●リプレイ本文
●シンクロ率↑↑(あげあげ)
「凛華ちゃん♪ 忙しいのにありがと〜あなたと一緒に居ると、リラックス出来て好きなの〜」
「急に来たからびっくりしたわよぉ。お店の方も早く閉めちゃったんだから」
銀髪チャイナドレスの女性達がカウンターできゃぴきゃぴしている。
「会うたびに思うのだが、二人とも我より女性らしいぞ?」
二人に突っ込みを入れたのはリュイン・カミーユ(
ga3871)だ。
空になった大ジョッキを片手にふぅと息をついて、いちゃつく(?)ナレイン・フェルド(
ga0506)と凛華・フェルディオを見る。
見た目は未成年に見られがちだが、リュインは成人だ。
もっとも、仕草は親父くさいと弟によく言われている。
「やぁねぇ、肌が違うわよー。このモチモチ感は化粧やエステなんかじゃマネできないわぁ」
「本当よねぇ、冬は特にお肌の荒れが気になっちゃうわ」
リュインの肌を指でぷにぷにと凛華は弄りだし、ナレインも同じようにリュインを触った。
「二人して我を弄るのをやめろ!?」
「仲が‥‥いいんだね」
イスル・イェーガー(
gb0925)が銀髪3人娘(?)の隣で静かに食事をしている。
「ナレインちゃんとは親友だものねー?」
「ねー? そうそう、紹介していなかったわね。私の可愛い弟分のイスルちゃんよ」
静かに食べていたイスルをナレインは引き出して凛華に紹介した。
「あ‥‥その、‥‥なー姉がお世話になって‥‥ます」
ナレインに抱きしめられながら紹介され、イスルは顔を真っ赤にしながら凛華にペコリとお辞儀を返す。
「可愛い子ね、メイクとか似合いそう♪」
「もー、イスルちゃんにそんなことしちゃだめよー」
「わわ‥‥なー姉くっつきすぎ」
「本当に汝らは男性なのか? 我が情けなくなってくる。キャロライン、ビールジョッキの代わりくれ。あとハバネロバーガーもだ」
終始ノリノリな二人に圧され気味のイスルとリュインであった。
●腹が減っては収録は出来ぬ
「前回懲りたからな、番組前に腹ごしらえさせてもらうぜ‥‥魚はないのか?」
アンドレアス・ラーセン(
ga6523)がテーブルでメニューを眺めているとキャロラインがフィッシュバーガーを置く。
「裏メニューって奴さ。ライディに聞いていたからあらかじめ用意しておいたのさ」
「キャロルさんお元気でしたか? ロデオの景品のメダル大切に取ってありますよ。と・こ・ろ・で! ステーキください、ステーキ。うっうっ、牛肉(うしにく)〜」
フォークとナイフを頭上に掲げ、謎の踊りを葵 コハル(
ga3897)は踊ってステーキを催促しだした。
「ステーキはあっちで焼いたのが並んでいるから好きに食べていきなよ」
「うーん、今はお邪魔かな? ハジメマシテの差し入れ」
ラウル・カミーユ(
ga7242)は注文をまとめているキャロラインに持ってきた『マロンタルト』と『マドレーヌ』をどう渡そうか悩む。
「受け取っておくよ。厨房の方でバイトの子と一緒に食べるさ」
迷っているラウルの手からデザートを受け取るとキャロラインはそのまま厨房の方へと戻った。
「あ、アリガトー」
「ラウルも来てたですか。ライディもアンドレアスもなくなる前に食うです」
キャロラインと入れ替わりにテーブルに来たのはシーヴ・フェルセン(
ga5638)である。
とあるお願いをしたため、代わりに給仕の手伝いをしているのだ。
制服でもある茶系のエプロンドレスに身を包み、トレーに乗せたバーガーをライディ・王(gz0023)とアンドレアスに出す。
「あ、ありがとう。丁度‥‥おなか空いていたんだ」
「あー、俺はフィッシュバーガーがあるから‥‥」
シーヴが持ってきたのは人間の顔ほどもある
「折角だから俺が貰おう」
「む‥‥ホアキン」
いつの間にかテーブルに座っていたホアキン・デ・ラ・ロサ(
ga2416)にシーヴはやや嫉妬深い目を向けた。
「王、こういうチャンスをもうけてくれて感謝する。ラジオの開設を手伝ったのが一年前というのが懐かしく思うよ」
「ホント一年間良く続けてると思うヨ。えらいぞ、ライライ!」
「げほっけほっ、急に褒めないで‥‥」
突然の祝辞にハンバーガーをほおばっていたライディがむせだす。
「うー」
シーヴの嫉妬の目が強くなった。
ホアキンは『Wind Of Hope』開局当初からライディと関わりがあり、シーヴとは5ヶ月近く時間の差がある。
もっと早くライディと会えていればと今のシーヴには思えて仕方がない。
「これ以上は恋人が妬くからやめておこう」
「「こ、恋人!?」」
改めて言われることでライディもシーヴも急に意識をして真っ赤になった。
そんな二人を眺めてホアキンはふっと笑う。
気持ちの整理はついた。
●希望の風に乗せて感謝を
『ライディ・王の『Wind Of Hope』 本日はウェスタン・バーBigshotより中継でお送りしています』
「ふ〜ん、ラジオ中継やってるんだね。でも、こっちの方が‥‥」
幻堂 響太(
gb3712)がテーブルの上にずらっと並んだ料理をリスのようにもしゃもしゃと食べていく。
『今日は僕からの壮行会ということで番組をこちらで行っています。美味しい料理と数々の催しを皆さん楽しんでください。もうすぐロデオ大会の方を行いますので参加希望者はスタッフの受付をすませてください』
「ロデオの受け付けはこちらです」
ライディのナレーションにあわせて病み上がりながらも参加しているハンナ・ルーベンス(
ga5138)が精一杯手伝っていた。
「こういうイベントは楽しんだものが勝ちですから、やらせていただきましょうか」
ハンナの前に来たのは借り物の白いスーツを着込んだ美環 響(
gb2863)。
腰まで長い黒髪を揺らしながら受付を済ませた。
「んぐっ! 俺も受付しなきゃっ」
口の中にためていたナッツをまぶして揚げた料理を飲み込んで響太は受け付けに向かう。
「運動前に僕も腹ごなしをしていきましょうか」
響はテーブルに並ぶケーキを先に食べだした。
●ファイティング・ブル〜前半〜
ロデオ大会が始まると、アンドレスがチョイスしていたカントリーミュージックがBGMで流れ出した。
「ふふふのふ。そう容易く能力者ロデオチャンピオンの座を渡す訳には、行かんのだよっ! 葵コハル、行きまーす!」
メイド服を身に纏い、メカブルへとコハルは飛び乗る。
ガックンガックンとメカブルが揺れだし上に乗ったコハルを振り落とそうとした。
「余裕余裕〜、どうせならアピールをしちゃうよー!」
ラスト10秒になったとき、コハルは立ち上がってポーズをとろうとする。
しかし、スカートの裾がひっかかり、まさかの転落。
優勝候補が消えるという事体が起こり、会場は大いに盛り上がった。
「やるからには負けられない!」
ストレートロングをポニーテールにまとめ、ナレインは気合を入れてブルにまたがる。
スリットの深いチャイナドレスから見える白い足がどこか色っぽい。
「すごく揺れるっ! で、でも落ちないようにしなきゃっ‥‥」
グルングルンと動くメカブルから振り落とされそうになるも、ナレインは必死にしがみついて耐えた。
「ナレインさん大丈夫ですか? 僕の手を掴んでください」
競技時間が終わってもメカブルにしがみついているナレインに響が手を差し伸べ、ゆっくりと降ろす。
変わりに響がタキシード姿で難なく乗りこなした。
「色気では勝てないかもしれないが、技で勝負だな」
響と入れ替わるようにホアキンが袋を小脇に抱えてブルに飛び乗る。
30秒後、勢いよく暴れる機械の牛を両足で強く挟み、抱えていた袋から3個のボールを取り出した。
「あれはジャグリング用のボール‥‥僕もああいうのをやればよかったですね」
普段から奇術をたしなむ響は瞬時にホアキンのやろうとしていたことを見抜く。
響の予想通り、ホアキンは手に持ったボールを右手から左手に左手から右手に外側から内側へ投げた。
ボールの軌跡8の字を描くカスケードが暴れ回るメカブルの上で披露される。
高難易度の技であり、大きな歓声が会場に生まれた。
競技時間が終わるころ、ボールを上空へと投げホアキンはすべてキャッチをしつつ宙返りで着地する。
大きな拍手へ軽く手を上げて答えると舞台から脇へと下がった。
●ファイティング・ブル〜後半〜
「今回は乗りこなしたいものだな」
景気付けとばかりにエル・ディアブロと呼ばれるカクテルをぐいっと煽りリュインはメカブルを睨んだ。
上にまたがり瞳と髪を金色に光らせて、暴れ牛を乗り回す。
「沈め、今度我を落とすのならば壊すぞ」
振り落とされないようにしがみつきながらも、リュインはメカブルを怒鳴り散らしてややギリギリながらも乗りこなした。
「シーヴの守護ルーンは暴れ牛です」
覚醒したシーヴは右手甲にケン、左手甲にウルのルーンが浮かびあがらせて、スカートを翻しメカブルに乗る。
努めて冷静にメカブルの動きを見切り、振動にあわせて体を動かした。
ひらひらとスカートが揺らし、髪も合わせて跳ね上がらせる。
シーヴが終わると、最後の登録を済ませた響太がメカブルに乗った。
「皆すごいなぁ、俺も落とされないようにしないと」
並み居るベテラン能力者たちが上手く乗りこなしているのを見て、響太はビクビクしつつメカブルにまたがる。
グルングルンと揺れるブルに必死にしがみついたが、途中で振り落とされてしまった。
「あいたた、これを乗りこなすなんて皆すごいなぁ。俺も追いつけるようにがんばらないとな」
ぶつけた腰をさすりながら立ち上がり、響太は強い決意を決める。
『ロデオ大会はただいまを持って終了です。そのまま次のダーツ大会まで放送を聞きながら食事や雑談をお楽しみください』
場内アナウンスをライディが流し、1つのイベントが終了した。
●感謝の言葉を
『それでは、お手紙の方を読ませていただきます。本日のテーマは『感謝』です。心あたりのある方もいると思いますのでちゃんと聞いてくださいね?』
『
‥‥僕が感謝したいのは、今まで会った人です‥‥
いろいろ教えてくれて‥‥面倒見てくれて‥‥一緒に戦ってくれて
‥‥神無月姉さんも、水無瀬せんせいも、ミズキ隊長も、なー姉ぇも
‥‥みんな、ありがとう‥‥大好きです
RN:ツンデレボーイ
』
「ふふ、イスルちゃんね。私からもありがとう♪ 大好きよ」
柿ピーチョコを食べていたナレインがメールを聞いて赤くなっているイスルを思わず抱きしめた。
「あ‥‥あわわ‥‥」
ナレインに抱きつかれ、嬉しいやら恥ずかしいやらイスルはただただ身を任せるだけである。
『大好きという言葉は言いやすいようで中々伝えづらい言葉ですね。次のお便りもそういったものです』
ライディが会場で抱き合う二人を眺めながら、微笑ましくリスナーから届けられた感謝の手紙を読んでいく。
『
ありがとう
共に空を駆けてくれた小隊の皆
いつも応援してくれた希望の風
あなた方と共に、俺は珠玉の時を過ごせた
思い残すことなく、俺は新たな道を行くよ
RN:青空の闘牛士
』
『
『ありがとう』と言おうかと思っても、なかなか言えない相手がいる
日頃が非情に鬱陶しいからで、偶に感謝しようと思っても伝えられない
というか、言ったら絶対調子に乗るだろうから、伝えない
それでも時々は感謝しているのだと、今少しだけ教えておこう
RN:紫薊
』
「時の流れ‥‥でしょうか、寂しくなりますね」
ハンナは葱の刺さった串焼きや、あったかいコーンスープを会場の角で少し食べつつ想いにふけた。
自分も変わったが同じように変わった人もいるのだろう。
出会いがあれば別れもある‥‥それは敵も味方も、だ。
『青空の闘牛士さんには本当にお世話になっていますね。開局からずっと見守っていただきありがとうございます。新たな道にも希望の風が吹くことを僕の方からも祈らせていただきます』
ライディは言葉と共に大きくお辞儀をした。
本心から感謝をしているし、言葉だけでは足らない。
『業務連絡です。ダーツ大会の受付が始まりましたので、赤い髪のスタッフの方へお知らせください。では、最後のお便りと共に一曲お届けしようと思います』
『
感謝しています
私を取り巻く何かが変わり、私の心も何処かが変わり‥‥
それが良い事なのか悪い事なのか今は未だ判りません
でも、今‥‥私は皆と共に生きています
この喜びを‥‥ありがとう
RN:マリア
』
メッセージの後にゆったりとした曲が流れた。
「まだ、疲れが取れませんが折角ですからダーツを楽しむとしましょう」
曲と共にスープを飲み干し、ハンナも立ち上がるも中々一歩踏み出せない。
(「前に進もうと決めたのにこんなことではいけませんね。‥‥そうでしょう? レナーテ院長」)
今は亡き大切な人の名を胸に抱き、受付をしている赤髪の義妹の下へハンナは一歩踏み出した。
●ブルズ・アイ!
「スナイパーに勝てる気がしないのだよな‥‥離れた的を射抜くよりも目の前の顔を殴る方が性に合っている」
リュインがダーツをボードに投げつつ苦笑する。
隣ではホアキンがスナップを利かせて的を射抜いていた。
ルールはソフトダーツのカウントアップで、点数の合計を競う簡単なものである。
「ふむ、中々いい点数かな?」
具合が分からないが割と中心を取れたリュインはそこそこ納得してハンナと替わり、ホアキンの方もラウルと交代をした。
「スナイパーとしてこれは外せませんよね」
「ハナちゃんもスナイパーだったっけ? よろしくねー?」
にこっと笑うラウルにハンナも微笑を返す。
ダーツを手にとり的を見つめると二人の表情が険しくなった。
ハンナは一投、一投丁寧に投げるも体調不良の影響か中心より外れたところにダーツが刺さる。
しかし、的を外さないところは普段の鍛錬の賜物といえた。
「ハナちゃんやるね。折角だから、ちょっと技を『魅』せようカナ」
隣のハンナの技を見て、対抗意識を燃やしたのかラウルは矢を置くとおもむろに目隠しをしだす。
再び投擲ポーズをとり、見えない目でダーツボードを狙った。
呼吸を整え、ダーツを投げると的にギリギリ刺さる。
「もう少しで外れるところだったぞ」
リュインのその言葉を聞き、ラウルは頭の中のイメージを修正した。
そのまま7本のダーツを投げきり、見事すべて的に収める。
「点数はどうだ!」
コンピューターによって集計された点数をみるとホアキンやリュインより低かった。
「うーん、残念っ。リュンちゃんに負けちゃったよ」
「目隠しの愚弟に勝っても我は微妙に嬉しくないぞ」
「次は僕1人ですかね」
ラウルやハンナと交代して響がスローイングラインに立つ。
一本がど真ん中を射抜いた。
「ブルズ・アイか中々やるじゃないか」
その様子を見ていたホアキンがテキーラを片手に静かに笑う。
勝者は誰か、まだ分からない。
●サプライズ・ワン
「えーっと、次は手紙を読んで‥‥」
「よう、ライディ。その先は俺とコハルに任せてくれ」
タイムスケジュールを眺めて、次の準備を仕掛けていたライディをアンドレアスが肩を叩いて止める。
「そそ、もっと重要なお仕事‥‥いや、使命がライディ君にはあるんだよ」
コハルもサラダバーをボリボリと食べながらチラチラとライディの方を見て悩んでいるシーヴを見るよう促した。
「次はダンスだよな? 俺のいいたいこと流石にわかってくれるよな? ライディ」
ニヒルに笑うアンドレアスがライディに顔を近づけ、小声で話しかける。
「誘えってことですね‥‥でも、僕が皆さんに感謝するための企画で‥‥」
「それならなおさら彼女を大事にしなきゃだめだよ。男なんだからしっかりするっ!」
顔を赤くして迷うライディの背中をコハルはバシンと叩いて送りだした。
シーヴの前に立ったライディが頭を掻きながら2,3言はなすとシーヴの顔がぱぁっと明るくなりブンブンと首を立てに振る。
そこまで確認したアンドレアスとコハルはパーソナリティ席へとつく。
『さーて、ライディ・王の『Wind Of Hope』、いよいよ盛り上がってきたわけだが! 盛り上がりすぎてライディもダンスに参加だぜ!』
『というわけで、こっからは葵コハルと、音響担当のアンドレアス・ラーセンがお相手だぁ!』
リハーサルもなく、アドリブでの番組進行をコハルとアンドレアスは進めていった。
『さぁ、まずはお便りからいくぜ? え? 俺の声に聞き覚えがある? そんなお前さん達は相当なメタルマニアだな』
『マニアックな人にしか知られていないアンドレアスさんに誰か愛の手をください』
『おいおい、そういう突っ込みはないだろう? とにかく感謝の手紙いくぜ』
『
今こうしてみんなと過ごせる事が幸せ‥‥
感謝すべき事だと思っている、でも
一番は、みんなが笑顔でいてくれる事‥‥
その笑顔に勇気を、元気をもらえる
みんなの笑顔に感謝してるの(微笑)
RN:青
』
『
過去を受け入れてくれて、ありがとう
今を受け止めてくれて、ありがとう
未来を考えてくれて、ありがとう
たくさんの大切な人達へ、心からの感謝を届けたい
ありふれた言葉しか浮かばないけれど
――ありがとう
RN:紫水晶の影
』
『シンプルな言葉ほど気持ちが伝わるよね。あたしもこうして番組にもでて、アイドルにもなって活動できて本当に感謝してるよ。ありがとう。本当にそれしかいえないよ』
アンドレスの読んだ手紙に対し、コハルが感慨深く頷きながらコメントをつける。
『感謝の心を忘れたら人間お終いなんじゃねーかと俺は最近思うんだわ』
やや砕けた喋りながらもアンドレアスが自分の思いを口にした。
心が傷つき周囲に迷惑をかけたことを後悔するよりも、支えてくれたことを感謝したい。
『んじゃま、あたしも読むよー』
『
迷ってばかり
揺らいでばかり
辛いこともたくさんあった
それでも今ここにいることを幸福だと思う
だから
今まで出会った全ての人と
これから出会う全ての人に
心からの感謝を
欲張りすぎ? 海賊だからしょうがない!
RN:空飛ぶ海賊
』
『
やっぱり、人と人とのつながりに感謝だよね
だって、一人ぼっちじゃ何も出来ないもん
RN:ナッツ大好き
』
『
たくさんの人達に支えられ、忘れていたモノを思い出せました
柔らかに降り注ぐ言葉
そっと背中を押してくれた手
見守ってくれる眼差し
全てが大事で、心からの感謝を送る宝物です
ありがとう
笑顔の花を咲かせてくれた風も、ありがとう
これからも宜しくです
RN:紅の炎
』
『おい、何か妙に固まってないか?』
『気にしちゃダメー。何だかんだで、皆であった人すべてに感謝をしたいんだね』
『ま、そうみたいだな』
アンドレアスは突っ込みをスルーされ、どこか居心地悪そうにトークを続ける。
『この一年は番組ともども変化の有った人が多いと思うけど、来年も変化し続ける年でありたいよね。新しい出会いをして、その人たちに感謝できるような』
『そして、またこの番組でそういう感謝を言えればベストだな。一曲いくぜ、初めの方に戻るがメタルマニアだっていったのは最近、俺はライヴ活動再開したからだ。聞いてくれ【Titania】で『Moonrise』だ』
アンドレアスはコハルの言葉に頷き、一曲を流す。
秋の夜に作った旅立ちの曲を‥‥。
●Dance Dance Forever
「え‥‥ダンスはやったことないから下手‥‥だよ?」
「楽しむ事が大事なのよ、ね? ラウルちゃん」
「そゆことだよー。相手は凛華サンがやってくれるよ」
「おネェさんがリードしてあげるから安心してねぇん?」
イスルはラウルやナレイン、そしてここで出会った凛華に諭されダンスステージの方へ上がる。
他にもライディとシーヴもいた。
『それじゃあ、ダンスを楽しんでくれよ。一曲目は西部時代によく使われた軽快なダンス曲だぜ』
アンドレアスのアナウンスと共にハーモニカやアコーディオンの音色がなり聞いているだけでどこかワクワクしてくる。
「なんだろう‥‥体が動く‥‥かも?」
イスルは不思議な感覚を得ながらも目の前で踊る凛華やナレインたちの動きを真似て踊りだした。
上手く踊れなく、ぎこちないかもしれないけど一緒にいられることが嬉しい。
そんな気持ちでイスルの心は満たされた。
「見ているだけのつもりでしたが、楽しそうなので参加させてもらいましょうか」
ステーキを食べ終えた響がナプキンで口を拭いステージへと立つ。
ナプキンはそのまま使って小さな人形をタップを踊るような動きで響は作り出した。
小さな人形と共にしばらく踊っていた響だが、すぐに物足りなくなりテーブルクロスを拝借するとサイズの大きい人形をあっという間に生み出す。
「すごい‥‥響さんって、魔法使いみたいだ」
「出来れば奇術師と呼んでいただければ幸い」
驚くイスルにウィンクを返すと人形を宙に上げてキャッチしたりダイナミックな動きを見せた。
「シーヴは‥‥ぼ、いや俺と踊って楽しい?」
フォークダンスのような感じで踊るライディが不意にシーヴに問いかける。
「楽しくないわけ‥‥あるわけないです」
なれていないのか、それとも嬉しすぎるのかシーヴの言葉はおかしかった。
でも、それが逆にライディには気持ちがこもっているように感じシーヴの手を引き寄せて抱きしめる。
「ら、ライディ!? ひ、人前で恥ずかしいです」
突然のライディの行動にシーヴの顔が髪の色のように真っ赤になった。
慌てふためくシーヴの視線がハンナと合う。
ハンナはただ優しく微笑み返した。
●サプライズ・ツー
「で、それがシーヴに頼まれていたケーキというわけか」
「そういうことさ。聞けばライディのラジオの開局一周年を祝いたいっていうじゃないか。健気ってもんだろ?」
厨房でホアキンとキャロラインは料理を用意している。
ライディの注文した壮行会のものではなく、シーヴからの注文で用意している二次会用のメニューだ。
「確かに‥‥。傍にいるというだけで救われるものだな。いなくなると急に心が冷える」
キャロラインに言われたとおりのピザをオーブンで焼ながらホアキンは呟く。
「大切な人がいなくなって寂しいって思うのは分からなくもないさ。でも、どこかで心の整理つけないとね」
「まったくだな‥‥だが、ありがとう」
キャロラインの言葉にホアキンは苦笑をもらした。
●おめでとう一周年
『えーっと、どうも交代しました。ライディです』
『サブパーソナリティも交代ですシーヴ・フェルセンです』
二曲目のゆったりしたダンスも済ませたライディとシーヴがパーソナリティ席へと戻ってくる。
『番組も終盤となりましたので、大会の方の結果発表をさせていただきます。ですが、申し訳ありません‥‥プレゼントが用意できませんでした』
『ライディはちょっとドジです』
『いろいろとプレゼントを考えたのですが、いいものが浮かばず祝辞だけとさせていただきます』
シーヴのツッコミを受け苦笑を返しつつも進行を続けた。
『まずは、ロデオですがホアキン・デラ・ロサさんが文句なしにトップです。ジャグリングを上手くこなしていました』
『さすがです』
拍手が起こり、厨房から遅れて出てきたホアキンは軽く手を振って会釈をする。
『ダーツ大会の方はラウル・カミーユさんです。点数では確かに振るいませんでしたが、目隠しによるハンデの上なのでこういう結果と判断されました』
「ライライー、何か特別扱いみたいでちょっと恥ずかしいぞー」
「大声で言うな。そっちの方が恥ずかしい」
ライディの発表にラウルが抗議をするも、リュインにとめられた。
『最後にダンスの方ですが、奇抜な演技を見せていただいた美環 響さんとさせていただきました。おめでとうございます』
「狙っていたわけじゃないのですが‥‥できれれば本当の女性と踊りたかったですね」
「あらぁ、ナレインちゃんの友達なら私が相手してあげたのにぃ」
照れる響に凛華が擦り寄り、それをイスルもナレインも微笑ましげに見る。
『最後にMVPの表彰をしたいと思います』
『え‥‥その予定は‥‥』
シーヴの言葉にライディが戸惑った。
タイムスケジュールにもない流れだったのは言うまでもない。
『MVPは一年間がんばったライディ・王氏です。シーヴ達にこういう場所を作ってくれてありがとうです』
「そういうことさ、ほらケーキだよ」
シーヴの言葉に拍手が大きくおこり、それと共にキャロラインがケーキをホアキンがピザをテーブルごとに運んできた。
『えっ、え‥‥ああ、もう何もいえなくなるじゃないか』
ライディの目に涙が溢れ、言葉が出てこなくなる。
「最後までしっかりやれよ。‥‥また、いつかな」
ライディの前にピザを置き、以前この店で書いた寄せ書きを懐かしそうに眺めるとホアキンはライディへの拍手にまぎれるようにBigshotから去っていった。
「ありがとうございます。ホアキンさん‥‥また、いつか」
マイクに入らないような声でライディはホアキンを見送る。
この約束が再び希望の風が運んでくれることを心から願って‥‥。