●リプレイ本文
●ロケットパーティ
「通常の二倍の大きさ‥‥使い勝手はどうなのかしら」
高嶋・瑞希(
ga0259)は通信を受けた内容を口にだしながら、敵戦闘力を試算する。
『何でもかんでも大きければ良いというものではありませんよね?』
シン・ブラウ・シュッツ(
gb2155)が瑞希の通信を聞き、肩の力を抜けといわんばかりに楽観した意見をだした。
警戒するに越したことはないが、警戒しすぎてガチガチになっては意味がない。
『射程圏内に入りました。眼下に見えるのが件のゴーレムでしょうね』
「あれなのね‥‥街に着く前に潰したいところね」
瓜生 巴(
ga5119)の通信を聞いた瑞希は下の映像を正面ディスプレイに拡大した。
ゴーレムがのしのしと町のほうへと歩いている。
その道のりには主力戦車であるレオパルドの残骸が無残に散らばっていた。
『酷いなんてものじゃないわね。さっさと降下して足止めしましょう』
「そうね。ロケットランチャーセット投下準備完了‥‥前衛の人、隙を作るから一発かましてね」
『こちらも準備はできている、いつでも発射可能だ』
大地守(
gb0745)とシンの言葉に瑞希は頷き、準備を整えると先陣を気って降下していく。
4機のKVが次々の機体を傾けながら降下し、ゴーレムに向けてありったけのロケットランチャーを撃ち込んだ。
直撃はなかったが、気を引くことができたのか街を目指していたゴーレムの顔は頭上を向く。
戦闘(パーティ)が今、始まった。
●レッツ・コンビネイション!
戦闘機から獣へと変形した阿修羅が爆撃によって作られた隙にマドリードの大地へ降り立つ。
「大きい‥‥! なんて大きさだ!?」
阿修羅のパイロットである井出 一真(
ga6977)は敵を見上げて唸った。
肉厚なフォルムをしているゴーレムがさらに巨大になり、威圧感を強くだしている。
『訓練通りにやれば問題ない! いくぞ、デッカイゴーレム!』
ゴーレムの威圧感など、関係なく気合をいれて着地したのは火茄神・渉(
ga8569)のディアブロだ。
赤いカラーリングの機体にKVレッドマントを翻し、ディフェンダーを構える姿は『KnightVorgel』の名に相応しい。
驚く一真より先に渉機が踏み込んで斬りかかった。
『ゴォッ!』
大地が揺れるような大きな声を上げゴーレムは攻撃を受け流す。
「慣性制御でカバーしているのか、やっかいな‥‥」
『続いて慎吾、行きます! ってかァッ!』
だが、渉機に集中していた隙を屋井 慎吾(
gb3460)のディアブロは捉えた。
ガシィンとディフェンダーによる一太刀がゴーレムの装甲を斬り裂く。
「ただ、指を咥えて見ているだけというわけにもな。サンダーホーン!」
渉機や真吾機に注意が向いているところを一真も狙って攻めた。
阿修羅の十八番、装甲無視のサンダーホーンが電流を帯びながらゴーレムの脚部に絡みつく。
電流がほとばしり、ゴーレムの体内に電流を流し続けた。
『総攻撃チャンスよね。巨人退治をちゃっちゃと済ませますか』
フィオナ・シュトリエ(
gb0790)は巻き添えを食らわないよう間合いを取り、ガドリング砲をゴーレムに叩き込んでいく。
『よっしゃ!』
『くたばれぇぇぇっ!』
ガドリングの砲撃にあわせ、渉機の高分子レーザー砲、真吾機の20mmバルカン砲が続いた。
光線と弾丸の雨にさらされ続けていたゴーレムだったが、突如叫び声が響く。
『ゴォッ!』
ゴーレムの周囲に巨大な爆発が起きた。
「くぅっ!」
衝撃と爆風に煽られ一真は吹き飛ばされる。
一真が体勢を立て直そうとしたとき、レーダーに別の機影が映った。
それは足元にまで来ている。
「な、なんだ‥‥」
飛び出してきたのはドリル状の衝角(ラム)がついたモグラのようなワームだった。
「増援‥‥また面倒な」
一真は吹き飛ばされたときに切ったであろう口から出てくる血を指で拭い、操縦桿を強く握りしめた。
●モグラ叩き・インストール
突如現れた3機のモグラワームはゴーレムを近距離で一発当てた一真機、渉機、真吾機へ不意打ちと共にワイヤーを伸ばして補足する。
『そう簡単にやらせはしない!』
シンのアンジェリカから高分子レーザー砲がモグラワームに向かって放たれた。
『あなた達の相手は私達よ』
守のミカガミも接近仕様マニューバを発動させ、ナックルフットコートにて殴る。
「もう少しがんばっててくださいよ」
味方の戦闘を見守るように巴はこそこそと地殻変動装置を設置していった。
グラナダ本線でつけていたのが不幸中の幸いである。
レーダーで補足しきれるといっても識別をはっきりさせ先を読むためには振動感知をしたい。
『ちっ、地下に逃げられた』
KVと同じくらいのサイズのワームは再び潜った。
『ちょっと、早く巨人退治の援護にきてよ!』
1人狙われていなかったフィオナ機はゴーレムからラッシュを受け、それをセミーサキュアラーで受け止めている。
巨体の割りに軽めのフットワークでゴーレムの反撃が続いていた。
『巴ねーちゃん、協力するぜ!』
『私も変動装置を持っていますのでセッティングします』
渉機と瑞希機から通信が入り、それぞれが設置した地殻変動装置の情報が伝えられてくる。
「ありがとう、渉さん。後でご褒美あげますよ」
計測された情報を多機能ディスプレイの一角に展開させた画面ウィンドウの一つに割り当てて整理し、巴は3機のドリルワームの行動範囲とそれに伴う数字をはじき出した。
されにそれを戦域をイメージした円形のマップに点を記述する。
「ゴーレムと派手に暴れている人のデータを除外。振動をDに振り分けっ」
KV搭載のCPUをフル稼働させた。点が網目のように結ばれ、戦域マップにくもの巣ができあがる。
その一つの網に赤い反応が浮かんだ。
「振動感知! 私ぃっ!?」
察知した赤い反応はまっすぐ巴の方へ向かってきている。
「ええ、いいでしょう。相手になってやりますとも」
どこか自棄気味の口調で巴は雷電の出力を上昇させた。
赤い反応が強くなり、レーダーでの巴とドリルワームの位置が重なる。
ズドォと地面が一瞬くぼんだかと思うと足元から敵が飛び出してきた。
「二度ともぐれないようにしてやります」
ドリルを回転させて突撃してくるワームを超伝導アクチュエーターを発動させた巴の雷電が受け流すように軌道をそらす。
そのまま地面に仰向けになるように投げつけ、腹に135mm対戦車砲の砲身を当てると零距離で二発叩き込んだ。
衝撃でびくっとなったドリルワームはそのまま爆破し、沈黙する。
『うわー、巴姉ちゃんかっこいい。狙ってたの?』
「べ、別にこういうことがしたくてこの装備しているわけじゃないんだからね!」
渉からの賞賛をなぜかツンデレっぽく返す巴であった。
●巨人を狩る
『大きい分狙いやすくはあるからね。確実にダメージを与えていくよ』
ゴーレムからのラッシュを防ぎきったフィオナ機が反撃にでる。
攻撃を受け、削れかけたセミーサキュアラーを振るいあげた。
雷電の背中にある4連バーニアが火を噴きゴーレムに迫る。
『ゴォッ!』
踏み込み、斬ろうとしたときゴーレムも背中のブースターを吹かせ飛んだ。
「わはー、あの巨体で飛んだ!?」
太陽を背にするようにゴーレムは飛び上がり、次の瞬間急降下してくる。
『むちゃな戦いするじゃねぇかよ! その方がこっちも燃えるってもんだぜぇぇぇっ!』
まとわり着いていたドリムワームを引き剥がした真吾機が着地の隙を逃さぬようゴーレムに迫った。
『同時攻撃いくよ!』
「おう、逃してたまるか!」
フィオナの掛け声で渉も合わせて攻撃に出る。
真吾機の攻撃を受け止めようとゴーレムが手をかざした。
『うらああぁっ!』
瞬間、アグレッシヴフォースが発動し真吾機のディフェンダーがかざしたゴーレムを腕をそのままの勢いで貫く。
『腕一本なくなれば、自慢のラッシュはできねぇぜ!』
『ゴォォッ!』
貫かれた腕の痛みを感じているのか、強く叫んだゴーレムは真吾機を振り払おうと腕を薙いだ。
『あぶなっ! 不規則に暴れられる方がよっぽど困るわよ』
「へへん、だけど足元が疎かだぜ」
それでも渉は間合いを詰める。
ゴーレムの胴体からガドリング砲がせり出し、弾幕を張り出した。
『オイラのマントはただのマントじゃない! ヒーロー魂を込めたマントだぜ!』
鉛の雨にさらされるがKVマントですべて受けきる。
銃火にさらされボロボロになるが、それでもゴーレムの懐に入りきることができた。
「でっかいからっていい気になるな! こういう攻撃もあるんだ! いくぞ! スイッチオン! ビームの爪で切り裂いてやる!」
渉のディアブロが機爪「プレスティシモ」に獲物を持ち替え、ゴーレムの足元から胴体のガドリング砲、そして背中のブースターまで切り裂く。
『ほーら、こっちも忘れちゃだめだよっ!』
フィオナ機が超伝導アクチュエーターを込めたセミーサキュアラーを横に薙いだ。
ズシャァと渉によって傷ついた胴体に一閃が入り内部の機械を斬る。
『これで、トドメだ。さっきのお返しをさせてもらう! ソードウィング、アクティブ! 幾ら装甲が厚くたって!』
ドリルワームを味方が引き剥がしてくれたため、フリーになった一真機はソードウィングでゴーレムを一刀両断した。
「やったな。連携の勝利ってヤツだ♪」
渉は強敵を倒した興奮に浸る。
『まだ、ドリル野郎は無事だからそっちを片付けちまおうぜ』
「そうだな、まだまだ行くぜ!」
真吾機とハイタッチを交わすと渉はディフェンダーを構え、地殻変動装置と情報リンクをし始めた。
●もぐら叩き、完結
主力であるゴーレムが沈み、一体のドリルワームを屠った今、残った敵を逃がさず倒すことが先決である。
「大勝負に出る! 援護を!」
シンはゴーレムを倒し終えた味方機にも声をかけ、一気に叩こうと動いた。
温存していたSESハイエンサーを起動させ、飛び出すタイミングに合わせて高分子レーザー砲を叩き込む。
腕や足を無理に狙っていては当たらなかったため、とにかく倒すためにエネルギーを集中させた。
『ロックオン、これでおしまいです』
レーザー砲で吹き飛んだドリルワームを瑞希機のスナイパーライフルD−02が貫く。
地上に無理やり引きずり出されたドリルワームは撤退するまもなく倒された。
『負けていられないわね。こっちもトドメの大技行くわよ』
『敵は熱源と振動でよってきているかもしれません、現在地は近いので何か出力を上げればひきつけられるかも?』
守機がシンの動きを見て感化されたのか敵を倒そうと意気込む。
巴がそれを補佐するよう通信を送った。
返事の代わりにミカガミの片腕にエネルギーが集中する。
内臓された雪村が発動しタイミングを見計らって地面へと突き刺した。
ミカガミの立つ地面が震えると、レーダーから敵の反応が消える。
「全機殲滅完了。お疲れ」
シンは周囲の反応を確かめた後、一息ついて覚醒を解いた。
「ドイツにもこんな敵がいずれくるのでしょうか‥‥」
ヨーロッパの大地であることを改めて確認すると、シンは誰にともなく呟く。
『どんな敵が、どこに来ても、私たちが戦って倒せば大丈夫よ』
雪村を落とした守機がシンのアンジェリカに近づき肩を叩いた。
「そうですね。でも、今は帰ってケーキでも食べたいところです」
『私もご一緒してもいいですか?』
激しい戦闘の後とは思えない気楽な会話。
だが、それが彼らの力の源なのかもしれない‥‥。