タイトル:ナイフプチャットの捕獲マスター:緑野まりも

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/03/18 01:01

●オープニング本文


「はぁ〜‥‥」
 自分の机に頬杖をつきながら、妙にせつないため息をついている女性。緩くウェーブになった栗色の髪、化粧っけの無い小さな顔立ちに、やや不釣合いなタレ目がちの大きな瞳が幼い印象を見る者に与える。美人というよりは、可愛いといった感じの女性だが、そんな彼女の顔には、大きく分厚い、まるで牛乳瓶の底のような丸型の眼鏡が掛けられており、素顔をほとんど隠している。
「はぁ〜‥‥」
 彼女の名は、ドローム社対キメラ用兵器開発室第3課の研究員、メリル・ウッド。多くの優秀な人材を抱えているドローム社の、その『優秀な人材』の一人‥‥なのだが。
「メリル、お茶!」
「あ、はい〜〜」
 生来のドジっ娘属性と、気弱な性格のために、開発室内では雑用係のような立場になっていた。特に課長の梶原一三には、毎日こき使われている。
「はぁ〜‥‥」
 まぁしかし、彼女がこのようにため息をついているのは、そんな自分の境遇を憂えているわけではない。彼女は、一枚の写真を見てため息をついていた。
「はぁ〜、見てみたいです〜」
 彼女の見ている写真に写っているもの。それは、虎のような猫のような、大きく鋭い牙を持った肉食獣のキメラ‥‥なのだが、その大きさが20センチ未満という超小型だというのだ。
「写真だけじゃわからないですぅ。実物はもっとちっちゃくて可愛らしいんでしょうねぇ」
 遠くを見る瞳で、妄想の中の小動物的なその生き物と遊ぶメリル。といっても、小さいからといってもキメラなので、遊ぶどころか下手をすれば食べられかねないのだが。
「どうにかして、見たいですぅ。触ってモフモフして遊びたいですぅ」
 妄想はどんどんエスカレートして、頬を染めながらはぁはぁとなにやら息を荒くするメリル。
「メリル! お茶はどうした!」
「はっ!? は、はい〜、いますぐ〜」
 梶原の声に、意識を戻すメリルは、慌ててお茶を用意しながら、写真のキメラを実際に見る方法を考える。
「博士、お茶ですぅ」
「相変わらずトロい奴じゃ。茶はそこへ置いておけ。それで、また新しいキメラのサンプルが必要になった、傭兵どもに取りに行かせるようにしておけ」
「新しいキメラのサンプル‥‥ですか? そ、そうだ、私も能力者の皆さんにお願いすれば‥‥でへへ〜」
「なんじゃ気持ちの悪い笑みを浮かべおって。わかったのなら、さっさと依頼を出してこんか!」
「は、はい!!」
 メリルの元気な声に、眉を顰めて睨みつける梶原。だが、メリルはそれに気づいた様子もなく浮かれ気分で依頼を出しにいくのだった。

「あの‥‥今回は、この『ナイフプチャット』というキメラを捕獲して欲しいのです。虎のような姿をしているのですが、全長20センチ未満ととってもちっちゃいのですぅ。凄く可愛いと思うので、取ってきていただけませんか〜。檻などはこちらで用意させていただきますので。‥‥あ、あの、それでですね、一三博士には内緒にして欲しいんです! 内緒で私の所へ持ってきて欲しいんですぅ」
 梶原に内緒で依頼するメリル。果たして念願のキメラを手に入れることはできるのだろうか。

・依頼内容
 肉食獣キメラ『ナイフプチャット』の捕獲
・概要
 生息地は南米ジャングル。大まかな場所は確認済みのため、その周辺地域を探索し捕獲する。該当地域には他のキメラも生息しているため、注意が必要。
 捕獲用の檻は依頼主が用意。50立方cmの特殊合金製の檻で、大人二人で持ち運べる程度の重さ。能力者であれば、一人で持ち運ぶことも可能。
 個人依頼のため、必要物資はすべて自己負担での用意となる。

●参加者一覧

ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
青山 凍綺(ga3259
24歳・♀・FT
沖 良秋(ga3423
20歳・♂・SN
クラウド・ストライフ(ga4846
20歳・♂・FT
シエラ・フルフレンド(ga5622
16歳・♀・SN
NATZ(ga6948
19歳・♀・SN
周防 誠(ga7131
28歳・♂・JG
美海(ga7630
13歳・♀・HD

●リプレイ本文

「ナイフプチャット‥‥どんなキメラかわくわくするのですよ‥‥」
 ナイフプチャットを捕獲するため、南米ジャングルへと入った一行。美海(ga7630)は、好奇心に目を輝かせて、まだ見ぬ可愛らしい小動物の姿を思い浮かべた。
「本当に楽しみですよね。ボクも猫が好きだし、早く本物を見たいなぁ。それにキメラの味ってどんなだろう」
「だだだ、ダメです! ナイフプチャットを食べちゃダメですよ!」
「あはは、大丈夫ですよ。ナイフプチャットは食べませんよ。ボクは猫好きですし」
「‥‥‥」
 沖 良秋(ga3423)もメリルから焼き増ししてもらったナイフプチャットの写真を眺めながら、同じように思いを馳せる。だが、続く不穏な台詞に、美海はわたわたと慌てて首を横に振る。良秋は軽く笑って否定するが。美海は、猫好きという意味が違うのではないかと疑いの視線を向けるのだった。
「かわいいからってキメラに変わらないんだしな‥‥まぁ油断はしないことですね」
「も、もちろん、横領したりはしないのですよ。いくらかわいくても相手は敵なのですから」
「誰も横領なんてことは言っていませんよ」
 そんな様子に、周防 誠(ga7131)が少し呆れたように口にする。美海は再び慌てて、うんうんと首を縦に振るが、美海の言葉に誠はため息をつくのだった。
「き、君たちぃ〜、我輩を手伝うという気にはなれないのかねぇ〜!」
 談話する一行を恨めしそうに見ながら、ドクター・ウェスト(ga0241)が息を荒げながら歩いてくる。ジャングルということで、全員無駄な物は持たずに比較的軽装なのだが、ウェストだけは大きな荷物を背負っていた。というのも、ジャングルで野宿するためのテントを持ってきていたのだ。しかもウェストは、重い超機械や捕獲用の罠のための道具も持ち歩いている。能力者といえど、この重装備でジャングルの中を探索するのはなかなか辛いものがあるだろう。
「いや〜どうもすんませんね、わざわざ」
「軽装のはずなのに、テントが重い〜」
「全然軽装じゃないだろって。ほんとめんどくせぇ‥‥」
 誠がウェストににこやかに笑いながら礼を述べるが、手伝おうとはしない。そしてウェストの様子に呆れたように呟きながら、クラウド・ストライフ(ga4846)は煙草に火をつける。クラウドは今回随分とやる気の無い様子を見せていた。どうやら、依頼人の動機が気に入らないようである。
「覚醒すれば楽だが、こんなところで錬力を無駄に使うわけにはいかんし〜」
「ったく‥‥、ほら、少し持ってやるよ」
 まぁ、なんだかんだ言っても、素が面倒見の良い性格のクラウドは、結局ウェストの荷物を持つのを手伝ってあげたりするのだった。
「みなさ〜ん、こっちに水場がありますよ〜」
 しばらくジャングルを探索して、シエラ・フルフレンド(ga5622)が湧き水の泉を見つける。
「付近に危険なものも見つけられなかったわ。この辺りを拠点にしてもいいんじゃないか?」
「よ、ようやく、この重たいものから解放されるよ〜」
 NATZ(ga6948)の意見に全員が同意し、この場所にテントを張り、拠点としてナイフプチャットを探すこととした。ウェストがくたびれたようにテントを降ろし。協力してテントを組み立てたり、周囲を整えて拠点を作り上げる。

「では、私はご飯の用意のために、猟をしてきますね」
「はい! 美海も行きます!」
「あ、それじゃ、ボクも行きますよ」
「では、自分も。罠に使う餌も一緒に取ってきますよ」
 ある程度準備が整うと、残りは他の者に任せて、シエラが食事の準備のために付近の動物を狩ってくることにした。それに、美海と良秋、誠も手伝うことにする。
「いつキメラに襲われるかわからない。気をつけろよ」
「わかっています。あまり離れすぎないようにしますので!」
 クラウドの忠告に元気に答えながら、シエラ達は狩りへと出かけるのだった。
「ヒット!」
 獲物を見つけては、正確な射撃で狩りを行なうシエラ達。
「こんな感じでいいですかね」
「こっちも取れたし、十分だろう」
 シエラと誠は、鳥や小動物を撃ち落し、十分な獲物を得る。
「結局、キメラは現れなかったなぁ。せめて、蛇やワニでも良かったのに」
「ええ!? それを食べるつもりですか!!」
 少し残念そうにする良秋に、美海が驚く。そんな感じで、キャンプへと戻ろうとする一行だが。
「待ってください‥‥何かいます」
「ええ、噂をすればなんとやらというやつですね。ご飯のネタにしたいですね‥‥どうだろうAI君?」
 ふと、周囲に気配を感じたシエラと良秋。警戒する一行の前に、草を分け入って現れたのは1メートルを超える巨大なトカゲ。どうやらキメラのようである。良秋は少し嬉しそうに、自分の手に埋められたAIに話しかける。
「馬鹿なことやってないで、さっさと退治しますよ」
 誠はそう言うと、力を覚醒させる。黒かった右目が、銀色に変わり、呼吸が落ち着いた状態に整っていく。他の者達も一斉に覚醒すると、各々の武器を構えて、戦闘の準備をする。そして、一斉に射撃を繰り出した。
「あっけないものですね‥‥」
 遠距離からの一斉射撃を受け、トカゲキメラはあっさりとその動きを止める。シエラは、物静かな声で呟くと、覚醒を解き瞳の色が戻る。
「さて、これはさすがに食べれませんよね」
「そりゃ、当然でしょ」
 キメラを指して、首を傾げるシエラに、当然とばかりに首を横に振る誠。
「あ、ボクが持っていきますよ。トカゲとか普通に食用ですし、是非食べてみたいじゃないですか」
「ええ!? 本当に食べる気ですか!!」
「もちろん、ね〜、AI君?」
 ところが、良秋がキメラを食べると言い出した。やはり驚く美海をよそに、良秋はエマージェンシーキットからナイフを取り出すと、キメラの死体から太い尻尾を切り落とした。さすがに、全部を持ち帰るつもりはないらしい。
「と、ともかく、そろそろ戻りましょうか‥‥」
 その様子に、シエラも少し困ったように苦笑しながら、一行はキャンプへと帰還するのだった。

「今日の晩御飯はトカゲキメラソテーです〜‥‥」
「わ〜、待ってました!」
 夕飯時になり、シエラと美海が調理を行なって晩御飯が用意される。その中で、一際目立つのが、トカゲキメラの尻尾のソテー。ソテーとは言うが、実際は丸焼きである。調理したシエラもさすがに引いているのだが、良秋だけは随分と喜んでいるようだ。もちろん、それ以外にもちゃんと普通に食べれそうな料理はあるので、他のメンバーも特に文句は言わない。
「本当に食べるのそれ?」
「人間の悪食というものはなかなか興味深いものだねぇ。ああ、もちろん我輩はパスだけどね!」
 信じられないといった様子のNATZと、料理よりも良秋を興味深そうに眺めるウェスト。
「美味しそうじゃないですか〜。それじゃ、いただきます!」
 全員が見守る中、良秋はトカゲキメラの尻尾にかぶりつく。さて、そのお味は‥‥。
「うま〜い♪ ジューシーな鶏肉を食べているようですよ!」
 実際、食べてみればトカゲの肉とあまり変わらなかった。少し筋肉質で固いが、十分食べられるようだ。だが、ご満悦の良秋を見なかったことにして、仲間達は決してキメラの肉には手を出さなかった。ちなみに、その後良秋は、『キメラ食いの男』と呼ばれることになる。そして、夜は過ぎていくのだった。

「ふぁ〜、よく寝ましたっ! 頑張って今日もいきますっ!」
 次の日、キャンプで一晩を明かしたシエラは、身体を起こして大きく背伸びをした。
「おはようさん」
「あ、おはようございます! 見張りお疲れ様です! ちょっと顔を洗ってきますね!」
「水場は近くだが、一応気をつけろよ」
 交代で見張りに立っていたクラウドに挨拶をして、シエラは水場へと向かっていった。
「クラウドさん、いまシエラさんが水場に行きませんでした?」
「あ? ああ、言ったけど‥‥ちっ、もうねえか」
 そのすぐあと、良秋が現れてクラウドにシエラのことを聞く。クラウドは面倒くさそうに答えて、煙草を取り出そうとするが、どうやら切らしてしまったようだ。
「おし‥‥クラウドさん、いまから水場に行ってみませんか?」
「あ〜‥‥覗きか? 子供に興味はねえよ」
 小さくガッツポーズを取った良秋は、ニヤリと笑みを浮かべてクラウドを誘う。クラウドはつまらなそうに手を横に振り、空になった煙草ケースを眺めた。
「おはよ、なにやってんです?」
「あ、周防さん。周防さんは一緒にどうです? シエラさんが水場に行ったそうなんですよ〜」
「若いねぇ。それよりさ、後ろ見たほうがいいんじゃね?」
「え?」
 呆れたように言う誠の指摘に、良秋はわからないまま振り向いた。
「アー! イリミルカラブラオ! 哀れなる愚者を地獄に‥‥」
「ぎゃ〜〜〜!!」
「ファウストの劫罰だねぇ」
 良秋が見たのは、全身に血管の様な模様が映った、慈悲の無い無表情のNATZが拳を振り上げている姿であった。そして殴り倒される良秋を面白そうに見ながら、ウェストが呟いた。
「戻りました〜! って、あれ!? 良秋さんどうしたんですか!!」
 しばらくして、戻ってきたシエラが見つけたのは、頭に大きな瘤を作り気絶していた良秋であった‥‥。

「掛かってないわね」
 この日の探索は、まず最初に前日に仕掛けた罠のチェックからだ。NATZはいくつか仕掛けた落とし穴を確かめては、小さく首を横に振った。生肉にウォッカをかけて置いておいたのだが、普通の獣は掛かっていても、目的のキメラは掛かっていなかったようだ。
 その後は、美海をキャンプに残し、他のメンバーはジャングルの探索を行なった。周囲に目を配りながら、木々の間を分け入っていく。
「いたぞ‥‥」
 しばらくして、それをいち早く見つけたのはクラウドだった。草木の中に小さく動く影が一つ。一見猫かと思える体躯に、黄色と黒の縞模様、だがその口からは狂暴そうな長く鋭い牙が伸びている。写真にあったナイフプチャットに間違いなかった。
「本物もやっぱり可愛いですね」
「本気か? あの木を見てみろ」
 ナイフプチャットの様子に、良秋が目を細めるが、クラウドは顔を顰めて近くにある木を指差した。そこには、強い力で切り裂かれたような深い傷跡が残っており、ナイフプチャットの見た目に反した危険性が表れていた。
「まいったね、あっちも自分らに気づいたようですよ」
 誠が言うように、ナイフプチャットも一行に気づき。警戒するように鋭い視線をこちらに向けて、ジッと身じろぎしない。
「ビーフジャーキーで誘き寄せてみます」
「キウイフルーツもあるよ〜」
 シエラとウェストが、餌になりそうなものを取り出して、ナイフプチャットが興味を引くように動かしてみる。だが逆に、キメラは威嚇するように毛を逆立てて、牙をむき出しにして唸り声をあげ始めた。
「あっ、逃げました!」
「追うぞ! 罠へと追い込め!」
 突然身を翻して逃げるキメラ。クラウド達は慌ててそれを追いかける。小さいうえに素早い身のこなし、視界を遮るジャングルの中では、下手をすれば見失いかねない。全員覚醒し、全力で追いかける。そこへ‥‥。
「!!」
 ナイフプチャットを追いかける一行の前に現れたのは、2メートルを超える大きな獣。ナイフプチャットを巨大化させたような虎模様に、口から突き出した長く巨大な牙。
「巨大化!?」
「違いますよ、あの子のご両親です。ね、AI君?」
「いや、それも違うと思いますがね」
 驚くシエラに、ボケる良秋。誠は少し呆れたようにツッコミを入れる。
「サーベルタイガーだねぇ、二〜三百万年前くらい前の生き物かな」
「どう見てもキメラだな。正直やる気が無かったが、多少は面白みが出てきたな」
 ウェストの解説に、クラウドがニヤリと笑みを浮かべて刀を構える。サーベルタイガーも唸り声をあげながら、いつでも飛びかかれる様子で一行を睨みつけている。
「まいったな、余計なのを相手にはしたくないんですけどね。しかたないか」
「さっさと片付けて、子猫のほうを捕まえるわよ」
「邪魔をしないでくださいっ!」
「小さい虎は殺さず捕獲ですが‥‥大きな虎は退治ですね!」
「強化と治療は任せてくれたまえ〜」
 クラウドが前に立ち、他の者達が距離を取って武器を構える。ウェストがクラウドの武器を強化し、戦いが始まる。
「これでも食らえ」
 二刀で切りかかるクラウドに、キメラは巨大な牙でこれを受け、逆に体格のわりに素早い動きで襲い掛かる。牙は鋭く、当たればただではすまない、クラウドは辛うじてそれを避けながら、キメラと対峙する。
「確実に仕留める」
 そこへ、誠達の正確で強力な射撃が放たれ、ダメージを受けたキメラが体勢を崩す。
「これで終わりだ!」
 最後に、クラウドが強力な一撃を加え、切り裂かれたキメラは音を立てて地に倒れ付した。
「なんとか倒しましたね。これも味見したいところですが、それよりもナイフプチャットを見つけないと」
「‥‥とりあえず探すぞ。まだこの辺りにいるはずだ!」
 残念そうにサーベルタイガーの死体を見つめる良秋に呆れつつ、クラウド達は見失ったナイフプチャットの捜索を再開した。それからしばらくして。
「見つけたぞ、追い込め!」
「こちらは通しませんよ!」
「よし、落とし穴に落ちた」
 再びナイフプチャットを見つけた一行は、今度は邪魔も入らずに落とし穴へと追い込み、なんとか捕獲に成功する。
「みなさん、おかえりなさい〜。ご飯できてますよ〜。ああ! これがナイフプチャットですね! ちっちゃい! かわいい〜!」
 キャンプで食事の準備をしていた美海は、捕まったナイフプチャットの姿におおはしゃぎ。ジャングルを走り回った一行はさすがに疲れて、美海の作った食事で休憩したあと、帰還するのだった。

「おまたせしました〜」
「おかえりなさいですぅ。わぁ! これがナイフプチャットですね! ちっちゃいのに凛々しいお顔で可愛いですぅ」
 シエラ達は期待して待っていた様子のメリルに、捕まえたキメラを引き渡す。檻に入ったキメラはさすがに暴れたが、頑丈な檻はビクともしなかった。
「実物は危険ですが、別アングルの写真もお願いします」
「あ、美海にもお願いします!」
「報酬を払ってくれれば自分はそれでいいんですがね‥‥まぁ研究に役立ててくださいよ」
 喜ぶメリルに、良秋は観賞用にナイフプチャットの写真をお願いする。それに便乗して美海も希望した。そんな様子に呆れながら、誠が嫌味を口にする。
「ああ、それと、あとでイチゾー先生に渡しておいてくれたまえ〜」
「はい?」
 最後にウェストが、以前採取したキメラのサンプルをメリルに渡して依頼は終了した。ちなみにその後、メリルはこの件が梶原にバレて大目玉を食らったそうである。