タイトル:弾丸ネズミを捕獲せよ!マスター:緑野まりも

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/04/22 05:49

●オープニング本文


「メリル! おい、メリル!」
 ドローム社の研究室に響く怒鳴り声。対キメラ用兵器開発室第三課の長である梶原一三が、部下である研究員メリル・ウッドを呼ぶいつもの声であった。
「は、はい〜」
「遅いわ! 呼ばれたらもっと早く来いといつも言っておるじゃろうが!」
「すいません〜!」
 ビン底眼鏡のメリルは気弱な性格で、いつも梶原に怒られている。といっても、梶原も理不尽な性格なので、遅くても早くても怒鳴りつけることに変わりはないのだが。
「そ、それで、どのような御用でしょうか?」
「また新しいキメラのサンプルを能力者どもに取ってこさせるんじゃ。この間は、どっかの馬鹿のせいで、あまり役に立たんかったからのぅ」
「そ、そんなぁ〜。あんなに可愛い‥‥」
「‥‥‥」
「あう‥‥すいません‥‥」
 何かを言おうとするメリルだが、ギロリと睨みつける梶原に押し黙り、しゅんと肩を落とした。どちらかというと、これは自業自得なのであったが。
「それで、そのようなキメラを捕獲してもらえばいいのですか〜?」
「このボンバーマウスというキメラじゃ」
「ボンバーって、爆発するんですか!?」
「早とちりするなバカモン! ボンバーという名称でも、爆発するわけではないわ! これは能力者どもにもちゃんと言っておくんじゃぞ。勘違いされて、別のもんを持ってこられても困るからの」
 キメラの名称を聞いて驚くメリルに、梶原が話を最後まで聞けと怒鳴りつける。どうやら、自爆するネズミというわけではないようであった。
「このネズミは、口から様々な種類の弾丸を吐くんじゃ」
「弾丸‥‥ですか?」
「そうじゃ。弾丸といっても、拳銃のような弾ではないぞ。炎や水を10cm程度の玉にして撃ち出すんじゃ」
「ええ!? キメラってそんなことまでできるんですか〜! ど、どうやって?」
「それを調べるために捕獲するんじゃろうが、バカモン!!」
「そ、そうですよねぇ‥‥」
 間が抜けた質問に、また梶原に怒られるメリル。研究者としては優秀のはずなのだが、どうにもどこか抜けている感じのする女性だ。
「それじゃ、そのボンバーマウスを捕獲してくるよう頼めばいいんですね?」
「待て、ただ炎や水を吐き出すキメラでは面白くない。生物のみに効果を表す特殊なエネルギー弾、俗に神弾、闇弾と呼ばれる弾丸を放つボンバーマウスを捕えてくるんじゃ」
「はぁ、神弾、闇弾ですか? でも、どうやって判別するんですか〜?」
「そんなもん決まっておるじゃろうが。実際に撃たせてみて、撃つかどうか試すんじゃ。ボンバーマウスは一固体につき、だいたい三種ほどの弾丸を放つそうじゃからの」
「そ、それって、危険ですよ〜。キメラに攻撃させて確かめるなんて、間違って当たりでもすれば‥‥」
「そんなことはわしの知ったことではないわ。能力者どもがどれほどの怪我を負おうが、ちゃんと研究材料を取ってくればいいんじゃ」
「あう〜‥‥」
 メリルの心配を一笑に付し、梶原はキメラ捕獲の依頼を出させる。どうやら、今回の捕獲はなかなか大変なことになりそうであった。

・依頼内容
 ボンバーマウスの捕獲
・概要
 ボンバーマウスと呼ばれる、様々な弾丸を吐き出すキメラを捕獲する。ただし、神弾・闇弾と呼ばれる特殊な弾丸を吐くキメラに限る。
 キメラの生息地は、北米南東部のバグアとの競合地域。廃墟となったビル街付近。
 キメラの捕獲には、特殊合金製の檻が用意されている。50立方cm程度の大きさで、大人二人程度で持ち運べる重さ。能力者であれば、一人で持ち運ぶことも可能。今回は二つ用意されている。
 捕獲数は、神弾・闇弾それぞれ各一匹、計二匹を捕獲する。両方吐けるキメラであれば、一匹でも構わない。捕獲時は、危険の無い様に処置して、檻に入れて輸送を行なう。
 今回、依頼主からの特別な支援は行なわれない。必要な物資は、各自で調達すること。

●参加者一覧

大曽根櫻(ga0005
16歳・♀・AA
煉条トヲイ(ga0236
21歳・♂・AA
御山・アキラ(ga0532
18歳・♀・PN
赤霧・連(ga0668
21歳・♀・SN
斑鳩・眩(ga1433
30歳・♀・PN
ファルティス(ga3559
30歳・♂・ER
南部 祐希(ga4390
28歳・♀・SF
黒江 開裡(ga8341
19歳・♂・DF

●リプレイ本文

「キメラを捕獲せよ、か。簡単に言ってくれるが――生け捕りは、倒すよりも骨が折れる作業なんだがな‥‥」
 依頼を受けて、ボンバーマウスが生息しているというビル街の廃墟へと訪れた一行。特製の檻を運びながら煉条トヲイ(ga0236)が呟く。
「こちらもキメラの研究成果さえしっかり出してくれれば良いとおもっているからな‥‥お互い様か」
「しかし、壁を透過する弾を吐き出すネズミか。もしそんな弾を能力者が使えるようになったらこの先の戦いも楽になるだろうな」
「実績もある程度あるようですね。でも少々危険かな、と思う心が先に立つのは私が臆病なせいでしょうか」
 その言葉に、御山・アキラ(ga0532)とファルロス(ga3559)が小さく頷きつつ自分の考えを口にし。南部 祐希(ga4390)は、少し不安そうに呟いた。
「ですがネズミの捕獲ですか‥‥あまり気持ちのいいものではありませんね」
「そうだねぇ、地球のネズミと似てんかな?」
 ネズミが苦手な大曽根櫻(ga0005)が苦笑しながら呟く。なるべく表情には出さないようにしているが、やはり苦手なものを相手にするのは嫌なものである。斑鳩・眩(ga1433)はそれに頷きながら、小さく首を傾げた。
「鼠さんの捕獲‥‥上手に出来るかしら? 猫さんの如く捕まえたいですよ!」
「害虫駆除にネズミ捕り、凡そ戦争とは縁遠い仕事の多い事で。いっそ傭兵稼業より害虫駆除会社でも興した方が実入りが良さそうな気もするな」
 逆に赤霧・連(ga0668)はやる気満々の様子で、まだ見ぬ獲物に瞳を輝かせる。それに苦笑しながら黒江 開裡(ga8341)が肩を竦めた。
「ある意味、キメラ退治も害虫駆除と似たような物だからね‥‥。とりあえず、二班に分かれて捜索を開始しようか」
 そして、開裡の言葉にファルロスが淡々とした口調で答え。一行はボンバーマウスの捜索を開始した。

 トヲイ、連、眩、ファルロスの四人は、A班として街の下水道を主に探索を行なうことにした。
「梶原課長とメリルも、どうせならただの檻ではなく、大型のネズミ捕り機でも用意してくれれば良いのにな」
「あそこは、他にもキメラを集めているという。下手にネズミ捕りに限定するより、汎用性のある檻を用意したんだろう」
「なるほどな」
 檻を背負いながらぼやくトヲイに、ファルロスがなだめるように考えを述べる。トヲイはとりあえず納得したように頷き、檻を背負いなおす。
「それにしても、ここはあんまり気持ちのいいところじゃないね。さっさと、見つけて外に出たいよ」
「ほむ、でもネズミさんはいそうですよネ」
 そう呟いて、眩が眉を顰める。廃墟となって久しく、すでに水も流れていないが、下水道という雰囲気があまり清潔感の無いように感じられるのだ。それに対し、連はさほど気にした様子もなく、少し期待した様子で周囲を観察している。
 そして、しばらく下水道を進んだ一行は、二つに分かれた道へとたどり着いた。
「ほむ‥‥分かれ道ですネ」
「どうする、二手に分かれるか?」
「いや、俺が様子を見てくる、ここで待っていろ」
 トヲイの問いにファルロスが答え、覚醒し隠密潜行を使うと偵察へと向かう。覚醒することによって現れた、十字の形をした発光体の明かりを前方に漏らさないように注意しながら、身を潜めて進むファルロス。
「こっちの道にネズミがいた」
 少しして、二つの道を軽く偵察して戻ってきたファルロスは、片方の道にネズミの姿を確認したことを報告する。
「分かった、俺が囮役をやろう。ここまで誘導してくるから、捕獲を頼む」
「それじゃ、私は捕獲に回ろうかな。しかし、女性にネズミを触らせますか普通」
 報告を聞いたトヲイが、ネズミ達を誘き寄せる役を買って出る。それに頷き、眩は捕まえる役を行なうことにした。口では嫌そうにしているが、手をワキワキと動かしてやる気満々の様子だ。
「ほむ、いったいどれぐらいの数がここにいるのでしょうか?」
「数まではわからない。でも、1匹や2匹ではないようだ」
「なるほどな。では、行ってくる」
 首を傾げる連に、ファルロスが分かっていることを答える。それを聞いて、トヲイは表情を引き締めると、分かれ道の先へと進んでいくのだった。
「ファルロスの報告だと、だいたいこの辺りか‥‥」
 下水道の暗闇の中を進むトヲイ。暗視スコープによって、暗闇でも問題なく周囲を見渡し、ネズミの姿を探す。
「ん‥‥」
 やがて、トヲイは暗闇の中を蠢くそれを発見した。暗闇の中で、丸く光る玉。暗視スコープにははっきりと、小さなネズミの胴体も見える。数を数えると、だいたい4〜5匹ほどいるだろうか。
「どうやら、むこうもこちらに気づいたようだな」
 トヲイに気づいたネズミ達は、狂暴な牙をむき出しにして威嚇するように毛を逆立てる。トヲイはネズミを挑発するように、ネズミ達の前に躍り出ると、素早く対処できるように身を構えて相手の動きを見る。
「こいつら、本当にボンバーマウスか? ほら、撃ってこい‥‥おっと!」
 わざとらしく挑発するトヲイ。それに対して、ネズミ達は口を大きく開けると、突然ボールのような物を吐き出した。それをサッとかわすトヲイ。それに対し、ネズミ達は一斉に弾丸を吐き出し始めた。
「炎の固まりに、水‥‥石まであるな。これだけ居れば、一匹ぐらい当たりがいるだろう。とにかく、誘導するか。ほら、追いかけて来い」
 吐き出される弾丸を確認しながら、トヲイはもと来た道を戻りだす。相手が逃げ出したと判断したネズミ達は、弾丸を吐きながらトヲイを追いかけ始めた。
「数が多くても、簡単には当たらない‥‥ぐっ!? なんだ、見えなかったぞ?」
 攻撃を避けながら逃げるトヲイ。しかし、途中見えない何かを身体に受けてしまう。一瞬の気だるさに顔を顰めるトヲイ。
「そういえば、闇弾の説明が、その名の通り闇の弾だったか。この暗闇の中じゃ、紛れて見えなくなるな‥‥面倒な」
 自分の受けたものを冷静に判断し、納得したように呟くトヲイ。暗視スコープとはいえ、暗闇に紛れる闇の玉までは、なかなか見ることもできない。
「せめて、明るい場所なら‥‥この下水道じゃ無理か。まぁ、目的のネズミがいるとわかっただけマシだな」
「あ、戻ってきましたよ」
 時折当たってしまう闇の弾に耐えながら、トヲイはなんとか仲間達のもとにたどり着く。その後ろからは以前としてネズミ達が追いかけてきており、とりあえず役割は達成できた。
「どうやら、闇弾を撃ってくるやつがいるようだ。暗闇の中じゃ、判別しづらいから注意しろ」
「わかった」
「任せといて‥‥って、いやはや、怖すぎるでしょ、これ」
 トヲイの報告に頷くファルロス。準備をして前にでた眩だが、闇に浮かび上がるいくつもの光る目に、わざとらしく驚いて見せた。
「任せて下さい、逃がしません」
 弓を構えた連が、その髪を漆黒へと変化させる。眩もその背に赤い羽根を投影し、ネズミ達へジリジリと近づいていく。ネズミ達は、数の増えた相手に警戒するように威嚇し、そして再び弾丸を吐き始めた。
「どれが、闇弾を吐くかわかるか?」
「いや、こう数が多いと、どいつが吐いたのかわからないな」
 弾丸を見極めるように観察しながら問うファルロスに、トヲイが答える。実際、固まって攻撃してくるうえに、闇弾自体は見え辛く簡単には判断できなかった。
「‥‥んー、なんとかなるでしょ」
 疾風脚を使いながら弾丸を回避している眩は気楽にそう言うと、隙を見てネズミに飛びつく。しかし、小さい上に素早く、しかも暗い足元をちょろちょろと逃げ出すネズミを捕まえるのはなかなか至難の業であった。
「ちっさいのも困りもんよね」
「ほむ、足を止めようにも、こう小さいと身体に当ててしまいそうで難しいです」
 なかなか捕まえられずにぼやく眩に、連もへたに矢を射れずに苦笑する。殺さず捕まえるのは、やはり難しいようだった。

 一方、櫻、アキラ、祐希、開裡の四人は、B班として廃墟となったビルの探索を行なっていた。
「下水道に入ると連絡があってから、無線ができなくなりましたが大丈夫でしょうか?」
 A班と逐一連絡を取っていた櫻が心配を口にする。どうやら、トランシーバーの範囲外になってしまったようだ。
「彼らも能力者だ、大丈夫だろう。それより、私達が任務を達成できる心配をしたほうがいいな」
 そんな櫻に、アキラは心配した様子も無く返し、ビルの中を進んでいく。
「チーズをその辺に撒いておけば。お約束通り寄って来たりしないものか、ネズミだけに」
「ネズミとはいえキメラだからな。チーズよりも、おまえの肉のほうが釣れるんじゃないか」
「結構言うねぇ」
 割と本気で呟く開裡に、愛想の無い答えを返すアキラ。そもそも、本当にネズミの好物がチーズかどうかさえ怪しい。
「チーズかどうかはともかく、食糧のありそうな所に生息している可能性は高そうですね」
「食糧のありそうな所ですか‥‥。すでにここは廃墟なので残っているかどうかも怪しいですが、どこか食料品店など探しますか?」
 祐希の意見に小さく頷いた櫻は、周囲を見渡して食糧がありそうな場所を探す。しかし、これといった場所は見当たらない。
「とりあえず、手分けして探しましょう。見つけたら、無線で連絡を」
「わかりました、皆さん気をつけてください」
 祐希の言葉に、全員で手分けしてビルを探索することにした一行。櫻が仲間達に気を掛け、一行はバラバラに捜索を開始する。
「‥‥よし、ネズミならそうでなくては!」
 ビルの間の狭い路地でチーズを撒いて待っていた開裡。しばらくして、ネズミが姿を現すと嬉しそうにガッツポーズを取る。しかし‥‥。
「なんだ、ただのネズミか」
 捕まえてみれば、キメラでない普通のネズミだったことに少し肩を落として落胆した。
「普通のネズミが居るってことは、この辺りにはキメラはいないかな」
 野生の動物なら、キメラが近くに居れば本能で逃げるだろう。となれば、普通のネズミが現れる場所にキメラがいる可能性は少ないということだった。とりあえず開裡は、別の場所を探すことにする。
「‥‥おまえはターゲットではない」
 ビル内を探索していたアキラは、途中猛獣型キメラと鉢合わせしてしまった。だがこれをアキラは難なく打ち倒す。倒れたキメラを見下ろし、剣についた血を払うと、抑揚の無い声で呟いてその場を後にした。
「やっぱり、何も残っていませんか」
 レストランの厨房を捜索していた祐希。しかし、すでに人がいなくなってから随分と経っているため、これといった食糧も、それを目的とした生き物もいなかった。当てが外れ、少し肩を落として厨房を出ようとすると。
「っ!!」
 突然、ガタっと音がして、祐希は驚きのあまりビクリと身体を震わす。
「な、なんですか!」
「あ、すまない、脅かしたか」
 慌てて音がしたほうに振り向く祐希、そこにいたのは開裡だった。どうやら、近くの路地から場所を変えようとして、同じ所を捜索に来てしまったようだ。とりあえず、ホッと胸を撫で下ろす祐希。
「ここには、なにも無いようです」
「そうか」
 そう報告して、厨房を後にしようとする二人。と、そこに櫻から無線が入る。
「こちら櫻、ボンバーマウスを発見しました‥‥」
「! わかりました、すぐに向かいます」
「ようやく本命か」
 そしてボンバーマウス発見の報告に、二人は急いで櫻のもとへと急ぐのだった。

「こちら櫻、ボンバーマウスを発見しました‥‥」
 櫻が無線を入れたとき、ちょうど彼女は攻撃を受けている最中だった。ビルを登っている途中、突然弾丸による襲撃を受けたのだ。ネズミの苦手な櫻は、心中あまりネズミに遭いたくないと思っていたのだが、そういうときほど遭う確率は上がるものである。
「遭った以上はしかたありません。目的を果たさないと」
 そう呟いた櫻は、青い瞳をキメラへと向けた。狂暴そうなネズミが醜悪な表情で火や水の弾丸を放ってくる。苦手と言っても別段取り乱すわけではないが、ネズミの姿を見るとさすがに顔を顰めた。
「目的のキメラはいるでしょうか」
 数匹のネズミ達が、各々様々な属性の弾丸を放ってくる。その中で、目的の神弾、闇弾を放つ相手がいないか見極めようとする櫻。ときおり、光の玉を放ってくるものもいるが、おそらくそれは光弾と呼ばれる周囲の光を集めて熱で攻撃するものだろう。襲われた場所はちょうど屋根が崩れてテラス状になっており、日の光が差し込んで明るくなっていた。
「判別が難しいですね、峰打ちで気絶させて、一匹ずつ確かめましょうか?」
 しばらく攻撃を回避していた櫻だったが、固まって弾丸を放ってくるネズミ達に業を煮やし、刀を構えて近づこうとする。
「っ!?」
 だがそこで、見えない何かの気配を感じとっさに身体をそらす櫻。気配が通りすぎる一瞬、淡い光のようなものが見えた。どうやら、周囲の明かりに紛れて、淡い光の弾丸が飛んできているようだ。その攻撃は大変見分けがつきにくく、櫻はへたに近づけなくなる。
「困りましたね」
「私に任せろ」
 そこへ、連絡を受けたアキラが現れる。彼女は、盾を構えながら弾丸をものともせずに突っ込んでいく。途中、何度か盾をすり抜けてくる神弾を受けるが、表情も変えずにそれを耐えた。
「援護します」
 そこへ、後からやってきた祐希。覚醒し身体から陽炎を立ち上らせた彼女は、いつもの怯えた様子もなく、正確にネズミの群れへと矢を放った。火薬を詰め込んだ特殊な矢が、群れの中央の床に刺さり爆発する。そして、ネズミ達はその爆風に吹き飛ばされた。直接当ててはいないので実質的なダメージはないが、一瞬動きを止めることに成功する。
「こいつだ!」
 そこで、アキラは動きを止めたネズミ達の中から、めぼしをつけておいた一匹を素早く掴み上げる。
「やるねぇ」
 そして、それを確認した開裡は、余ったネズミ達を躊躇無く撃ち倒した。その後、捕まえたネズミの口をワイヤーで縛り、開裡の持ってきた檻へと捕獲する。
「こちらB班、神弾を吐くネズミを確保。ボンバーマウスゲットだぜ、だな」

「確保ー!」
 眩の声が下水道に木霊し。ほどなくして、A班も闇弾を吐くネズミを捕獲した。こちらでは、一匹一匹捕まえて弾丸を吐かせるという方法を取る事になり多少被害が出てしまったが、トヲイとファルロスが救急セットで怪我の治療を行なう。
「こちらA班、闇弾のボンバーマウスを捕獲した」
「ああ、外の空気が美味しいですね〜」
 そして下水道から出た一行。ファルロスがB班へと連絡を行い、連は大きく息を吸い込んで一息つくのだった。
 こうして、一行は二匹のボンバーマウスを捕まえ任務達成となった。