タイトル:奪取 謎の逃亡者マスター:緑野まりも

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/04/09 19:43

●オープニング本文


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 荒野で刃を交える二つの黒い影。黒髪の男と、金髪の男の戦い。尋常でない力を持った二人は、幾度となく切り結び、その力は互角。
「っ! 同じ改造を受けた者同士、やはり力は互角か! いいだろう、ここは退いてやる。だが、次はかならずお前を捕まえるぞマサキ!」
「待て!!」
 だが、気迫で黒髪の男が勝っていた。不利と悟った金髪の男が、捨てゼリフを残しその場から逃げる。追おうとする黒髪の男だが、こちらも力の限界のようで、追いつくことが出来ない。
「ふふ、人間を頼ろうとしても無駄だぞマサキ! 人間は危険な力を持つ者を受け入れない! お前はそのまま孤独な戦いを続け、そして力尽きるのだ!」
「待て! 待てデューイ!!」
 黒髪の男は、怒りの声で金髪の男の名を呼ぶが、金髪の男は姿を消してしまうのだった。黒髪の男は、悔しそうに地面に拳を打ち付け呟いた。
「くそっ! 俺は誰の力も借りない‥‥父も兄も、妹も‥‥この手で必ず‥‥。だが、今のままではバグアどころかヤツさえ倒せない‥‥もっと強い力を。そうだ! 親父が開発したKVがあれば!」

「謎の男の名は、マサキ。そして、もう一人のブロンドの男か」
 前回の依頼の報告を聞いたUPC士官の男は、考え込むように呟いた。
「マサキ‥‥最近どこかで聞いた名だな‥‥。そうだ、たしかこの間のニュースで、ジョーンズ博士のご子息の一人がマサキではなかったか?」
 そう口にして、男はすぐに資料を集めるよう命じる。ジョーンズ博士とは、優秀な科学者で主にKVの開発を行なっていた人物である。しかし、数ヶ月前にその行方が分からなくなり、失踪はバグアの仕業であるとされていた。
「間違いない、ジョーンズ博士の息子マサキ・ジョーンズ。そして、その兄のデューイ・ジョーンズ。兄は父と同じ金髪、弟は母譲りの黒髪‥‥」
 報告にあった身体的特徴も、ジョーンズ兄弟と一致した。男は資料を確認しながら、納得したように頷く。
「だがしかし、彼らに一体何が‥‥。そしてジョーンズ博士は今どこに‥‥」
 それから数日して、一つの情報がもたらされた。
「なに? マサキ・ジョーンズらしき男が南米に向かったと? だが、何故ここで南米に? しかも、姿を晒す危険を冒してまで‥‥」
 マサキが南米に向かったとの一報。だが、彼がわざわざ南米に向かう理由とは、考える男に一つだけ心当たりがあった。
「そうだ、たしか以前にドローム社でジョーンズ博士が開発を行なっていた試作KVが、競合に負けて破棄されそうになったとき、南米のメルス・メス社が買い取ったという話があったな。あの者が、本当にジョーンズ博士の息子でバグアに復讐を考えているのならば、バグアと戦うために父親の開発したKVを狙うということも考えられるか‥‥?」
 そこまで思い至った男は、すぐに電話を取り指示を出した。
「至急、メルス・メス社に連絡を取り、警戒を強めるよう要請しろ。それと、ULTから傭兵を派遣するよう依頼するように。もし、マサキ・ジョーンズが現れたら、できるだけ生きて捕縛しろ。バグアのなにか有益な情報を持っているかもしれん」

・依頼内容
 南米メルス・メス社の警備
・概要
 南米にあるメガコーポ、メルス・メス社の工場を警備。試作KVの奪取を阻止せよ。
 犯行を行なうと予想されるのは、ジョーンズ博士の息子マサキ・ジョーンズ。マサキは、エミタ能力者以上の力を持つとされているので、注意が必要。
 この依頼は、メルス・メス社からの依頼となっており、警備に必要な協力は行なわれる。ただし、工場に損害を与えるような罠の設置などは認められない。
 マサキは、極力生きたまま捕縛し、UPCに引き渡すこと。

●参加者一覧

ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
篠崎 公司(ga2413
36歳・♂・JG
南雲 莞爾(ga4272
18歳・♂・GP
クラウド・ストライフ(ga4846
20歳・♂・FT
カルマ・シュタット(ga6302
24歳・♂・AA
八百 禮(ga8188
29歳・♂・DF
優(ga8480
23歳・♀・DF
佐伽羅 黎紀(ga8601
27歳・♀・AA

●リプレイ本文

 依頼を受け、メルス・メス社の工場へと向かった一行は、警備の準備を整えマサキが現れるのを待った。それから数日が経った深夜。
「本当にここに現れるのかしら‥‥」
 工場周辺の見張りに立った優(ga8480)がポツリと呟く。依頼を受け、警備に付いたのが数日前、それから今日まで何事も無く、いい加減本当にマサキが現れるのか疑問に思い始めていた。犯行予告をされたわけでもなく、少ない情報から導き出した予想なので、間違っていても不思議ではない。
「でも、気は引き締めていかないと。初めての依頼なのだから、ちゃんと成功させたい」
 それでも、優は気を抜かずに見張りを続けていた。能力者としての初めての依頼。必ず成功させると気を張っているのだろう。
 深夜の工場は暗く、深い静けさに包まれている。KVの格納庫がある工場では人が残っている気配は無かった。もちろん、仲間達はそこで寝ずの番を行なっているだろうが。
「ここ数日で随分慣れたけど、深夜の静か過ぎる闇は気持ちのいいものではないわね‥‥。色々と思い出してしまって‥‥」
 そう独り言つのは、寂しさを紛らわせるためだろうか。家族を失った過去、バグアを憎悪する自分、そして腕に巻いたプロミスリング‥‥。
「大丈夫‥‥お姉ちゃんは大丈夫よ」
 そう呟いた優は、再び周囲に気を張り巡らし不審な気配が無いか見張りを続けた。深夜誰もいない時間は、侵入者にとって侵入する格好のタイミングなのだから、少しも気を抜くことは出来ない。ここ数日ですでに侵入されやすい場所の目安は付いている。優はその周辺を重点的に見張った。
「誰!?」
 しばらく経って、彼女は一瞬何かの気配を感じ声をあげた。しかし、すぐにその気配は感じられなくなってしまう。
「気のせい‥‥? でも一応、中で警備している人達に連絡しておきましょう」
 気のせいだったのかもしれない、暗い闇の中でありもしない気配を感じてしまうことは良くあることだ。しかし優は、それでもその気配が気になったのか、支給された無線で、仲間達に警戒を強めるように連絡をするのだった。

「こちら篠崎、目標を発見した」
 それから数分後、警備室で監視を行なっていた篠崎 公司(ga2413)が、工場内へと侵入した不審者を発見する。モニターに映った黒いライダースーツ姿の男、マサキ・ジョーンズで間違いなかった。
「目標は予想通りのルートを通って格納庫へと向かっているようですよ。しかし、このスピードは尋常ではありませんね。最初から、見つかることを無視しているようです」
 マサキの侵入ルートを確認しながら、仲間達に連絡する公司。それは、事前に彼らが予想し対策を立てたルートだったが、マサキの侵入速度は予想以上のものだった。どうやら、見つかることの警戒を無視して、邪魔をされる前に一気にKVを奪い取る作戦のようだ。
「それでも、対策は織り込み済みです。そのルートを選んだ時点で、すでにトラップに掛かっているんですよ」
 公司はそう呟くと、再び無線を取った。
「南雲さん、目標を罠へと追い立ててください」

「了解した」
 公司からの無線を受けた南雲 莞爾(ga4272)は、待機地点からマサキを追いかけるように走り出した。工場内は非常灯の薄い明かりだけの、ほとんど闇に包まれた状態。だが、莞爾はそんな暗闇を気にすることも無く走る。彼にとってその闇は、明るい光よりも慣れ親しんだものだった。
「見つけた! 待て!」
 公司から逐一マサキの場所の報告を受け、ついに莞爾は闇を疾走するマサキの姿を発見する。マサキは、一瞬だけ莞爾の姿を確認すると、すぐに通路の先へと走り出した。莞爾はわざと大きな声をあげ、逃げるマサキを追いかける。
「甘く見るなよ、猟犬はあんたよりも速くその喉笛に牙を立てられるのさ」
 強化した脚力によりマサキを追いかける莞爾。だが、マサキとの距離はそうそう縮まらない。だが、莞爾は頃合を見計らって瞬天速を使い、目にも留まらぬ速さで加速する。一気にマサキとの距離を縮めた莞爾は、そのままの勢いで刀を抜き放った。
「‥‥避けたか。だが力の優劣で総てが決まるのなら、餓鬼の喧嘩と変わり映えはしない。要は戦い方の使いようだ」
「!!」
 莞爾の神速の一撃さえも避けたマサキ。だが、莞爾はそれさえも狙い通りのように、表情を変えずに言い放つ。その矢先、莞爾とマサキの間に突然シャッターが降りる。マサキの後ろの通路にもシャッターが降り、マサキは閉じ込められる形となった。それと同時に、工場内に明かりがつき。
「けひゃひゃひゃ! 我が輩の狙い通り!!」
 けたたましい笑い声が響き渡った。

 数日前。
「ハロゲンガスの消火装置が無い!?」
 工場の防災装置を確認していた公司は、警備主任の話に顔を顰めた。元々計画では、マサキを閉じ込めた後、ハロゲンガスの消火装置を使って窒息させ無力化するはずであったが、そのハロゲンガス消火装置が工場には設置されていなかったのだ。
「そうだ。電子機材の多い研究棟の方ならばともかく、工場にハロゲンガスを用いた消火装置は設置されていない」
「ならば、その研究棟の方へ誘導して」
「馬鹿を言うな。研究棟は機密が多く関係者以外立ち入り禁止だ、そもそも君達の立ち入りも許可されていない。だいたい、工場の設備だけでは警備が難しいから、君達を雇い入れたのだろう。君達の力でなんとかしたまえ」
「しかし‥‥」
「けひゃひゃひゃ! ならば、工場内の設備で何とかすればよいのだろう!」
 公司が食い下がろうとしたところへ、けたたましい笑いと共にドクター・ウェスト(ga0241)が自信満々の声で言い放つ。
「通路に防火シャッターぐらいはあるのだろう?」
「もちろんだ。といっても、それほど厚い隔壁ではないぞ。能力者の力ならば、破ることも可能だろう」
「それはしかたないのでいくつかの隔壁を降ろすことで時間を稼ぐ。あとは、密封された通路を無酸素状態にすればいいのだ」
「どうやって?」
「簡単なことだ! 我が輩に任せるがいい!」
 そう言って、ウェストは自信ありげな表情で胸を張った。

「密閉空間で燃焼を行なえば酸欠になる。つまり、物を燃やせばいいのだ〜!」
 ウェストはスイッチを押して、通路に事前に用意しておいた燃焼物を発火させる。念には念をと、周囲の隔壁でも火を燃やす。隔壁で密封された空間で大量に火を燃やせば、酸素を消費し酸欠となり、加えて熱によって対象を無力化できる‥‥はずであったが。
「けひゃひゃひゃ‥‥ひゃ? つめた!?」
 笑うウェストの顔に、突然冷たい水が掛かる。それは、天井に設置されているノズルから放出されていた。
「‥‥スプリンクラーですね」
 その様子をモニターしていた公司が、あちゃ〜っと額に手を置いて首を振った。ハロゲンガスの消火装置が設置されていないのなら、スプリンクラーが設置されているのは十分予想できるはずだったのだが。
「火が! 火が消えてしまう〜〜〜!」
 あっさりと、火と共に自分の作戦が消えてしまったことに、ウェストは口からなにやら白いものを吐き出して呆けてしまう。
「呆けてる場合じゃありませんよドクター! 彼はすぐに隔壁を破りますよ!」
「おっとそうだった〜。こうなったら力づくでも捕まえるしかないね〜」
 共に待機していたカルマ・シュタット(ga6302)の叱咤に、ウェストは気を取り戻して迎撃の準備をする。すぐに防火シャッターが破られる轟音が鳴り響き、マサキが姿を現した。
「やぁ、マサキ・ジョーンズ君! 君の正体はすでにバレているのだよ〜!」
 明るくなった通路で、改めてマサキと対面したウェストは、自分達がマサキの素性を知っていることを伝える。短めの黒い髪から水を滴らせながら、マサキはその言葉に一瞬表情を険しくした。
「君の目的は、家族を奪い、その身体を改造したバグアへの復讐。それを誰の力も借りずに、独りでやろうとしている」
「‥‥‥」
「だが、試作KVは誰が作ったのだね〜? 君ではないよね〜、つまり君は『父親の力』を借りようというわけだ〜。身内だったら『誰』ではないというわけか〜」
 マサキの行動を辛辣に批判するウェスト。マサキは無言でウェストを睨みつける。
「兄弟と戦い、多くの人に背を向けてまでお前の復讐は価値のあるものなのか。なぜ一人で復讐をしようとするんだ」
 カルマもマサキに対し思っていることを口にする。弟を守るために戦う彼にとって、兄弟を憎み、戦おうとするマサキの姿を認めることはできないのだろう。
「知ったような口を‥‥。あれは兄でも父でもない。やつらは俺がこの手で‥‥! 邪魔をするならお前らも倒す!」
「やはり説得は無理のようだな‥‥」
「君一人では無理だよ〜。まあ、君の後に続く者のためにも、君が持つ情報は全て頂きたいね〜」
 二人を睨みつけたまま、マサキが強い口調で言い放つ。クールを装っているが、結構な激情家のようだ。カルマは残念そうに首を横に振り、ウェストは嫌みったらしく告げる。そして戦闘が始まった。
「悪いが殺さない程度にしか手加減はできないな!」
 カルマが先手を取り、槍から持ち替えておいたショットガンを放つ。狭い通路内で放たれた散弾は、さすがに避けようがないはずだ。
「なにっ!?」
 しかし、マサキはその一撃を、破った防火シャッターの一部を使って受け止めた。さすがに無傷とはいかないが、かすり傷程度で攻撃をやり過ごし、一気にカルマに間合いを詰める。
「これでも食らえ〜!」
「ちょっ!?」
 そこへ、ウェストがエネルギーガンを放つ。カルマが射線にいてもお構い無しだ。
「俺に当たったらどうするんですか!」
「だいじょ〜ぶ、ちゃんと後で治療してやるから〜」
 辛うじて避けるカルマ。マサキも素早い動きで当たらない。
「早すぎだろって、ぐふっ!」
 再び槍へと持ち替えたカルマが、渾身の力で突き刺すが、マサキはまたも素早い動きでそれを避け、逆にカルマの鳩尾に拳を放つ。それに悶絶し、カルマは膝をついた。
「ええい! ならば我が輩が! ぐは!」
 ウェストも反撃を行なおうとするが、マサキの動きは能力者を超える速さで、捉えきれずに倒されてしまう。そして、そのままマサキは、格納庫へと行ってしまった。
「くぅ、正面からじゃさすがに無理か‥‥。彼はまだ手加減してますよ‥‥」
「それでも止めなければならないのだ〜! すぐに追いかけるぞ!」
 苦痛に顔をゆがめながら、それでも実際は対したダメージではないことに、カルマは困ったように言う。ウェストは少し悔しそうに言うと、すぐに立ち上がりマサキを追いかけるのだった。

「やっぱり普通の煙草は味が落ちるな‥‥。ふぅ‥‥、思ったよりも早かったな。まぁ‥‥話を聞きそうな感じではないな。だが嫌いじゃないぜそうゆうの」
 格納庫への扉の前で、煙草を銜えながらクラウド・ストライフ(ga4846)が待ち構えていた。扉の前に仁王立ちになったクラウドは、紫煙を燻らせながら眺めるような視線でマサキを見つめ、全身に黒いオーラを漂わせながら、ゆっくりと二刀の刀を構えた。
「でもここは通せない」
「どけ!」
「通りたきゃ力ずくで来い」
 その言葉と同時に、マサキが地面を蹴る。単純な力比べ、それがクラウドの取った方法だった。迫るマサキに、渾身の攻撃を繰り出すクラウド。マサキも背中から剣を抜き、攻撃を受け止める。
「さすがにやるな‥‥。だが、これならどうだ!」
 マサキの力にニヤリと笑うクラウド。そして、黒いオーラが一瞬赤く変わり、威力が一気に跳ね上がった一撃を繰り出す。
「外した!?」
 しかしそれを、マサキは寸前で避け、お返しとばかりに強力な一撃をクラウドに放つ。クラウドは辛うじてそれを刀で受けるが、通路の壁に叩きつけられてしまった。そして、マサキは格納庫へと入っていく。
「!?」
 マサキが格納庫へと入る瞬間、突然鋭い勢いで剣がマサキを襲う。寸ででそれを避けたマサキだが、前髪の一部がハラリと地面に落ちた。
「おや、外しましたか。確実に当たるタイミングを狙ったのですけどね」
 そこに現れたのは、八百 禮(ga8188)。マサキの不意を狙い、一撃で仕留めるつもりで攻撃を行なったのだ。
「いやぁ、お見事。君の動きは逐一聞いていましたが。この短時間でここまで来るとは、いやはや恐れいります。それにしても、この時勢にKVの強奪‥‥私なら怖くて出来ませんよ」
 パチパチと軽く手を叩き、マサキを賞賛する禮。その口調は礼儀正しいが、どこか人を小ばかにした言いようで、その仕草も芝居がかっている。
「怖いと言うのなら、そこをどけ」
「いえ、そうしたいのも山々なのですが、これも御仕事なのでね。はいそうですかと、どくわけにも行かないのです」
 微笑を浮かべながら、禮は再び剣を構える。右頬に浮かび上がる紫の文様が怪しく光り、剣にも赤い光が灯る。
「どうやら、仲間達も追いついたようですね。できればここで降参していただきたいのですが?」
 禮が時間を稼いでる間に、優達が格納庫へとたどり着く。囲まれる形になったマサキに、降伏を勧告する禮。
「っ!!」
 動くそぶりを見せるマサキに切りかかる禮。しかし、マサキの方が一瞬早く、禮を飛び越えKVへと走る。そして、ハッチに手を掛けようとするマサキ。
「なっ!?」
 そこで、つるっ、とマサキの足元が滑る。なんと、ハッチの近くには油が撒かれていたのだ。体勢を崩すマサキ、それでもそのままハッチを開ける操作をし‥‥。
「いらっしゃいませ〜」
 コックピットの中から、笑顔と共に突然の消火器攻撃。佐伽羅 黎紀(ga8601)がコックピットの中に潜んで待ち構えていたのだ。消火器の泡で視界を遮り、そのまま覚醒して消火器を思いっきりマサキにぶつける黎紀。本人曰く、陰険で酷い攻撃。だが、覚醒すると無表情になるので、実際どう思っているのか良く分からない。
「取り押さえろ!」
 一行はマサキを取り押さえようとする。だが、マサキの回復のほうが一歩早かった。消火器まみれになりながら、KVのコックピットへと飛び乗るマサキ。そして、黎紀に剣を突きつける。
「女に手荒なまねはしたくないが‥‥」
「あらぁ、でしたら私達と協力しませんか? 組織を倒すのなら独りで戦わず背中を預けられる仲間と共に戦うべきです。‥‥何より独りで戦うのは疲れるし寂しいですよ?」
「できない。‥‥俺には時間がない」
 周囲を牽制するように、黎紀の首筋に剣を当てながら、申し訳なさそうに言うマサキ。おっとりとした口調で言う黎紀にマサキは首を横に振り、黎紀をコックピットから出すと、KVを急速発進させた。KVを押さえていた機材が無理に押しのけられ、一行は崩れる足場に慌ててその場を待避する。
 そしてそのまま、KVは格納庫を力づくで開けると、夜の闇へと飛び立っていってしまった。