タイトル:【AP】光の中は異世界マスター:緑野まりも

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/04/18 05:56

●オープニング本文


※このシナリオは架空のシナリオです、CTSの世界観に即してはいません。エイプリルフールネタとなっていますので、ご注意ください。

 バグアに襲われ廃墟となった一つの街。キメラが徘徊し、人間の姿はどこにも居ない。そんな場所に突然、光が溢れた。何もない空間に現れた光は、少しして急速に収束していく。そして、その光の中から人影が‥‥。
「ひょわわあぁぁぁぁ!」
 奇声のような悲鳴をあげて、光から現れた人影が地面に落ちる。その姿は少女で、演劇の衣装のような派手で可愛らしい服を着ていた。その手には、やはり劇の小物のようなステッキも持っている。
「うぐっ!」
「ふぎゅ!」
 少女は盛大な音と共に尻餅をつき、顔を顰めた。かなり痛かったようで、声も出ないまましばらくそのままの体勢で目を瞑っている。
「いたたたぁ‥‥一体何なの〜!」
 ようやく声も出るようになったのか、目に涙を溜めながら、打ち付けた腰を擦って、少女は怒りの声をあげる。何故自分がこのような目にあったのかわからない様子であった。
「って‥‥ここどこ?」
 ふと周囲を見渡して、首を傾げる少女。少女にとって見覚えの無い風景に、驚きと戸惑いの表情を浮かべる。
「な、なんでこんな所にいるの!?」
「うう‥‥そ、それよりも、まず先にどいてくれない‥‥かな?」
 混乱した様子で声をあげる少女。そこに、彼女の下から苦しそうな声が聞こえてきた。
「えっ? あ、カトリ! 大丈夫!?」
「酷いよヒカル‥‥あのまま死ぬかと思ったよ」
「ご、ごめん、気づかなかったよ〜。あはは‥‥」
 声の主は、羽根の生えたレッサーパンダのようなヌイグルミ。ヒカルと呼ばれた少女は、慌てて立ち上がると、目を回したヌイグルミを拾い上げた。どうやら、そのヌイグルミは生きているようだ。
「ね、ねぇ、カトリ! ところでどうなってるの!? なんで私達こんな所にいるの!?」
「うん? ‥‥ここはどこだいヒカル?」
「それを私が聞いてるの! バカトリ!!」
 不安げにヌイグルミに問いかけるヒカル。カトリと呼ばれたヌイグルミは、言われて初めて気づいたように周囲を見渡して、ヒカルに聞き返した。それに怒ったヒカルがカトリを怒鳴りつける。
「えっと‥‥たしか、私達は魔法の練習をしてて‥‥突然周囲が光に包まれて‥‥」
「つまり‥‥魔法が失敗して、僕らは知らない場所に飛ばされたみたいだね」
「え? え〜〜!? 知らない場所って、じゃあどうやって戻るの?」
「う、うん、たぶん、僕がヒカル達の世界に来た様に、異世界移動魔法を使えば戻れると思うけど‥‥」
「けど?」
「高度なうえに、特殊な魔法だから、ヒカルじゃ無理なんじゃないかな? 父さん‥‥あっと、神様ぐらいの強い力を持ってないと使えない魔法だし」
「じゃ、じゃあどうするのよ!」
「手段が無いわけじゃないんだけど‥‥強力な魔法磁場のある場所へ行けばヒカルにも‥‥。っ!? ヒカル! 何かいるよ、気をつけて!!」
 困った様子のヒカル達。カトリが難しそうな顔で首を捻って何かを言おうとしていた所に、突如キメラの姿が。
「な、なんなのこいつ!? こんな生き物見たことないよ!」
「たぶん、この世界は、僕達の居た世界とは違う世界なんだ。あの様子だと、この生き物は僕達を食べようとしてるんじゃないかな‥‥」
「じょ、冗談じゃないよ! こんなところで変な生き物に食べられるなんて、ごめんなんだから! レイテ!!」
 異形のキメラの姿に驚きながら、ヒカルは持っていたステッキをキメラに向けると、呪文のようなものを唱える。すると、ステッキからレーザーのような光が発せられる。その光を受けて、キメラは吹き飛び壁に打ち付けられた。
「え!? 魔法が効かない!?」
「と、とりあえず逃げよう!」
「うん!」
 しかし、キメラはフォースフィールドのおかげでたいしたダメージを受けていなかった。すぐに立ち直ろうとするキメラに驚きつつ、カトリの言葉に頷いたヒカルは、慌ててその場から逃げ出した。
「はぁ、はぁ、なんなのよここは〜」
「異世界では何が起きるかわからない。とにかく、魔法磁場の強い場所へ向かおう。そこでなら、異世界移動魔法が使えるよ」
「うん、わかった‥‥」
 少しして、一息ついたヒカルとカトリ。そして彼女達は、カトリの言う魔法磁場の強い場所を目指して、廃墟を歩き出すのだった。

〜作品紹介〜
 明るくて運動の得意な少女蛍崎光流は、ある日不思議なヌイグルミのような生き物を見つける。それはなんと、光流達の住んでいる世界とは別の世界からやってきた異世界人(?)だった。
 異世界人カトリは、500年に一度行われる神様決定戦に参加した神様候補だと光流に伝える。神様決定戦とは、異世界で一番の権力者を選ぶ戦いで、100人ほどの候補者から勝ち残った1人を神様とするものだった。
 そして、神様決定戦でついに勝利した光流とカトリ。次の神様に決まったカトリは、光流達の世界とカトリ達の世界の交流を望み、少しずつ二つの世界は近づきだすのであった。
 それからしばらくたち、光流の高校進学が決まった春休み。カトリと魔法の練習をしていた光流は、魔法に失敗し知らない場所へと飛ばされてしまう。そこは、人類と異星人が戦う光流達とは別の世界だった。

〜あらすじ〜
 キメラ退治の依頼を請け負ったエミタ能力者達。廃墟へと向かった彼らは、謎の少女達と出会う。少女達は別の世界からやってきた魔法使いだと言い、元の世界へ帰るためにある場所へと向かっているのだという。
 能力者達は、依頼のついでに彼女達を手伝うことになり、一緒に魔法磁場の強い場所へと向かうことになった。はたして、無事に少女達を元の世界へと送り届けることができるのだろうか。

〜登場人物〜
ヒカル 本名、蛍崎光流。今年の春に高校へとあがる少女。明るく元気で、ちょっと勝気な性格。ふとしたことにより、異世界の神様決定戦という戦いに巻き込まれ、魔法使いとなる。魔法少女に変身すると、『光』の属性の魔法を使うことができる。

カトリ ヒカルとは別の世界からやってきた、元神様候補。現在は神様決定戦に勝利し、次期神様として勉強の日々。なのだが、二つの世界の交流のためと称してヒカルの家に居候している。本来の姿は羽根の生えたレッサーパンダのようなヌイグルミだが、人間の男性の姿をとることもできる。人間の姿は、頼りない感じのボサボサ髪の大学生ぐらいの男性。

●参加者一覧

小川 有栖(ga0512
14歳・♀・ST
水鏡・シメイ(ga0523
21歳・♂・SN
リネット・ハウンド(ga4637
25歳・♀・BM
豊田そあら(ga4645
21歳・♀・BM
戎橋 茜(ga5476
15歳・♀・BM
アルディーヌ・ダグラス(ga6234
16歳・♀・ST
リリア・柊(ga8211
18歳・♀・DF
夕波綾佳(ga8697
22歳・♀・BM

●リプレイ本文

「ひょわわあぁぁぁぁ!」
「今、変な声が聞こえませんでしたか?」
 依頼を受けて廃墟へと向かった一行に届く謎の奇声。水鏡・シメイ(ga0523)がその声に気づき、声のする方へと向かうことになった。
「こんな所に人が居るわけないっす。聞き間違えじゃないっすか?」
「そうかもしれませんが、もし本当に誰かがいたら大変ですしね。もしかすると迷子かもしれません」
 半信半疑のリリア・柊(ga8211)に、夕波綾佳(ga8697)が穏やかな口調で答える。さすがに、こんな危険な場所で迷子になる者がいるとも思えないが、しかたないとリリアは肩を竦めた。
「ん? あちらから、何か向かってきますよ」
 少しして、一行は人影のようなものが向かってくることに気づく。人よりやや目線の高いリネット・ハウンド(ga4637)がいち早く気づき、その方向を指差した。
「はぁ、はぁ、なんなのよここは〜」
 それは、可愛らしい衣装を纏った少女で、肩にはヌイグルミを乗せている。少女は、何かから逃げてきたように、時折後ろを振り向きながら、走り疲れて肩で息をしながら立ち止まった。なにやら誰かと会話しているように呟いているが、どうやらまだ一行には気づいていない様子だ。
「こんな所に、少女が一人であぶないですよ」
「わわ!? また出た〜!!」
 シメイが少女に声を掛けると、驚いた少女はステッキのようなものをシメイに向ける。
「待ってヒカル! 人だよ!」
 どこからともなく制止の声が聞こえ、少女は慌てた様子で口にしようとした何かを止めた。
「まぁともかく、落ち着いて話を聞かせてください」
「あ、うん‥‥実は‥‥」
 とりあえず少女の話を聞くことにしたシメイ達。少女は少し落ち着いた様子で、事情を話し始めた。

「えー、『あほう少女』っすか? 自分から“あほう”だ何て言っちゃうなんて凄いっすね。あたしも大概頭悪いっすが自分の事をあほうだなんて言わないっすよ」
「魔法だよ、魔法!」
「え、違う? 『魔法少女』っすか? またまた、“まほう”なんてそんな物はないっすよー。人をからかうなんていけない娘っすねー」
 さて、事情を説明した少女、ヒカルであったが、リリアはまったく信じない。たしかに、自分は魔法使いで別の世界からやってきたなどという荒唐無稽な話を簡単に信じられるはずもなかった。
「疑うなら、見せてあげるよ。レイテ! どう? これで信じた?」
「そんな事ぐらいなら能力者なら出来る人がいるかも知れないので証拠にはならないっすね。あたしだって覚醒すれば普段の運動音痴も改善されるぐらいっすから」
 証拠のためにヒカルは魔法を唱え、ステッキからレーザーのようなものを放つが、それも何らかの武器だろうと考えるリリア。
「うぐぐ‥‥、だったらこれならどうだ! エターナ・ゼウン・ライ‥‥」
「ま、待ってヒカル! この街ごと吹き飛ばす気!?」
「まぁまぁ、リリアさんもその辺で」
「まあ良いっす。とりあえずこんな所を1人で行かせる訳にはいかないっすから、あたし達が目的地まで護衛をしてあげるっす」
 意地になったヒカルが、自分の持つ最強の呪文を唱え始めるのを、カトリが慌てて止める。シメイも話が進まないと思ったのか、信じようとしないリリアをなだめた。
「まぁ、なにはともあれ、あたしらにまかしとき! 『乙女組』がきっちり守ったるさかいな!」
「あ、アカネちゃん!? アカネちゃんもこっちに来てたの!?」
「はっ? あんたとあたしは初対面やろ? 何で名前知っとるの?」
「え? どういうこと? もしかして記憶喪失とか‥‥」
 そんな中、戎橋 茜(ga5476)がヒカルに話しかけると、ヒカルは驚いたように茜を見て、知り合いのように言葉を返した。しかし、茜はきょとんとして首を傾げる。
「ヒカル‥‥、おそらく彼女は僕達の世界とは別の、この世界のアカネちゃんなんだよ。だから、ヒカルのこと知らないんじゃないかな」
「そ、そうなの?」
「たぶんね」
 そこへ、カトリが別世界について説明する。ヒカルは半信半疑ながら、納得したようだ。
「可愛いお洋服を着てますね♪ ところで、さっきから気になってたのですが、そのヌイグルミもしかして生きてませんか? レッサーパンダなのに、羽が‥‥もしかしてキメラ?!」
「あ、僕はカトリ、ヒカルのパートナーで‥‥うわぁ!?」
 そんな話をしていると、小川 有栖(ga0512)が興味津々な様子で話しかけてきた。さきほどから、カトリは空中に浮き、ヒカルと会話していたのだが。好奇心に駆られた有栖に捕まり、羽根を引っ張ったり、逆さまにしたり、身体中を触って確かめたりされる。
「アルディーヌさん、これはどんな生き物ですか?」
「えー!? ぬいぐるみが生きてるのー!? 楽しい〜!!」
「た、助けてよヒカル〜!」
 そして、生物兵器を研究しているサイエンティスト、アルディーヌ・ダグラス(ga6234)にカトリを見てもらおうとするが、アルディーヌも始めてみる謎の生き物に歓声をあげて喜ぶ。
「わ〜、本物の光流ちゃんだ〜♪ あ、この声‥‥分からない?」
「へ‥‥すばる‥‥ちゃん?」
 感激した様子の豊田そあら(ga4645)が、ヒカルに声を掛ける。その声に、心当たりがあるようにヒカルは不思議そうに首を傾げた。
「そうそう、さすが大親友♪」
「もしかして、こっちの世界のすばるちゃんなのかな‥‥」
「まぁ、ちょっとした関係者かな。とにかく、お姉さん達に任せて! あたし達が光流ちゃん達をしっかりと元の世界に戻してあげるよ!」
「そうですよ、光流さん。安心して、私達に頼ってくださいね」
「あれ? こっちはお母さん‥‥?」
 そあらに同調するように、綾佳も優しい声でヒカルに微笑みかける。そんな二人の声に、ヒカルはなんとなく安心感を感じたようであった。
「さて、それではそろそろ行きましょう。ここは、キメラの生息する危険な場所ですが、あなたは私達が守りますから」
「は、はい、お願いします!」
 一通り話が済んだあと、リネットが一行に声を掛ける。巨漢のリネットに優しく声をかけられ、ヒカルは素直に頭を下げて協力を頼むのだった。

「魔法少女って本当にいるんですね。少し驚いてしまいましたよ」
「ね、ねぇカトリ‥‥さっきから気になってたんだけどさ」
「う、うん、僕も気になることがあるんだ‥‥」
 少しして、一行がヒカルを連れて目的地へと向かう途中。シメイがヒカル達に話しかけていると、なにやらヒカルとカトリは小さな声でひそひそと話を始める。
「でも不思議ですね‥‥貴女達とは初めて会ったはずなのに、何故かそんな気がしません」
「水鏡さんの声って、どっかで聞いた事あるよね‥‥」
「やっぱり? 僕もそう思ってたんだ‥‥。なんだか、あの声を聞くと背筋が寒くなるというか‥‥」
「どうかしましたか?」
「い、いえ! なんでもないです!!」
「?」
 そんな、自分をチラチラと見ながら話す二人に、シメイはよく分からない表情で首を傾げるのだった。

「うん、こっちの方角に、強力な魔法磁場を感じるよ」
 カトリの先導で、ヒカル達が帰るために必要な魔法磁場の強い場所へと向かっていた一行。ヒカルを護衛しながら廃墟を進んでいると。
「ヒカルちゃん危ない!」
「ひゃあ!?」
 突然、空から巨大なキメラが落ちてくる。ズシーンと音を立てて着地するそれに、アルディーヌがヒカルを庇うように押し倒した。一歩間違えれば、キメラに押しつぶされていたかもしれない。周囲を守っていた仲間達も、キメラを上手く避け臨戦態勢に入った。
「これは‥‥ビッグスパイダー!」
 キメラの姿を見て、リネットが声をあげる。そのキメラは、全長5メートルほどの巨大な蜘蛛、今回の依頼の本当の目的であった。
「ヒカルちゃん! 大丈夫ですか?」
「うん、何とかね‥‥。でも、この蜘蛛、でかすぎるよ‥‥。こんなのがこの世界にはうじゃうじゃいるの?」
 そあらに助け起こされるヒカルは、キメラの姿に顔を顰める。
「まさか、こんなところで、目的のキメラと遭遇するとは‥‥。ですが、邪魔をしないでください。私達は、ヒカルさん達を無事元の世界へ送り届けなければならないのです」
 苦笑を浮かべるシメイは、弓を構え覚醒した。鷹のように鋭くなった瞳が金色に染まり、
その身から銀色のオーラが浮かび上がる。
「さ、ヒカルちゃんは下がって」
「私だって戦える、私もやるよ!」
「光流ちゃん! そんなコトしちゃ駄目でしょ!」
「ひゃ!?」
「この世界は、光流ちゃんの世界とは違うの。魔法が使えるからって過信しちゃダメなのよ? それに、光流ちゃんが無茶をして怪我でもしたら、悲しいわ」
「う、うん、ごめんなさい‥‥」
 そあらの言葉に、ヒカルが共に戦おうとステッキを構える。しかし、綾佳がまるで母親のような口調でヒカルをたしなめた。ヒカルはその言葉に、反省したように頷く。と、そこへ、三人の少女がキメラの前に立ちふさがった。
「ヒカルちゃんは私たちが守っちゃうよ〜! 純白の白衣、たなびかせてオトメホワイト見参!!」
「無芸大食、オトメブラック参上!」
「眩い太陽の情熱、オトメオレンジ推参!! 我ら天下無敵の純情美少女『乙女組』!」
 アルディーヌ、有栖、茜の三人は、人類に危機が迫ると、隠された力が覚醒し純情美少女戦隊(?)『乙女組』となるのだ。戦え乙女組! 地球の平和は君達の手にかかっている!! ‥‥もちろん嘘である。
「ちょっとそれは‥‥恥ずかしいよう‥‥」
「え〜? でも、有栖はノリノリやで?」
「一度やってみたかったんです〜」
 決めゼリフと共にポーズを取る茜に、アルディーヌが顔を赤らめてツッコミをいれた。その様子に茜は、超機械でスパーク演出までしている有栖を見る。有栖は気にした様子もなく、満足そうにニヘラ〜っと微笑んだ。
「‥‥どこの世界も一緒なんだね」
「そ、そうだね‥‥」
 茜達の様子に、驚いたような呆れたような、それでいてなんとなく納得しているような表情を浮かべるヒカルとカトリ。
「バカなことやってないで、さっさと倒すわよ」
 覚醒し、髪が水色になったリリアは、性格もクールなものに変え、剣を構えてキメラへと突っ込む。先ほどまでの、運動音痴っぷりが嘘のようだ。
「前衛は柊さん、戎橋さん、私で。夕波さんはヒカルさんの護衛を。他の皆さんは、後方からの援護をお願いします」
 リネットが前にでながら指示を出す。一行はそれに従い、各自が得意な武器で巨大蜘蛛へと攻撃を行なう。
「ヒカルさんには、指一本触れさせませんよ」
「どんなことがあっても、絶対に護るからねヒカルちゃん!」
 シメイとそあらが、それぞれ弓と銃で牽制を行なう。攻撃が巨大蜘蛛の足に当たり、蜘蛛の動きを止めた。
「武器‥‥強化‥‥」
 覚醒し無表情になった有栖が、前衛の武器を練成強化する。それぞれの武器が、淡い光に包まれた。
「みんな、ビッグスパイダーは粘着糸に気をつけなさい。当たれば、身動きが取れなくなるわ」
「了解や! おっとと、アルディーヌ、ナイスアドバイス!」
 冷徹なサイエンティスト然としたアルディーヌが、仲間に忠告を出す。茜は、蜘蛛の吐き出す粘着糸を回避しながら、忠告に感謝する。
「ふぁ〜‥‥みんな変身してる、凄いなぁ」
「皆、光流ちゃんを護るのに一生懸命なのよ」
 その戦いの様子を見ながら、ヒカルは感心したように呟いた。ヒカルも神様決定戦を戦い抜いてきたが、やはり能力者の戦いは驚かされるようだ。そんなヒカルに声をかけながら、綾佳は蜘蛛の動きに注意しつつヒカルを庇う。
「急所はここですね!」
「遅い! ここだ!」
 リネットが関節の継ぎ目を拳で叩き折り、リリアが両断剣で赤く光った刀で切り裂く。
「我が道に敵なし!」
 そして最後に、茜が蜘蛛の頭部へと剣を突き刺し、ついに巨大蜘蛛は力尽きる。茜がノリノリでキメポーズをきめた。

「ここだよヒカル。この場所なら、異世界移動が可能のはずだ」
 キメラを倒し、廃墟を抜けた一行は、小さな丘に辿りついた。カトリが言うには、ここが魔法磁場の強い場所らしい。
「ようやくついた〜。慣れない場所で緊張して疲れちゃったよ‥‥」
「ヒカルちゃん、お疲れ様です」
「そちらこそ、お疲れ様です、そあらさん」
「私とヒカルちゃんの仲じゃないですか〜、ソアラでいいですよ♪」
「あはは、うん、ありがとうソアラ」
 がっくりとくたびれたように肩を落とすヒカルに、そあらが声をかける。そあらの屈託のない様子に、ヒカルもニッコリと微笑んだ。
「光流ちゃん、気をつけて帰ってね」
「うん、綾佳さんもありがとう。綾佳さんも、ソアラも、茜ちゃんも、私の大切な人達にそっくりなんだ。だから、この世界にわけもわからず放り出されても、皆がいて安心した。本当にありがとうね!」
「そか〜、そう言ってくれると嬉しいな。せやけど、本当にちゃんと帰れるん?」
「うん、大丈夫。ここの磁場なら、ヒカルでもちゃんと元の世界に帰れるよ」
 微笑む綾佳に、お礼を言うヒカル。そんなヒカルの言葉に、茜も嬉しそうに微笑んだ。茜の問いには、カトリが太鼓判を押す。
「あー、どんな仕組みなのかもっとカトリを研究したかったよぅ!」
「そうですね〜、カトリさんだけ置いていきませんか?」
「そ、それだけは勘弁‥‥」
「ごめんね〜、カトリいないと帰れないから」
 アルディーヌと有栖が、獲物を見つめる獣のように、カトリを見る。カトリは、ぶるぶると首を横に振ってヒカルの背中に隠れた。ヒカルはその様子に、苦笑しながら答える。
「お二人とも、向こうの世界に戻ってもお元気で。パートナーは大切な親友であり、家族ですよ‥‥カトリさん」
「二人とも、またいつか会いましょうね」
「ええ、わかってます。水鏡さんもハウンドさんも色々とありがとうございました」
「あたしにはお礼はないっすか〜?」
「リリアもありがと! 最後まで信じてくれなかったけどね?」
 シメイとリネットに礼を述べるカトリ。少し拗ねた様子のリリアにも、ヒカルが元気なお礼を返す。
「それじゃ、そろそろ行こうかヒカル」
「うん‥‥。エターナ・ライティア・リポート‥‥それじゃ皆、バイバイ!」
 そして、一通り挨拶を済ませたヒカル達は、呪文を唱え光の中へと消えていった。最後に、元気な別れを残して。
「いっちゃいましたね‥‥」
「異世界から来た魔法少女って本当だったんすね。驚いたっす‥‥」
「他の世界が本当に存在するんですね。自分も他の世界を見ることが出来たらいいんですけれどね」
 少し寂しそうに見送るそあら。消えていったヒカルに、驚きで放心するリリア。有栖は、いつか自分も他の世界へ行く機械を作れたらなと思うのだった。
「さぁ、仕事も終わりました。私達も帰りましょうか」
 しばらく、ヒカル達が消えていった場所を眺めていた一行は、リネットの言葉に頷き、自分達のあるべき場所へと帰っていくのだった。