風代、無事に昆虫キメラを捕獲したわ。そちらはどう?」

「こちら黒江。こっちもキメラを撃退した。まぁ、約一名、瀕死になってるがな」
 律子の無線に応答する開裡。視線の先には、先ほど倒した蟻の死体が転がっている。
「ぜぇぜぇ‥‥やっぱり虫はいやぁ〜」
「どうやら、まだ克服とはいかないようですね」
「もっと遊びたいニャ〜!」
 必要以上に疲労困憊のナレインと、それを心配そうに見守るシメイ。アヤカはハイテンションで飛び回っている。何はともあれ、これで依頼は達成されることとなった。