タイトル:捕縛 謎の逃亡者マスター:緑野まりも

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/04/26 17:24

●オープニング本文


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「マサキ・ジョーンズ、二十歳。有名大学で機械工学を学んでいる学生。半年前にジョーンズ博士と一緒に行方不明‥‥か。そして、デューイ・ジョーンズ、22歳。機械工学の博士号を持ち、父親と同じくKV開発にたずさわっていた。彼らの母は、バグアの初期の侵攻の際に他界か」
 資料を読みながら、男は小さくため息をついた。メルス・メス社でのKV強奪後、マサキの行方はようとして分からず、それを予想させる資料も無かった。
「ジョーンズ博士が行方不明になった原因はバグアによるものだ。ならば彼の超人的な能力も、おそらくバグアによるものだろう。だが、マサキはバグアに対し憎悪を抱いている。これは、マサキがバグアに一度捕まるが、どのようにしてか脱出してきたということか。では、ジョーンズ博士とデューイはまだバグアのもとにいるということか?」
 そう考えて顔を顰める男。バグアは、占領した地域の人間を洗脳しているという。おそらく、マサキ以外の家族はバグアによって操られているのだろう。
「だが、マサキの言葉、『あれは兄でも父でもない』。‥‥洗脳されているだけなら、なぜそこまで憎む。何か別の理由でもあるのか? ん?」
 ふと、男はジョーンズ博士の資料に、見落としがあったのに気づく。ジョーンズ博士の子は、二人ではなく三人。二人の息子以外に、娘が一人いるようであった。
「アイリーン・ジョーンズ‥‥歳は16歳か。マサキ達にとっては妹だな。やはり、ジョーンズ博士の事件で共に行方不明。それ以外には詳しい資料は無しか。どうやら、随分と仲の良かった兄妹だったようだが、おそらく彼女もバグアに‥‥」
 一枚の家族写真に写る、仲睦まじい兄弟達の姿。しかしその関係は、すでにバグアによって引き裂かれている。そして、それは彼らに限ったことではなく、世界中の人間の多くがバグアによって家族を失っているのだ。
「マサキ・ジョーンズ。今お前はどこでなにを考えている。KVを奪い、どこへ行こうというのだ‥‥」

「はぁ‥‥はぁ‥‥。急がなくては‥‥。このままでは、俺はやつらを倒すチャンスを失う‥‥」
 苦しそうに息をしながら、マサキはKVの隠し場所へと向かっていた。南米でのKV奪取から数日、今は再び北米に戻ってきている。
「たった一機のKVで、やつらに立ち向かおうとするのは無謀だと分かっているさ。だが、俺がこの手で、父と兄、そしてアイの仇を討たなければ‥‥」
 グッと拳を握り締める。爪が掌に食い込み、血が流れた。その痛みを噛み締めるように歯を食いしばり、マサキは虚空を睨みつける。
「整備は終わった。親父にやらされた仕事の経験がこんなところで役に立つとはな‥‥。いくつか怪しい部分もあるが、贅沢は言えないぜ」
 コックピットに乗り込み、KVを起動させるマサキ。北米まで飛んだあと、ろくなメンテができなかったことに苦笑しつつ、マサキは空へと飛び立つ。
「持ってくれよ俺の身体‥‥。せめてあの場所へたどり着くまで‥‥」

「なに! メルス・メス社で強奪されたKVが現れただと! それでどこで‥‥北米南部‥‥やはり戻ってきていたのか。至急捕獲に向かわせろ! なに! この間の大規模作戦で余剰兵力がない!? だったら傭兵を使え! KVの使用は許可を取っておく!」
 再び現れたマサキに、男はすぐに捕獲の指示を出す。
「マサキはエミタ能力者ではない。能力者仕様のKVでは思うように動かせないはずだ。これは、彼を捕まえるチャンスかもしれないぞ。だがしかし、彼の向かっている方角は、バグアの勢力圏だ。このままでは、おそらくバグアによって撃墜、または捕縛される‥‥。それだけはなんとしてでも阻止しなくては。彼の命よりも、彼の持っているバグアの情報が失われるのはまずい」
 おそらく、マサキはバグアの内情を多少なりとも知っているであろう。彼の情報は、人類がバグアに対抗するための貴重なものになるかもしれないのだ。
「ともかく、今は能力者達に任せるしかないな‥‥」

・依頼内容
 マサキ・ジョーンズの捕縛
・概要
 以前にマサキによってメルス・メス社より強奪されたKVを発見。至急、これを捕縛せよ。
 現在、目標KVはバグア勢力圏へと向かっている模様。バグアの部隊と交戦する可能性が高い。場合によっては、目標KVを救援、バグアの部隊を撃破せよ。
 もし、場合により作戦が不可能(目標KVの撃墜など)となった場合、マサキの生死の確認で依頼を完了とする。
 この作戦は、各自支給されているKVを使用して行なうこと。

●参加者一覧

藤田あやこ(ga0204
21歳・♀・ST
ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
霞澄 セラフィエル(ga0495
17歳・♀・JG
ハルカ(ga0640
19歳・♀・PN
国谷 真彼(ga2331
34歳・♂・ST
篠崎 公司(ga2413
36歳・♂・JG
南雲 莞爾(ga4272
18歳・♂・GP
南部 祐希(ga4390
28歳・♀・SF

●リプレイ本文

「ちっ、追っ手か‥‥予想以上に早かったな」
 バグアの勢力圏へと目指して飛ぶマサキのKV。そこに、後方からKVの反応があり、マサキは舌打ちした。今乗っているKVは、工場から強奪してきたものだ。犯罪者である自分を捕らえるために、彼らは来たのだろうとマサキは考えた。
「マサキ機発見しました、まだバグアとは遭遇していないようですね」
「良かった‥‥」
 いち早くマサキを発見した霞澄 セラフィエル(ga0495)の報告に、藤田あやこ(ga0204)がホッと胸を撫で下ろす。
「マサキ君、聞こえますか。このままいくとバグア勢力圏です。敵が来れば無事では済まない。戻ってください!」
 国谷 真彼(ga2331)がマサキへと説得の通信を送る。自分達は敵ではない、協力しようと投げかける言葉、マサキに届くのだろうか。
「俺はこれからヤツラを倒すためにバグアの基地に向かう。俺の邪魔をするな」
「危険すぎます。南米からここまでの移動、燃料も残り少ないはずです。運良く目的の場所へたどり着いても、戻ってくることはできません。一度、我々と合流し、力を蓄えてはどうですか?」
「俺がどうなろうとお前達には関係の無いことだろう!」
「関係無いなんてこと無い!」
「!?」
「好きな人を失う悲しみ、あなたなら分かるはずよ! 生き延びて‥‥好きになってしまったの‥‥」
 南部 祐希(ga4390)の説得にも耳を貸さないマサキ。そこへ、あやこが叫ぶような声をあげてマサキに想いを伝える。
「‥‥誰だお前?」
「‥‥え? あ、あの、藤田あやこ。直接会ったことはないと思うけれど、あなたの写真を見て一目惚れしてしまったの‥‥」
「バカかお前は?」
「バッ!?」
「相手のことをよく知りもしないで好きだとか、馬鹿げているだろう」
「そ、それは‥‥。でも、私も家族を目の前で殺されている。あなたの気持ちを少しは理解できると思うの‥‥」
 初対面のあやこに、厳しい言葉をぶつけるマサキ。あやこは戸惑いながらも、自分の過去を話して説得を続ける。
「理解? ‥‥家族を失うだけならまだよかった。だがな、その家族が別人のようになり、愛する者を奪ったのならどうする!」
 マサキの悲痛な叫び。いままで、ここまで感情を吐露したことはなかった。もしかすると、これまでの疲労と苦痛に、情緒が不安定になっているのかもしれない。
「で、でも‥‥!」
「あやめさん‥‥理解や共感はできても共有はできない。それが復讐というものです」
 まだ何かを言おうとするあやめに、真彼が声を掛ける。だが、続けてマサキにも言葉をぶつける。
「それでも言わせていただきます。君は強い。確かに一人で復讐を果たせるかも知れない。けれど‥‥。復讐を達成したいのではないのですか。誰の手も借りないというのは、綺麗事に過ぎません」
「一撃入れればそれで満足ですか? そうではないでしょう。ただ我武者羅に突貫して何になると言うのです! そう言うのを”匹夫の勇”というのですよ。”匹夫の勇”とは思慮分別なく、血気にはやるだけのつまらない勇気のことです。勝ちたいのなら、自分達に協力しなさい。今は生きる事を優先させなさい」
「思い出して欲しいのは、人は協力しあう事でより良い結果を導く事が出来ると言う事です。貴方にも何か理由があるのでしょう、ですが時間が無いからこそ協力し合う事は出来ませんか?」
「っ!! ‥‥お前達の言いたいことはわかる。だがな、俺はヤツラを倒さなければ、前にも後ろにも進めないんだ」
 そして篠崎 公司(ga2413)とセラフィエルの説得。一人で向かうことは無謀だということ、そして協力すれば可能だということ、そのために自分達が手を差し伸べていることを伝えた。だが、マサキはその言葉を振り切るように機体を加速させる。
「ええい! 説得などというまどろっこしいことはあとだ〜! KVの上を押さえて、地上に降ろして、手足を壊してしまえば何も出来まい〜」
「たしかに、説得はあとです。敵機接近。――マサキ君、せめて今この場だけは一緒に戦わせてください。どうか、回線は開いたままで」
「‥‥‥」
 業を煮やしたドクター・ウェスト(ga0241)が、マサキへと攻撃を行なおうとするが。そこへ、真彼が前方からのバグアの反応を報告。一行は臨戦態勢に入る。
「予定通り、二班に分かれます。C班は敵の殲滅、B班はA班がくるまでマサキ機の護衛、国谷さんもA班が来るまではB班に入ってください」
 祐希の指示の元、一行はフォーメーションを組む。そして、先行するマサキがバグアの部隊と交戦を始めた。

「大変! もう始まってる! 急ごう南雲くん!」
「こちらA班、遅くなった。今から情報支援を行なう」
 速度の差で、遅れて到着したハルカ(ga0640)と南雲 莞爾(ga4272)。二人は、すでに戦闘の始まっている様子に、急いで救援へと向かう。莞爾の機体『岩龍』は、ヘルメットワームからのジャミングを中和し、周囲の機体に本来の力を発揮させる。彼らの到着により、戦いは有利に進むはずだった。
「でも、嫌な予感がする。お願いマサキさん、早まらないで」
 しかし、ハルカは表情を硬くしながら、噴射炎を輝かせながら戦う機体達を見つめるのだった。

「‥‥? マサキ君の動きが鈍い?」
「AIによる操縦補助を受けてない彼には、KVの強力な負荷には耐えられても、我々のような思い描いた通りの動きをとることはできないのでしょう」
 マサキの戦いの様子に違和感を感じた真彼に、公司が説明をする。元々エミタ能力者に合わせて作られたKVは、さすがの強化人間といえど能力者のように使いこなすことはできないのだろう。
「ライフルによる攻撃を開始します」
「はい、おまかせください」
 覚醒した祐希がマサキを援護するようにスナイパーライフルによる射撃を開始する。それにあわせ、セラフィエルも射撃を行なった。二人の射撃が、敵のヘルメットワームに命中、それに対し一部の敵が祐希達のほうへと向かってくる。
「けひゃひゃ、我が輩のG放電管を食らえ〜!」
 その相手に対し、ウェストが特殊な兵器での攻撃を行なった。弾丸のように射出されたそれは、敵に命中する直前にその周囲に放電現象を起こし、回避の困難な攻撃を行なう。未来科学研究所が開発した、放電装置の試作型であった。攻撃を受けた敵は、回避できずに放電フィールドに突っ込み、ダメージを受け操作困難になった所を祐希とセラフィエルの追撃で落とされる。
「くっ、俺の邪魔をするな!」
 奮闘するマサキ、しかし多勢に無勢の状況に、どうしても防戦一方になってしまう。
「彼はやらせませんよ」
「彼に一目惚れしたのです。落とさせません」
 そこへ、公司がマサキへと向かう敵にミサイルを放つ。誘導されたミサイルが確実に命中、マサキへの攻撃を鈍らせた。そしてあやこがガトリングを撃ちながら接近し、すり抜けざまにレーザーを撃ち込む。
「‥‥礼は言わないぞ」
「礼なんていりません、今は共に戦う仲間なのですから」
 援護を受け、マサキはついつい言葉を口にしてしまう。それに、真彼がライフルで敵を牽制しながら笑みを浮かべて答えた。
「ですが、いくらなんでも無茶だということは分かったはずです。今からでも遅くありません、我々と共に戻りましょう。君の持つ強さと情報を質にすれば、UPCの協力させられるかも知れない」
「っ! だが、俺にはもう時間が‥‥」
「時間がない、とはどういうことですか。何故それほど焦っているのです」
「それは‥‥」
 再び真彼の説得に、マサキは表情を強張らせて答える。そこへ‥‥。
「そうだ! 不完全なお前には、もう時間は無い!」
「貴様は!!」
 突然マサキに入る通信、それは彼のもっとも憎むべき相手からだった。

「改造が不完全なまま逃げ出したお前は、力を使い続ければ力の負荷に耐え切れず、力どころかその命さえ失うことになる」
 その声は、マサキの兄デューイのものであった。デューイはマサキを挑発するように、嫌味な口調で語りかけた。
「貴様〜〜! ならば、その前にお前を倒してやる!」
「無理だ。父の設計したKVを持ち出したようだが、お前には使いこなせんよ。宝の持ち腐れだな」
「くっ!」
 ヘルメットワームの一機が高速でマサキに接近し、素早い動きで翻弄する。どうやら、それがデューイの機体のようであった。KVを使いこなせないマサキと、恐らく他の機体より性能が向上しているデューイ。その力の差は歴然であった。
「どうした、その程度では当たらんぞ」
「くそっ!」
 果敢に攻撃を行なうマサキだが、デューイにはかすりもせず。逆に反撃を受けて、機体が悲鳴をあげる。
「援護します」
「邪魔な人間どもだ」
 そこへ、救援にきたハルカがライフルによって牽制を行なう。デューイはその攻撃を避け、マサキから少し離れた。
「あ、あの‥‥、もう覚えてないかも知れないですけど‥‥、私は以前あなたに助けてもらって。そのお礼を言いたくて‥‥ありがとうございます。ですから、あなたには死んで欲しくありません、ここは一旦退きましょう!」
「あんたにも敵との力の差がわかっただろう。まだ諦めていないのなら、志半ばで死ぬつもりがないなら‥‥俺達を頼ればいい。俺達に出来る事で、支援はしてやる」
「俺は‥‥」
 機体の損傷が激しいマサキに、ハルカと莞爾は一旦退くように説得を行なう。一瞬、迷うような表情を見せるマサキ。
「マサキ‥‥アイリーンは生きているぞ、この言葉の意味がわかるな?」
「!!」
 そこへ、デューイの言葉。マサキは驚きに表情を強張らせ、デューイを睨みつける。
「兄の下に来い。そうすれば、妹にも会えるし、その弱った身体を修復してやろう」
「‥‥‥」
「そんな話を信じちゃだめよ!」
「そうです! 彼らがあなたを無事に扱うはずありません!」
 デューイの誘いに無言のマサキ。あやことハルカは、マサキを引き止めようと声を掛ける。
「どう考えても、君を捕獲するための嘘だよ。憎んでいる相手の話を信用するのかね〜?」
「嘘ではない。アイリーンは利用価値も薄いと判断され、一般人と共に保護している。それに、私の妹でもある、酷い扱いをするはずがない」
「弟にこのような仕打ちをした者の言うことかね〜?」
「‥‥‥」
 ウェストの言葉に対し、デューイはさきほどとはうって変わって優しい声で答える。マサキは迷うように表情を顰めた。そして、マサキはデューイの方へと‥‥。
「己が総てを為そうとした果てがこれ、か‥‥何を為そうとしているかは知らないが、あんたはこの程度の逆境や壁で諦めるつもりか?」
「復讐を志す強化人間は貴方だけでない‥‥。それでも行くというのなら、撃ってでも止めますよ!」
「すまない‥‥。あんた達には悪いと思う、だが‥‥」
 責めるわけでもなく、ただ淡々とした口調で問う莞爾。あやこは強い口調で言いながら、威嚇するようにマサキに照準を合わせる。そんな二人の言葉に、マサキは申し訳なさそうに答えながらも、止まることはない。
「そうだ、それでいいマサキ。父もお前の帰りを待っているぞ。また家族で暮らそうじゃないか」
「デューイ‥‥」
 デューイの言葉に、マサキはその名を呟く。だがその瞳には、諦めも敗北も映っていなかった。
「その家族に、母さんは含まれないのか?」
「なに?」
「お前達バグアに命を奪われた俺の母は含まれないのかと聞いている!」
「お前! 服従したのではないのか!?」
 突然加速し、デューイへと攻撃するマサキ。意表をつかれ驚くデューイに、マサキは渾身の一撃を放つ。
「くっ‥‥」
「愚かだな! この機体がその程度で落ちるはずが無いだろう!」
 しかしその一撃も、デューイを落とすことはできなかった。逆に反撃を受けたマサキは、飛行不可能となり墜落していく。
「マサキ!!」
「藤田さん、まだ危険です!」
「でも‥‥っ、わかったわ‥‥」
 墜落するマサキの姿に、あやこは交戦を止めて救助へと向かおうとする。しかし、敵はそう簡単に彼女を行かせてはくれない。公司の制止に、あやこはしかたなく焦る気持ちを抑えて、迎撃に専念する。
「せめて死体だけでも回収せねば」
「不器用だが、あいつの執念を無駄にはできない」
「あんたを行かせるわけにはいかない!」
 落ちたマサキへと向かおうとするデューイ。それに莞爾とハルカが攻撃を仕掛ける。二人のスナイパーライフルが命中し、デューイにダメージを与える。
「ちっ、邪魔なやつらだ! しかたない、ここは退くぞ」
 そして、セラフィエルたちにより部隊の半数がやられ、自らもダメージを受けたデューイ達は、撤退を開始した。
「追撃は止めましょう。マサキ機の安否を確かめる方が先です」
 敵の撤退を確認した一行は、祐希の指示に従い上空を警戒しながらマサキ機が墜落した場所へと向かう。緊急脱出した様子は見られなかった、たぶんマサキは機体の場所に居るはずだ。

 ほどなくして、森の不時着した様子のマサキ機を発見する一行。奇跡的に機体の原形は残っていたが、損傷は激しく、再び飛ぶことはできないだろうという状況だった。
「マサキさん、大丈夫ですか!」
 急いでコックピットへと駆け寄るあやこ。
「‥‥居ない。いったいどこへ‥‥?」
 しかし、そこにマサキの姿は無かった。恐らく彼らが来る前に、機体から脱出したのだろうが、それを見つけることは出来なかった。
「逃げたということは、まだ生きているということでしょう」
「ただ、彼の身体があとどれほど持つか‥‥」
 公司の言葉に頷きつつ、真彼が心配するように呟く。
「‥‥恐らくまたあなたを捕縛する依頼が出るでしょう。我々が行くまで、死なないように」
 祐希はすでに姿を消した者を見つめるように、遠くを眺めながら呟くのだった。