タイトル:【闘】南米闘技場の謎2マスター:緑野まりも

シナリオ形態: シリーズ
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/07/19 17:37

●オープニング本文


前回のリプレイを見る


「前回の任務で、キメラ闘技場の所在地が判明した。そこで今回の任務だが、実際に闘技場まで行き、その所在の確認とルートを確定させる。だが、闘技場のあるとされる場所は、現在バグアの占領地域となっているコロンビアだ。何が起こるかわからない危険な地域であるし、バグアからの妨害も予想される。くれぐれも注意してほしい。では、詳しい作戦の内容だが‥‥」
 依頼を受けた能力者達は、UPCから派遣された特殊工作員マーキュリーに今回の作戦を説明される。
「知っての通り、ペルーとコロンビアの間にはアマゾン川とその周囲にジャングルがある。ジャングルは現在、人類とバグアの競合地域となっている激戦地域で、抜けるのは困難だ。だが、以前の任務でペルーとコロンビアを繋ぐルートの情報を得た」
 地図に描かれたルートは、前回の任務で得た情報をもとにしたもので、確実にバグア占領地域へと潜入できるであろうルートだ。本来はペルーの人材を輸送することに使われていると思われるルートで、このルートを一行は車で移動することになる。だがその分、敵も警戒していると予想されるので、くれぐれも注意が必要である。
「問題はコロンビア潜入後だ。目的地である、キメラ闘技場がある場所までは、数日を要する。それまでに、キメラなどによる攻撃の危険が予想される。また、この地域の情報はほとんどない。どんな危険があるのかわからないので注意したい。まぁ、それを調べるのが俺達の仕事だがな。ともかく、今回はこの潜入ルートを確立させる。闘技場への潜入はその後になるから、そのつもりでいてくれ」
 その後も、作戦についての説明が続き。コロンビア潜入時の注意、キメラへの対策、闘技場発見後の予定などが話し合われ。マーキュリーを含む一行は、コロンビア潜入の準備を整えた。
「何度も言うが、バグアの支配地域への潜入だ、くれぐれも危険に気をつけて、まず生き延びることを考えろ。ではいくぞ」

・依頼内容
 キメラ闘技場の発見
・概要
 バグア支配地域、南米コロンビアへ潜入し、バグアの施設であるキメラ闘技場を発見、ルートを確定せよ。
 コロンビア潜入はペルーとコロンビアを結ぶ秘密のルートを利用する。ただし上空からのバグアの見張りや、陸上でのキメラの攻撃に注意すること。
 今回の作戦は、UPC特殊工作員マーキュリーが指揮を執る。マーキュリーの指示に従うこと。
 移動は、ジープ二台で行なわれる。必要物資その他はUPCから支給され、希望があれば可能な限り支援が行なわれる。ただし、高価な物資、武装、その他任務に関係無い物は却下。あくまで、依頼遂行に必要な最低限な物のみ。
 今回はキメラ闘技場の発見までに留め、その調査は後日改めて行なうことになる。

●参加者一覧

白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
御影・朔夜(ga0240
17歳・♂・JG
戌亥 ユキ(ga3014
17歳・♀・JG
南雲 莞爾(ga4272
18歳・♂・GP
オリガ(ga4562
22歳・♀・SN
みづほ(ga6115
27歳・♀・EL
綾野 断真(ga6621
25歳・♂・SN
風代 律子(ga7966
24歳・♀・PN

●リプレイ本文

「所在地が分かっただけで、経路探しはこれからか‥‥」
「なるほど、前回の調査で闘技場の概要と場所自体はほぼ確定出来ているか‥‥。さすがにこの短い期間で場所を移すまでは行かないと思うが、より警戒されている可能性は高そうだな」
 ペルーとコロンビア間の国境付近。南雲 莞爾(ga4272)と白鐘剣一郎(ga0184)が、地図に描かれたルートと目的地を確認しながら、気を引き締めるように呟く。
「おい、白鐘。なんだその格好は?」
「はい。俺の装備だと、もし姿を見られたとき怪しまれるので」
「その方が、よほど怪しいと思うぞ‥‥」
 そんな彼へ、マーキュリーが顔を顰めながら問う。というのも、白鐘は南米のこの暑い中、外套を被っているのだ。たしかに、容姿の判別は難しいが、一見して怪しい人物である。
「お前と南雲は、このペルー軍の軍服を着ろ。元々、ペルーとバグアの繋がりから情報を得たルートだ。ペルーの兵士なら怪しまれにくい」
「了解しました」
「わかった」
 前回に、ペルーの施設で入手したペルー軍の軍服を差し出すマーキュリー。軍服は三着あり、一着はマーキュリー。残りを剣一郎と、莞爾が着ることになった。
「そうなると、私は兵士に付き従う軍医ということになるのかしら?」
「あ、あの、それじゃ私は何になれば‥‥?」
「あまり気にするな。兵士と一緒にいれば、無理に変装しなくても、関係者と思われるだろう」
 白衣を着た風代 律子(ga7966)が微笑を浮かべて呟くと、戌亥 ユキ(ga3014)は少し困ったような表情をする。それに対し、マーキュリーは小さく首を横に振って答えた。
「今後の宿泊場所はどうされるんですか?」
「ここまでは、一般の宿泊施設を利用してきたが。ここからは、基本的に野営となる。どこから、バグアへと情報が漏れるかわからないからな」
「わかりました、それだと、夜も絶えず見張りを置くことになりますね。それに供えて、日中の仮眠などもよろしいんですか?」
「もちろんだ。それについての基本的なローテーションはここに書いておいた」
 みづほ(ga6115)の質問に答え、マーキュリーは見張りのローテーションなどを記した紙を渡す。
「野営中は流石に飲んでは駄目ですよね‥‥」
「‥‥寝る前に次の日に残さない程度ならかまわないが」
「さすが、マーキュリーさん、話がわかりますわね。もちろん、次の日に残すようなことは致しませんわ♪」
 オリガ(ga4562)が窺うように上目目線で問いかけると、マーキュリーは小さくため息をついて答える。ここに到る道中も、オリガは寝る前は欠かさずアルコールを口にしていた。しかも、非常に度数の高いものをだ。だが、次の日にはケロッとしており、マーキュリーは苦笑するしかなかった。
「そういえば、マーキュリーさんお酒が好きなんでしょうか? 私とオリガさんがバーに行った時残念そうでしたし、悪いことしましたかね。まあ、いずれ一杯奢りますのでそれで勘弁して下さい」
「‥‥そういうわけではないんだが」
 前回、オリガと高級バーに情報収集にいった綾野 断真(ga6621)が、思い出したように呟く。実際は、酒が飲みたいのではなく、綺麗な女性と飲みたいのだが、マーキュリーはただ苦笑するだけだ。
「そろそろ行かなくていいのか? あまりゆっくりしている時間はないだろう」
「そうだな、白鐘と南雲も着替え終わったようだ。では、行くぞ」
 御影・朔夜(ga0240)に促され、準備が整った様子を確認すると、マーキュリー達はコロンビアへと向かって出発した。

「しかし、こんな道があるなんて思いもしませんでしたね」
 一行は、二台のジープに乗ってジャングルを進んでいた。すでにここは、国境のコロンビア側で、バグアの支配している地域だ。ジープはジャングルの中に作られた、細いながらも均された道路を走っている。本来、ペルーとコロンビア間はジャングルの深い森があり、陸路を通ることは難しいはずなのだが、この道のおかげで何とか車での移動が可能となっている。二台の内一台、前を走るジープを運転している断真が感心したような呆れたような声で呟いた。
「公式的には無いはずの道だ。裏で繋がっていた、ペルーとバグアによって作られたんだろう」
「まさに、裏道というやつですわね」
 助手席でナビをするマーキュリーの説明に、オリガが苦笑しながら呟く。
「このような、細道で、もし敵に見つかったら危険なのではないでしょうか?」
「そうだな。このような道では、逃げ場が無い」
「たしかにそれはあるが‥‥。この道は、空から見つからないよう、森の木々でカモフラージュされている。そうそう見つかるものではないだろう」
 心配性のみづほの言葉に、剣一郎も同意するが、マーキュリーは気にするなと答える。道の上は森の木々で覆うようになっており、一種の森のトンネルのような状態だ。味方がこの道を発見することも困難だが、敵もそこを通る者を把握するのは難しいだろう。加えて、ここは敵地であり、多少のリスクを気にしてもしかたないということもあるようだ。
「ですが、我々も見通しが悪いので、警戒に気をつけなければなりませんね」
「上空の危険性は少ないとはいえ、地上にはキメラなども潜んでいそうだからな」
 そう言いながら、みづほは双眼鏡を覗きこんで周囲を警戒した。剣一郎も、森からいつキメラなどが現れても良いように、意識を集中して気配を感じ取ろうとした。
「さて、後ろのやつらは大丈夫かな」

「基本的に、この道を真っ直ぐいけばいいみたいね。大丈夫、ユキちゃん?」
「はい! 任せて置いてください♪」
 マーキュリー達の後ろを走るもう一台のジープ。律子のナビに、ユキが元気に返事をする。こちらの車を運転しているのはユキなのだが、まだ歳若いためなんとなく心配になってしまう。いまのところ、これといって運転でおかしな所は無いが。
「道は狭いですけど、大丈夫です。基本的に安全運転でいきますから」
「それは構わないが、前の車に置いていかれるなよ」
 細く所々クネクネと曲がっている道を、慎重に走るユキ。そんな様子に、朔夜が一声掛ける。
「周囲には、今のところ異常は無しか‥‥」
 莞爾は双眼鏡で周囲を警戒する。走る車の中、しかも木々が生い茂っているので見通しは悪いが、けして警戒は怠らない。と、そんな時‥‥。
「きゃっ!!」
「っ! どうした!?」
 ユキが思わず悲鳴をあげて突然の急ブレーキ。後部座席の朔夜と莞爾は、何事かとすぐに武器を構える。
「い、いえ、突然前の車が停まって‥‥」
「前に何かあったのかしらね?」
 ユキと律子が言うように、確かにマーキュリー達の車が停まっている。敵か? それとも、車にトラブルか?
「どうした、何があった?」
『すいません、少し道に問題が。少し手伝ってもらえますか?』
「?」
 朔夜がトランシーバーで連絡をすると、断真が答える。どうやら、道の真ん中に折れた木があったようだ。一行は、一度車を降りると、木を退かし再び先へと進むのだった。

「日も暮れてきたな、今日の移動はここまでにする。ライトはつけるな、さすがに目立ちすぎる」
 日が暮れ、道が見えなくなってくる頃。一行は、マーキュリーの指示でその日の移動を終了し、野営の準備を開始した。
「テントはどうしましょう?」
「いや、テントは使わない。休む際もジープの中だ。もし、いざという時に、すぐにこの場から移動できるようにな」
「わかりました‥‥。まぁ、屋根付きですし、まだマシですよね」
 みづほが、テントを張るか聞くが、マーキュリーは首を横に振る。みづほは、少し残念そうな表情を浮かべ、虫除けスプレーを自分に吹きかけた。
「あの‥‥隊長、少しいいですか?」
 その夜、見張りに立っていたマーキュリーに、ユキが話しかける。
「なんだ戌亥、まだ休んでいなかったのか。明日も早い、さっさと寝ておけ」
「あ、はい‥‥でもその前に、ちょっとご指導願いたくて」
「指導? 潜入技術についてか、それは一朝一夕でなんとかなるものでは‥‥」
「色仕掛けについてなんですけど」
「はぁ!?」
 ユキの言葉に、思わず声が裏返ってしまうマーキュリー。どうやら、まったく予想していなかったらしい。
「な、なぜ、そんなことを? しかもなぜ俺に聞く?」
「え、あの、もし敵が男性だったら、女性陣で色仕掛けしようかって話になって。それと、隊長さんなら、見る側としてそういうの得意かなと」
「‥‥‥」
 額を押さえてため息をつくマーキュリー。ほかの女性陣ならまだ色仕掛けというのもわからないでもないが、正直ユキは若すぎる。もちろん、若い方が好きな者もいるだろうが、色仕掛けに向いていないというのは間違いない。そもそも、バグアに色仕掛けが通じるのかどうかもわからないのだが。
「わかった‥‥とりあえず自分が思うようにやってみろ」
「た、隊長〜。こんな感じですか〜?」
「‥‥‥」
 しかし、なんだかんだといいながらも、やらせてみるマーキュリー。だが、ユキの自分がセクシーだと思うポーズを取る様子に、再びため息をついた。
「雑誌のモデルじゃないんだぞ。そんなわざとらしいポーズで色仕掛けするやつがどこにいる?」
「え、でも、それじゃどうすれば?」
「もっと自然に。さりげない様子で。たとえば‥‥こう」
「あっ‥‥」
 マーキュリーの駄目出しに戸惑うユキ。そんなユキに、マーキュリーは手本を見せるように、スッとさりげない調子でユキへと近づくと、腰へと手を回して抱き寄せる。
「女なら、腕を抱いて胸を押し付けるとか‥‥」
「む、胸‥‥ですか」
 マーキュリーに密着されて、恥ずかしげに顔を赤らめるユキ。その様子に、微笑を浮かべながら、優しげに囁きかけるマーキュリー。
「続きはあとでベッドのう‥‥ぐぉ!?」
「続きはなんですか〜? マーキュリーさん!」
「か、風代!?」
 何かを言いかけるマーキュリーの後頭部に、強い衝撃が走る。慌てて振り返ると、律子が笑みを浮かべながら立っていた。
「まだ幼い子に手を出すなんてねぇ‥‥同じ潜入工作員同士、うまくやっていけると思っていたのだけれど‥‥」
「い、いや、これは戌亥が、色仕掛けについて教えて欲しいと」
「そのわりに随分と楽しそうでしたよね」
「お、オリガ!?」
「心配になって来てみれば‥‥」
「みづほまで!」
 いつのまにか集まってきていた女性陣に囲まれ、絶体絶命のマーキュリー。その後、弁明虚しく、女性陣にボコボコにされるのだった。

 次の日、太陽が昇り始めるとすぐに、一行は再びジープで狭い道を進んでいく。
「ようやく半分といった所か」
 地図や方角などを確認し、現在位置を確かめるマーキュリー。目的地へはあと半分という所だった。顔の青痣が痛々しい。
「っ!? 気をつけろ、なにかいるぞ!」
 そんな時、剣一郎が直感的に周囲の気配の変化に気づく。と、同時に、謎の影がジープへと飛び掛ってきた。
「‥‥天都神影流、虚空閃」
 咄嗟に、剣一郎が車から身を乗り出し、剣から発した衝撃波で影を叩き落す。
「猿ですね」
「どうやら、まだまだいるようですよ」
 叩き落された影の姿に、オリガが呟く。それは確かに、2メートル近いサイズの猿であった。みづほが言うように、周囲には他にも何匹も猿がおり、器用に木々を抜けながら、車を追いかけてくる。どう考えても、普通の猿ではない。猿キメラである。
「出来る限り振り切ります。少々運転が荒っぽくなりますので気をつけてください」
 断真はそう言うと、アクセルを踏み込む。ジープは速度を上げつつ、クネクネとした道に車体を揺らしながら進む。しかし、なかなかキメラを振り切ることは出来ないようだ。
「オリガさんは、銃は別の敵を呼ぶことになるかもしれません。ここは私が弓で。白鐘君は反対側をお願いします」
「わかっている。悪いが同乗者はこれ以上要らないのでな」
 銃を構えるオリガを静止し、みづほが覚醒し顔に独特な痣を浮かび上がらせ、弓で飛び掛ってくる猿を射抜く。白鐘も、反対側で剣を振るい、猿を車に近づかせない。その様子に、マーキュリーは何も口出さずに見守るのだった。

「一号車が、キメラに襲われています!」
 マーキュリー達の異変に気づいたユキ。一号車に飛び掛ってくるキメラの様子に、あわてて仲間に声を掛ける。
「どうやら、あちらの心配をしている場合ではないようだ」
「えっ!?」
 周囲を警戒していた朔夜がニヤリと笑みを浮かべる。それと同時に、二丁の銃を構え、素早く放つ。吐き出された弾丸は、こちらへと飛び掛ってくる影に命中し、それを撃ち落した。同じく、莞爾も反対側から飛び掛ってくる猿を銃で撃ち落す。銃器の使用を抑えていたみづほ達は苦笑するしかないが。
「これでも火力には多少の自負もある‥‥伊達に“悪評高き狼”などと言う称号で呼ばれてはいないさ」
「こいつらは、車に近づかせない。あんたは、前に置いていかれないことだけ気をつけろ」
「わかりました! 飛ばすよっ! みんな、つかまってて!」
「ユキちゃん、無茶はしないでね」
 キメラ達を次々と撃ち落す二人。ユキは、キメラを二人に任せて、運転に集中するようにアクセルを踏み込む。律子も拳銃でキメラに応戦しながら、ユキに心配するように声を掛けるのだった。

「ようやく撒いたか」
 その後、しばらく猿キメラの襲撃が続いたが、なんとか振り切ることに成功した一行。バグアの追撃も無いようで、とりあえずは一安心というところだろうか。そして、その日も終了する。
「あと少しだな‥‥。ここから歩いていくぞ」
 次の日、ある程度進んだ後、地図を確認したマーキュリーは、車を降り、歩いて目的地へと向かうことにした。車で近づきすぎれば、見つかる可能性が高いからだ。そして、ようやくジャングルを抜けた一行は、巨大な建物を発見する。
「あれが目的地なのか?」
「どうやら、そのようだ」
「大きい‥‥ですね」
 剣一郎の呟きに、莞爾が頷き、断真は顔を顰める。もちろん、見張りに見つからないように、森に隠れながらだ。
「歓声‥‥? 中ではお楽しみということですか‥‥」
「悪趣味だよね。でも、これを発想したのって人間‥‥なのかもね。嫌だな」
 建物の中からは、歓声のようなものが聞こえる。オリガとユキは気分の悪いものを見るような表情を浮かべた。
「よし、目的の建物を確認した。すぐに戻るぞ」
「ですが、ここまできてこのまま帰るのですか?」
「そうね、せめて警備の様子ぐらい確認しても」
「深追いは禁物だ‥‥撤退するぞ。何、時期にもう一度来る事になる‥‥その時に助けてやれば良いだろう」
 その後、マーキュリーの指示に、みづほと律子はもう少し調査をしたほうがと意見を出すが、朔夜がそれを静止する。準備も無いまま、深追いすれば危険なのは間違いなく。キメラ闘技場を発見した一行は、予定通りその場を後にし、帰還することになった。