タイトル:退屈な常駐兵士の日記マスター:緑野まりも

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/02/17 14:16

●オープニング本文


「ふぁ〜あ、今日もいい天気だねぇ」
 朝起きて、私は日課になっている体操を行なう。規則正しい時間に起き、規則正しい生活を送るという、軍人としての習慣のおかげで、私は実に健康に毎日を送っている。
「それにしても平和だねぇ」
 いつも通りの見慣れた光景に呟く。周囲には森林が広がっており、雪に覆われた木々に囲まれたここは、これといった変化はない。広がる青空には、流れる雲と鳥の影が見えるだけ。もちろん争いの影などなく、平和そのものだ。
 だが、世界全体から見れば、いまは人類の危機と言ってもいい状況である。バグアという宇宙人がやってきて、それらとの戦いにより多くの人命が失われた。私もその戦いに身を投じ、バグアの圧倒的な力を目の当たりにした。あの時の絶望と悲しみは、今でも忘れることができない。
 しかし、今私は、こうして退屈ながら平和な所に居る。ここは、戦地からはるか後方にある軍の詰め所。私の任務は、この地に常駐し、安全確保のための見張りを行なうことだ。まぁ、さっきも言った通り、ここは戦地から離れており、バグアが気にかけるような戦略的価値の無い場所なので、見張りの必要の無いくらい平和である。つまりは私は、良く言えば左遷、悪く言うとやっかいばらいされたというわけだ。一時期は、部隊を率い、前線に出ていたこともあったが、ある作戦で失敗し、このような場所へと送られることとなった。けれど私は、それに不満は無い。ここに居れば命の危険は少ないし、あの時のような悔しい思いもしなくてすむ。
「本当に平和だねぇ」
 私は、今日何度目かの言葉を呟いて、朝ご飯を作り、いつものように見張り台に立つことになる。実は、この詰め所には私一人しかいない。以前は、もう数人いたのだが、みんな別の場所に移転することになり、残ったのは私一人だ。彼らは無事で居るだろうか、危険な任務についていないか心配だ。
 ともかく、この詰め所には現在私一人であり、何をするにも一人で行なわなければならなかった。と言っても、たいしたことをするわけでもなく、十分一人で事足りるのだが。けれど、やはり一人というのは寂しいものだ。せめて話し相手にもう一人ぐらい居てくれると嬉しいのだが。
「そういえば、昨日補充がどうのと言ってましたっけ」
 一人で居ると、ついつい独り言が癖になってしまう。それはともかく、昨日の定時連絡の際に、補充人員を送るという話があった。なんでも、後方でもキメラの被害が起きるようになり、それに対処するために人員を補充するのだそうだ。物騒な話だ。しかも、補充といっても正式な軍の兵士ではなく、民間の傭兵を使うとか。最近話題になっている、民間人のエミタ能力者のことだろう。短期の詰め所人員の募集を、定期的に行い賄うという話だが、いわゆるアルバイトというやつだろうか。軍もそこまで切羽詰っているのかと正直不安になる。
 まぁ、なにはともあれ、話し相手が来てくれるのは嬉しいことだ。ここでの仕事は少ないので、彼らには退屈で悪いが、暇つぶしの相手になってもらおうと思う。
「さて、今日の夕飯は何にしましょうかね」
 さて、今日のところは、夕飯の献立でも考えながら見張りを行なうとしよう。いつもの時間になったら、十数キロ先の町まで買出しにでなくてはいけないな。そうそう、この間町の人に頼みごとをされたっけ‥‥。

・依頼内容
 軍の詰め所にて、見張りその他後方地域の維持
・概要
 北米北部にある軍の詰め所にて、見張りや付近の治安維持を行なう。
 この地域でのキメラなどのバグア兵力の発見は報告されていないが、他の後方地域でのキメラの出没報告もあるため、万が一のために人員の補充を行なう。
 現在、同詰め所の常駐兵士は一名。詳しい任務の内容は、この常駐兵士に聞くこと。

●参加者一覧

大曽根櫻(ga0005
16歳・♀・AA
幡多野 克(ga0444
24歳・♂・AA
ケイ・リヒャルト(ga0598
20歳・♀・JG
宮武 征央(ga0815
19歳・♂・FT
新居・やすかず(ga1891
19歳・♂・JG
愛輝(ga3159
23歳・♂・PN
カルマ・シュタット(ga6302
24歳・♂・AA
綾野 断真(ga6621
25歳・♂・SN

●リプレイ本文

「こんにちは、綾野 断真(ga6621)です。今日から数日、こちらで治安維持の手伝いをするよう依頼されてきました」
「ようこそいらっしゃいませ、先任のマイケル・ラインです。皆さんのことは聞いています、よろしくおねがいしますよ」
 連絡にあった増員の人達がやってきた。みんな若い人達ばかりだが、その中で一番年上と思われる彼が、代表して挨拶をしてくれる。落ち着いた様子の、しっかりした感じのする男性だ。
「始めまして、カルマ・シュタット(ga6302)です。よろしく」
「はじめまして、宮武 征央(ga0815)です。征央って呼んで下さいね」
 そして、順番に挨拶をする彼ら。カルマ君は物事に動じないおおらかな感じで、征央君は明るく人懐っこい雰囲気のする子だ。カルマ君は自然な様子で、征央君は軽く崩した感じで柔らかい笑みを浮かべ、それぞれ性格が出ている。
「新居・やすかず(ga1891)です。宜しくお願いします」
 やすかず君は丁寧な挨拶で頭を下げる。これといった特色は感じられないが、真面目そうな良い子のように思えた。
「愛輝(ga3159)です。よろしく」
「幡多野 克(ga0444)‥‥。バグアの脅威が‥‥感じられない‥‥。本当に‥‥静かな場所だね‥‥。ここで‥‥ずっと1人で‥‥? 暫くは‥‥俺達が手伝うよ‥‥。何かあったら‥‥言って」
 愛輝君は、必要なことしか口にせず、無駄なおしゃべりをしない真面目なタイプかな。逆に克君は、もしかすると人付き合いが苦手なのかもしれない。二人とも感情を表情に出さないようにしているようだけど、それぞれ別々の雰囲気があるね。
「ケイよ、ケイ・リヒャルト(ga0598)。宜しく頼むわ」
「大曽根櫻(ga0005)です、宜しくお願いします」
 最後に、女性二人が挨拶をしてくれる。どちらも綺麗な黒髪の女の子だが、対照的な二人だ。櫻君は、大和撫子といった感じの清楚な少女で、ケイ君はクールビューティといったところかな。ともかく、異性ということで色々と気を使うこともあると思うが、華やかになることはいいことだね。
 これが、彼らの私から見た第一印象だけど。みんな、若いがしっかりした感じで、とても好感が持てる。やはり、自らエミタ能力者の道を選ぶからには、相応の自覚などを持ち合わせているのかもしれない。
「それじゃ、詰め所を案内しよう。狭い所で悪いけれど、我慢して欲しい」
 私はそんなことを言って苦笑を浮かべ、彼らに詰め所を案内することにしたのだった。

 この詰め所での仕事は、あまり多くない。そもそも、私一人でも事足りていたのだから当たり前なのだが。しかし、彼らは積極的に自分達の仕事を考え、役割分担を決め行ない始めた。私は、彼らの活動的な様子に圧倒されながら、ただ感心するばかりであった。
「静かなものですね。キメラはおろか野生動物の姿もなし、と」
 やすかず君は、見張り台に登り、見張りの仕事を行なっていた。この時期はかなり寒く、結構辛い仕事なのだが、彼は文句も言わずに辺りを見回している。
「はは、この辺りはキメラはともかく、野生動物は豊富だよ。しばらく立っていれば、色々と見つけられると思うな」
「そうなんですか。それは楽しみですね」
 私がそう説明すると、彼はまた熱心に双眼鏡を覗きこんだ。私も、見張りの楽しみといえば、そういった野生動物を観察することだ。大変な仕事だが、あまり根は詰めず、気楽にやって欲しい。

「なにをしているんですか?」
「はい、手が空いたのでトレーニングでもと思って」
 詰め所の前では、カルマ君が長い棒を持っていた。よく見ればそれは槍のようである。雪が積もり寒い中、汗を流しながら訓練を続けている。
「トレーニングですか? 良ければ私もお相手させてもらっていいでしょうか?」
「え、ええ、かまいませんが」
 そこへ、櫻君が現れ訓練の相手を申し出た。カルマ君は少し驚いているようだが、私ももちろん驚いた。少女と言ってもいい櫻君が、鍛えている大人の男性であるカルマ君の相手をすると言うのだから。しかし、もっと驚いたのはその後である。
「実践形式で行きましょう」
 そう言って、櫻君は両手に刀を構える。そして、その綺麗な黒髪が、ブロンドへと変化したのだ。
「わかりました」
 同じく、カルマ君も右手の甲に赤い幾何学模様が浮かび上がり、槍を構える。始めてみるが、これがエミタ能力者の覚醒というものなのだろう。その後は、常人の私では目で追うことも難しい攻防を繰り広げ。
「ふぅ、この辺にしましょうか」
「はい」
「参りました」
「いえ、まだその武器を使い慣れていないようですし」
 頭を下げるカルマ君に、櫻君が笑みを浮かべながら首を横に振った。どうやら、実力は櫻君のほうが上回っているようだ。しかし、彼らの様子から、エミタという力を使いこなそうと真剣な様子が見て取れる。人間に過ぎた力、しかしそれをコントロールしようとしている姿はとても眩しいものに見えた。

「それじゃ、周辺地域の見回りに行ってきます!」
「はい、気をつけてください。くれぐれも道には迷わないように」
「はい、わかってます」
 征央君と櫻君が、見回りに出ることになった。この辺りは森林部になっており、見通しがあまりよくない。ルートを守れば危険なことは無いと思うが、間違って道に迷うと遭難という危険もあるので気をつけるよう二人に伝える。
「野生動物とか見たいです! どんな動物がいるのだろ? カナダオオヤマネコに会いたいけど、日中では無理かな。ムースやエルクだったら見つけやすい?」
「ムース? エルク?」
「ムースはヘラジカのことですね。エルクもアジアやヨーロッパではヘラジカのことですが、こちらではアカシカですね」
「そうなんですか」
 征央君の言葉に、櫻君が聞きなれない言葉なのか一度口にする。私が説明すると、櫻君は納得したように頷いた。
「オオヤマネコ、リンクスは夜行性ですから、日中見ることはまずないですね。ムースだったら、運が良ければ会うこともできるでしょう。でも、危険ですので決して近づいたりはしないでくださいね」
「わかってます♪ 熊や、狼なんかはいるんですか?」
「さすがに、この時期に熊は冬眠していますからそうそう見ることはないでしょう。むしろ、もし見かけることがあったら報告してください。空腹の熊は、特に危険ですからね。狼を見る機会も少ないと思います、彼らも夜行性ですから」
「熊といえば、サーモンも居るんでしょうか?」
「サーモンですか? う〜ん、さすがに時期は過ぎてしまいましたからねぇ」
「そうですか〜。もし取れるならちゃんちゃん焼きなども作りたかったのですが」
 私の話に、楽しそうに笑みを浮かべる征央君。彼は本当に動物を見るのが楽しみのようですね。櫻君は少し残念そうに肩を竦める。ちゃんちゃん焼きとは彼女が生まれたところの料理でしょうか、私も少し残念ですね。
「あ、そろそろ本当に行きますね」
「はい、行ってらっしゃい」
 ついつい話し込んでしまったが、櫻君と征央君はスノーモービルに乗って、周囲の見回りに出掛ける。終わったらあとで、どうだったかお話でも聞いてみましょう。

「そろそろ俺達も行きましょう」
 カルマ君達は、街の方への見回りに向かうことになった。街の治安維持は大事な任務の一つである。まぁ、街には警察もあるのでこれといってすることもないのだが。
「守るべき者達の姿をよく確認しておきたい」
「街の人達は‥‥俺達を‥‥受け入れてくれる‥‥かな?」
「大丈夫ですよ。街の人達は良い人ばかりですから。なにか相談事があったら、聞いてあげてください」
 愛輝君の呟きに克君が口にした不安に、私はニッコリと微笑んで答えた。街には彼らのことは説明してあるし、そもそも他所から来た人にも優しい人達だ。彼らも快く受け入れてくれることだろう。
「それでは、ついでに買出しに行ってきますよ。何か必要な物などありますか?」
「そうそう、櫻君がこれをお願いしますと言っていました」
 断真君の言葉に、思い出したように私は櫻君から預かっていた食材の買出しのメモを手渡す。彼らが居る間、食事は櫻君が作ってくれるそうだ。私は簡単なものしか作れないし、大人数の食事を作る機会もない、正直助かったといえた。
「わかりました、ではこのメモの通りに買ってきます」
「じゃ、行きますよ」
 メモを受け取った断真君。カルマ君の運転で、彼らは街へと向かった。

「おや、良い匂いがしますね」
 夕方、私は自分の仕事を一先ず終えて詰め所へと戻ってくる。すると、鼻をくすぐるような甘く優しい香りが迎えてくれた。
「ラインさん、おかえりなさい。いま、食事の準備をしていますので、もうしばらくお待ちください」
「この匂いは、シチューですか」
「はい、クリームシチューを。それと、チキンの塩竃焼きを」
「豪勢ですね」
 キッチンに入った櫻君が、返事をしてくれる。どうやら、これは結構期待してもいいようだ。
「いいですねー、こういうのも」
 やすかず君は、なにやら床に布団のようなものを敷いて、ゆったりとしているようだ。
「どうしたんですか、それは?」
「あ、これは自分で持ってきたんですよ。コタツです、知ってますか?」
「へぇ、これがコタツですか。たしか、日本の暖房器具ですよね。見るのは初めてですが、思ったよりも小さいんですね」
「ああ、これは一人用ですから。通常のは四人用テーブルぐらいありますよ。高さはこれぐらいなんですけどね」
「なるほど」
 やすかず君は、コタツの布団に入り、気持ち良さそうな表情を浮かべている。詰め所の暖房は暖炉に薪である、一応電気は通ってるがエアコンなどは置いていない。彼にとってはまだ寒かったのだろうか。
「あ、違いますよ。寒いとかじゃなくて、日本人としてはやっぱりコタツでヌクヌクっていうのが、心休まるというか」
「ああ、なるほど、たしかにそういうのはあるでしょうね」
 生まれ育った土地での習慣というのは、心を休ませる。彼にとって、コタツで暖まるというのは、ただ暖を取る以外にもっと大きな意味があるのだろう。
「おや、コタツですか、いいですね」
「断真さんもどうですか。一人用ですから、狭いですけど」
「では、少し失礼して。ああ、やっぱりコタツはぬくいですね」
「みかんもありますのでどうぞ」
 交代で見張り台に立っていた断真君が戻ってきて、やすかず君のコタツへと一緒に入る。どうやら、日本の方はコタツというものに大きな愛着があるようだ。
「シチューか、俺も手伝おう」
「あ、愛輝さん。いえ、私一人でも大丈夫ですよ?」
「料理なら多少できる」
「そうですか、でしたらこちらを」
「了解した」
 おや、これは珍しい取り合わせのような気がしますね。愛輝君が櫻君の料理の手伝いを申し出たようです。
「前逢った時は、冷たい返事しか返せなくて、‥‥ごめん」
「え? あ、ああ、そんな気にしてませんよ〜」
「そうか、ならいいんだ。ここは、これでいいか?」
「はい、ありがとうございます」
 ふむ、どうやらお二人は、なにか以前にあったようですね。私には何があったのかわかりませんが、櫻君も気にしていないようですし、仲直りできたようでよかったです。愛輝君はその後は黙々と調理を手伝っていたようですが、雰囲気は優しい感じに感じられました。
「さて、できましたよ。皆さんを呼んできてもらえますか?」
「わかりました。食事は皆で食べた方が美味しいですからね」
 しばらくして、私は立ち上がり見張りに立っているカルマ君を呼びに行く。
「カルマ君、見張りはもういいですよ。夕飯だそうです、戻ってきてください」
「わかりました。もう暗くて、ほとんど何も見えませんしね」
 カルマ君と二人で戻ってみると、食堂のテーブルが、白いシーツで綺麗にセッティングされていた。
「これ、ケイさんがしてくれたんですよ」
「綺麗に整えたほうが、美味しいお料理も、より美味しくいただけるでしょ」
「そうですね」
 ケイ君は当然とばかりに言うが、正直いままで何も無い質素な食堂だったために、綺麗なシーツだけでも随分変わるものだと感心させられた。やはり、女性の繊細さは、こんな場所でも華やかさを添えてくれるものだ。
「皿は‥‥これでいい?」
「はい、結構ですよ」
 克君と断真君がお皿を並べ、櫻君がそれに盛り付けていく。シチューにチキン、サラダなど。どれも美味しそうで、楽しみですね。
「それでは、頂きましょう」
「いただきます!」
 全員が食堂に集まり、食事の準備が整うと、一斉に食事の挨拶を行って食事を開始する。美味しい食事に舌鼓を打ちながら、私達は色々な話をした。久々に賑やかな食事で、実に楽しかった。
「ごちそうさま! 片付けは俺に任しておいてね」
「ああ、俺も料理は手伝えなかったし、せめて片付けはさせてもらいますよ」
 食事が終わると、征央君とカルマ君が率先して片付けを行なう。もちろん、私も手伝いましたよ。
「街でおみやげ‥‥買ってきたから‥‥」
 食後に克君が、ケーキを出してくれる。たぶん、これは街一番のケーキ屋のケーキだな。あそこは、甘すぎないので、私も好きなのだ。他の皆にも概ね好評のようだ。やはり、克君は口下手だが仲間を想う優しい心の持ち主のようだ。
「あら、ギター? ちょっと弾いてみてもいいかしら」
 ゆっくりと歓談していると、ケイ君が置いてあったギターを手に取った。それは、以前にここにいた兵士が置いていったものだ。
「〜♪」
「ほぅ‥‥」
 ケイ君は、ギターを弾き始めると、美しい声で歌い始める。未来への希望を謳った歌に、全員静かに聞き惚れた。
「はぁ、ミルダ元気にしてるかな‥‥」
「おや、恋人か誰かですか?」
「いえ、これですよ」
 やすかず君が、コタツに入りながら写真を取り出す。最初は、誰か大事な人のことかとも思ったが、見せてくれた写真に写っていたのは。
「猫?」
「ええ、実家に置いてきた愛猫です」
「そうですか、可愛いですね」
「はい! 凄く可愛いんですよ♪」
 やすかず君は、猫の話を色々と話してくれる。なるほど、彼はどうやら猫好きのようですね。まぁ、そんなこんなで、皆で過ごす楽しい一日はこうやって深けていった。

「それでは、お世話になりました」
「いえ、こちらこそ色々とお世話になりました」
 数日がたち、彼らが帰る日となる。この数日、特に大事に至ることも無く、平和な毎日だったけど本当に楽しかった。詰め所の前には、征央君の作った大きな雪猫がまだ残って彼らを見送る。
「それでは皆さん、身体に気をつけて、無理はしないように」
 彼らは、これからまた危険な地域へと向かわなければならないかもしれない。無理をするなと言っても無茶な話だろう。しかし、私はこの中の誰も戦いの犠牲になって欲しくないと思う。願わくば、彼らが再び元気な姿を見せてくれますように。