●リプレイ本文
●開幕!
ボンボンボンと住んだ青空に色とりどりの煙球が打ちあがる。
「プロとしては手は抜けないにゃー」
その煙球の下、ラストホープ総合運動公園では傭兵達がギャラリーに囲まれながら準備運動をしていた。
女性陣の多くはブルマ姿で別な方向に気合が入っているように見える。
「それじゃあ開幕から元気に行ってみようにゃ♪」
主催の方から用意されていた体操服、ブルマで猫耳に尻尾つきという姿で西村・千佳(
ga4714)は気合を入れていた。
「ちっかちゃーん、がんばってー!」
魔法少女アイドルとして活躍している千佳を応援するファンは少なくない。
「負けていられませんね。社長も見にきていますしね」
ミオ・リトマイネン(
ga4310)はお色気アイドルに恥じない体を体操服で包み、胸をたゆんたゆんと揺らしながら千佳と一緒に開幕イベントのステージに躍り出た。
すでに主催者の挨拶などは終わっている。
ミオと千佳の選手宣誓のあとイベントステージが開催される流れとなっていた。
ギャラリーから拍手を受け、ステージの上で二人はマイクの前に立つ。
『それでは能力者の代表者として現役アイドルでお二人より選手宣誓の挨拶をお願いします』
シーヴ・フェルセン(
ga5638)の声が会場に響き渡ると歓声が止んでステージに視線が集中した。
「宣誓! ボクたち」
「私たちは」
「「スポーツマンシップにのっとり、正々堂々戦いあうことを誓います!」」
二人の挨拶が終わると拍手がおこり、傭兵大運動会の開催が示される。
『それではここからは私と千佳さんによるミニライブを行います。即興ですが、楽しんでいただきたいと思います』
マイクを取ったミオがそういうとライディ・王(gz0023)がアコースティックギターをミオに手渡した。
『明るく元気に ごーいんぐ・まい・うぇい! 聞いていって欲しいにゃ』
千佳がマイクをミオから受け取ると明るいテンポが伴奏の歌が運動公園に広がっていく。
秋空の中、傭兵達の和やかな戦いが始まった。
●第一種目・100m走
「気付けばもう、季節は秋‥‥か」
軽く準備運動をし、ホアキン・デ・ラ・ロサ(
ga2416)はスタート位置に立ちながら呟いた。
「ふふふ、なんとこう見えても陸上部! 短距離専門だから同じチームであろうと負けないよ」
葵 コハル(
ga3897)は体操服姿でホアキンに挑戦的な視線を向ける。
「『個人』競技なのだから、俺も負けるつもりはない」
ホアキンもその視線に余裕の笑みを浮かべて答え位置に付いた。
「シーちゃん、くまさんも応援しているからがんばろうね?」
『アタシが見てるから、がんばって』
一方、別チームであるラウル・カミーユ(
ga7242)は保護者席に該当するところに座らせた熊の人形を指差し、勝手に腹話術をして同じチームで走るシーヴを応援している。
「余裕でありやがるですね‥‥でも、走るのは得意じゃないから緊張ほぐれて助かったです」
ラウルなりの優しさ(?)を受け取りシーヴは前を向いた。
「位置について、よーい!」
準備が終わったのを見計らってか、ハンナ・ルーベンス(
ga5138)が競技用ピストルを天に向ける。
クラウチングスタートで一斉に駆け出す体勢を選手達は取り出した。
「シーヴ‥‥王がお前を見ているぞ」
「え?」
「ドンッ!」
スタート前の一瞬。
ホアキンが隣にいるシーヴに魔法をかけた。
【先手必勝】を使い、ホアキンはそのまま一足早く走り出す。
シーヴは走り出すタイミングを逃した。
「走るのなら負けないのにゃ〜♪」
千佳をはじめ他の能力者は全力で走り出す。
ホアキンがややリードをし、その後をコハルやラウル達が追いかける形になった。
このまま余裕かと思ったとき、ラウルの速度が上がる。
「僕には見える、ゴールに微笑むリュンちゃんたちが! うぉぉぉっ!」
ホアキンをそのまま抜き去り、ラウルがトップでゴールイン。
続いて、ホアキン、コハルと続いた。
「お兄ちゃんお姉ちゃん達の待っているゴールまで走りきるのにゃ‥‥みぎゃっ!?」
千佳は最後の最後で石に躓きヘッドスライング状態でゴールする。
「恋は‥‥厄介でありやがるです」
その後ろにシーヴが入って100m走は終了した。
●ハプニング
「少し染みますけど、我慢してくださいね」
「ひ、ひりひりするにゃ〜」
放送席の隣の救護テントではハンナが顔をすりむいた千佳へ手当てしている。
(「何時の日か、世界中の皆がこうして集い、平和の内に競技を行うオリンピックが復活する事を祈りましょう」)
ハンナは能力者になるときに捨てざるをえなかったオリンピック選手としての道を懐かしんだ。
純粋にスポーツを楽しむ能力者達がハンナにはいつも以上にまぶしく感じる。
「ありがとうにゃ、このまま次の種目にいってくるにゃね」
手当てを受けるとペコリとお辞儀をし、千佳は走り出した。
その光景を微笑ましくハンナが見ていると鳳(
gb3210)がカンフー服を来た姿で小さい子を連れてくる。
「すんまへんな。何や迷子みたいなんや」
鳳がつれてきた子はハンナに見覚えのある少年だった。
「もしかして、進司君かしら?」
少年は泣き出しそうな顔をしながらもコクリと頷く。
初詣のときに迷子となっていて、ハンナが親を探したこともあり、また2月では一緒にババ抜きをして遊んだ子でもあった。
「お母さんとはぐれちゃったのね? 今、ライディお兄さんに頼むから」
「いやー、助かったわ。俺こういうのは慣れてないからどうして良いか分からなくて」
「あら、どうかされました?」
ちょっとしたざわつきになっていたため、着替えて競技に向かおうとしていたキャンベル・公星(
ga8943)が救護テントに顔をだす。
「迷子のようです。すみませんが、この子を見ていてもらえませんか? ライディさんに放送できないか聞いてきますから」
「ええ、私が見ていますからいってきてください」
公星に感謝をしながら、ハンナはライディに迷子放送を頼みに出かけた。
進司君には悪いと思いながらも、突然の再会にハンナは顔を綻ばせる。
『希望の風』の足跡はここでも1つの形として現れていた。
●夕食タイム
『午前の競技が終了しました。皆さん昼食タイムをお楽しみください』
ライディのアナウンスで午前競技である100m走とゆで卵運びの終了が伝えられた。
ゆで卵運びはキャンベル・公星が優勝しラウル、キャンベル、鳳、シーヴの『かめさんチーム』が優勢である。
しかし、2,3位をそのまま取っているホアキン、ミオ、コハル、千佳の『うさぎさんチーム』はしっかりと追いかけているという状況だった。
「2チームしかないのはいささか寂しいが、汗を流すには丁度いいか」
ホアキンが点数板を眺めながら、競技で使っていたゆで卵を食べ、傭兵達の待っているシートへと足を運ぶ。
「ホアキンさんオツカレー。さぁ、午後に向けてこれでも食べて元気に行こうよ」
ドドーンという効果音と共にコハルが取り出したのは大きなバスケットに敷き詰められたおにぎりだ。
「これはまた気合をいれたものだ‥‥いただくよ」
ゆで卵を飲み込んだホアキンはコハルのおにぎりをとりだべだす。
「依頼でキメラと戦っているときとは違う疲れを感じます」
ミオもペタンと座り込みながら、ミネラルウォーターを飲んだ。
そのとき急にカメラのフラッシュが光る。
「ブルマ3人娘ゲットだがや」
「シャチョーさん、取るならとるっていってよ!」
「不意打ちで取れるいい絵ってのもあるだがや。今後の打ちあわせを他の会社とやってきた息抜きに着たんだでよ。秘書に連れ戻されるのは勘弁してほしいだで」
コハルの突っ込みに笑顔で返したのは季節外れのアフロに麦藁帽子を被った米田時雄だった。
「カメラで撮影をするなら俺は邪魔かな?」
「そんなことないでよ。仕事やのーて『崇高な趣味』だがね」
苦笑するホアキンに笑顔を向けると米田はそのままブルマ姿の千佳やミオ、コハルを撮っていく。
「写真は僕もとってほしーな。サンドウィッチあげるからどう?」
「ええでよ」
米田はラウルからサンドウィッチを貰うとシャッターを切った。
●『Wind Of Hope』特別版
「ライディ、一緒にご飯食べたいでやがる‥‥です」
放送席で放送を始めようかと思っていたライディにシーヴが傷だらけの手で弁当箱を差し出す。
「あ、ありがとう‥‥でも、放送の片手間になっちゃうけどいいかな?」
迷子探しのアナウンスなど、予定外の仕事が立て込んでいるため、ライディはゆっくり昼食を取れない状況だった。
「それじゃあ、シーヴが放送代わるです。その間ゆっくり食べて欲しいでやがるです」
弁当箱を渡すとシーヴは微笑みマイクの前に移動する。
原稿に目を通し、トントンと整えるとシーヴは一呼吸を置いてマイクの音量を上げていった。
『シーヴ・フェルセンの『Wind Of Hope!』 こんにちわシーヴ・フェルセンです。本日はラストホープ総合運動公園よりお送りしています』
澄んだ声による放送が会場に広がっていく。
(「上手になったな‥‥」)
ライディは弁当箱のサンドウィッチを食べつつ、そんなことを思っていた。
『メインパーソナリティのライディ・王は忙しいため、今回は私がメインを務めさせていただきます。早速『秋』をテーマにしたお便りをご紹介させていただきたいと思います』
パーソナリティの手伝いをはじめてきたシーヴは手馴れた様子で原稿を読みすすめていく。
『
色々な秋があるけれど、僕は物思いの秋です
発展途上な気持ちや、愛しく想う人達が増えました
皆が幸せになれる方法を模索中
秋の長夜に、答えが見つかると良いな‥‥
RN:紫水晶の影
』
『
散り行く紅葉の美しさと儚さは、昔も今も変わらないと思います。
バグア勢の皆様も、その風情を知ることができれば、何かが変わるかも知れませんのに
いつ日か
地球に住まう全ての人々が、何に怯えることも無く、紅葉を楽しむことのできる日が
訪れますように‥‥
RN:明けの明星
』
『どちらも違った秋を感じているようですね。私の秋は食欲の秋です。食べる方ではなく『食べたくなる』ような料理をつくれたらなと思います‥‥です』
シーヴは手紙の感想をのベながら、手作りお弁当を平らげてお茶を飲んでいるライディに目を向けて少しはにかんだ。
小さな一歩ではあるが、目標に近づいているようである。
『次のお便りを読みます』
『
私の国では秋って殆どなくて‥‥こういう風に季節を感じるのもちょっと新鮮‥‥
短い季節だからこそ大事にするのね‥‥
RN:犬じゃない狼です
』
『
秋はいい季節
出会いと別れ、冬に備えて美味しい実の宿る季節
種をまいて育ててきたものが成長してきた姿に感動もした
この冬は実ったものどう売るかを考えたい
RN:アロハ男爵
』
『ただいま、ライディ・王が復帰されたようなのでこれよりライディの特製中華を持って昼食インタビューに参りたいと思います』
『今からいきますので、おなか一杯にならないでくださいね』
顔を少しだけ割り込ませてライディはマイクで話すと荷物を持って立ち上がる。
荷物はシーヴが言ったように炒飯や小龍包、海老シューマイなどが入っていた。
シーヴはマイクの音量を下げて、ボイスレコーダーを用意する。
「午後の競技の前にちゃっちゃとすますです‥‥えっと、料理どうでしたか?」
「美味しかった‥‥よ。食後の運動というわけじゃないけれど‥‥行こうか」
ライディは照れながらもシーヴの手を握ると昼食を楽しんでいる能力者たちのいるシートの方へ駆け出した。
●第三種目・借り物競走
午後の種目はホアキンの一言により、混乱の模様を強めた。
「カンパネラ女学生? そこの運営担当! 学生服借りて女装しろ!」
カンパネラ学園は能力者が通う軍学校だ。
参加者の中でカンパネラ学園に通っているは鳳だけで、敵チームであるため大人しく借りてくれるとはホアキンは思ってなどない。
『え、えぇ!?』
意外な展開に思わずマイクの音量を入れっぱなしで大きな声を上げるライディ。
矛先は此方に向いていた。
「えっと‥‥シーヴの借り物は『大切な人』‥‥うぅ」
「僕は『卵焼き』! お昼済んだのに残っている人なんているのカナー」
次々とでてくる難題に能力者たちは顔をしかめたり、一部は赤くしている。
「えーっと『万年筆』? 放送席の兄ちゃんは出払ってていないし‥‥よし、あっちにいくでー!」
鳳が引いた袋にあったのは比較的手に入りやすそうなものだが、運動会という場所では持っている人物が限られていた。
そこで鳳が目指したのはスポンサーや主催の人間が見ている席である。
スーツを着た中年から初老の男性いるため万年筆を持っている可能性は高かった。
鳳は走りだし、意を決して声をかける。
「えろうすんまへん。万年筆もってたら貸してくれへんか?」
「これでよければどうぞ」
すっとプラスチックケースに入った万年筆がスーツを着た若い男性から差し出された。
ケースには『アイベックス・エンタテイメント』とロゴが印刷されている。
「ありがとな! 競技が終わったから返すから!」
「粗品ですし、貴方にあげますよ」
「でもなー」
返すまでが礼儀と思っていた鳳にはこの男性からの言葉は戸惑った。
「そうですね。では、『IMP』を応援してもらうということでお返しとしてください」
戸惑っている鳳に男性は微笑む。
「ようわからんけど、お返しできる手段があるならもらっとくな? 兄ちゃんありがとう!」
笑顔で男性にお礼をいうと、鳳はゴールに向かって駆け出した。
その途中、カンパネラの女子学生服をきたライディがホアキンとシーヴに両腕を引っ張られあうという光景にであう。
「この借り物は俺が用意したものなので、大人しく渡していただこうか」
「シーヴの大切な人はライディだけです」
「鳳さん、助けてください〜」
「え、あー。が、がんばってなー!」
どちらも譲らないというホアキン二人に気おされて近づくことのできなかった鳳はそのままゴールした。
一方、今だに借り物である『かっこいいおにいちゃん』を決めかねている千佳がライディの前を通る。
「女装しているのはかっこよくないにゃ‥‥」
ぼそりとそれだけ呟くと千佳はギャラリーの方へ借り物を探しに行くのだった。
●最終競技・御輿騎馬戦
『え、えー先ほどの借り物競走は『かめさんチーム』の鳳さんが1位をとりました。続いて『うさぎさんチーム』のミオさん、千佳さんが続いています』
ボロボロでくたくたになったライディがアナウンスをする。
結果は第一種目から変わらず独走にはならない結果だった。
『続いてはよいよ最終競技です。御輿はアイベックス・エンタテイメントとライオネット・ソフトからの提供されたものとなります。御輿の上部に乗っている置物を取ったチームの勝利です』
試合の説明を聞きながら、『うさぎさんチーム』がアイベックス・エンタテイメント提供のIMPを宣伝するような御輿を担いだ。
「やはり私たちが担がないといけませんね」
「そりゃそうだよねー。絶対に負けられないよね! ここで勝っておかないと!」
IMPのアイドルであるミオとコハルは特に気合をいれている。
うさぎさんチームは劣勢であるため、ここで勝負に出たかった。
「騎馬戦は格闘です。気合を入れていきましょう。でも、怪我をなさらないようにですね?」
長い黒髪をお団子にしたキャンベルも負けじと『かめさんチーム』を鼓舞する。
「どつきあい勝負でないのが残念やけど、気にしてられへんな。よっしゃ、準備OKや」
『かめさんチーム』の担ぎあげた御輿はゲームやオモチャが並んだメリーゴーランドのようなデザインをしていた。
両チームが向かい合い、位置に着く。
「最終競技です。位置について‥‥よーい、どんっ!」
ハンナのピストルにより両チームが動き出し、お互いが間合いを詰めて一進一退の攻防を行いだした。
「攻撃は最大の防御にゃー!」
千佳が大きく詰め寄って奪おうとすれば、シーヴが御輿を上下させて防ぐ。
『ミンナでアタシを守ってー!』
いつの間にやら御輿に縛り付けられている熊のぬいぐるみからラウルのアテレコで応援が飛んだ。
「その首いただかせてもらいます!」
拮抗が続き、御輿を振るう手に力の入っていたキャンベルが好戦的な口調で攻めにでる。
ゴンと御輿同士がぶつかり、上に載った置物がゆれだした。
「今だ! アイドル達の活躍をみせてくれよ」
ホアキンが御輿を一人で抱え、自分のチームのアイドル達に発破をかける。
「この勝負‥‥もらいました」
胸を揺らしながらミオが飛び上がり『かめさんチーム』の御輿に乗っている置物を奪い取った。
そのとき、ハンナのピストルがなり、競技の終了をしらせる。
『ただいまを持ちまして、全競技の終了をお知らせいたします。御輿を戻したあと、閉会式の準備が完了するまでアイドル達によるイベントをお楽しみください』
「無念でありやがるです」
抵抗空しく負けてしまったシーヴは無表情ながらもトーンの落ちた声で悔しがった。
「でも、他の競技でトップを取れてるんや、勝負はわからんへんって」
そんなシーヴを鳳が肩を叩いて励ます。
「最善は尽くしましたもの、後は結果を待ちましょう」
キャンベルもシーヴを宥めだした。
そうしていると、ステージにはコハルと千佳とミオの三人が上がり、閉幕イベントが始まる。
『はーい、閉幕イベントはあたしもでるよー。そこ、しゃしゃりでるなといっちゃダメー』
コハルは体操服ブルマの上からコスプレ用の学ランを羽織った姿でビシリと客席に突っ込みを入れた。
『おにいちゃん、おねえちゃん達もギャラリーだったけれど楽しんでもらえたかにゃ? そうだと僕も嬉しいにゃ』
『エンディングには私たちIMPの曲をお聞きください。『WILL〜光へ〜』‥‥』
「ミオさーん、コハルちゃーん!」
ギャラリーからの大きな歓声を受けながら、3人は締めのイベントを無事にこなす。
傭兵達の運動会もよいよ閉幕を迎えようとしていた。
●結果発表、そして次なるスタートへ
『実に接戦した勝負でしたが、総合優勝は『かめさんチーム』です。おめでとうございます。アイベックス・エンタテイメントの米田時雄社長よりトロフィーと副賞の授与を行ないます』
「僕らが優勝? やったよ、シーちゃん!」
「騎馬戦で負けたのが悔しかったけど、良かったです」
表彰台の上にあがりながら、ラウルたち『かめさんチーム』は互いに喜びを分かち合った。
『優勝おめでとうございます。少人数ながらも楽しい競技をしていただき、私たちとしても貴重な機会を得られたことを嬉しくおもいます』
簡単な祝辞を述べると米田はトロフィーをラウルに渡す。
『副賞はAURORAブランドの商品券です。これで素敵に自分をコーディネイトしてください』
微笑ながら米田は各自に商品券を配り拍手を送った。
『優勝した皆さんや、今回競技に参加していただいた能力者のみなさんに盛大なる拍手をお願いします』
ライディもそれにあわせ拍手を送りながらアナウンスを続ける。
「皆ありがとなー!」
拍手を受けて感極まった鳳が両手を大きくギャラリーに向かって振りだした。
その様子をライディの隣で眺めていたハンナは視線を自分の義理の妹であるシーヴに向ける。
洋服ブランドの商品券をジーット眺め、何かを考えているようだった。
(「今回が新たなスタートですよ。ライディさんと一緒に歩く新しい一歩です」)
笑顔で拍手を送るライディに視線を向け、ハンナは満足したように拍手を続ける。
秋の夕暮れに完成と拍手がいつまでも響きわたっていた。