●リプレイ本文
●呼ばれて飛び出て〜
「‥‥社長‥‥いくらなんでも急過ぎ‥‥。この由稀さんが微妙にテンパるぐらいなんだから」
「はっはっはっ、でも来てくりゃーたで、安心したでよ」
鷹代 由稀(
ga1601)の愚痴をさらりと受け流して米田は肩を叩く。
「相談もあまりできませんでしたし、新しいペアではなく各自ソロと全体曲ですね。MCは由希様にお願いしても大丈夫でしょうか?」
「あたしから言うつもりだったから問題ないわよ」
緋霧 絢(
ga3668)はタイムスケジュールを見ながら衣装やマイクの確認をしていった。
「社長! こんな特別ステージを用意してもらって感動であります。全身全霊、全力で歌う所存であります」
気合が入っているのか、軍隊口調となった葵 コハル(
ga3897)が米田に敬礼をする。
「その意気だでよ、盛り上げ頼むだらぁ。新人になりたいって子らもいるでよ」
コハルの頭をわしわしっとなでると米田は季節外れのアロハ姿で控え室から客席へと移動した。
「皆さん、準備OKですか?」
米田と入れ替わるようにライディ・王(gz0023)が控え室に顔をだす。
「もうちょっとしたら行くから、他との調整よろしく。マネージャー」
開始の時間が近づき、傭兵達はアイドルへと覚醒した。
●このひと時は永遠に
「それでは一番手の人どうぞ」
ライブステージの一番手はリーゼロッテ・御剣(
ga5669)である。
11月だというのに観客の熱気により屋外ステージに立つリーゼは肌寒さを感じなかった。
「あっ‥‥あの‥‥私はリーゼロッテ・御剣です! ラストホープの傭兵で、空軍パイロットだったパパの愛した空を守るためにKVパイロットをやっています!」
以前撮ったCMとは違い、自分に向かってくる視線に彼女は声が上ずり、動きも硬くなる。
それでも、自分の想いを天国にいる父に届けるためにリーゼは歌うことを決めた。
「あたしの夢は宇宙に行って星の海を自由に駆け回ることです! ‥‥皆さん、あたしの歌を聞いてください♪」
〜LOVE IN THE SKY〜
♪〜〜
空に問いる言葉 君の胸に届いてる?
いつか交わした約束 君はまだ覚えてる?
胸の奥にしまってる この鼓動
あなたに届いて I LOVE YOU
どんなに遠く離れていたって いつかまた会える
その想いを羽に託し 空の彼方へ
君はそこで待っている 約束の場所で
どこまででも信じてる 君のぬくもりを覚えてる限り
空の彼方へ〜♪ 空の向こうへ〜♪
いつか交わした約束 君はまだ覚えてる?
胸の奥にしまってる この鼓動
あなたに届いて I LOVE YOU
LOVE IN THE SKY〜♪
〜〜♪
歌い終わると拍手が送られ、戸惑いながらもリーゼはペコリとお辞儀をしつつステージから降りていく。
客席にはリーゼを目で追いつつも拍手ではなく、驚いたような表情で涙を流すエミリア・リーベル(
ga7258)がいた。
(「‥‥なぜかしら‥‥? ‥‥わたくしは何故泣いているのかしら‥‥?」)
涙の伝う頬をエミリアは撫でたが答えはでてこない。
リーゼと入れ替わり、美環 響(
gb2863)がシルクハットにタキシード姿で現れた。
『摩訶不思議な時間へようこそ。しばし、現実を忘れ楽しんでください』
手に持ったコインをシルクハットに入れるとステージ一面にトランプが舞う。
白いトランプがくるくると回りながら舞い落ちる様は雪が降ってくるような景色だった。
『今度はこのトランプをハトに変えてみせましょう』
一枚のトランプを掴んだ響は再びシルクハットに入れ、一振りする。
何も起こらない。
再び振るが変化は無い。
三度目で、カラだったはずのシルクハットからハトが飛び出した。
大きな拍手がおこり、それに一礼を返すとはステージを降りる。
『この度は私はここまで。皆様、次も夢であいましょう』
トランプと共に舞うハトの羽にまぎれるように‥‥。
●アイドル応援隊!
『みんな〜、元気にしてる?? それじゃ、張り切っていってみよ〜! この大きな会場一杯に想いを伝えるよ。IMPで『Will〜光へ〜』』
雪村 風華(
ga4900)の掛け声と共にIMPのステージは始まった。
男女合わせて5人という人数だが、一年近く共に活動を続けていたメンバーでありステージは安定した動きをしている。
「コミレザんときライブいけへんかったから、今回はほんま助かったわ」
クレイフェル(
ga0435)はIMPのステージを見ながら、ほっと胸をなでおろした。
歌い続けられている歌ということもあり、ファンの方もノリが分かっているのかクレイの周りにいるファン達は揃って手拍子をおくる。
「この一体感ってええよな」
クレイも同じように手拍子をおくった。
しかし、サビに入るとリズムが変わる。
パンパパンと叩き、「ホゥ!」という掛け声で手を上げるという独特の動きになってクレイは驚いた。
「な、なんやこれは!」
「PPPH(ぴーぴーぴーえいち)と言われているライヴの決まりみたいなものだよ」
「へー、そないなのがあるんか。これで俺もファンとして一歩進んだんかな? たんたたたん、ホゥ!」
クレイはノリのままにはしゃぎつつ手拍子をおくる。
『いい、盛り上がりだねー! 人数でふーか達が負けそうだよっ』
全体曲である『Will〜光へ〜』が終わると風華がファンの熱気を褒めるようにトークをはじめる。
『え、えーと‥‥そ、そうですね』
マイクを持って話そうする絢だったが、チラチラと視線がクレイの方を向き上手く話せていないようだ。
「がんばれや、絢。俺は応援しとるで」
クレイは小声で呟き、手を小さく振る。
『次の曲に行きたいと思います‥‥鷹代さんのソロ曲、『To You』』
『新曲は来月にはつくるから、これで我慢してよねー!』
準備を終えた由稀がステージの真ん中に躍り出て、ソロ曲が始まった。
〜To You〜
♪〜〜
いつも空を見てた 君に続く空を
どこまで行ったら 逢えるんだろう
まだ見たことの無い君に
思い立って歩き出す 行き先はわからない
わかることは一つだけ キセキが君に巡りあせてくれること
〜〜♪
●歌よ、届け
〜Fly Boys Fly!〜
♪〜〜
手が届かないって諦めるの 灰色のEveryday
走り出さなきゃ 何も変わらないよ Baby
つまづいても 泥だらけになっても
カッコ悪くたって いいじゃない Hey Boys!
Fly! 大きく息吸って
Fly! 今飛び立つんだ
大丈夫 怖いのは キミだけじゃないよ
Fly! 大きく身体 屈めて
Fly! 今飛び立つんだ
さあ行こうよ あの空の彼方へ
〜〜♪
コハルの演舞など、女性陣のソロパートが終わるとラシード・アル・ラハル(
ga6190)のソロ曲が続く。
中東アラブ系の黒い肌に冬をイメージしたモコモコファーに半ズボン姿が目立っていた。
『こんなに‥‥にぎやかなステージで歌えて‥‥うれしいよ』
はにかむような笑顔をラシードが客席に向けるとキャーと黄色い女性の悲鳴があがる。
『すごく‥‥照れくさい‥‥かな?』
黄色い声援を受けて思わず鼻をこするラシードのしぐさに再び「かわいいー」などの声援が送られた。
『え‥‥と、最後に全体曲を歌って‥‥終わるよ。それじゃあ‥‥『Catch the Hope』』
声援に手を振り、お辞儀をしたあと足を肩まで広げ、手で顔を隠したポーズでイントロを待つ。
ステージが一瞬暗くなり、今まで後ろで控えていたアイドルがステージの配置につき、ライトアップと共に歌いだした。
「コハルー! かっこいいです!」
シーヴ・フェルセン(
ga5638)が歌に負けない大きな声でステージにて踊るコハルを応援する。
『応援ありがとう! 見に来てくれたみんなの為に、精一杯歌って楽しんで貰えるよーに頑張るから最後まで聴いてってねー!』
コハルが伴奏の間に客席に向かってシーヴのエールに答えた。
曲の後半は派手なダンスで飾り、ステージは幕を閉じる。
ラシードが控え室に戻ると、米田と響が話をしていた。
「どえりゃあ、手品が良かったでよ。興味があったらうちの事務所に来て欲しいだらぁ。採用させてもらうでよ」
ガハハと米田は大きく笑い、響の肩を叩いている。
「あ‥‥社長‥‥お疲れ様‥‥」
ラシードはペコリとお辞儀をして米田と響の邪魔にならないよう控え室の横に動いた。
「おー、ラッシー♪ ソロステージどえりゃぁよかったでよ、傭兵として活躍しておりゃあて心配しとっただに〜」
響との話を済ませた米田がラシードの方に声をかけ出す‥‥。
返事は小さな寝息で返ってきた。
「寝かせた方が良さそうですね。契約の件は是非、うかがわせてもらいます」
部屋の隅で眠っているラシードに毛布をかけると響は控え室を後にする。
「ええ、夢みとき‥‥先は長いでよ」
暖かい毛布に顔を包んだラシードの頭を米田は優しくなでた。
●デートのある風景
「アイドルの応援って体力つかうんでやがるです‥‥ひゃっ!」
ライヴステージの横でライディガ出てくるのを待っていたシーヴの頬に暖かい缶が触れられた。
人肌くらいにされた缶は肌寒かった体温を一気に上昇させる。
「何するですか。ライディ」
「まえに、やられていたからお返しかな? 熱すぎだったらごめんね」
「そ、そんなことないです、‥‥ありがとうです」
ライディの持ってきたホットのペットボトルをしっかりとにぎり、頬に当ててその暖かさを少しの間かんじとる。
「ライディ‥‥時間があったらデー‥‥トしたい、です」
「あ‥‥うん、いいよ」
痛くなった喉を癒すような柚子の風味漂う飲料を飲んで、シーヴはライディと一歩一歩進んだ。
「あ、ライディさー‥‥」
リーゼがライディに声をかけようとすると、風華が両手で口を押さえて引き止める。
「しっ、邪魔しちゃだめだよ。あっちで、ピザ食べにいこうか」
「ピザなら、俺が奢るでよー。未来の新人アイドルに先行投資だがね、リーゼちゃん」
風華の後ろからさらに米田が現れた。
「えっ‥‥新人アイドルって」
「詳しい話はあっちでするでよ」
リーゼの疑問に米田はにんまりとした笑顔で答えると、二人を引きつれステージ裏からピザ屋の方へと消えていった。
なお、ここまでのやり取りをシーヴとライディは一切気づいていない。
「ライディは出張販売とか行かなくていいです?」
「マネージャーがやるよりはアイドル本人の方がファンも嬉しいし‥‥気にしなくていいよ」
顔を見上げながら首をかしげて聞くと、すぐに答えが返ってきた。
自分との時間を作ってくれたことが嬉しくて、シーヴはライディの横にぴったりとくっつく。
「あ、あそこでアクセサリー売ってるです」
「本当だ、露天販売があるんだ」
しばらく歩いていると、歩道に布を引いて指輪やネックレスなどを売っている出店に二人は出会った。
ガラスを加工したものが埋め込まれ、手ごろな値段で宝石のついた指輪に見えるものもある。
立ち止まりしゃがみこんで、じーっとシーヴはアクセサリーを物色する。
「どれか買おうか? これくらいなら、俺も出せるよ」
ライディも隣にしゃがみこみ、シーヴの顔を覗いた。
「え‥‥いや‥‥いいです。シーヴが自分で払うです。でも‥‥」
「でも?」
「お揃いの何か‥‥欲しいです」
ライディの仕草にシーヴは顔を真っ赤にして答える。
「お揃い‥‥か、うーん。どういうのがいいかな‥‥」
散々悩んだ挙句、ライディが買ったのは赤と紫のガラスの埋め込まれた指輪だった。
二人の色が一緒になった指輪をシーヴは強く握り締める‥‥。
●アイベックス出張販売
「いらっしゃいませ、アイベックス・エンタテイメントの出張販売所へ‥‥ようこそ」
「なんか、それ別のお店っぽくない?」
メイド服に手枷、首輪などをつけた絢に隣で売り子している由稀が突っ込みを入れる。
新しいグッズがあるわけでもないので、人の波はコミックレザレクションのときほど酷くなかった。
アルバムCD『小悪魔の楽園』を中心に水着写真集『Catch!』や新曲合宿時に撮った写真のブロマイドなどが並んでいた。
それぞれが調子よく売れていき、自分達の人気が上がっていることを直に感じる。
「あ、あの、サイン書いてもらってもいいですか?」
「あたしと絢ので良ければ許可はもらってるよ」
「お願いします」
買いに来たファンの注文に由稀は笑顔で答えてキュキュッとサインを書いた。
「これからもIMPをよろしくお願いします」
由稀から受け取った写真集に絢もサインを書いてファンに返す。
「ありがとうございます! 大切にします!」
サインの書かれた写真集をぎゅっと抱きしめ何度も礼をしたあとファンの少年は走りさっていった。
「なんか、あたし達のほうがお礼言いたくなるよね」
「本当です」
走り去る少年の後姿を眺め、二人の心は温かくなる。
「おっと、邪魔するぜ。差し入れってやつだ」
和んでいた二人の前に、厳つい図体にピザ屋のエプロンをした男がピザを届けにきた。
「これ頼んでないんだけど‥‥」
「受け取ってくれ、コミレザでサインを書いてもらった『ソウキーズピザ』の蒼紀ってもんだ」
どこか照れたように顔を背けつつ話した男はそのまま箱に入ったピザを1つ置いて逃げる。
「こういう差し入れは‥‥いかがしましょう」
「おなかも空いてるし、こっそり食べましょ」
無表情ではあるが、明らかに困っている絢に対し、マイペースな由稀は蓋をあけた。
中にはハートの形をしたピザが入っている。
由稀が困る番になった。
●タワー・オブ・マーセナリー体験会
「やっほー。覗きに来たよ?」
コハルが『タワー・オブ・マーセナリー』のジャケットの格好で姿を現す。
「湖春だ」
「生湖春だ」
「そこ、生ゆーな」
遊んでいたヲタクっぽい人たちからそんな声がでてきたが、ビシっと突っ込みを返した。
「良かったら遊んでってください。冬のコミレザに向けての最終調整バージョンなので、エイジアフェスティバルに合わせようとがんばってましたが何とかなって何よりです」
角はエイジア学園都市に通う大学生だったのだ。
2D格闘ゲーム製作チーム『グラディア』も大学のサークルというわけである。
「ということはβ版から正式版ってとこかな? それはやらないわけにはいかないね」
ニヤリンとコハルの目が光った。
「さぁ、次はいませんか?」
そのとき、1人モクモクと対戦して勝っていた響が挑戦者を求める。
興味本位と時間つぶしで入ったが、かなり嵌っていた。
連勝10か負けたら交代ということで人は流れているが、響は9連勝中である。
「それではあたしが相手をしよう、手加減しきれるつもりないよ?」
「望むところです」
響の隣に座り、ジョイスティックをコハルは握った。
選ぶキャラはもちろん『湖春』である。
機械的な壁の広がるステージが現れ、響の操るシスターと湖春が居並んだ。
「お、やっとるなぁ。何やここだけ空気が濃いで」
「コハルがいやがるです」
対戦が始まったとき、クレイとシーヴ、そしてライディが『グラディア』のブースを訪れる。
「あ、フェルたんだ」
「生フェルたんだ」
「生とか、フェルたんとかいうんじゃねぇです」
コハル同様格闘ゲームキャラとなっていたシーヴに遊びに来ていたヲタク達から声かかり、そしてコハル同様に突っ込みを返えされた。
『Round 1 Fight!』
システム音声による合図と共に画面内の湖春とシスターが動き出した。
コミレザのときに売っていたものよりも、より滑らかに動くキャラクター達に開発に携わったコハルは興奮を覚える。
「前より操作性が上がってる? こりゃますます嵌っちゃいそうだね」
「スピードは互角、単調な攻撃メインならこちらにだって勝機はあります」
湖春からのラッシュを響の操るシスターはガードを駆使し、時折反撃をしつつゲージをためていった。
「見てるとこっちもやりたくなるわ、シーヴ。良かったら対戦せぇへん?」
シーヴもクレイの誘いに頷き、席に着く。
「隠しキャラのちー兄いるやん。こりゃあ、使わなあかんね」
コハルと響が激しくスティックを唸らしている横でクレイはゲーム内にいる義理の兄がモデルとなったボスキャラを選択した。
シーヴの方はもちろん自分がモデルとなったフェルゼーヴである。
「コミレザから特訓したんで、その実力みせてやるです」
「お手柔らかに頼むでー」
『KO! Winner is Koharu』
クレイとシーヴが対戦を始めようとしたとき、隣の席では一試合目が終わった。
「超ヒで勝てた。覚醒ラッシュされていたらやばかったね」
コハルが汗を拭って両手をブラブラとさせる。
ちなみに、超ヒとは超必殺のことであり、一発逆転を兼ね備えた正に切り札なのだ。
「このトリッキーさは僕の好みに良く合いますからね。次は負けませんよ」
二試合目が始まり、二人は再び集中する。
『Round 1 Fight』
「こっちもいくで! ちー兄がんばってくれや」
システム音声と共にクレイとシーヴの対戦が始まった。
●リアルとリアリティ
「店員さんが何か厳つかったけど、ピザが美味しかったね」
ぺろっと指についたソースを舐めて風華はリーゼと共にブラブラと出店を練り歩いていた。
「変わったメニューもあったからすごく良かった〜。何より社長の奢りだった♪」
米田より簡単な説明を受け、次回の参加においてアイドル登録ができることを知らされリーゼはウキウキである。
「こんにちは、リーゼ様。実に素晴らしかったですわ。本格的にデビューしたら是非わたくしを貴女のファン第一号にしてくださいまし♪」
不意にリーゼの前に薔薇の花束を持ったエミリアが現れ、手渡した。
「早速ファンができてるの? すごいね、何か負けそうだよぉ」
「え、そ、そんなんじゃないよっ。えっと、でもありがとう♪」
風華に小突かれ、リーゼはあわてながら花束を受け取る。
(「‥‥この先もアナタを待つのは辛い戦いの日々‥‥でも生き延びてくださいまし‥‥生きて最高の幸せを手にした時‥‥わたくしはアナタを‥‥愛しておりますわ‥‥わたくしが最も愛する人‥‥リーゼお姉様‥‥」)
エミリアは花束と共に言葉にしない愛情を渡すとそのまま笑顔で一礼をすると二人の前から去った。
二人はエミリアと別れると戦うKV達が流れるディスプレイにたどり着く。
「フォーゲルマイスター座談会会場」と記された看板が隣に掲げられていた。
KVは本物ではなく、CGによってデザインされたものだが、本物ソックリに戦場を飛び回り基地を壊したりしている。
『脅威の筐体ゲーム、フォーゲルマイスター絶賛稼動中!』
しばらくして映像が止まり、文字が流れた。
「フォーゲルマイスターって、私達を指すかと思ったらゲームのタイトルだったんだ‥‥」
打ち合わせのときに知らされていて興味を持っていた風華はそのままディスプレイの近くにあるブースへ脚を運ぶ。
そこでは傭兵と同じくらいの年齢の男女を中心に雑談をしていた。
「すごく熱い雰囲気で入りづらいね‥‥」
リーゼが人だかりを見てたじろぐ。
「あ、歌を歌ってた人」
その中で、1人10歳くらいの少女がリーゼと風華を見つけて声をかけてきた。
「お姉さん達‥‥傭兵だよね? ‥‥少しお話して欲しい」
双子らしいよく似た少女も出てきて二人を輪へと引っ張り込む。
「傭兵さんなら、1つ聞きたいんだけどさ。本物のKVの戦いってどんな感じ?」
「あんまり気持ちいい話じゃないけどいい?」
風華は明るさを抑え、真剣な目で輪にいる少年少女達をみた。
「本当の戦争は目の前で人が死んだり、友達が血まみれになったり綺麗だったりカッコいいことなんてこれっぽちもないんだ」
「私も私を庇って傭兵として生活できなくなった子が身近にいるから、分かるけど‥‥本当に辛くて大変なことなんだよ。戦うって」
風華とリーゼの言葉を聞いていたゲーマー達は重く受け止める。
「ゲームだから、楽しんでやれる。逆に私達が平和に楽しめるために傭兵達ががんばってる。そういうこと?」
押し黙っていた少女が自分なりの答えをだした。
「そう、本当に命をかけてがんばっている人がいることを忘れないで欲しいな。私らしくないかもね」
アイドルとしてではなく1人の傭兵として。
風華は伝えたい思いを伝えた。